ダイヤグラム
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ダイヤグラム(diagram)
- 概念やアイデア、構造、関係等を単純化して図形で視覚的に表現したもの。グラフやフローチャート等。
- 交通機関の運行計画を図示したもの。または交通機関の運行状況。ダイヤ。本項で記述。
- UMLにおけるダイアグラム。当該項目を参照。
- ディジタル変調方式による搬送波の位相-振幅空間をベクトル表示した図「信号空間ダイヤグラム」。信号点配置図とも。
通常、英語でdiagramと言った場合は1を指すが、日本語でダイヤグラムと言った場合は2を指す。
ダイヤグラム(diagram)、ダイヤとは、交通機関の運行計画を表現した線図である。また交通機関の運行状況を指してダイヤと言う(「ダイヤの乱れ」、「正確なダイヤ」など)。一般に、鉄道におけるそれが有名であるが、鉄道以外の交通機関においても使用される(運行図表)。
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[編集] 概要
一般に鉄道のダイヤグラムは、時間を横軸にとり、距離を縦軸にとって駅名・信号所名を縦軸上に配置したグラフ状の形態(ダイヤ図)である。下りの起点駅が一番上に配置され、ここを原点として距離は下向きに増加し、時間は右向きに増加する。そして一つの列車は一本の線(スジ)で表現される。したがって始発駅を出発した列車、すなわち下り列車は右肩下がりの曲線を描き、反対に上り列車は右肩上がりの曲線を描く。ダイヤグラムは時間と位置の関係を表したグラフであるから、線の傾きは列車の速度を表す。すなわち速い列車ほど線の傾きは大きくなるし、線が水平(傾き0)であれば停車を表すことになる。
尚、上の形態に対して「ハコダイヤ」と呼ばれるものがある。これは、列車やバスなどの運用を示す為に作成されるものであるが、これもダイヤグラムの一種とされる場合があり、区別のために通常のダイヤグラムを「山型」と呼ぶ場合がある。
ダイヤグラムを表の形式で表現したものを時刻表という。
[編集] 鉄道におけるダイヤ
[編集] ダイヤの作成
鉄道においては、車両の速度(速度種別)や線路の輸送容量等を勘案しながら作成される。所要時間については、車両性能・制限速度に合わせてどの地点でどのように加速・減速して走るかを決めた運転曲線(ランカーブ)を元に基準運転時間を定め、そこに余裕を加えて決めている。
鉄道の場合、原則として駅、信号所ないし信号機相互間(閉塞区間)あたりに1列車しか運行できないことから、単線区間やラッシュ時においては時間あたりの運転本数の限界に達する事がままある。
通常複数種別の列車が運行される路線でも、ラッシュ時には列車種別を単一に設定し、駅における停車時間を縮小するなどして運転本数を増加させる形態を取る場合がある。この場合、ダイヤグラム上にはスジが平行して走っている様に描かれることから「平行ダイヤ」と称される。なお平行ダイヤを採用している場合に速度向上を兼ねて優等列車を運行する場合に停車駅を複数の駅に散らす形で停車するものを「千鳥停車」という。
[編集] ダイヤ改正
輸送力の増強や、路線網の変更への対応のために、ダイヤグラムの見直しを行う事がある。これを、ダイヤ改正( - かいせい)という。なお、運行会社により呼び名が若干異なる場合がある。例えば、近畿日本鉄道では「ダイヤ変更」、京王電鉄や朝日新聞の紙面上では「ダイヤ改定」と呼ばれる。
ダイヤ改正の規模は、従来のダイヤを一旦白紙に戻して全て書き換える白紙改正と、従来のダイヤを少しずつ修正・追加する挿入式改正に大別される。旧日本国有鉄道(国鉄)時代には数年おきに白紙改正が実施されていたが、その中でも1961年(昭和36年)10月に実施された通称「サン・ロク・トオ」と、1968年(昭和43年)10月に実施された通称「ヨン・サン・トオ」と呼ばれるダイヤ改正は有名。国鉄分割民営化後のJRでは白紙改正は行われていない。日本の鉄道網は既にほぼ完成されており、全国の列車ダイヤを一度に書き直すような大規模な改正は青函トンネルと瀬戸大橋線の開通に伴う1988年の改正以来無くなった。
