日本の地下鉄
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この項では日本の地下鉄について解説する。日本国内においては以下のような定義付けがある。
- 主に地下を走る鉄道路線(広義。防災や設備面での定義)
- 地方自治体(交通局)またはそれに代わる法人(東京メトロなど)が運営する、主に地下を走る鉄道路線網(狭義。日本で一般利用者が認識している「地下鉄」の定義)
- 上記 (2) の路線に、東京を中心とした交通網整備計画の策定で盛り込まれた一部の私鉄路線(東急田園都市線渋谷~二子玉川間(旧新玉川線)、京急本線泉岳寺~品川間、西武有楽町線小竹向原~練馬間など)を加えたもの(行政上での地下鉄の定義、都市計画法に定める都市施設の一つである「都市高速鉄道」として)
ここでは、主に (2) の一般利用者が認識している「地下鉄」の定義に基づいて記述する。
目次 |
[編集] 概要
日本では地下鉄は地上の鉄道と共に市民生活に溶け込んでおり、日常の場面から通勤通学、ビジネスなどと広く利用されている。
[編集] 歴史
[編集] 黎明期
[編集] 東京
日本に地下鉄を敷設する計画は、1906年に東京地下電気鉄道が高輪-浅草間及び銀座-新宿間の免許申請が初見である。これは実際に建設する事を目的にしたというよりも、欧米の地下鉄敷設状況を知り、先行して鉄道免許を取得しようとしたものであり、また東京市の反対もあり却下されてしまった。
その中、1915年(大正4年)、東京駅の地下を走行する郵便物貨物専用の地下鉄が開通している。
建設を前提としての免許申請は1917年、早川徳次によって申請されたものである。1914年にロンドンの地下鉄を見学した早川は東京への地下鉄導入の必要性を痛感、東京軽便地下鉄道を設立し、高輪~浅草及び車坂(上野)~南千住間で軽便鉄道法による敷設免許を申請した。計画によれば総延長15.3キロ、軌間は1372ミリ、電気は第三軌条式である。
この免許申請を受け、他の地下鉄も免許出願が相次いだ。1918年、武蔵野電気鉄道が上目黒-有楽町間を、1919年には東京高速鉄道は日比谷-渋谷、霞ヶ関-新宿、日比谷-池袋、日比谷-上野間を、東京鉄道は五反田-向島、渋谷-南千住、原宿-巣鴨、新宿-洲崎、目白-池袋間で申請が出願されている。
これらの申請に対し1919年11月17日に東京地下軽便鉄道に、1920年3月17日には、将来東京市が買収する可能性を提示した上で下記区間の免許が交付された。
- 東京軽便地下鉄道:15.3キロ(高輪南町~浅草公園広小路、車坂町~南千住町)
- 武蔵電気鉄道:8.0キロ(目黒~有楽町)
- 東京高速鉄道:14.1キロ(内藤新宿~大塚)
- 東京鉄道:33.4キロ(目黒~押上、池袋~洲崎、巣鴨~万世橋)
東京市より免許交付を受けた早川は、1920年に東京地下鉄道会社を設立、1919年に軽便鉄道法から地方鉄道法に従い計画軌間も1435ミリへと変更した。そして地質調査を進めた結果、1923年に新橋~上野間の工事施行認可を受ける。しかし同年発生した関東大震災の影響で施行区間を上野-浅草に変更して1925年9月27日に着工された。
オープンカット工法を採用した深度1.5メートルの路下式地下鉄は2年後に完成し、1927年12月30日に開業となった。車両は1000型と呼ばれる全鋼製車両であり、日本初のドア・エンジンを採用した。安全面ではニューヨークの地下鉄同様、打子式の自動列車停止装置を採用、また安全畳垣も装備している。1930年1月1日には万世橋、1931年11月21日には神田までと順調に伸延され、1934年6月21日には新橋までの路線が完成した。
1935年、東京高速鉄道により東京に2本目の地下鉄建設工事が開始された。着工区間は渋谷~新橋であり、1938年11月18日最初の青山六丁目~虎ノ門が開通したのを皮切りに、1939年までに渋谷~新橋間の6.3キロを営業供用した。
