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新幹線100系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

第26回(1986年
ローレル賞受賞車両

カテゴリ / テンプレート

新幹線100系電車(しんかんせん100けいでんしゃ)とは、東海道山陽新幹線の二世代目の車両である。

新幹線100系電車
(1999年1月15日 米原駅)
1999年1月15日 米原駅
両数 4・6両
起動加速度 1.6km/h/s
営業最高速度 230(V編成)/220(V編成以外)km/h
設計最高速度
減速度
車両定員
編成定員 X編成:1,153名(普)+124名(グ)=1,277名

G編成:1,153名(普)+168名(グ)=1,321名
V編成:1,159名(普)+126名(グ)=1,285名

全長 26050(25000)mm
全幅 3380mm
全高 3970(4488)mm
車両重量
編成重量 838.5t(X)851.8t(V)839.2t(G)
軌間 1435mm
電気方式 交流25000V 60Hz
駆動装置
モーター出力
編成出力 230kW×48=11,040kW
歯車比
制御装置 サイリスタ位相制御
ブレーキ方式 発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(付随車:渦電流ブレーキ)
保安装置
備考

Template(ノート 解説)鉄道PJ

目次

[編集] 概要

1964年東海道新幹線開業から製造していた0系は、開業当時から運用されている車両において、列車同士のすれ違いで生ずる高圧空気による金属疲労が発生し、これにより気密構造を維持できなくなってきたほか、数々の経年不良が相次いで見つかった。初の新幹線車両であったので、在来線車両より早く老朽化が進行する事態は設計当初には予期できなかったことである。日本国有鉄道(国鉄)は0系を廃車にする基準を製造後13年とし、古い0系を新たに製造した0系で置き換えることが数年続いた。

0系は何度かマイナーチェンジはされているものの、基本となるデザイン・内装は1964年の製造当初のままであったために旅客から車両の陳腐化と映り、また技術が進化するとともに新幹線車両に起こりうる事象がある程度把握できたこともあり、100系はこれらを改善するために、主に内装を中心にモデルチェンジを行い、1985年10月から1991年度まで合計1,056両が製造・投入された。内装や技術面で、これ以降新製される新幹線車両に搭載される設備・技術も数多い。

しかし、時代の高速化の波は急速に進み、性能的に0系と大差ないレベルの100系は高速ダイヤに対応する事が出来ず(特に東海道区間においては、線路容量ぎりぎりのダイヤのため、低速車両の混在はいわゆる平行ダイヤを組むことにつながり、全体の速度を下げる結果になっていた)、車両自体の寿命を迎える前に大量淘汰を受ける事になってしまった。

東海道新幹線においては2003年10月1日ダイヤ改正で同線内の列車を全て最高速度270km/hにすることが決まり、2003年9月16日の「ひかり309号」(東京→新大阪、G49編成)を最後に東海道新幹線から引退した。また山陽新幹線からも、前日の15日の「ひかり556号」(博多→新大阪、G2編成)を最後に16両編成は引退している。ただし、10月9日に代替編成としてG7編成が運用されており、16両編成の最後の営業運転は「こだま557号」(広島→博多、G7編成)となった。

現在では、山陽新幹線において4~6両の短編成にした上で、0系の最後の生き残り編成と共にこだま用車両として運用に就いている。

100系は0系のモデルチェンジ車であるので、ここでは主に0系との相違点を中心に述べる。

[編集] 車両外観

0系との最大の違いは、そのフロントマスクと2階建車両の存在である。フロントマスクは、騒音と空気抵抗の低減を図るために、鋭角にした前頭部から徐々に断面積を大きくしてゆく「流線型」とし、前照灯内のライト配置を0系の縦2灯から横2灯に変更して、横に細長い形に変えた。なお、試作車は前照灯に5度の角度がついているためツリ目形状であったが、量産車は水平になっている。これらの形状から「シャークノーズ」とも呼ばれる。前照灯の間にある中央の丸い部分は、非常用の連結器が入っている。足元はスカートで覆われ、内部には何重ものアルミ板を重ねた排障器がある。また、車内空調の室外機を天井車端に一括配置した。車体は0系と同じく鋼製である。窓は広窓であるが、試作車のX0(後のX1)編成のみ狭窓である。

国鉄時代には「New Shinkansen」の愛称を与えられ、2階建車両の車体にこれを意匠した赤色のマーク(NSマーク)が付いていたが、JR移行後は、代わりにJRマークがついた。 なお、東海旅客鉄道(JR東海)車については、後に1,8,15号車の車番脇にJR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色(JR西日本へ譲渡された編成は青色)の小さなJRマークに張り替えられた。西日本旅客鉄道(JR西日本)車(100系3000番台・グランドひかり)は同じく1,15号車のトイレ区画、8号車のNSマークが標記されていたところに特大のJRマークが貼られていた。

