Privacy Policy Cookie Policy Terms and Conditions 海上保安庁 - Wikipedia

海上保安庁

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海上保安庁(中央合同庁舎第3号館)
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海上保安庁(中央合同庁舎第3号館)

海上保安庁(かいじょうほあんちょう、英語表記:Japan Coast Guard)は、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする行政機関であり、国土交通省外局となっている。主に、海難救助・交通安全・防災及び環境保全・治安維持が任務の内訳となるが、現実には海洋権益の保全(領海警備・海洋調査)をも任務としている。

諸外国では沿岸警備隊(コーストガード)、国境警備隊等と呼ばれる機関に相当し、職員数は約1万2千人で、大部分は海上保安官である。海保(かいほ)、保安庁などと略称される。海上航行に不可欠な羅針盤をデザインした意匠を使用している。

英称は1948年の開庁以来 Maritime Safety Agency of Japan(略称: MSA または JMSA)を用いてきたが、諸外国の船員等の間で「海上警備機関か海事サービス機関か不明瞭」との声が多かったため、2000年から Japan Coast Guard(略称: JCG)に改められた。

目次

[編集] 任務

  1. 警備業務:海に関わる犯罪捜査、警備などの海の公安警察・警備警察としての業務
  2. 海難救助業務:海難救助、離島の急患搬送、船舶の消火、汚染防止など、海の消防機関としての業務
  3. 海洋情報業務海図の作成、潮流の測定、資源探査など、海の測量機関としての業務
  4. 交通業務灯台の設置・管理、航行支援システムなど、海の交通警察・海事情報提供機関としての業務
などを所管する。設置根拠は国家行政組織法第3条第2項及び海上保安庁法第1条、なお、海上保安官は海上保安法第31条、刑事訴訟法第190条により特別司法警察職員と規定されている。

[編集] 自衛隊(海上自衛隊)との関係

海上保安庁法第25条により、海上保安庁は軍隊ではない事が規定されている。一般に国境警備隊沿岸警備隊は、国際的に「準軍隊」と規定されており、諸外国でも海軍と沿岸警備隊を並立させる例がある、これは、国境を接している以上、いつでも起こりうる国境侵犯・領海侵犯や国民(漁民)同士のいさかいに対応する機関を、軍事組織よりも準軍事組織(警察組織)にした方が、事案の先鋭化、紛争化を防ぐことが出来る可能性が高いと言う、経験則に基づいた国際的な不文律によるものであり、海上保安庁法の規定もこれに拠っていると思われる。

ただし、自衛隊法第80条により、有事の際防衛出動内閣総理大臣の命令による治安出動において特に必要な場合には、内閣総理大臣の命令により防衛庁長官の指揮下に組み入れられる可能性がある。これは海上保安庁の設立モデルとなった米沿岸警備隊が戦時には原則として「第一艦隊」として米海軍の指揮下に入り、「軍隊」として運用される規定に倣ったものである。ただし、防衛庁長官の指揮下に入った場合でも、その行動範囲や活動権限は特に通常時と変わらない(特に武器の使用については、あくまでも警察官職務執行法に従わなければならない)ことから、あくまでも自衛隊が必要とするところ(自衛隊施設など)への警備を手厚くするよう指示したり、実際の警備行動において自衛隊と海上保安庁の各部隊を一元的に指揮する程度に留まると思われる。

1999年能登半島沖不審船事件が発生し、このとき海上自衛隊に初の海上警備行動が発動された。このときの反省を受け、不審船対策についての海上保安庁と海上自衛隊との「共同対処マニュアル」を策定、情報連絡体制の強化や連携訓練を行っている。 また、海上自衛隊が海上保安庁の任務を一時的に肩代りするものであるから、そのときの活動は自衛隊といえども警察官職務執行法・海上保安庁法が準用される。したがって、不審船問題の対処として、海上自衛隊との連携のほかに、海上保安庁自身の装備能力が増強され、2001年には海上警備業務における武器使用について海上保安庁法の改定がなされた(第20条第2項)。