現在JR各社のダイヤ改正は年1~2回程度、3月頃・10月(12月)頃に行われる事が多い。ダイヤ改正を行う契機としては、
- 信号所・駅あるいは待避線の新設・廃止による線路の輸送容量の見直し。
- カントのかさ上げや重軌条化、一線スルー化、保安装置の更新などに伴う列車の最高速度の変更。
- 複線・複々線の新設による線路の輸送容量の増加。
- 新型車両の投入などに伴う列車の最高速度・加減速度の変化又は1列車あたりの輸送容量の増減。
等が挙げられる。ただし、乗入れや接続を行う路線のダイヤが改正されると一緒にその路線のダイヤも改正される場合が多い。JR各社の改正はその会社の管轄が広いことから影響を受ける範囲が大きいため、関係する地方の交通事業者では同時に改正を行うことが多い。また、大手の民間鉄道では、近畿日本鉄道についても毎年3月頃にダイヤ変更が行われている。
なお、国鉄・JRにおける個々のダイヤ改正については国鉄ダイヤ改正・JRダイヤ改正の記事を参照されたい。
また、ダイヤ作成の場において、鉄道会社としては従来設定されていない列車の登場の予定や利用率の低い列車の廃止なども予告されることがあり、特に営業上重要である新型車両の落成などによる優等列車の車両交代などはこの日を境として行われる事が多い。一般に改正日の始発列車から施行されるが、夜行列車の運行されている会社の場合には改正前日より改正後のダイヤにより運行をされる場合もある。そうした場合を含めて日付をまたぐ列車については、臨時列車として運行することが通例である。
[編集] パターンダイヤ
ダイヤを周期的に作成することがしばしば行われている。このように作られたダイヤを「パターンダイヤ」と呼び、その周期がn分であるとき、時間の間隔を取ってn分サイクルまたはn分パターン(平行ダイヤの場合にはn分ヘッドとも)のようにいう。nは多くの場合60の約数である。
ダイヤの周期性を優先すると必ずしも旅客の動向に対し適切な量の列車が運行されるとは限らなくなるが、周期性がある方が利用者がダイヤを記憶しやすくなり、それ故に利用しやすくなるというメリットがある。そこで、多くの鉄道路線、特に複数の列車種別を運行する路線ではダイヤに周期性を持たせる事例が多くなってきている。実際に、関西本線奈良以西(2006年現在大和路線の愛称がある)のダイヤを20分サイクルにしたところ旅客が増えたと言われている。首都圏では、中央快速線が快速・特別快速などを走らせているため、利用書の要望からパターン化を行った。このようなダイヤは列車本数の多い大都市の路線を中心として日中に採用されることが多いが、利用客数の変化に応じて、1日の中で異なる周期を組み合わせることもしばしば行われる。また、阪神電鉄と山陽電鉄のように乗り入れを行う路線同士が異なる周期を持っていることもある。
パターン化の弊害として、事故や遅延が発生した場合、パターンダイヤが維持出来なくなることが挙げられる。パターンダイヤでは遅延を回復するために、列車の優先順位によって間引きなどを行う。過密な路線では数分の遅延が増幅されて渋滞になることがあり、間引きや行き先変更を急遽行って対応する場合もある。
[編集] 間合い運用
効率的な車両運用についてもダイヤグラムを作成する際には重要な要因である。とりわけ、列車により使用車両を限定する場合にはその車両の運用を優先する形で行われ、ダイヤ作成上の主要な要素となる。ただ、使用車両を限定することで回送列車や長時間運行されない列車がどうしても発生してしまい、これは収入を生み出さないため運用上の無駄となっていた。その為、閑散路線や通勤時などは車両の運用効率を高める為に特急や急行用の車両を特急、急行でない営業列車として使用する事がある。これを一般に「間合い運用」と称する。