第二次世界大戦の予感が国民経済に影響を与え始めた1930年代、交通機関の間に適当な競争関係、分担関係を確立させるための交通統制の必要性が提言されるようになった。また空襲被害を受けた際の防空壕としての用途も考慮され、1941年3月7日に帝都高速度交通営団法を制定、同年7月4日に帝都高速度交通営団が設立された。空襲の際には地下鉄が唯一の交通機関になることから、防空上の要請から資金と資材が許す限り推進することと定められたが、現実には戦時経済下での建設は殆ど進まなかった。
[編集] 大阪
大阪の地下鉄は東京の民間主導と対照的に、大阪市が事業主体になって計画が推進された。1920年に大阪市が地下鉄網の調査を委託し、その報告書が提出された4年後の1926年に下記路線が「大阪都市計画高速度交通機関路線」として認可された。
- 1号線:榎坂~梅田~難波~大国町~天王寺~我孫子(19.9キロ)
- 2号線:森小路~天六~梅田~天神橋~天王寺(13.7キロ)
- 3号線:大国町~玉出(3.7キロ)
- 4号線:築港~花園橋~大今里~平野(17.1キロ)
上記計画に基づき、1930年に第一期事業として梅田~天王寺間の工事を開始した。資金調達で受益者負担制度を採用したこの路線は1933年5月20日に梅田~心斎橋間が開業した。打子式の自動列車停止装置を備え、安全畳垣も備えたのは東京と同じであるが、駅設備において自然換気でなく送風装置を使用したこと、ホームまでエスカレーターが設置されていたこと、そして何よりも天井が高く将来の12両運行(当時の車両の大きさで)を見越した長さのプラットホームが特徴である。
大阪では、戦時下でも大国町で1号線と分岐する3号線の建設が進められた。それでも鋼材を使用しない無筋コンクリートアーチ構造を採用するなどの工法上の工夫も加え、1942年5月10日には大国町~花園町間の1.3キロを完成させている。しかしその後は鋼材のみならずセメントの入手も困難となり、トンネルの上部を石積アーチ式にするなどの苦心の工法が採用されたが、その後工事は凍結された。
[編集] その他の都市
東京・大阪以外では純然たる地下鉄の建設は行われていないが、同じ時期に建設された私鉄の中には一部区間を地下線として開業したものがいくつかある。
[編集] 年表
第二次世界大戦の終戦時まで。
- 1915年5月23日 東京鉄道郵便局専用地下鉄の東京駅~東京鉄道郵便局(1940年に廃線。トンネルの一部は駅職員専用の「赤煉瓦通路」として現存)
- 1925年6月5日 宮城電気鉄道(JR東日本の現・仙石線)の初代・仙台駅(現在線とは異なる。現存せず)
- 1927年12月30日 東京地下鉄道(現・東京メトロ銀座線)の浅草~上野間(1934年6月21日に新橋まで全通)
- 1928年11月28日 神戸有馬電気鉄道(現・神戸電鉄有馬線)の湊川地下線(現在線とは異なる。現在は商店街化)
- 1931年3月31日 京阪電気鉄道新京阪線(現・阪急京都本線)の京都市内の地下線(西院~京阪京都(現・阪急大宮)間。河原町延長は1963年6月17日)
- 1933年5月20日 大阪市営地下鉄御堂筋線の梅田(仮)~心斎橋間(江坂~中百舌鳥の全通は1987年4月18日)
- 1933年6月17日 阪神電気鉄道本線の神戸市内の地下線(岩屋~三宮間、元町延長は1936年3月18日)
- 1933年12月10日 京成電鉄本線の上野延長線(上野公園(現・京成上野)~日暮里間)
- 1938年6月26日 関西急行電鉄(現近畿日本鉄道の現・名古屋線)関急名古屋駅(現・近鉄名古屋駅)開業。
- 1938年11月18日 東京高速鉄道(現・東京メトロ銀座線)の青山六丁目(表参道)~虎ノ門間(1939年1月15日に渋谷~新橋間が全通)
- 1939年3月21日 阪神電気鉄道本線の梅田駅地下化(福島駅までの地下化は1993年9月5日)
