ナシ
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ナシ Pyrus pyrifolia |
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和なし |
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分類 | ||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||
Pyrus pyrifolia cv. | ||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||
梨(和梨) | ||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||
Nashi Pear, Sand Pear等 |
ナシには大きく分けて、和なし(日本なし)、中国なし、洋なし(西洋なし)の3つがあり、本項ではこのうちの和なしについて説明する。中国なしに関しては中国なしを、洋なしに関しては洋なしを参照。
目次 |
[編集] 概要
和なしは、日本の中部地方以南や朝鮮半島南部、中国を原産とする野生種ニホンヤマナシを基本種とする栽培品種群のことである。日本なし、あるいは単になしとも呼ばれる。落葉高木。日本に原生するナシ属には他に、イワテヤマナシや、アオナシなどがある(日本なしのうち、二十世紀などを総称する青梨系、青梨とは別であることに注意)。
花期は4月ごろで、5枚の白い花弁からなる花をつける。果実は秋になり、梨は秋の季語とされる。
独特のしゃりしゃりとした食感は、石細胞と呼ばれるものによる。石細胞とは、ペントザンやリグニンという物質が果肉に蓄積することで細胞壁が厚くなったのもで、これは洋なしにも含まれるのだが、和なしよりもその量が少ないために、和なしと洋なしとで食感に大きな差が生じる。なお、リンゴやカキと同様、尻の方が甘みが強い。また、芯の部分は酸味が強くあまり美味しくない。
[編集] 歴史
日本でナシが食べられ始めたのは弥生時代ごろとされ、登呂遺跡などから多数食用にされたとされる根拠の種子などが見つかっている。『日本書紀』に持統天皇がナシやカブ、クリなどを植えて五穀の助けとするよう勧める記述があるなど、古代の書物にも記されている。
江戸時代には盛んに品種改良が行われ、100を越す品種が果樹園で栽培されていた。明治時代には、現在の千葉県松戸市において二十世紀が発見され、また、現在の神奈川県川崎市において長十郎が発見され、長らくナシの代表格として生産されてきた。また、それまでは晩生種ばかりだったのだが、早生種が多く発見され早生種の改良が行われた。
長らく二十世紀と長十郎が生産量の大半を占めていたが、戦後になって1959年に幸水、1965年に新水、1972年に豊水が品種登録され、現在では長十郎の生産はかなり少なくなっている。なお、この3品種を「三水」と呼ぶこともある。
[編集] 栽培
ナシは種子植物であり、果実内には1~十数個の種子が形成される。天然では鳥などにより種子が散布されるが、改良品種で種子繁殖が行われる事は稀である。
ナシの種子は乾燥に弱く、播種の際には注意を要する。発芽後は鉢へ移して個別に栽培し、十分に生育してから圃場へ移す。定植された苗は長さ数cmにもなる棘を付けるが、これはバラ科としての形態形質の一端である。ちなみにこの棘はナシの幼若期に特有のものであり、花芽形成が始まる頃に伸びる枝には棘がない。
ナシの花弁は通常白色、5枚の離弁が基本であるが、色や花弁数には変異がある。ナシは本来虫媒花であるが、自家不和合性が強く、栽培される場合には経済的な理由から人工受粉が行われる。おしべの柱頭に付着した花粉は発芽し、花粉管を伸長して胚珠に到達、重複受精を行う。果実の育成は植物ホルモンの影響を受ける為、人工的にこれを添加する事も行われる。また、結実数が多すぎる(着果過多)場合には、商品となる果実の大きさを維持する為に摘果が行われる。
[編集] 品種
和なしの品種改良は20世紀初頭から盛んに行われており、品種数は60ほど、そのうち命名登録されている品種は23品種存在する。また、幸水、豊水、二十世紀、新高の4品種だけで、収穫量の約9割を占めているが、いずれも19世紀後半〜20世紀前半に発見あるいは交配された品種である。
和なしの品種は、果皮の色から黄褐色の赤梨系と、淡黄緑色の青梨系に分けられるが、多くの品種は赤梨系で、青梨系の品種は二十世紀、八雲、菊水、新世紀、瑞秋(二十一世紀梨)など少数である。この色の違いは、果皮のコルク層によるもので、青梨系の果皮はクチクラ層に覆われており黄緑色となるが、赤梨系の品種では初夏にコルク層が発達し褐色となる。
[編集] 代表的な品種