なお、優等列車に使用する車両を普通列車・快速列車に充当するというケースが多いが、広義には、通常とは異なる路線・列車種別で車両を運用することを指すものと言える。
また、車両基地への回送線を利用した博多南線や、多くのホームライナーについてもこの間合い運用の一形態であり、一部の特急・急行列車についてもこれに準じた運用がなされることもある。
- 例
- 津軽線:朝の特急車両としての運用がない時間帯に、特急「つがる」用のE751系電車や、特急「白鳥」用の485系電車が普通列車として運転される。
- 根室本線(芽室駅~池田駅):この区間の普通列車は通常はキハ40系気動車のみが使用されるが、旭川駅発の快速「狩勝」(キハ150形気動車)が帯広駅に着いてから旭川駅行きとして折り返すまで時間があるため、その車両を平日に限り帯広駅周辺で普通列車として運転している。
- 近鉄:京都や難波駅への車両回送を兼ねる目的や余剰車の有効活用などで京都~奈良間特急(京奈特急)や京都~橿原神宮前間特急(京橿特急)、奈良~難波間特急(阪奈特急)等に23000系特急用車両「伊勢志摩ライナー」が充当される列車が定期的に存在する。結果これらの列車は「伊勢志摩に行かない伊勢志摩ライナー」という事になる。
[編集] 優等列車
優等列車とは、複数の列車種別がある鉄道路線において、途中駅の一部を通過することによって始発駅から終着駅までの間を速達する列車を指す。各駅停車・普通以外の特急や急行、快速などのことである。
元々は普通列車の対義語であり、国鉄・JRにおいては、「運賃の他に速達するために特に料金を徴する列車」、即ち特急列車等を指すとされていた。しかし、現在はJRにおいても快速など無料で速達運転する種別の列車が増えており、「特に料金を徴収する列車」だけを指すという認識は稀になっている。むしろ先に挙げた「特別料金の有無は関係なく、途中駅の一部を通過する速達列車」を指すとする方が、一般的な認識や私鉄での扱いとも合致する。
[編集] 補完列車
補完列車とは、補助列車とも言い、運用上の基幹列車の輸送を補助する為に運行される列車のことを指す。以下のものに分類できる。
- 需要が旺盛と認められる駅ないし時間帯を、列車が通過・非経由・運休する場合。
- 基幹列車に乗車できなくなった乗客の救済。但し、単純に座席指定席の有無で判断は出来ない。
一般にシーズンのみ運転の臨時列車にはこの形態が多い。
なお、特急の続行運転などで同等の列車を始発駅付近で続けて運行する場合、列車編成の内容も同じではなく基幹列車の方に比べ補完列車と思われる方が車両・編成内容などが異なる場合がある。こういった場合は単純に「補完列車だから」という意味合いではなく、列車そのものの性格によるものが大きい。また、このような言い方は必ずしも全ての列車が当てはまるとは限らず、あくまでも「補助・補完の役割を有する事がある」という程度の相対的な言い方である。
[編集] 停車の方式
停車駅の選び方は、一般に乗降客数を基準とする事が多いが、乗降の多い駅であっても設備の問題・営業戦略ないしは列車の収容力などの理由により停車しない場合もある。そのため、一般に他の駅よりも乗降が多いことが多い他線との乗換駅や緩急接続ができる駅であっても、停車するとは限らない。
[編集] 選択停車
選択停車とは鉄道・バスなどにおいて、ダイヤ作成上停車する駅・バス停を選択的に決定することから名付けられた言葉で、鉄道の場合には一定の区間でその列車種別の停車駅を固定化せず平準化することにより、各列車の停車駅を増やすことなくその区間にある駅の利用客の便を計る目的がある。また、同規模の利用客が見込める駅が連続する場合にはしばしば優等列車の招致が行われるので、それを避ける狙いもある。これの広く知られた例としてはかつて特急「白鳥」の停車駅で上り・下りの停車駅を替えた事などが挙げられる(下り列車は大聖寺駅、上り列車は動橋駅に停車。その経緯については鉄道と政治を参照)。