- 1941年8月12日 名古屋鉄道名岐線(現・名古屋本線)の新名古屋(現・名鉄名古屋)~枇杷島橋(現・枇杷島分岐点)間(新名古屋~神宮前は1944年9月1日開通)
- 1942年7月1日 関門トンネルの下り本線(日本で初めての海底トンネルにして、世界最初の鉄道用海底トンネル。上り本線は1944年9月9日に開通)
[編集] 第二次世界大戦後
終戦時の日本の地下鉄は東京が14.3キロ、大阪が8.8キロという状況であった。空襲で壊滅的な被害を受けた両都市は人口が激減した。
[編集] 東京
人口が激減した東京では、末広町~稲荷町間が乗客減少を理由に一時運行停止になるほどであった。
戦後の混乱が収まるにつれて、東京では1946年に新たな高速鉄道網を下記の通り決定した。
- 1号線:武蔵小山~板橋一丁目(23.9キロ)
- 2号線:祐天寺~北千住(23.8キロ)
- 3号線:大橋~雷門(16.1キロ)
- 4号線:富士見町~向原町(22.3キロ)
- 5号線:中野~東陽町(15.7キロ)
都市計画でいうターナー式を念頭において立案された路線網は1950年代から着工されることになる。最初の着工路線に選ばれたのは4号線(後の丸ノ内線)であり、住宅地と急速に発展した池袋方面への交通網整備と、混雑の著しい山手線や中央線を救済する目的が定められた。そして1954年1月29日より順次丸ノ内線が開通することになる。
戦前から都市交通を市営と主張してきた東京市は、戦後東京都と改称してからも営団の解体を主張し、都市交通の一元化を主張していた。そうした中、昭和20年代終盤に営団とは別に都営地下鉄の建設へと目標を転換した。この動きを見た政府は1955年に都市交通審議会が設けられ、翌年にはその答申に従い、郊外私鉄との乗り入れ直通運転を盛り込んだ地下鉄計画が発表された。これにより陸上交通事業調整法で営団による地下鉄一元化を方針転換することになる。
1956年、東京都は軌道法による免許申請を行い、翌年には営団が保有する1号線が東京都に委譲され、下記内容での計画が策定された。
- 1号線:品川~五反田~新橋~浅草橋~押上(17.3キロ)
- 2号線:中目黒~恵比寿~日比谷~秋葉原~上野~北千住(20.9キロ)
- 3号線:大橋~渋谷~浅草(16.1キロ)
- 4号線:荻窪・方南町~新宿~東京~御茶ノ水~池袋~向原(30.1キロ)
- 5号線:中野~高田馬場~飯田橋~大手町~東陽町(15.8キロ)
- 5~2号線:下板橋~巣鴨~水道橋~大手町
郊外私鉄の相互乗り入れも計画に組み込まれ、1号線は標準軌、架空線式を採用、京急と京成が乗り入れることが計画され、同時に1372ミリ軌間の京成は全線で改軌を行い、また京急も品川~泉岳寺間の路線を建設することとなった。
都営地下鉄は1号線から工事が開始され、隅田川横断工事などに難航したが、1960年12月4日の午後に浅草橋~押上間が初めて開業した。
[編集] 大阪
大阪では1948年に新たに都市計画が立案され、戦前の1号線から3号線は戦前の計画を踏襲したが、4号線で大阪港~放出、5号線で神崎川~平野間の東西路線が計画され、都市計画の基本であるペーターゼン式の路線網が計画された。
[編集] その他の都市
東京・大阪以外では1957年11月15日に名古屋市営地下鉄東山線が開業。1960年代以降のモータリゼーションの発展に伴い、1970年代の大都市では路面電車を撤去することが盛んになるが、政令指定都市では撤去した路面電車に代わって、公営の地下鉄を建設することが行われるようになる。
- 1971年12月16日 札幌市営地下鉄南北線 北24条駅~真駒内駅間が開業
- 1972年12月16日 横浜市営地下鉄 伊勢佐木長者町駅~上大岡駅間(1号線)が開業
- 1977年3月13日 神戸市営地下鉄西神線 名谷駅~新長田駅間開通
- 1981年5月29日 京都市営地下鉄烏丸線 北大路駅~京都駅間が開業
- 1981年7月26日 福岡市地下鉄空港線 室見駅~天神駅間開業