[編集] 台車

電動車台車はDT202、付随車台車はTR7000と呼び(いずれもJR西日本の場合は頭に「W」を付す)、0系と同等のものを履く。

ブレーキは、電動車は0系と同じく発電ブレーキを高速域での減速に使い、低速域では空気ブレーキを使う。今回、新幹線で初めて設定された付随車のブレーキには、初めて渦電流ブレーキを設置した。これは、以降新製された東海道・山陽新幹線の新幹線車両のうち付随車の存在する300系700系に搭載された。

IS式軸箱支持装置、枕バネの採用は0系と同じである。

[編集] 電源・制御・列車無線機器

電源を得るパンタグラフは、0系では各ユニットに1つ設置されており、16両で8丁のパンタグラフを掲げていたため、これも騒音源となっていた。100系では、当初は各電動車ユニット毎にパンタグラフがあった(16両で6丁)が、1991年の東海道新幹線のATき電化により、パンタグラフを16両で3丁に半減できた。これは、パンタグラフのないユニットへの主電動機への電力供給を天井に這わせた高圧ケーブルにより送る新たな方法によって可能となり、これをよくブス引通しと呼ぶ。この方法は以降新製される新幹線車両で、パンタグラフを減らす方法として全車両に採用されている。

力行制御は、0系のタップ切替に変え、半導体素子を用いた「サイリスタ位相制御」である。これは200系から採用されたものであるが積雪時の空転に対する配慮が不要なため素子数を減らした(100系:等4分割、200系:不等6分割)ものが採用されている。主電動機は直流直巻式であるが、0系のものに比べて軽量で高出力となった。また、床下機器の冷却方法が0系の自己通風式から強制通風式となり、冷却用のファンが搭載された。

主に制御機器・主電動機の軽量化・高性能化により、0系では16両全車が電動車であったものを、16両中4両が付随車となった。モーターの高出力化により、電動車を4両減らしても0系と同等の出力(16両の編成出力:0系=11840kW、100系X編成=11040kW)を得ることができる。

床下機器を収納する簡易ふさぎ板が設けられた。これは、床下の平滑化による騒音の低減と着雪障害の防止のためである。

列車無線装置についてもバージョンアップされ、0系で使用していたVHFによる無線に変え、線路のそばに張った漏洩同軸ケーブル(LCX)に流れた情報を先頭車の足元に設置されたアンテナが受信して通信をやり取りするものを新たに設置し、JR化後の1989年3月から(山陽区間は2000年3月から岡山まで、2004年3月から全線)本格運用を始めた。回線数が大幅に増えたことから、車内公衆電話の設置数が2両に1つと大幅に増やすことができた。また、それまでは車内からかけるときにオペレータを通し、なおかつ沿線の都市にしかかけることができなかったが、これにより全国へのダイヤル通話ができるようになった。一方で、新幹線を撮る写真家にとっては、LCXは新たな邪魔者となった。

また、全体で点検作業の効率化のため、機器の配置見直しなどが行われ、保守の省力化を図っている。

[編集] 内装

0系に比べると乗り心地や快適性が大幅に改善された。2階建車両が新幹線で初めて連結され、0系にはない多様なアコモデーションを可能にした(2階建車両の内装・設備は各車の概要を参照)。また、普通車のシートピッチを0系の98cmから104cmに広げ、回転・リクライニング可能な3列シートを採用した。また、車内は暖色系の色彩でまとめられ、暖かみのある車内という印象がつく。

旅客向けの新しいサービスとして、

  • 車内でのミュージックサービスとNHKラジオの再送信を始めた。普通車では手持ちのFMラジオ(東海道区間のみ車内販売で買うことができる)で、グリーン車内では備え付けのイヤホンで聞くことができる。このサービスは、以降新製される東海道・山陽新幹線の16両編成の全車両に装備されている。
  • 車内にLED式(単色、V編成は2色)の電光掲示板が設置された。電光掲示板の上部にはデジタル式の時計、右側に次の停車駅までの距離をデジタルで表示する装置がつき(残り距離表示は当初は15km手前からだったが、電光ニュースが表示されるようになってからは停車駅到着予告のアナウンス後・5km手前から)、通常走行時はLCXから送られてきたニュースを表示した(東海道新幹線内は1989年3月<V編成・山陽新幹線内では2000年3月>から)。X編成では当初速度表示もなされていたが後に取り止めとなっている。電光掲示板の文字が小さいというクレームがあり、G32~G50編成では電光掲示板の文字を大きくし、時計と距離表示は省略された。後者の電光掲示板は、以降の全ての新幹線車両に標準搭載されている。
  • V編成(通称:グランドひかり)のグリーン車には座席毎に液晶モニターが設置され、山陽新幹線内でTVの視聴ができた。