また、別種別を立てるなど、これを制度的に採り入れてダイヤを組むものを千鳥停車と呼ぶ。
[編集] 臨時停車・特別停車
なお、所定停車駅とは別に停車駅の追加を行うことを「臨時停車」・「特別停車」と称する。これは、ある駅において、何らかの理由で通常よりも多くの乗降客が発生する場合に、所定の停車列車では利用者を輸送しきれないことや特に利便性を図る必要があることを理由として、本来はその駅を通過する種別の列車をその駅に停車させることをいう。
典型的には、サッカー場・野球場・公営競技施設が近い駅において、これらの競技施設で試合やレース、催事が開催される場合に行われる。例えば、東京スタジアムでのサッカー等のイベント開催日において、通常は各駅停車しか停車しない京王電鉄の飛田給駅への特急・準特急の臨時停車があげられる。
また、これとは異質であるが、特に緊急を要する急病人等が車内に出た場合に当該列車に限って停車させる場合もある。これも「特別停車」と称する。但しこの場合、当該列車乗務員と運行指令双方の判断による許可が必要である。
[編集] 千鳥停車
列車種別によって停車駅を分散させるダイヤグラムが混雑時間帯などに採用される事がある。酔客の「千鳥足」のように進むという意味から千鳥停車(ちどりていしゃ)・千鳥式運転(ちどりしきうんてん)という。鉄道評論家の川島令三が命名したとされる。
事例として、西武池袋線の池袋~所沢間が挙げられる。この区間は停車駅を参照されれば分かるが、急行は池袋、石神井公園、ひばりヶ丘、所沢と停車し、通勤急行は池袋、石神井公園、大泉学園、保谷、東久留米、所沢と停車駅を互い違いにしている。(最近まで西武鉄道は10種類もの種別が存在した)
たいていの場合、緩急接続のため上位の列車種別の停車駅には下位の列車種別の列車は必ず停車するが、ラッシュ時にそれを行うと、より速達効果の高い上位種別列車に乗客が集中し、乗換駅での乗降時間の増大により遅延を生じることになってしまう。それを防ぐため、列車種別ごとに対象とする駅を分散させ、列車ごとの乗客数を平準化するとともに、列車の遅延を防ぐのが千鳥停車が実施される主な理由である。
また、小田急電鉄で行われていたような、ラッシュ時に途中駅での追い抜き、緩急接続を一切行わず、上位下位の区別なく全ての列車種別を平行ダイヤに乗せてしまうのも同じ目的である。
日本で最初に千鳥停車を採用した会社は阪神電気鉄道とされる。
このような利点のある千鳥停車であるが、あまりその路線を使ってない利用者側からすると、上位種別の停車駅を下位種別の列車が通過するというような事態も起きるため、停車駅や乗換え駅を覚えにくくなる。それによって、下車駅を通過してしまったり、所要時間が長くなってしまったりする場合がある。このような理由から、千鳥停車が実施されるのは、大半が混雑の激しい路線であり、ラッシュ時間帯限定で実施される。逆に言えば、そうしたデメリットを乗客に強いることを承知でダイヤの定時性を確保しなければならないほど、その路線の基盤整備が輸送実態に追いついていないということとしてもとらえることができる。その方式を採用するには駅係員のダイヤの記憶と判断力が必要になる。
また国鉄~JRの優等列車においても、近接した距離に特急・急行を停車するだけの規模を持った駅が続いている場合などで、所要時間の均一化と沿線地域への考慮から、列車ごとに停車駅を分散させることがあり、これも「千鳥停車」・「選択停車」と呼ぶ事がある。この事例として、伯備線の根雨駅と生山駅がある。この両駅は従来急行列車原則停車駅であった両駅だが、伯備線に特別急行列車が設定されたときに速度面で急行列車との差別化を図るため、特急列車は一部列車を通過とした。速達タイプ設定時に主要駅停車タイプの特急停車駅となったが、速達タイプと主要駅停車タイプを統合する際に千鳥停車となったもの。両駅間は、15kmしか離れていない。