- 1987年7月15日 仙台市営地下鉄南北線 八乙女駅~富沢駅間開業
[編集] 日本の地下鉄路線
( )内は未開業分。駅数には同一名称の駅を重複計上していない。
- 公営地下鉄
- 札幌市営地下鉄(札幌市交通局)
- 路線数:3、総延長:48.0km、駅数:46
- 仙台市営地下鉄(仙台市交通局)
- 路線数:1(1)、総延長:14.8km(13.9km)、駅数:17(12)
- 都営地下鉄(東京都交通局)
- 路線数:4、総延長:109.0km、駅数:98
- このうち三田線の白金高輪~目黒間2.3kmは第二種鉄道事業者
- 川崎縦貫高速鉄道(計画中、川崎市交通局)
- 路線数:(1)、総延長:、駅数:
- 横浜市営地下鉄(横浜市交通局)
- 路線数:2(1)、総延長:40.4km(13.1km)、駅数:32(8)
- 1・3号線(ブルーライン)は一体的に運行しているので実質は路線数1(1)
- 名古屋市営地下鉄(名古屋市交通局)
- 路線数:6、総延長:89.1km(4.1km)、駅数:83(4)
- 未開業分のデータは桜通線延伸分のみ
- 京都市営地下鉄(京都市交通局)
- 路線数:2、総延長:28.8km、駅数:29
- 大阪市営地下鉄(大阪市交通局)
- 路線数:7(2)、総延長:115.6km(37.4km)、駅数:92(7)
- 未開業分の駅数は今里筋線第1期区間のみ
- 神戸市営地下鉄(神戸市交通局)
- 路線数:4、総延長:30.6km、駅数:25
- 西神延伸・西神・山手線は一体的に運行しているので実質は路線数2
- 福岡市地下鉄 (福岡市交通局)
- 路線数:3、総延長:29.8km、駅数:35
- 民営地下鉄
- 東京メトロ(東京地下鉄)
- 路線数:8(1)、総延長:183.2km(8.9km)、駅数:138(3)
- 未開業分のデータは13号線分のみ
- 埼玉高速鉄道線(埼玉高速鉄道)
- 路線数:1、総延長:14.6km、駅数:8
- りんかい線(東京臨海高速鉄道)
- 路線数:1、総延長:12.2km、駅数:8
- みなとみらい21線(横浜高速鉄道)
- 路線数:1、総延長:4.1km、駅数:6
- 神戸高速鉄道(神戸高速鉄道)
- 路線数:2、総延長:7.6km、駅数:10
[編集] 構造
[編集] 集電方式
世界的に地下鉄では主流とされる第三軌条方式は、日本では札幌市営地下鉄の南北線、東京メトロの銀座線と丸ノ内線、横浜市営地下鉄のブルーライン、名古屋市営地下鉄の東山線・名城線・名港線、大阪市営地下鉄の御堂筋線・谷町線・四つ橋線・中央線・千日前線で採用されており、これ以外の路線は全て剛体架線による架線集電方式を採用している。
これは日本では郊外路線との相互直通運転を前提として建設される路線が多いため、既存路線と規格を合わせる必要があることによる。逆に大阪市営地下鉄の御堂筋線と相互直通をする北大阪急行電鉄、中央線と相互直通する近鉄けいはんな線は新規に第三軌条方式で建設された郊外路線である。
[編集] 地下鉄駅
日本の地下鉄駅の災害などに備えての対策は、世界的に見ても非常に盛んである。その背景には地下鉄サリン事件が関係している。
東京では墨田区・江東区・江戸川区などの海抜がマイナスのいわゆるゼロメートル地帯を走行する、東京地下鉄東西線・都営地下鉄新宿線などに、防水扉が設けられている。
東海豪雨のときは名古屋市営地下鉄名城線の平安通駅が冠水したため、名城線市役所駅~砂田橋駅間(当時は砂田橋行)で代行バス運転を行った。そのほかにも、名古屋市営地下鉄鶴舞線の一部駅や名古屋市営地下鉄名港線名古屋港駅では防水扉を設置している。
また、著しく利用客の多い駅では、島式のホームを方向別に千鳥状に分けることによって、利用者の混雑を抑えるところもある。例として名古屋市営地下鉄東山線名古屋駅が挙げられる。
[編集] 車両