[編集] 各車の概要

[編集] X編成

100系の食堂車168-9001(一般公開時に撮影)
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100系の食堂車168-9001(一般公開時に撮影)

1985年に新製された100系初の編成。先頭車と2階建車両各2両が付随車であり、2階建車両は8号車と9号車に組み込まれ、8号車は食堂車、9号車は、階上がグリーン車・階下がグリーン個室となっている。前述の通り、試作車であるX1編成(車両番号は9000番台)は小窓だったが、量産車は大窓になった。グリーン個室は1人用5室、2人用3室、3人用1室である。登場時には10号車(116-9000)の博多寄りにも個室(1人用2室・2人用1室)が設置されていたが、量産車との設備統一を目的として1986年に一般客室に改造された。

1985年10月に営業運転開始。運用は東京-博多間の「ひかり」を中心に使われていたが、1998年以降は東海道新幹線の「こだま」にも使われていた。1999年9月に0系Yk編成の後を追うように定期列車の運用から離脱し、そのまま全車廃車となった。

  • 定員:1277人(普通車1153人・グリーン車110人・グリーン個室14人)
  • 製造両数:7編成112両
  • 最高速度:220km/h
  • 製造時期:1985年1986年
  • JR東海浜松工場に、先頭車両123-1(量産車、X2編成1号車)と食堂車168-9001(試作車、X1編成8号車)が保管されている。

[編集] G編成

100'系末期のカフェテリア
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100'系末期のカフェテリア
100'系末期のカフェテリア
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100'系末期のカフェテリア

JR化後、JR東海が1987年から製造した編成で、部内で「100'(ダッシュ)系」と呼ばれる。車両番号のハイフン以下の数字はX編成からの通し番号だった。X編成と同じく先頭車と2階建車両(8号車と9号車に組み込み)各2両が付随車であり、2階建車両のうち9号車はX編成と同じくグリーン車とグリーン個室であるが、ひかりへの高需要のため、8号車については食堂車の設定をやめ、階上にグリーン車・階下にカフェテリアを設け、グリーン車の定員を増やした。グリーン個室はX編成の個室設定のうち、多人数利用の需要から、1人用2室を4人用1室に変更した(=1人用3室、2人用3室、3人用・4人用各1室)。JR東海が発注した車両のうち、G1~G7の7編成112両がJR西日本へ移籍した。

最初は東京~新大阪間の「ひかり」に使われていたが、増備が進むにつれて運転区間が拡大した(ただし、「のぞみ」の運転が開始された1992年3月以前は、原則的に広島以西に入ることはなかった)。東京~博多間の「ひかり」はX編成やV編成などを使用していたため本数が少なかったが、X編成が「こだま」へ転用されたために本数が増えた。一方では300系の増備と0系の廃車が進んだために1995年ごろから「こだま」にも使われていた。

  • 定員:1321人(普通車1153人・グリーン車152人・グリーン個室16人)
  • 製造両数:50編成・800両
  • 最高速度:220km/h
  • 製造時期:1987年1991年

[編集] V編成

グランドひかり食堂車
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グランドひかり食堂車

JR化後、JR西日本が1989年から製造した編成で、部内で「100N系」と呼ばれ、「グランドひかり」の愛称を持つ。X・G編成とは大きく異なる点が多い。

  • 付随車を2階建車両4両に充てた。2階建車両は7~10号車に組み込まれ、7・9・10号車の3両は、階上をグリーン車・階下を4列席の普通車指定席とした。階下の普通車指定席はビジネスマンなどから窓口で指定された。また、東京~博多間の長距離を運転することが基本であったことから、8号車はX編成と同じく食堂車とした。

