北陸新幹線
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北陸新幹線(ほくりくしんかんせん)とは、北陸地方を経由して、東京都と大阪市とを結ぶ整備新幹線である。1997年に東京駅から長野駅まで開業しており、便宜的に長野新幹線と呼ばれている。
現在は長野~上越~富山~(石動)~金沢~白山総合車両基地間がフル規格で建設中である(富山~石動、金沢~白山総合車両基地は2005年度新規着工)。そのため、未だに首都圏から北陸方面へは上越新幹線越後湯沢駅乗り換え北越急行経由(金沢以東)、または東海道新幹線米原駅乗り換え(金沢以西)の方が速いが、2014年度に予定されている建設中の区間の開業後は首都圏・北陸間の所要時間短縮が見込まれている。
なお、JR線路名称公告および『鉄道要覧』記載上の北陸新幹線は高崎~長野間117.4kmとなっており、高崎駅を起点としている。JR線路名称公告において各新幹線は並行する在来線の線増という位置付けとなっていたが、北陸新幹線の場合は並行在来線である信越本線の一部が廃止(横川~軽井沢間)および第三セクターに転換(軽井沢~篠ノ井間)されたために独立した路線とされ、「北陸新幹線」が正式な路線名称となった。
目次 |
[編集] 概要
- 営業主体 東日本旅客鉄道(東京~上越)、西日本旅客鉄道(上越~新大阪)
- 建設主体 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
- 軌間 1435mm
- 電化方式 AC25,000V(50/60Hz)(周波数は軽井沢で変わる)
- 最高速度 260km/h(予定)
[編集] 主な構造物
[編集] 橋梁
- 黒部川橋梁 長さ:761m
- 第五千曲川橋梁 長さ:747m
- 姫川橋梁 長さ:436m
[編集] トンネル
- 飯山トンネル 長さ:22,225m
- 新親不知トンネル 長さ:7,734m
- 朝日トンネル 長さ:7,549m
- 峰山トンネル 長さ:7,090m
[編集] 沿革
1967年に北回り新幹線建設促進同盟会が発足し、長野から白馬方面を目指し、北アルプスを貫いて長野~富山間を直線で結ぶ構想を打ち出した。これは、北陸地区の活性化と将来逼迫する東海道新幹線の代替交通機関を目的としていた。
昭和40年代の初め、大蔵省に「北回り新幹線建設」のビッグプロジェクトを推進する空気が流れ始めていた。1970年には全国新幹線鉄道整備法が制定され、1972年6月29日、東京都~大阪市間を高崎・長野・富山・金沢経由で結ぶ「北陸新幹線」として基本計画が決定。翌年には整備計画決定及び建設の指示がなされた。
しかし、上越新幹線、東北新幹線、成田新幹線が先に建設されることが決定し、北陸新幹線の建設は後回しとなった。その後も、北陸新幹線建設案は出るが、ルートは北アルプスを貫くトンネルが難工事になると予想されたことから、飯山市・上越市・糸魚川市を経由する構想に変わった。そのため東海道新幹線の代替交通機関としての意義は薄れることになったが、東海道新幹線が何らかの影響で麻痺した際の代替機関としての役目は果たせる。 そして、国鉄の緊縮財政やオイルショックの影響で北陸新幹線の建設は凍結され工事は遅々として進まなかった。
1987年、整備新幹線建設凍結解除が閣議決定された。当初、建設費が膨大になることから高崎~小松間を先行建設し、その後小松~大阪間を建設する計画であったが、1988年に運輸省が建設区間を長野で分ける案を示した。高崎~長野間のうち軽井沢~長野間をミニ新幹線とし、糸魚川~魚津間、高岡~金沢間は構造物を新幹線と同じ規格で建設し、線路を在来線と同じ軌間にするスーパー特急方式とするものだった。
その後、長野オリンピックの開催が決定したことから、軽井沢~長野間もフル規格で建設することが決まり、1997年10月1日高崎~長野間が長野行新幹線(後に長野新幹線となる)の名で開業した。
また、スーパー特急方式で着工するとされた高岡~金沢間は、富山県内の沿線自治体が並行在来線となる北陸本線・石動~高岡間の経営分離に反対したため、新高岡~金沢間の基本ルートを変更した上で、着工区間が石動~金沢間に変更された。その際、既に難工事区間として先行着工された加越トンネルはルート変更により不要となり、既に投入された建設費は富山県が負担することになった。
1998年3月には長野~上越間の工事実施計画が認可され、着工された。
2000年末の政府・与党申合せで富山までのフル規格での建設が決まる。この時森喜朗首相・綿貫民輔衆議院議長の我田引鉄問題が浮上した。