車両は古い路線では地上の鉄道と同様の大型の車両を用いるのが一般的であったが、2000年代以降ではミニ地下鉄が用いられることが増えた。
[編集] ミニ地下鉄
ミニ地下鉄とは、一般的な地下鉄のように大量人員輸送を担うシステムと、モノレールやバスのような少量人員輸送を担うシステムの中間部分を担うために研究・開発された日本独自の地下鉄システムである。
地下鉄の工費は莫大になるため、輸送需要の少ないところでは小さな車体の車両を使うことでトンネル断面を小さくして、できるだけそれを抑えようとしたことから生まれた。車両を低床化してトンネル断面を縮小するため、鉄輪式リニアモーターカー(浮上はせず、鉄車輪で走行)を使用することが多い。非粘着のリニアモーター駆動のため、急勾配や急曲線にも対応できるという特徴を持つ。これらは、リニアメトロまたはリニア地下鉄などと呼ばれるが、リニアモーターカーではなくても小断面トンネル・小型車体を採用していれば「ミニ地下鉄」といえる。ただし、東京地下鉄銀座線や名古屋市営地下鉄東山線・名城線・名港線ではJR等の車輌と比較した場合小型な車輌を使用しているが、これらをミニ地下鉄と呼ぶことはない。
大阪市交通局鶴見緑地線(現・長堀鶴見緑地線)で、初めて実用化された。輸送需要が少ない路線では、建設費削減のために小断面トンネル・小型車両によるミニ地下鉄が採用されている。現在、運営中および建設中のミニ地下鉄は下記の通り。
※の路線はリニア式ではないが、小型サイズの車両を使ったミニ地下鉄である。
[編集] 日本の地下鉄の現況
日本の法規上では、大阪市営地下鉄を除き鉄道事業法に基づいている。
- 大阪市営地下鉄は中央線コスモスクエア駅~大阪港駅間(当初大阪港トランスポートシステム(OTS)の第一種鉄道事業区間であったテクノポート線を、2005年7月1日にOTSが第二種鉄道事業者に、交通局が第三種鉄道事業者に移行して中央線に編入した区間)を除いて軌道法に基づき、法律上は軌道である。
東京の東京地下鉄東西線、都営地下鉄三田線、大阪の大阪市営地下鉄御堂筋線・中央線、神戸の神戸市営地下鉄西神・山手線、横浜の横浜市営地下鉄ブルーラインなど、都心から外れた郊外の区間を中心にして広範囲に地上や掘割、高架を走っている場合もある。世界的に見ても、一部路線が地上や高架を走る路線は存在する(河川を跨ぐ前後などにもみられる)。中には高速道路と一体構造で建設されている路線もある。
- 東京地下鉄丸ノ内線は都心でも一部に地上区間が存在する。
- 大阪市営地下鉄中央線は都心でも高架を走っている。
一方、地下鉄でない京王新線は都営地下鉄新宿線と、西武有楽町線は東京地下鉄有楽町線と連絡している。近鉄難波線やJR東西線、建設中の京阪中之島線は地下鉄と直通しないが、それ自体がほとんど地下を走っているというような場合もある。
日本の大手私鉄のうち、地下線や地下駅、地下鉄などに直通運転するための車両を全く持たないのは南海電気鉄道と西日本鉄道の2社のみである。
- 相模鉄道は地下駅を持つが、地下鉄には直通しない。
日本で一般に認識されている地下鉄の印象は、一般に自治体(地方公営企業である交通局)が直接経営している公営地下鉄か、旧・営団地下鉄の東京メトロのみで、私鉄や都市型第三セクター鉄道の路線はたとえ地下を走っている場合でも地下鉄ではないという認識があり、埼玉高速鉄道や横浜高速鉄道、東京臨海高速鉄道や神戸高速鉄道などは第三セクターであるということから地下鉄に含む場合と含まない場合がある。
[編集] 東京都心
東京都心は山手線内一帯に拠点が散在しているが、地下鉄より早く完成した中央線など、JR線が速達性を持っていて、地下鉄やバスはその補完的な存在となっている。
- 銀座線のバイパス路線である半蔵門線は駅間距離を広げて速達性を持たせている。また、都営新宿線の急行と都営浅草線のエアポート快速は都心の駅を通過する。東西線の快速は都心では各駅に停車する。