海上保安庁法第2条第1項
「海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における犯罪の予防及び鎖圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。」
海上保安庁法第25条
「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」
自衛隊法第3条第1項(自衛隊の任務)
「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」
自衛隊法第80条(海上保安庁の統制)
「1. 内閣総理大臣は、第七十六条第一項(防衛出動)又は第七十八条第一項(治安出動)の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる。
2. 内閣総理大臣は、前項の規定により海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れた場合には、政令で定めるところにより、長官にこれを指揮させるものとする。
3. 内閣総理大臣は、第一項の規定による統制につき、その必要がなくなつたと認める場合には、すみやかに、これを解除しなければならない。」
自衛隊法施行令第103条(海上保安庁に対する指揮)
「法第80条第2項 の規定による長官の海上保安庁の全部又は一部に対する指揮は、海上保安庁長官に対して行うものとする。」

[編集] 人事

新設された海上保安庁への旧日本海軍幹部の入庁は、海軍幹部が公職から追放されていたため、航路啓開(掃海)部門等を除いて基本的になかった。代わって、警察機構を有していた旧内務省出身者、警察官や海事の専門家として商船学校出身者が多く入庁した。 商船学校出身者は大戦中、海軍予備員として応召し海軍軍人として海軍に属していたが、海軍兵学校出身の現役将校等に比べて、激戦地において、過酷な輸送任務を強いられたため、多大な戦死者を出していた。そのため商船学校出身者と旧海軍軍人の派閥は、極めて険悪な状態が長らく続いていたと言われていた。近年は、戦争経験者が組織内からいなくなり、海上保安官と海上自衛官たちの努力によって話し合いの機会が増え、自衛艦名と巡視船名に同一名を付けるといった問題を始め、徐々に解消し始めている兆しが見えている。

[編集] 組織

[編集] 海上保安庁(本庁)

[編集] 管区海上保安本部

※各管区の担当区域は、特記のない限り、当該都道府県の区域(陸地)、沿岸水域及びその沖合い水域が担当となっている。

各海上保安本部の管区担当区域
管区名 本部所在地 担当区域
第一管区 北海道小樽市 北海道(北方領土含む)
第二管区 宮城県塩竈市 青森県岩手県、宮城県、秋田県山形県福島県(沖合い水域は太平洋側のみ担当)
第三管区 神奈川県横浜市中区 茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都、神奈川県、山梨県静岡県
第四管区 愛知県名古屋市港区 岐阜県、愛知県、三重県
第五管区 兵庫県神戸市中央区 滋賀県京都府南丹市以南)、大阪府、兵庫県(瀬戸内海側)、奈良県和歌山県徳島県高知県
第六管区 広島県広島市南区 岡山県、広島県、山口県(瀬戸内海側)、香川県愛媛県
第七管区 福岡県北九州市門司区 山口県(日本海側)、福岡県、佐賀県長崎県大分県(水域上は熊本県有明海も担当)
第八管区 京都府舞鶴市 京都府(京丹波町以北)、福井県、兵庫県(日本海側)、鳥取県島根県竹島含む)
第九管区 新潟県新潟市 新潟県富山県石川県長野県(沖合い水域は東北地方の日本海側も担当)
第十管区 鹿児島県鹿児島市 熊本県(水域上は有明海を除く)、宮崎県、鹿児島県
第十一管区 沖縄県那覇市 沖縄県(尖閣諸島含む)
  • 海上保安部 [67ヶ所] (海上保安監部 [1ヶ所] 含む)
    • 分室 [20ヶ所]
  • 海上保安署 [58ヶ所]

[編集] 装備

[編集] 船艇

警備救難業務用船と設標船・灯台見回り船は各海上保安部署に、測量船は本庁海洋情報部および管区海上保安本部に、航路標識測定船は本庁交通部にそれぞれ配備されている。

巡視船しきしま (PLH31)
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巡視船しきしま (PLH31)