食堂車が0系・100系全てで8号車となっている。これは、食堂車が出す汚水を地上で集めるための排水溝が名古屋駅・岡山駅の8号車停車位置付近に設置されたためである。

山陽新幹線全線開業当時は、東京~博多を6時間以上かけて走行する「ひかり」でも食堂車を営業することが決定し、また開業当初はビジネスマンや長距離旅客らが頻繁に食堂車を利用することが予想できた。必然的に食器を洗うための水が大量に必要となる。在来線であれば汚水は走行中の車内から外へ捨てればよかった(現在は在来線でも環境面の問題から循環式の汚水処理装置等を利用している例が殆どである)が、全線が都市に沿う新幹線ではそのようなことはできない。トイレでは汚水を浄化し再びトイレの水として再利用するシステムが開発されたが、食堂車では当然、汚水を浄化して再利用するシステムを利用できない。
この結果、汚水を床下のタンクに溜め込み、途中駅の停車中にタンクから汚水を排水することにし、この汚水を地上で集めるための排水溝(ピット)が8号車の真下に設置されたために、食堂車は8号車に固定されたのである。

  • 非常連結器の下に、空気取り入れ口がついている。これは、先頭車が電動車となったため、主電動機を冷却するためのものである。中間M車は床下から冷却風を取り入れていたが、制御車ではスカートがあり冷却風が床下に入ってきにくいため鼻の下から冷却風をとりいれることになった。
  • 出入口に設置してある行先表示器を方向幕からLED(3色)式に変更し、停車駅表示などを可能にした。これは、JR西日本独自仕様として、これ以降新製されるJR西日本の全車両(300系とキハ120形などを除く)に搭載されている。
  • 最高速度230km/hで走行(山陽新幹線内)するため、ATC220(km/h)信号を230信号に読み替える信号読替装置「トランスポンダ」がついている。
  • 将来の高速化に備え、270km/h走行可能な性能が与えられた。試験では277.2km/hを達成しているが、騒音が基準をクリアできなかったため最高速度は230km/hのまま営業が続けられた。

こちらも高速化の洗礼を受けた。需要の急減に伴い、2000年3月をもって食堂車の営業が休止となった。これで新幹線博多開業前年から続いた新幹線食堂車26年の歴史に幕を閉じた。その後、2002年10月5日の改正で定期列車の運用から退き、同年11月23日の「ひかり563号」(新大阪→博多、V2編成)の運転をもって運用から離脱した。

運用は東京-博多間の「ひかり」を中心に使われ、最後まで、東海道新幹線の「こだま」に使われることはなかった。

0系の最後の生き残りであるWR編成にある電光掲示板は本編成の2階建車両から転用されたものである。

  • 定員:1285人(普通車1169人・グリーン車116人)
  • 製造両数:9編成144両
  • 最高速度:230km/h
  • 製造時期:1989年1991年

[編集] K編成・P編成

100系新幹線電車 リニューアル車(K編成)
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100系新幹線電車 リニューアル車(K編成)

JR西日本でこだま用の0系を置き換える目的で、長距離運用から離脱した100系を改造・短編成化したもので、2000年から運用に就いている。6両編成をK編成、4両編成をP編成と呼ぶ。P編成は博多駅岡山駅間の運用となっている。

車両塗装をシルバー地に緑帯とし、座席を4列席に改造し、車内をシルバー系の色に変更した。また、編成が短くなり、2階建車両をはずしたために全車電動車となった。種車はJR西日本所属の100系V編成であるが、短編成化により先頭車及び車椅子対応車(125-700)が足りなくなるため廃車予定のJR東海の100系G編成を譲り受け、先頭車はV編成の中間車にG編成廃車体の先頭部を接合し先頭車化、車椅子対応車は125-700の車体を再利用、足回りをV編成から移植し対応した。 なお、G編成の車体を再利用した車両は車体番号の下2桁が50番~となっている。

  • K編成(6両編成)
    • 定員:394人(全車普通車)
    • 最高速度:220km/h
    • 改造時期2000年~不明
  • P編成(4両編成)
    • 定員:250人(全車普通車)
    • 最高速度:220km/h
    • 改造時期2000年~不明

[編集] 廃車が早まった理由

この短編成化改造が行われる一方で、JR西日本においても、0系を現役(2005年現在)としたまま大量廃車が行われた。

東海道新幹線や山陽新幹線におけるのぞみひかりの全270km/h運転に対応出来なかったのもさる事ながら、もう一つの理由は、100系が全電動車方式ではなかったことにある。全電動車方式の0系では、簡素な改造でほとんど性能を変えることなく、ユニット単位(2両)で編成の増減が可能であるのに対し、100系はMT比(電動車と付随車の比率)が変わり性能が変化してしまう為、編成長を変えるにはどうしても本格的な改造が必要になる。これに加え、西日本の0系は「ウエストひかり」の為に延命工事を施された車体が多く、100系初期車よりも状態の良い車体も少なくなかった。その為、100系の短編成化改造より、延命工事施工済みの0系を継続使用したほうが経済的だったのである。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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