東京では皇居(江戸城跡)が都心部(山手線の内側)に大きく面積を持っており、東京駅や銀座の周辺以外は、他には例を見ないほど複雑に蛇行することとなった。それは絵地図などでも分かり辛く、地方出身者や外国人はもちろん、東京の住民でも把握することが難しく、批判される一因となっている。
- 皇居の内堀の下を東京地下鉄の東西線・有楽町線・半蔵門線が通過している。
- 皇居の下を通しても途中駅が造りようがなく、皇居の周りに広がっている各拠点を迂回して通った方が、多くの人が乗って収益が見込める(実際、大きな拠点を外して敷設された路線ほど赤字の傾向がある)。
[編集] 大阪都心
緑が少ない大阪では、大阪城跡が現在の業務中心地からややはずれた一角にあることと、地下鉄各路線が網の目にむらがあるペーターゼン式であるため、東京のような問題はほとんどない。各路線は大阪環状線(同記事も参照)の内側都心部を縦横無尽に、区画整理された南北の筋と東西の通りに沿って建設され、大阪市の市営モンロー主義もあり、市内交通の主力になっている。ただし、在阪各私鉄とJRのターミナルはキタとミナミの周辺に集中しており、私鉄JRとの相互乗り入れが活発でないことや、ペーターゼン式の弊害で、大黒字なのはキタ・梅田とミナミ・難波を西日本の業務中枢地区を貫通して直結する御堂筋線だけであるという問題、目的地に到着するまでの、乗換え回数が必然的に多くなるという問題がある。
御堂筋線梅田駅の乗降客数は、日本の地下鉄で、単一路線の駅としては、第一位である。
[編集] 他路線の延長としての地下鉄
JR・私鉄と相互直通または接続している地下鉄路線の中には、既設の地上路線の延長や廃止区間の代替として事実上一体的に作られたものもある。路線としては事実上一体化していても、接続先の会社線で運賃体系が変わり、接続路線・地下鉄にまたがっての利用数者は伸び悩んでいるケースも多い。乗継割引を適用して対処している路線もあるが、根本的な解決には至っていない。
- 都営地下鉄浅草線 - 京成押上線の浅草駅への延長
- 東京地下鉄千代田線 - 常磐緩行線の西日暮里駅への延長
- 横浜高速鉄道みなとみらい21線 - 東急東横線の横浜都心におけるルート変更・延長
- 名古屋市営地下鉄上飯田線 - 名鉄小牧線と接続していた市電の代替
- 京都市営地下鉄東西線 - 京阪京津線の京阪三条駅への廃止区間の代替
- 大阪市営地下鉄堺筋線 - 阪急千里線の大阪都心への延長
- 神戸高速鉄道東西線 - 山陽電鉄本線の神戸都心への延長、阪急神戸本線、阪神本線の山陽電鉄、神戸電鉄との連絡
- 神戸高速鉄道南北線 - 神戸電鉄有馬線の神戸高速鉄道東西線との連絡
- 福岡市営地下鉄空港線 - 筑肥線の博多駅への廃止区間の代替
- 福岡市営地下鉄箱崎線 - 西鉄宮地岳線と接続していた市電(元は同線の一部)の代替
この逆で、地下鉄の延長として作られた北大阪急行南北線・名鉄豊田線・北神急行北神線・近鉄けいはんな線・埼玉高速鉄道線・東葉高速鉄道線などの路線もあるが、運賃体系については同じ問題を抱えている。さらに新線区間では加算運賃や、既設線より割高な運賃体系が適用されていることもある。
[編集] 日本の地下鉄における優等列車
基本的に、地下鉄は以下に挙げる理由
- 道路の下に沿っているうえ、既存の地下鉄や地下街の間を網の目を縫うように掘られるため、結果多くの区間でアップダウンやカーブが激しくなり、高速運転に不向き。
- 地下鉄は建設費が莫大でさらに近隣の地下の使用状況を考えると、優等列車の待避設備などを設けるだけの予算や場所の捻出が困難。
- 地下鉄は普通、都市の都心部に建設されるためどの駅も利用者が多く、こまめに停車した方が多くの収益が見込める。また、多くの駅で乗り換え路線が何線かあり旅客の流動性が激しいことから、優等種別の停車駅設定が困難かつ優等種別の存在意義が薄い。