[編集] 航空機

海上保安庁の航空機は、他の警察・消防・防災機関と同様に民間機として登録されている。この為、機種選定に当たっては既存の民間用航空機の中から選定されこととなり、これに捜索救助用機器を追加装備したものが運用されている。

  • 固定翼機
    • LA 日航製YS-11A(5機) - 千歳・羽田・那覇各航空基地に配備。海難救助や機材輸送機として使われる国産双発ターボプロップ機。航続距離3,630km。
    • LAJ ガルフ・ファイブ(2機) - 2005年就役。羽田航空基地に配備。ファルコン900が性能不足なため導入された米ガルフストリーム社製ジェット機。捜索機として使用される他、隣接の羽田特殊救難基地所在の特殊救難隊隊員の遠隔地への出動に伴う隊員移送に使用される。航続距離12,000km。
    • LAJ ファルコン900(2機) - 1989年就役。那覇航空基地に配備。日米SAR協定に基づく遠洋域の捜索救助海域をカバーするために導入された仏ダッソー社製ジェット機。航続距離7,720km。ガルフ機の導入に伴い羽田から転属した。
    • MA サーブ340B(2機) - 1997年就役。2004年より関西空港海上保安航空基地に配備。YS-11Aより小型ながら同等の能力を持つ双発機。
    • MA ビーチ200T/B200T(7機) - 航空基地の主力固定翼機として配備されたが、退役が進んでいる。
    • MA ビーチ350(10機) - ビーチ200Tの後継機として1999年より導入が進んでいる双発機。全周式赤外線カメラを搭載している。
    • SA セスナU206G(1機) - 1977年就役の1機が広島航空基地に配備。監視飛行業務のほか、海保パイロット養成にも利用される単発高翼機。
  • 回転翼機
    • MH ベル212(26機) - 「しきしま」以外のPLH型巡視船や各航空基地に配備されている主力ヘリコプター。双発2翅。退役が進んでいる。
    • MH ベル412(8機) - ベル212の後継機として、1993年より南日本の航空基地を中心に配備されている次期主力ヘリコプター。双発4翅。不審船対策として防弾機能等が強化されている。海上自衛隊の護衛艦に着艦はできるが、給油装置が違い給油を受けられない。また着艦後の牽引装置も海上自衛隊とは共通性のないものを装備している。
    • MH アエロスパシアルAS332L1(4機) - 海上保安庁で最大のヘリコプター。1991年に「しきしま」専用搭載機として2機導入され、1997年に特殊救難隊使用機として羽田航空基地にも2機が配備された。愛称「スーパーピューマ」。
    • MH シコルスキーS76C(3機) - 海上保安庁で最速のヘリコプターで、海水温の低い北日本の航空基地を中心に1995年より配備されている。
    • SH ベル206B(4機) - 仙台・羽田・広島各航空基地に配備。監視飛行業務のほか、海上保安学校宮城分校における教育訓練用としても使用される。単発2翅。小型のため吊上救助装備は持たない。

[編集] 担任水域、規模

海上保安庁の担任水域は、領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)、日米SAR協定に基づく捜索救助区域(本土より南東1200海里程度)である。このうち領海とEEZを合わせた面積だけでも約447万km2あり、領土(約38万km2)の約11.8倍に相当する。これにSAR協定分担域を合わせると、国土面積の約36倍という広大な水域を担当していることになる。

その他活動範囲は全世界に及ぶ。一例として、専用船「しきしま」によるヨーロッパ - 日本間のプルトニウム輸送護衛任務、マラッカ海峡における海賊捜索任務などがある。

総職員数は12,297名(2004年度)であり、これは愛知県警とほぼ同じである。参考までに、警察官は約246,500名(2004年度)、海上自衛官は約44,400名(2004年度)である。

  • 予算: 1696億円(平成16年度当初予算)(参考: 海上自衛隊は約1兆1500億円)
  • 船艇: 514隻(2004年4月末現在)
  • 航空機: 75機(2004年4月末現在)