[編集] 緩急接続
緩急接続(かんきゅうせつぞく)とは、一つの鉄道路線に速度の遅い列車(主に普通列車)と速度の速い列車(速達列車・優等列車)が走っている場合、普通列車が優等列車の待ち合わせをする際に、優等列車が停車する駅においてそれぞれの列車間で相互に乗り換えられるようにすることをいう。特に同一ホーム(島式ホーム)で乗り換えられる場合を指す場合が多い。 専門的には前者の列車を「緩行」後者を「急行」と呼び、それらが「接続」することから、「緩急接続」と呼ぶようになった。「緩急結合」と呼ぶ場合もある。アナウンスでは「急行の待ち合わせ」「各駅停車に連絡(接続)」と言う。
普通列車しか停車しない駅でも優等列車を利用しやすくなるため、路線全体の駅に利便が及ぶ長所があるが、反面優等列車が乗車客が増えることで混雑したり、待合わせにより普通列車の所要時間が増えてしまう短所を持つ。そのため、通勤時間帯など利用が集中する場合は、わざと緩急接続しないで混雑の平均化を図る場合が多い。これを緩急分離という。
「待避駅」の頁も参照のこと。
[編集] 運転停車
「運転停車」とは、列車の運行の際に客扱いを行わない場所で停車するものを指す。主に以下の事項を停車中に行う場合が多い。
- 信号場や駅などで行われる単線区間における列車の行き違い。またはスイッチバックによる方向転換。
- 小駅や信号所において、優等列車がより速度の速い列車を退避。
- 運転士・車掌等乗務員の交代。
- 客車列車の場合の機関車の付け替え。
- 荷物車の荷扱い。
- 夜行列車の場合、時間調整。
- 事故などで安全のために停車する場合。
- 列車乗務員側と運転指令所側との許可・判断により、停車が妥当と判断した場合。
- その他運転指令所側が停車が適当と乗務員側に通告・指令した場合。
なお、列車の扉が自動扉で無かった時代は、客扱いを行わない停車は多く存在しなかった。何故ならば、車両の扉が走行中も自由に乗客によって開閉できるため、停車していればホームに降りることが可能になってしまうからである(一部列車では、施錠される例もあった)。そのため昭和中期ごろまでの時刻表では、運転扱い上の理由で停車する小駅(瀬野八区間における上りの瀬野駅など)や、深夜に停車する駅でも、優等列車の停車時刻が掲載されていることがあった。
また、自動扉を持った車両が増えてきた時代に起こった有名な運転停車に関する事件として、1961年の「サンロクトオ」改正における特急「白鳥」をめぐり、北陸本線能生駅で起こった「能生騒動」がある。
[編集] その他
[編集] 「上り」と「下り」
[編集] 鉄道
「鉄道要覧」など、戸籍上・登記上の起点から出発する列車などが「下り」である。反対方面の列車は「上り」である。JRを始めとする多くの鉄道路線において、東京駅に近い方向の駅が起点と定められており、「下り」の定義は「東京駅から離れる方向」となる場合が多い。
たとえば東京駅など、その駅から伸びるすべての路線の起点になっているような駅を始発とする列車は、原理的に下りしか存在しない。同様に、内房線・外房線双方の終点駅である安房鴨川駅や、行き止まりの路線の終点駅等、すべての路線の終点になっているような駅を始発とする列車は上りしか存在しない。
しかし、大阪のターミナル駅を起点とすることが多い関西地方や、東京を含めた都市部を貫く路線ではしばしば定義が曖昧になるため、東京駅基準が避けられることもある。また、九州旅客鉄道の場合開業時にもっとも東京寄りであった門司港駅を起点とした鹿児島本線を基準として「上り」・「下り」を決定したため、「上り」・「下り」の概念が狂う場合があることから自社での案内を「○○駅方面」と案内する旨を告知している。
また、起点駅が列車の運行経路の中間にあるような場合、複数の路線をまたがって運行するような場合、環状運転である場合には、混乱を避けて「上り」・「下り」という言い方をしない場合がある。以下に例を挙げる。