などから、各駅停車のみの運転を行っている路線が多い。他社線と直通運転していて、他社線内では優等種別として運転していても地下鉄線内では各駅に止まるケースは多々ある。また、地下鉄ではない路線でも、地下区間(京王新線、JR東西線など)は原則全ての優等列車を各駅に止めている路線例もある。
[編集] 優等列車導入の歴史
- 昭和初期、欧米の地下鉄から長所を取り入れて作られた大阪市営地下鉄御堂筋線は、御堂筋の東半分に建設され、将来西半分に複線の路線を建設すれば、ニューヨークの地下鉄のように複々線になり、急行運転が可能なつくりになっていた。
- 地下鉄での優等列車導入は、東京地下鉄東西線の快速列車が始まりである。ただし地下区間での通過運転は南砂町駅だけである。客扱いを兼ねる待避線を持つ葛西駅、妙典駅、原木中山駅において各駅停車の追い越しが可能。
- 地下区間で待避を行うのは、東急新玉川線(現・田園都市線)急行の桜新町駅での事例が最初(ただし上記定義の (2) には相当しない区間である)。同駅はホームの外側に、壁を隔てた通過線を急行が通過する。一般に地下鉄と呼ばれる区間では現在都営地下鉄新宿線瑞江駅が同様の構造を持つ。
- 地下鉄での本格的な優等列車は、都営地下鉄新宿線の急行運転が最初。岩本町駅、大島駅、瑞江駅で各駅停車の追い越しが可能。
- 関西地区でも1993年から神戸市営地下鉄で快速列車が導入されていたが、1995年の震災の混乱時に廃止された。
- 横浜高速鉄道みなとみらい線は、2004年2月1日の開業時より、相互直通運転を行っている東急東横線の優等列車体系に対応する形で優等列車による通過運転を実施している。線内には待避設備はなく、運転間隔の短さもあって速達効果は少ない。なお、特急の通過運転は主にJR線と所要時間において対抗するための営業施策上の色合いがある。
- 2008年春には、小田急電鉄線と東京地下鉄千代田線との直通で狭義の地下鉄では初となる有料の特急列車が運行開始される予定。小田急ロマンスカー#地下鉄乗り入れについてを参照。
[編集] 日本の地下鉄の経営状況
日本の公営地下鉄は、地方自治体経営における交通部門の施策の一つとして、鉄道単体の収支以外に地下鉄建設による環境負荷軽減効果、地価上昇効果、税の増収効果、住民の便益向上効果などを、総合的に判断して経営されている。民鉄やJRの経営状況を鉄道事業以外の小売事業やカード事業など母体会社の連結対象となる事業を含めた決算資料で判断しなければ、適正な経営状況を把握できないのと同様、地方自治体の地下鉄事業による総合的な収支の把握は、その連結対象となる経済効果の経済価値を含めて判断しなければならない。しかし、現状では、地下鉄事業によって波及して発生している経済効果を把握していく適切かつ統一した会計基準がないばかりか、地下鉄事業本体の会計に至っても適切かつ統一した会計基準がない状況である。例を挙げれば、減価償却費を各自治体が、どのように計上していくかによって決算の数字が大きくブレる可能性がある。以下に示すのは、自治体によって公表されている「地下鉄決算」の断片を拾ったデータだが、通常、よく目にする企業会計原則によって出された連結決算とは意味が大きく異なる資料であることを認識して取り扱わなければ地下鉄事業の意義を見誤ることになる。
- 公営地下鉄
- 札幌市営地下鉄 平成17年度 純損益 ▲約13億3,654万円 : 平成17年度 累積欠損金 約3,415億6,478万円[1]
- 仙台市営地下鉄 平成17年度 純損益 ▲約14億7,956万円 : 平成17年度 累積欠損金 約1,082億1,512万円[2]
- 都営地下鉄 平成17年度 純損益 ▲約38億7,300万円 : 平成17年度 累積欠損金 約4,771億9,139万円[3]
- 横浜市営地下鉄 平成16年度 純損益 ▲約69億8,900万円 : 平成16年度 累積欠損金 約2,298億1,800万円[4]
- 名古屋市営地下鉄平成17年度 純損益 ▲約82億円 : 平成17年度 累積欠損金 約3,135億円[5]