[編集] 歴史

1948年(昭和23年)、芦田均内閣のもとで設立された。これは第二次世界大戦後、それまで日本周辺海域における法秩序の維持にあたってきた日本海軍が掃海部隊を除いて解体され、その後、日本の海上における法秩序の維持および掃海など担当する機関として、運輸省(現国土交通省)外局という扱いで設立されたものである。設立にあたってはアメリカ沿岸警備隊の助言があった。ただし、アメリカ沿岸警備隊はアメリカ海軍の一機関としての任務を担当することもあり、そのための装備も充実しているが、海上保安庁は、海上自衛隊からは完全に独立しており、装備面での共通性も少ない。

1952年(昭和27年)には吉田茂内閣(3次)のもと、より軍事組織に近い海上警備隊が海上保安庁附属機関として組織されたが、これはまもなく警備隊として分離され、後の海上自衛隊となった。保安庁創設に際して、治安組織の一元化の見地から、海上保安庁も海上公安局に改組されて、保安庁の下に置かれることになっていた(保安庁法及び海上公安局法)。ところが、海上保安庁側の猛反発により結局、保安庁法の海上公安局に関する規定及び海上公安局法は施行されないまま、それに代わる自衛隊法の制定によって廃止となる。そのため、海上保安庁は改組を免れてそのまま存続することとなる。

特殊海難に対応するため、羽田特殊救難基地に特殊救難隊が置かれている。近年では海賊や国際的な犯罪組織に対応するために、多国間の海上警備機関の連携が模索されている。1996年前後には特殊警備隊 (SST) と呼ばれる特殊部隊の存在が明らかにされた。