- 京浜東北線、湘南新宿ラインでは、「北行」・「南行」と表現する。
- 中央線・総武線各駅停車の場合では千葉方面行きを「東行」、三鷹方面行きを「西行」という。
- 環状運転を行っている路線の場合、山手線・大阪環状線では「外回り」・「内回り」と表現し、名古屋市営地下鉄名城線では「左回り」・「右回り」(英語では「時計回り-Clockwise」・「反時計回り-Counter Clockwise」)と称する。なお、準環状運転となる伊予鉄道松山市内線は、バスと同様に系統番号にて案内している。
- 東京都心部を貫通する路線を多く持つ東京地下鉄(東京メトロ)では、曖昧さを回避するために銀座線を除き、最初に開業した時点での起点から終点までを「A線」と表現し、A線の逆方向を「B線」と表現する。しかし、駅ナンバリングは起終点に関わらず南西方向から北東方向へと駅の順番から任意に定められているので、その順番とA線の方向とは必ずしも一致しない。たとえば、丸ノ内線・日比谷線の様にどちらも番号が若くなる方がA線となっている場合も存在する。
- 東京都交通局(都営地下鉄)では、浅草線、三田線では「南行」(なんこう)・「北行」(ほっこう)と、新宿線では「西行」(せいこう・さいこう)・「東行」(とうこう)と呼称している。但し大江戸線では東京メトロと同様に「A線・B線」と呼称する。
[編集] 路線バス
路線バスの場合、系統番号が漢字又は仮名文字+数字(2桁程度)の組み合わせの場合、文字が示す停留所から出発するものを「下り(もしくは、往路)」とすることもある。但し、これとは逆向きになっている場合もある。
[編集] 列車番号・便名
鉄道の場合、列車を効率よく運行するために必要な管理番号として列車毎に与えられる列車番号がある。これに相当するものは路線バスや航空機、定期客船などにも存在する。とりわけ、安全上外部より管理・管制をしなくてはならない航空機の場合、会社名と便号についても一定の規則が存在する。
[編集] 定期列車・定期便
一般に、定期列車とは、原則として毎日運行される列車を指す。ダイヤグラムを平日・休日で分けている場合には平日のみ運転(休日に運休)される列車や休日のみ運行される列車も含む。旅客列車の場合には、鉄道駅の時刻表に記載されている。
なお、路線バスや航空機、船舶の場合、港湾間、空港間など一定の区間で定期的に運行されるものを指し定期便と称する。しかし、海外航空航路・長距離定期船舶航路の場合、その機材・船舶の運用により1行程を1つの単位として運行されている場合もある。とりわけ、海外航空航路においては航空路線で「週n便」で告知されるのは、そういった事情があるからである。
また、臨時に運行されるものを臨時列車・臨時便と称する。
[編集] 時間帯による色分け
一般には、運行する時間帯により昼行列車・昼行便と夜行列車・夜行便とに分かれる。
その内、昼行列車・昼行便とは、1日の内に始発駅から終着駅まで運行される列車を指す。
ただし、「1日の内に」と言っても日付を厳密に考えているわけではなく、一般的な「夜行列車・夜行便」のイメージの通りに主に深夜帯を利用し始発駅と終着駅の間の利用者を主眼として運行する列車ではなく、始発駅から終着駅まで列車が止まる全ての駅で利用者が利用することを主とした列車については、終着駅に日付の変わる24時を過ぎて到着する場合であっても、その列車を夜行列車とは一般には称さない。
逆に日付上は1日の間で運転されていても性格上夜行列車とされるものもある。例えば九州新幹線開業以前に運行されていた「ドリームつばめ」では、博多駅始発が0時を過ぎていたため日付上は1日で運行されているが、前日23時台には出発していた西鹿児島駅発の列車との兼ね合いもあり夜行列車の扱いであった。
また、路線バスの終車後、ないしはそれに準ずる区間に運行される深夜バスの場合、昼行便の延長であることが多い。