秋
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北半球では1年の後半、南半球では1年の前半に秋がある。サマータイム実施国ではサマータイムが終了し、時計の針を1時間戻すこととなる。
中緯度の温帯地方では広葉樹が葉を落とし、草が枯れるなど、冬へと向う季節である。稲などの穀物や果物が実る時期であり、成熟などを意味する。
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[編集] 日本の秋
日本の秋の定義として主なものに、
がある。また秋の別名として、
- 高秋(コウシュウ:空が高く澄みわたる秋)
- 素秋・白秋(ソシュウ・ハクシュウ:五行思想で秋=金=白より)
- 白帝(ハクテイ:秋を掌る神のこと)
- 金秋(キンシュウ:秋=金)
- 三秋(サンシュウ:初秋、仲秋、晩秋の三つの秋)
- 九秋(秋の九十日間=三ヶ月のこと)
がある。
秋の風物は百人一首など和歌の題材となり、秋に静かなもの悲しいイメージを抱いてきた。その一方で、秋は収穫の季節であり、1年のうちでもっとも過ごしやすい季節でもあることから、秋祭りや運動会など行事も多く大変賑やかな季節でもある。「食欲の」「スポーツの」「読書の」「芸術の」など、様々な言葉が冠される。日本の秋の行事を示す。
- スポーツの秋
- 文化(読書の秋、芸術の秋)
- 衣替え - 夏物の衣類から秋・冬物の衣類へ替える
- 収穫(食欲の秋) - 収穫とそれを祝う祭りが行われる
ヨーロッパでは、ハロウィーンが行われる。
[編集] 自然と生物
秋は春と並んで生物の活動が盛んな季節である。夏の暑さが和らぐことで多くの生き物の活動が始まる。秋にはキクやハギなど多くの花が咲く。秋の七草は、秋の田園風景に咲く草花を集めたものである。また、コオロギやスズムシなどいわゆる鳴く虫が繁殖期にはいる。その後産卵して卵が冬を越す。シカやクマなどの大型ほ乳類の繁殖期も秋である。これらの動物では冬季に妊娠期間を経過し、春に子供が成長する。
秋はまた落葉の季節、実りの季節であるが、これらは植物から見ればいずれも冬越しの意味がある。実りは動物にとっても重要で、冬を越えるための栄養を蓄える季節である。秋の果実の量は、シカなどの冬の生存率に大きな影響を与えると言われる。ウマのみでなく、シカもイノシシも肥える時期である。また、冬毛に変わることで、毛皮も美しくなる。
[編集] 天文と気候
9月に入る頃から、夏の間日本を覆っていた太平洋高気圧が弱まり、北から乾燥した冷たい高気圧が南下し始める。この境目で秋雨前線(あきさめぜんせん)と呼ばれる停滞前線が発生し、長雨を降らせるようになる。ほぼ同時期、弱まる太平洋高気圧の縁に沿うようにして台風が日本列島に接近、上陸するようになる。この二点から、秋の初頭は曇天、荒天の多い天気となる。
10月中旬頃になると前線は南下し、変わって日本上空は大陸から偏西風に乗った移動性高気圧と低気圧が交互に訪れ、好天と曇天が周期的に見られるよう になる。大陸からの空気は低温で乾燥しており、また地面付近が冷たくなり大気状態が安定しやすい事などから大きな高気圧に覆われた時は澄んだ空気の晴天に恵まれる。一方で低気圧が訪れる度に大陸からは冷たい空気が吹き込み、徐々に気温が低下していく。
11月に入ると、シベリア高気圧が日本付近に強く影響を及ぼすようになり、時折西高東低の冬型気圧配置が見られるようになる。北から吹き込む強い風は木枯らしと呼ばれ、日本海側では時雨や雪を降らせ、太平洋側では乾いた空っ風が吹く。木枯らしが吹くようになると、気象的には冬の訪れである。
- 秋の空は高いことになっている。いわし雲、うろこ雲
- 台風シーズン:二百十日(立春から数えて210日目)
- 秋の長雨・時雨(しぐれ:秋後半の雨)
- 月見:中秋の名月(旧暦8月15日)、後の月(旧暦9月13日)
- 秋の七草
- ヒガンバナ、菊、コスモス、キンモクセイ
- 紅葉
- 鳴く虫・スズムシ・マツムシ・コオロギ
[編集] 旬:秋の味覚
[編集] 言葉
[編集] ことわざ
- 天高く馬肥ゆる秋
- 秋風が吹く
- 秋を吹かす
- 一日三秋
- 一日千秋
- 一刻千秋
- 千秋晩成
- 春秋の争い
- 春秋に富む
- 春秋高し
- 物言えば唇寒し秋の風
- 一葉落ちて天下の秋を知る
- 秋の夜と男の心は七度変わる
- 暑さ寒さも彼岸まで
- 女心と秋の空(関連:「男心と春の空」)
- 秋の日は釣瓶(つるべ)落とし:日がどんどん短くなっていく実感がこもる
- 秋茄子嫁に食わすな;秋サバは嫁に食わすな
- 「秋ナス-」は身体が冷えるから食べさせるなと言う意味と、うまいものだから嫁に食わせるのはもったいないという意味と二通り伝えられている。また、元来は嫁ではなく夜目であり、ネズミを指したとの説もある。
- 秋の扇
- 秋の鹿は笛に寄る
- 柿が赤らむと医者が青くなる、サンマが出るとあんまが引込む
- いずれも旬のおいしいものを食べると健康になるという意味
[編集] 和歌
小倉百人一首より
- 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ(第1番:天智天皇)
- (解釈) 秋、田に実った稲の穂を刈る季節――田の側の掘っ建て小屋は屋根の苫の目が荒いから、私の袖は落ちてくる露でぬれ続けていることだよ。
- 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき(第5番:猿丸大夫)
- (解釈) 山の奥深くで、積もったもみじを踏み分けて妻を恋い慕って憐れに鳴いている鹿の声を聞くときには、何にもまして秋が悲しく感じられる。
- み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣打つなり(第94番:参議雅経)
- (解釈) 吉野の山から冷たい秋風が吹き降ろし、夜も更けて、かつて都であったこの吉野の里は更に寒くなり、砧で衣を打つ音が寒々と聞こえてくることだよ。
[編集] 三夕
三夕(さんせき)とは、下の句が「秋の夕暮れ」で終わる有名な三つの句のこと。
- 寂しさは その色としも なかりけり 槙立つ山の 秋の夕暮れ (寂蓮法師)
- 心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ (西行法師)
- 見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ (藤原定家)
[編集] 歌
唱歌
[編集] 実りの秋
実りの秋から転じて、季節に関わらず収穫時期を秋と呼ぶことがある。