- 京都市営地下鉄 平成17年度 純損益 ▲約187億3,600万円: 平成17年度 累積欠損金 約2,572億3,700万円[6]
- 大阪市営地下鉄 平成17年度 純損益 約195億7,701万円 : 平成17年度 累積欠損金 約902億4,243万円[7]
- 神戸市営地下鉄 平成17年度 純損益 ▲約40億8,110万円 : 平成17年度 累積欠損金 約1,119億7,999万円[8]
- 福岡市地下鉄 平成17年度 純損益 ▲約45億3,508万円 : 平成17年度 累積欠損金 約1,340億5,965万円[9]
- 民営地下鉄(連結決算)
- 埼玉高速鉄道 平成17年度 純損益 ▲約52億8,000万円 : 平成17年度 負債合計 約1,557億300万円[10]
- 東京地下鉄 平成17年度 純損益 約307億4,800万円 : 平成17年度 負債合計 約1兆906億200万円[11]
- 東京臨海高速鉄道平成17年度 純損益 ▲約55億5,300万円 : 平成17年度 負債合計 約2,405億2,500万円[12]
- 横浜高速鉄道 平成17年度 純損益 ▲約9億9,411万円 : 平成17年度 負債合計 約1,750億641万円[13]
- 神戸高速鉄道 平成17年度 純損益 約1億2,390万円 : 平成17年度 負債合計 約582億9,009万円[14]
[編集] 路線別
全国の公営地下鉄(東京地下鉄・高速鉄道除く)で黒字の路線は、黒字額が大きい順に示すと以下のようになる。
- 大阪市: 御堂筋線 純損益 約348億円の黒字(2005年度決算、[15])
- 名古屋市:東山線 純損益 約96億2,900万円の黒字(2003年度決算、[16]の9ページ目)
- 東京都: 新宿線 純損益 約85億8,092万円の黒字(2005年度決算、[17]の7ページ目)
- 東京都: 浅草線 純損益 約61億3,032万4,000円の黒字(2005年度決算、[18]の7ページ目)
- 神戸市: 西神・山手線 純損益 約39億500万円の黒字(2005年度決算、[19]の2ページ目)
- 福岡市: 空港線・箱崎線 純損益 約23億円の黒字(2005年度決算、[20])
- 札幌市: 南北線 純損益 約17億円の黒字(2001年3月度時点、[21])
- 東京都: 三田線 純損益 約14億8,247万4,000円の黒字(2005年度決算、[22]の7ページ目)
- 名古屋市:鶴舞線 純損益 約10億4,900万円の黒字(2003年度決算、[23]の9ページ目)
以上の9路線が黒字を示している。他にも明確な数値は不明だが、大阪市営地下鉄谷町線も経常収支比率が107.5%なので黒字と言える。[24]
逆に、赤字額が大きい路線を順に示すと以下のようになる。
- 東京都: 大江戸線 純損益 ▲約200億6,676万7,000円の赤字(2005年度決算、[25]の7ページ目)
- 京都市: 東西線 純損益 ▲約191億円の赤字(2002年3月度時点)
- 横浜市: ブルーライン 純損益 ▲約182億円の赤字(2002年3月度時点)
- 名古屋市:桜通線 純損益 ▲約181億800万円の赤字(2003年度決算、[26]の9ページ目)
- 札幌市: 東豊線 純損益 ▲約171億円の赤字(2001年3月度時点)
- 大阪市: 長堀鶴見緑地線 純損益 ▲約118億3,200万円の赤字(2004年度決算、[27]の14ページ目)
の順で赤字が大きくなっている。(ただしこの内、大江戸線は建設費に対する減価償却が損失の大半を占めており、営業係数(売上100円に対するコスト)自体は、100未満である。)
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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