富山以西のフル規格化の動きが出てきたところで、その後、石動~金沢がこれ以上工事を進めるとスーパー特急方式として完成してしまうところまで来たことから工事を一時中断。
2004年末には富山駅から石川県白山市の白山総合車両基地間まで(ただし、旅客営業は途中の金沢駅まで)のフル規格での整備が認可され、2005年6月4日に着工された。
[編集] 今後の見通し
[編集] 長野~白山車両基地
現在建設中の長野~白山総合車両基地間は2014年度中(前倒しの可能性有)に一括開業される予定である。
(石動)~金沢間、新黒部~糸魚川間はトンネルを含めほぼ路盤が完成している。全体の進捗率は2005年で40%を超える。また区間最長である飯山トンネル(全長22,225m)も掘削率が9割を超えているが、地質がもろく2003年に発生した土砂流出事故の影響などもあり2004年末に貫通予定だったのが大幅に遅れ、現状では2007年完成見込みである。
国土交通省の試算では、富山~金沢の開業30年後の収支改善効果は約80億円と3区間(北陸、北海道、長崎)ではトップで、経済効果は開業50年後には北海道に次ぐ約6500億円(富山~金沢間のみ)となっている。
この区間全体の収支改善効果は、西日本旅客鉄道(JR西日本)が営業主体となる上越~金沢間では年間325億円、東日本旅客鉄道(JR東日本)が営業主体となる長野~上越間は同80億円と試算されているが、他社区間である上越~金沢間に乗り入れることによるJR東日本の収益増加(いわゆる「根元受益」)が年間390億円にも達することから、政府・与党ではこの分についても負担を求めるとしているが、JR東日本は難色を示している。
なお、整備新幹線としての北陸新幹線の起点は東京駅であるが、東京駅~大宮駅は東北新幹線、大宮駅~高崎駅は上越新幹線と共用している。東京駅から上越駅(仮称)まではJR東日本が、上越駅から富山・金沢方面はJR西日本が営業運転することとなっているが、現在の新大阪駅のように運行する全列車を停車させて乗務員を交代できるか、などといった具体的な運行形態は未定である。
一方、並行在来線である北陸本線金沢~直江津間、信越本線長野~直江津間は経営分離されることになっている。具体的な事業主体は未定。
[編集] 白山車両基地~敦賀
白山総合車両基地~南越間は日本鉄道建設公団、南越~敦賀間は鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって着工申請済みであるが、現時点では福井駅周辺を除いて国土交通省の認可は下りていない。
福井駅については新幹線規格で路盤のみ整備して、2008年度末に完成する予定である。これは2005年春に北陸本線福井駅周辺の高架化が完了し、まだ地上に残されているえちぜん鉄道を高架化するため暫定的に新幹線ホームに乗り入れる形にしたからである(以前の計画ではえちぜん鉄道が2階、新幹線が3階の二重高架となる予定であった)。
なお、新幹線が福井まで延長された際には、新幹線ホームは新八代駅のようにホームの反対側で在来線特急に乗り換え可能な構造とし、えちぜん鉄道は現北陸本線上りホームの北半分を使用する予定である。 また県は九頭竜川に架かる県道と一体型の橋の先行整備を進めていて、周辺の区画整備で新幹線用の土地も確保してある。
[編集] 敦賀以西
敦賀から大阪(新大阪)へのルートに関しては未決定であるが、政府・与党では次の3案が検討されている。
- 若狭ルート 敦賀駅から小浜線沿いに進み小浜駅から西京都(亀岡駅)を経由して新大阪駅(大阪駅発着の可能性あり)へ行くルート(整備計画決定の際に主な経由地として「小浜市付近」が盛り込まれたことから、地図等ではこのルートで表記されることが多い)。小浜~亀岡間は未成線の小鶴線(小浜駅~殿田駅=現・日吉駅)に近いルートである。
- 米原ルート 敦賀駅から北陸本線沿いに進み米原駅で東海道新幹線に接続するルート(基本計画線の北陸・中京新幹線と大半が重複する)。
- 湖西線利用 敦賀駅以西は新線を建設せず、湖西線を改軌してミニ新幹線、または敦賀駅に軌間変更設備を設けてフリーゲージトレインで京都・大阪方面に直通する。