- 幸水(こうすい)
- 和なし生産の36%を占める、最も生産量の多い品種。赤梨系の早生種。なし農林3号。
農業技術研究所が1941年に菊水と早生幸蔵をかけあわせて作り、1959年に命名・発表された。収穫時期は8月中旬から下旬と早い。糖度が高く酸味は少ない。果肉は柔らかく果汁も多いが、日持ちが短いのが欠点である。 - 豊水(ほうすい)
- 和なし生産の30%を占め、生産量第2位。赤梨系の中生種。なし農林8号。
果樹試験場によって1954年に作られ、1972年に命名された。糖度が高いが、ほどよく酸味もある濃厚な味が特徴。幸水よりやや大きめで、果汁が多い。また、日持ちも幸水よりは長い。長らくリ-14号と八雲の交配種とされていたが、2003年に果樹研究所のDNA型鑑定によって幸水とイ-33の交配種であると発表された。 - 二十世紀(にじっせいき)
- 和なし生産の13%を、鳥取県産なしの8割を占める。生産量第3位。青梨系の中生種。
青梨系の代表品種で、一般的な唯一の青梨。1888年に松戸市で当時13歳の松戸覚之助が、親類宅のゴミ捨て場に生えていたものを発見した。1898年に渡瀬寅次郎によって、来たる新世紀(二十世紀)における代表的品種になるであろうとの観測と願望を込めて命名された。その後、1904年に鳥取県に導入され、鳥取県の特産品となった。花は鳥取県の県花に指定されている。
果皮は黄緑色で美しく、味も赤梨系品種ほどではないが十分に甘く、果汁が多い。自家受粉が出来ない上、黒斑病に非常に弱いが、それらを改良した品種もある。(後述) - 新高(にいたか)
- 和なし生産の13%を占め、生産量第4位。赤梨系の晩生種。
菊地秋雄が東京府立園芸学校の玉川果樹園で天の川と今村秋を交配させて作った品種で、1927年に命名された。名前の由来は両品種の原産地である新潟県と高知県から。収穫時期は、10月中旬~11月中旬。500g~1kg程度の大型の品種で、果汁が多く、歯ごたえのある食感で、味は酸味が薄く甘い。洋なしほどではないが芳香もある。日持ちが良い。 - 新興(しんこう)
- 生産量は新高に次ぐ5位。赤梨系の晩生種。
1941年、新潟県農事試験場で二十世紀と今村秋をかけあわせて作られた。収穫時期は10月上旬から下旬。日持ちが良く、味なども良い。
[編集] その他の品種(赤梨系)
- 南水(なんすい)
- 新水と越後をかけあわせて作られた、赤梨系の中生種。長野県での生産が9割ほどを占める。
- 長十郎(ちょうじゅうろう)
- かつては和なしを代表する主要品種であったが、現在はあまり生産されていない。赤梨系の中生種。
- 愛宕(あたご)
- 赤梨系の晩生種。岡山県を中心に大分県、愛知県、鳥取県など西日本で生産が盛ん。1kg〜1.5kgと非常に大きく、日持ちが良い。
- 多摩(たま)
- 祇園と豊水をかけあわせて作られた、赤梨系の早生種。名前通り、「多摩川梨」の代表的な品種として神奈川県で生産が盛んであり、生産量の8割以上を神奈川県産で占める。
- 新水(しんすい)
- 君塚早生に菊水をかけあわせた、赤梨系の早生種。農林4号。8月上旬から収穫される。
- あきづき
- 162-29(新高と豊水の交配種)に幸水をかけあわせた、赤梨系の中生種。農林19号。500g以上の大型の品種で、非常に甘い。千葉県、茨城県、熊本県などで生産されている。
- 雲井(くもい)
- 1939年に石井早生と八雲の交配により作出され、1955年に「なし農林1号」として登録された。花粉はほとんどない。果皮は中間色(緑色の地に薄く茶色がかったような色)。東京周辺では8月中旬に熟し、果実は300g程度と平均的な大きさである。肉質はよいものの糖度が低く、幸水と競合することなどから現在ではほとんど栽培されていない。
[編集] その他の品種(青梨系)
- ゴールド二十世紀
- 二十世紀の改良品種で、黒斑病に強い。青梨系の中生種。1991年に作られ、「金のように価値がある」という意味で命名。
- おさ二十世紀
- 突然変異によって自家受粉が可能となった二十世紀。青梨系の中生種。鳥取県泊村の梨園で発見され、園主の名前から命名。
- おさゴールド
- おさ二十世紀の「自家受粉ができる」、ゴールド二十世紀の「黒斑病に強い」という2つの長所を持ち合わせた品種。青梨系の中生種。農林水産省と鳥取県の共同研究により開発された。
- 菊水(きくすい)
- 二十世紀に太白をかけあわせた青梨系の中生種。かつては代表的な青梨系の品種であったが、現在は少なくなった。三水(幸水、新水、豊水)などの優良品種を数多く生み出した。やや酸味はあるが糖度は高い。
[編集] 産地
和ナシは、沖縄県を除く日本各地で広く栽培されている。そのため、主産県でも収穫量におけるシェアはそれほど高くなく、上位10県合計でも全体の7割弱である。
- 千葉県
- 茨城県
- 和なし収穫量第2位。
