サンスクリット
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サンスクリット संस्कृतम् [saṃskṛta] |
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話される国 | アジア |
地域 | インドと南アジア・東南アジアの諸国 |
話者数 | 6106人 (1981 census). 第二言語話者:19万4433人 (1961 census) |
順位 | 100位以下 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 インド・イラン語派 インド・アーリア語 サンスクリット |
公的地位 | |
公用語 | インド |
統制機関 | |
言語コード | |
ISO 639-1 | sa |
ISO 639-2 | san |
ISO/DIS 639-3 | |
SIL | SKT |
サンスクリット (Sanskrit、संस्कृत) は、古代・中世に、インド亜大陸において公用語として用いられていた言語である。現在のインドの公用語の一つでもあるが、古典言語であるため現在日常語としての話者はほとんどいない。
日本では、一般には言語であることを明示してサンスクリット語と呼ばれる。
また、古くは梵語(ブラフマンの言葉)とも呼ばれた。
目次 |
[編集] 言語としてのサンスクリット
[編集] 歴史
インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)・インド・イラン(アーリア)語派に属し、狭義には紀元前5世紀~紀元前4世紀にパーニニがその文法を規定し、その学統によって整備された古典サンスクリット(古典梵語)のことを指す。
広義には、リグ=ヴェーダ(最古部は紀元前1500年頃)に用いられていた言葉にまで溯り、後の時代の、仏典などが記された仏教混交サンスクリットをも含む。
そのように古典時代から広く使われて多くの文献を残しているため、サンスクリットは、ヨーロッパで古典学術用語として栄えたラテン語・ギリシア語とともに「三大古典印欧語」と称されることもある。 同じインド・イラン(アーリア)語派に属する古典語であるアヴェスター語とは非常に類似している。
釈迦の時代など日常の生活においてインド各地の地方口語(プラークリットと呼ばれる。パーリ語など)が一般に用いられるようになって以降も、サンスクリットは逆に公用語として普及し、宗教(例:ヒンドゥー教・仏教)・学術・文学等の分野で幅広く長い期間に渡って用いられた。
サンスクリットはプラークリットと共に近代インド亜大陸の諸言語にも大きな影響を与えた言語であり、この二つの古典語はヒンドゥスターニー語などの北インドの現代語の祖語であるのみならず、ドラヴィダ語族に属する南インド諸語に対しても借用語などを通じて多大な影響を与えた。さらには東南アジアの多くの言語や、東アジアの言語にも影響を与えた。
但し近代インドの諸言語では、特に北部インドのインド語派の言語を中心に高級語彙の供給元の言語としてサンスクリットだけでなくインドのイスラーム化と同時に導入されたアラビア語、ペルシア語も広範囲で機能している。そのため純正なサンスクリット系語彙がインド語派に属する系統的に近いヒンドゥスターニー語などでは失われ、却って系統的に遠い南インドのドラヴィダ諸語の中に保存されているというねじれた事態も少なくない。
サンスクリットを公用語としたことがわかっている王朝
13世紀以降のイスラム王朝支配の時代(アラビア語、ペルシア語の時代)~ヒンドゥスターニー語(→ウルドゥー語、ヒンディー語)の時代、大英帝国支配による英語の時代を経てその地位は相当に低下するが、実は今でも知識階級において習得する人も多く、学問や宗教の場で現代まで生き続けている。
[編集] 発音と文法
サンスクリットの表記には時代・地域によって多様な文字が使用された。例えば日本では伝統的に悉曇文字(いわゆる『梵字』)が使われてきたし、南インドではグランタ文字による筆記が、その使用者は少なくなったものの現在も伝えられている。
ここでは最も一般的なデーヴァナーガリー文字を用いることとする。
अ a | आ aa | इ i | ई ii | उ u | ऊ uu | ऋ R | ॠ RR |
ऌ L | ॡ LL | ए e | ऐ ai | ओ o | औ au | अं aM | अः aH |
- 記号は標準的でないが、Wikipedia 日本版では一応この正書法をとる(京都・ハーバード方式)。
無声・無気 | 無声・帯気 | 有声・無気 | 有声・帯気 | 鼻音 | |