[編集] 活動年表

  • 1948年(昭和23年)5月1日 - 海上保安庁発足。
  • 1950年(昭和25年) - 特別掃海隊朝鮮半島へ出動。10月17日に、そのうちの1隻が元山沖で機雷に接触して沈没、乗員1名殉職し、2名が重体、5名が重傷、11名が軽傷を負った。
  • 1952年(昭和27年)9月24日 - 明神礁において海底火山の観測を行っていた測量船、「第五海洋丸」が海底火山の噴火に巻き込まれて遭難、調査員9名、乗員22名が殉職。
  • 1953年(昭和28年)8月8日 - ラズエズノイ号事件発生。北海道猿払村知来別沖において、漁業巡回船に偽装したソビエト連邦工作船「ラズエズノイ」が、日本国内に潜入した工作員を収容するために日本領海を侵犯した現場を、第一管区稚内海上保安署の巡視船「いしかり」「ふじ」が発見。「ふじ」は、停船命令を無視して逃走した「ラズエズノイ」に射撃を行い、船体に命中。「ラズエズノイ」を強制的に停船させ乗組員全員を検挙した。ソ連は正式に陳謝した。
  • 1954年(昭和29年)4月21日 - 竹島に接近した巡視船3隻、独島義勇守備隊から攻撃を受け、損傷被害を蒙る。
  • 1954年(昭和29年)9月26日 - 洞爺丸台風により青函連絡船5隻(洞爺丸、北見丸、十勝丸、第十一青函丸、日高丸)が沈没。1,430名が死亡。
  • 1956年(昭和31年)11月8日 - 巡視船「宗谷」による南極地域観測支援業務を開始。その後1962年までに通算6回の観測支援業務を遂行。
  • 1959年(昭和34年)9月26日 - 伊勢湾台風により11,027隻が遭難。
  • 1974年(昭和49年)11月9日 - LPGタンカー「第十雄洋丸」とリベリア籍貨物船「パシフィックアリス」が東京湾にて衝突、約20日間に亘り炎上。
  • 1979年(昭和54年)5月17日 - 尖閣諸島魚釣島に仮設ヘリポートを設置するため、第一管区海上保安本部釧路海上保安署所属の巡視船そうや」を派遣。仮設へリポートは、後に中華人民共和国の抗議があったため撤去された。
  • 1983年(昭和58年)9月1日 - 大韓航空機撃墜事件発生。その後約2ヶ月に亘り大規模な海上捜索を実施。
  • 1988年(昭和63年)4月1日 - 海上保安庁創設40周年を記念し、海上保安庁音楽隊が発足。その後2004年3月末までの演奏実績は387回を数える。
  • 1990年(平成2年)8月20日 - 樺太に住む当時3歳の男児コンスタンチン・スコロプイシュヌイが全身に大やけどを負う。サハリン州知事からの救助要請を受けて千歳航空基地所属のYS-11A「おじろ」が、日本の航空機としては戦後初めて宗谷海峡を越えて、コンスタンチンをユジノサハリンスクホムトヴォ空港から丘珠空港まで緊急搬送。
  • 1992年(平成4年)11月7日 - フランスから日本へプルトニウムを輸送するため、プルトニウム輸送船「あかつき丸」がシェルブール港を出航。横浜海上保安部所属の世界最大の巡視船「しきしま」の護衛をうけ、約60日間かかって無事海上輸送が行われた。「あかつき丸」には特殊警備隊SSTの前身部隊が13名乗り組んでいた。乗り組みの事実は当時、秘密であったが、後に判明する。
  • 1997年(平成9年)1月2日 - ロシア籍タンカー「ナホトカ」海難流出油災害発生。当該船は破断事故の末沈没し、C重油約6,140klが流出。(ナホトカ号重油流出事故
  • 1997年(平成9年)7月2日 - パナマ籍タンカー「ダイヤモンドグレース」座礁油流出事故発生。東京湾において座礁した当該船より原油約1,550klが流出。
  • 1999年(平成11年)3月23日 - 能登半島沖の日本領海内に北朝鮮のものとみられる不審船が侵入する事件が発生。巡視船に特殊警備隊の隊員も乗船して追跡を行ったが、船速の違いから追跡を断念、海上自衛隊に追跡任務を引き継ぐ。(能登半島沖不審船事件
  • 1999年(平成11年)8月30日 - 東ティモールインドネシアからの独立を問う住民投票が行われる。住民投票後の暴動に備え、邦人保護の名目で名古屋海上保安部所属の巡視船「みずほ」をディリ沖に派遣。(公式に認められていないが、特殊警備隊SSTが上陸し、残留邦人を警護しながら「みずほ」に避難させたという説もある)
  • 1999年(平成11年)10月22日 - 日本の会社が所有する大型貨物船「アランドラ・レインボー」が海賊に襲撃され行方不明となる事件が発生。船会社から通報を受けた海上保安庁は、鹿児島海上保安部所属の巡視船「はやと」とファルコン900航空機を派遣。フィリピン沖からマレーシア東岸にかけての南シナ海全域を捜索。
  • 2000年(平成12年)5月1日 - 緊急通報電話番号「118番」運用開始。
  • 2000年(平成12年)12月- 宮城県金華山はるか沖で、シンガポール船籍タンカーの乗員が重篤の状態になる。釧路海上保安署所属のPLH型巡視船「そうや」と塩釜海上保安部所属のPLH型巡視船「ざおう」が救助に向かう。搭載ヘリコプターの能力では本土まで直接搬送が不可能な沖合であったが、2隻の巡視船の協同対処により、初の「飛び石搬送」による急患搬送を行った。
  • 2001年(平成13年)12月22日 - 九州南西海域工作船事件発生。威嚇射撃したのち不審船の反撃を受ける。銃撃戦の末、北朝鮮工作船は自爆し沈没した。交戦において、日本の海上保安官3名が被弾して重傷を負い、北朝鮮の工作員20数名が死亡した。後に、東シナ海沖の中国のEEZ経済水域)内に沈没した工作船が引き揚げられた。
  • 2003年(平成15年)7月2日 - 玄界灘海難事故発生。 
  • 2004年(平成16年)11月10日 - 漢級原子力潜水艦領海侵犯事件発生。海上自衛隊と共に中国海軍所属の漢級原子力潜水艦の追跡を行い、所属航空機が潜水艦の写真撮影に成功したが、対軍艦ゆえに海上保安庁の能力では必要な対策が出来ず、海上警備行動の発令となった。
  • 2005年(平成17年)5月31日 - 対馬沖の日本の排他的経済水域 (EEZ) を韓国の漁船「502シンプン」が侵犯。第七管区海上保安本部所属の巡視艇2隻が、臨検の為「502シンプン」を停船させたが、当該船は、臨検のために乗り移った保安官2名を乗せたまま韓国側EEZへ逃走。追跡した巡視艇7隻が、韓国蔚山沖で漁船員の引渡しを求めて韓国海洋警察庁の巡視艇6隻と39時間に渉って海上で対峙。結局、漁船のEEZ侵犯を認める代わりに身柄を韓国側に引き渡されるという灰色決着になった。
  • 2005年(平成17年)12月6日 - 韓国海洋警察庁が海上保安庁に対し、日本領海における捜査権の譲渡を要求したが、海上保安庁は「捜査権の譲渡は主権侵害にあたる」として拒否した。
  • 2006年(平成18年)4月14日 - 海上保安庁は、竹島周辺の排他的経済水域での海洋調査を、国際水路機構(IHO)に通報した。これは、韓国政府が竹島周辺海域の海底地名を日本名から韓国名に変える発議を同年6月のIHO総会で行う観測が流れたために、対案を提出するために行うというものであった。海上保安庁では4月18日に測量船「海洋」「明洋」を出航させて境港沖に待機させ、工作船事件の教訓から配備されたPL型「あそ」を後詰めとして派遣した。対する韓国海洋警察庁は、竹島周辺海域警備任務の為に導入した6,350トンの軍艦仕様の大型巡視船「参峰(サンボン)号」を始めとして警備艇20隻を竹島周辺に展開させ、特殊部隊である海上警察特攻隊を投入して拿捕を行うと宣言した。それに対して日本政府は、政府船舶の拿捕は国際法上違法であり、拿捕すれば直ちにIHOに提訴するとした。結局、韓国がIHO総会で地名変更の発議をしない代わりに、日本は海洋調査を行わないということで決着になった。