沿線の福井県では、小浜駅を通る若狭ルートを望ましいとしていたが、新大阪まで新線を建設することから建設費が巨額となる上に、京都や名古屋方面に直通できないというデメリットもあり、建設費が低廉で東海道新幹線乗り入れにより直通可能な米原ルートやフリーゲージトレインによる湖西線利用を推す声が各方面から挙がるようになった。ただし若狭ルートにする場合、最も時間短縮効果が望めるのはもちろんのこと、結果的に東京までの所要時間も想定では3時間半程度で、更なる高速走行が可能になったり、東京~大宮の速度制限が解決すれば更なる高速化が望め、やり方によっては十分需要を見込める区間となるため、費用対効果は高いという主張もある。(北関東~近畿圏の需要だけでも東海道新幹線全体のパイが大きいため相当なものになると推測される)
近年、国鉄OBの野沢太三元法相(自民党整備新幹線等鉄道基本問題調査会顧問。現在国会議員は引退)や森前首相(自民党整備新幹線建設促進議連会長)など、政治家レベルで米原ルートが望ましいとする発言が相次いでいるが、東海道新幹線を保有するJR東海は乗り入れ先となる東海道新幹線の線路容量、沿線の滋賀県は費用負担や並行在来線分離を理由に消極的な態度を取っているのがネックとなっている。仮に米原ルートの場合、既に過密ダイヤ状態の米原~新大阪間の線路容量の問題(その解決の為に米原駅-新大阪駅間を複々線化にするにしても、都市部を中心に土地買収の困難さや建設費などの問題がネックとなるとの見方が強い)から米原折り返しの列車が多く設定されるとの見方がある。
また、湖西線を活用する案でも湖西線の曲線を改良しなければ160km/hでの運転が精一杯(局所的に200km/hでの運転も可能であるが)で、現在の「サンダーバード」・新快速に比べて余り時間短縮効果が望めず、現状でも比良山系からの「比良おろし」による徐行や運休も時折発生している事や、ホームドアなど安全投資も必要であり決して安価な方策とも言えず、更に現状の湖西線堅田駅以南は普通電車が昼間時に毎時4本運転されている事や、京都駅~新大阪駅間も東海道新幹線・JR京都線とも過密状態であり、両線への乗り入れも事実上困難であるため、京都駅で打ち切る案も存在する。また敦賀駅での軌間変更は時間がかかるので、フリーゲージトレイン導入より、同駅でサンダーバードか新快速に乗り換えてもらうほうがよいとの声もある。
また、まず認可申請済みの南越までの着工認可を優先し、敦賀以西のルート決定は後回しとしていた福井県の姿勢に対して、大阪までのルートが確定していないことが福井県内への延長の障害となっているとの指摘も出ていることから、ようやくルート決定に向けて関係する滋賀・京都・大阪の各府県と協議を開始することになった。
2005年12月に鉄道建設・運輸施設整備支援機構が国土交通省に認可申請した南越~敦賀間の工事実施計画では、敦賀駅の新幹線ホームは、在来線ホームから南東に80mずれた地点に設置され、若狭ルートを前提とした配線となっているが、他の2ルートに決定した場合でも大きな手戻り工事が発生しないよう配慮されている。
[編集] 駅と接続路線
- (長野駅までの開通区間は長野新幹線を参照)
- 長野駅:信越本線・長野電鉄長野線 - 長野県長野市
- 飯山駅:飯山線 - 長野県飯山市
- 上越駅(仮称):信越本線(現:脇野田駅) - 新潟県上越市
- 糸魚川駅:北陸本線・大糸線 - 新潟県糸魚川市
- 新黒部駅(仮称):富山地方鉄道本線(新駅設置予定) - 富山県黒部市
- 富山駅:北陸本線・高山本線・富山ライトレール富山港線・富山地方鉄道本線 - 富山県富山市
- 新高岡駅(仮称):城端線(新駅設置予定) - 富山県高岡市
- 金沢駅:北陸本線・(七尾線)・北陸鉄道浅野川線 - 石川県金沢市
- 白山総合車両基地 - 石川県白山市(旧松任市域)
- 小松駅:北陸本線 - 石川県小松市
- 加賀温泉駅:北陸本線 - 石川県加賀市
- 芦原温泉駅:北陸本線 - 福井県あわら市
- 福井駅:北陸本線・えちぜん鉄道勝山永平寺線 - 福井県福井市
- 南越駅(仮称):(接続路線なし、予定地は北陸自動車道武生インターチェンジ付近) - 福井県越前市
- 敦賀駅:北陸本線・小浜線 - 福井県敦賀市
- (敦賀駅以西はルート未決定。「敦賀以西」の項を参照)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 北陸新幹線建設促進同盟会
- 北陸新幹線ニュースレター(長野県)
- 北陸新幹線 長野~富山間延伸工事の様子
- 上越市都市整備部新幹線建設対策課
- 新幹線駅周辺整備室(飯山市)
- 未来を拓く北陸新幹線(富山県)
- 石川県北陸新幹線
- 福井県総合政策部新幹線建設推進課
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