軟口蓋音 | क ka | ख kha | ग ga | घ gha | ङ Ga |
硬口蓋音 | च ca | छ cha | ज ja | झ jha | ञ Ja |
反舌音 | ट Ta | ठ Tha | ड Da | ढ Dha | ण Na |
歯音 | त ta | थ tha | द da | ध dha | न na |
舌音 | प pa | फ pha | ब ba | भ bha | म ma |
半母音 | य ya | र ra | ल la | व va | |
歯擦音 | श za | ष Sa | स sa | ||
気音 | ह ha |
[編集] 文法
名詞は男性、女性、中性に分かれ、単数、両数(双数、dual)、複数の区別と格に応じて曲用する。格は主格、呼格(よびかけ)、対格、具格(…によって)、為格(…の為に)、奪格(…から)、属格(…の、に属する)、処格(…で、において)の八つある。つまり、一つの名詞は24通りの曲用を考えうる。
曲用は規則的なものに限っても性・語幹の末尾によって多くの場合に分かれ、複雑である。
動詞の活用は、動詞の種類によって伝統的に10種に分けられている。注記すべきこととして、能動態と受動態の他に、反射態という、行為者自身のために行われることを表す態が存在する。これはギリシア語の中態に相当する。また、アオリスト相も存在する。
[編集] 著名な文学・哲学・宗教文献
- ヴェーダ関係(シュルティ、天啓文学)
- 叙事詩関係
- マハーバーラタ
- バガヴァッド・ギーター
- ナラ王物語
- ハリ・ヴァンシャ
- ラーマーヤナ
- マハーバーラタ
- ダルマ・シャーストラ関係
- マヌ法典
- ヤージュニャヴァルキヤ法典
- アルタ・シャーストラ(実利論)
- カーマ・スートラ
- ナーティヤ・シャーストラ(演劇論)
- ヴァーストゥ・シャーストラ(建築論)
- 哲学関係
- ヴァイシェーシカ・スートラ
- ヨーガ・スートラ
- ニヤーヤ・スートラ
- ミーマーンサー・スートラ
- ブラフマ・スートラ
- サルヴァ・ダルシャナ・サングラーハ(全哲学綱要)
- カーリダーサによる戯曲
- その他仏教文献(般若経、法華経など。ただし、インド仏教の衰滅に伴い散逸してしまったものも多く、チベット語訳や漢語訳にしか残っていないものが多い。)
[編集] 梵語 - 仏教での伝播、日本での一般認識
仏教では最初、ヴェーダ文献の聖性を否定し、より民衆に近い水準の言葉で文献が書かれたため、サンスクリットが使われることはなかったが、大体紀元の前後を境にして徐々にサンスクリットが取り入れられ、仏教の各国への伝播とともに、サンスクリットも東アジアの多くの国々へ伝えられた。
サンスクリットの日本への伝来は非常に古く、すくなくとも真言宗の開祖空海まではさかのぼれる。日本におけるサンスクリットの文字は、一般的なデーヴァナーガリーとは多少異なる悉曇(しったん、シッダーム)文字である。
日本語の五十音の配列は、サンスクリットの音韻学の影響を受けているという説が有力である。
日本語のうちで仏教用語に当たるものの多くはサンスクリット語源であり("僧"、"和尚"、南無阿弥陀仏"、"卒塔婆"など無数にある)、"檀那(旦那)"、"嚏"など多少日常語化しているものもある。
また、経典のうち、陀羅尼(だらに、ダーラニー)、真言(マントラ)は漢訳されず、サンスクリットを音写した漢字で表記され、サンスクリット音のまま直接読誦される。陀羅尼は現代日本のいくつかの文学作品にも登場する(泉鏡花「高野聖」など)。
[編集] 印欧語族としてのサンスクリット
サンスクリットにおける最も重要な特徴の一つとして、印欧祖語に起源を持つことが挙げられる。印欧祖語に起源を持つことから、印欧語族に属するギリシア語、ラテン語、ペルシア語、フランス語、英語などと共通の語源を持つ語を見つけることができる。1876年にウイリアム・ジョーンズがこの点を指摘した事から、類似言語の共通の祖先を研究する、比較言語学が始まった。
また極僅かながら、仏教を通じて日本語に借用された語も存在する。下の例は旦那とdonorが、日英同根であることの説明である。
(例)
- 日:旦那<梵:dāna(布施)
- 英:donor(提供者)<羅:dona(与える)
- dānaとdonaは共通祖語に起源を持つ語である。
[編集] 関連項目
[編集] インド・アーリヤ語派
[編集] ドラヴィダ語族
[編集] 外部リンク
- サンスクリット - ここの説明がもっとも詳しく専門的である。
- 梵楽庵
- Apte Sanskrit Dictionary Search
- 梵字の字形と発音 Bonji Character&Pronunciation