- 幸水収穫量第2位、豊水収穫量第1位。
- 鳥取県
- 和なし収穫量第3位。(平成13年まではながらく第1位であった)
- 二十世紀収穫量第1位。(二十世紀の全国シェアは48%、県内の和なし収穫量のうち79%が二十世紀)
- 福島県
- 和なし収穫量第4位。
- 栃木県
- 和なし収穫量第5位。
- 長野県
- 和なし収穫量第6位。ここまでの上位6県で、全国の収穫量の過半数に達する。
- 宮城県:利府町など。
- 山形県
- 群馬県:前橋市天川大島町など。
- 埼玉県:宮代町、白岡町、春日部市など。
- 東京都:稲城市(多摩川梨)など。
- 神奈川県:川崎市(多摩川梨)など。
- 山梨県
- 新潟県
- 富山県:富山市(呉羽梨)、魚津市など。
- 福井県:あわら市、坂井市など。
- 香川県:観音寺市など。
- 福岡県
- 熊本県
和なし収穫量上位10県における、和なし合計と主要品種の収穫量、シェアを以下に示す。(出典:農林水産省統計情報、2005年)
和なし合計 | 幸水 | 豊水 | 二十世紀 | 新高 | ||||||
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収穫量 | シェア | 収穫量 | シェア | 収穫量 | シェア | 収穫量 | シェア | 収穫量 | シェア | |
全国合計 | 361,400 t | 129,600 t | 107,000 t | 48,400 t | 37,200 t | |||||
千葉県 | 41,100 t | 11% | 18,200 t | 14% | 14,200 t | 13% | 256 t | 1% | 6,500 t | 17% |
茨城県 | 38,900 t | 11% | 17,800 t | 14% | 16,500 t | 15% | 20 t | 0% | 3,510 t | 9% |
鳥取県 | 29,400 t | 8% | 1,180 t | 1% | 1,880 t | 2% | 23,300 t | 48% | 396 t | 1% |
福島県 | 28,000 t | 8% | 11,900 t | 9% | 10,600 t | 10% | 3,000 t | 6% | 1,390 t | 4% |
栃木県 | 26,400 t | 7% | 11,000 t | 8% | 11,900 t | 11% | 3 t | 0% | 1,520 t | 4% |
長野県 | 23,800 t | 7% | 7,660 t | 6% | 5,550 t | 5% | 6,110 t | 13% | 224 t | 1% |
新潟県 | 18,300 t | 5% | 4,050 t | 3% | 2,760 t | 3% | 2,700 t | 6% | 3,560 t | 10% |
埼玉県 | 16,900 t | 5% | 9,550 t | 7% | 5,240 t | 5% | 4 t | 0% | 1,540 t | 4% |
福岡県 | 12,900 t | 4% | 6,090 t | 5% | 4,150 t | 4% | 491 t | 1% | 1,110 t | 3% |
熊本県 | 12,600 t | 3% | 2,820 t | 2% | 3,900 t | 4% | 245 t | 1% | 4,360 t | 12% |
[編集] 成分
洋なしもほぼ同じ。
- 水分
- 80~90%は水分である。
- 食物繊維
- ナシは食物繊維が多く含まれる。整腸作用など。
- カリウム
- 血液中のナトリウムイオンの増加を防ぎ、高血圧などに良い。可食部100gあたり140mg。
- ソルビトール
- 糖アルコールの一種。のどの消炎に効果がある。
- アスパラギン酸
- アミノ酸の一種。疲労回復効果。
- プロテアーゼ
[編集] 雑学
- 料理の裏技として、肉をリンゴにつけ込むとやわらかくなることが知られているが、実は、梨の方がタンパク質の分解が良く、より肉をやわらかくすることが出来る。韓国風焼肉のタレには欠かせない。
又、リンゴと同じように殺菌効果も持っている。 - 「ありのみ」という呼称が用いられることがある。これは「ナシ」と言う言葉が「無し」に通じることから、これを忌んで「有りの実」という逆の意味を持たせてのことである(忌み言葉)。決して「アリ呑み」ではない。
- 手紙を出しても返事のないことを「梨のつぶて」という。「梨」に「無し」をかけた言葉である。したがって、「無しのつぶて」は意味上は合っているのだが、誤用である。
- 二十世紀の産地である鳥取県の県花は、「二十世紀梨の花」である。
- 花言葉は「和やかな愛情」「博愛」。
[編集] 写真
[編集] 外部リンク
分類表はウィキプロジェクト 生物のテンプレートを用いています。