[編集] 組織沿革

  • 1946年(昭和21年)7月1日 - 前身として、運輸省海運総局に不法入国船舶監視本部を設置。
  • 1948年(昭和23年)5月1日 - 運輸省の外局として、海上保安庁設置。
長官官房、保安局、水路局、燈台局の1官房3局の構成。
全国9か所に海上保安本部設置。本部の名称には設置場所の地名を冠称。
  • 1948年(昭和23年)5月12日 - 旧海軍省庁舎にて業務開始。5月12日は開庁記念日となる。
  • 1949年(昭和24年)1月1日 - 船舶検査業務を運輸省から移管。
  • 1949年(昭和24年)6月1日 - 海上保安庁長官を補佐する職として海上保安庁次長を設置。
内部部局は長官官房、警備救難部、保安部、水路部、燈台部の1官房4部の構成。
海上保安学校設置。所在地は母体の海上保安教習所、水路技術官養成所、燈台官吏養成所がそれぞれあった東京都江東区越中島、神奈川県茅ヶ崎市、横浜市に分散。
  • 1950年(昭和25年)6月1日 - シーマン系のトップとして、海上保安庁次長の同等職たる警備救難監を設置。
長官官房を総務部、保安部を海事検査部にそれぞれ改称するとともに、船舶技術部を新設し、本庁は6部構成。
全国の海域を第一海上保安管区から第九海上保安管区に分け、海上保安本部の名称を地名から管区名(番号名)に改称。
  • 1950年(昭和25年)11月1日 - 海上保安学校から初任訓練を分離し、広島県呉市に海上保安訓練所を設置。
  • 1951年(昭和26年)4月1日 - 海上保安大学校を東京都江東区越中島に設置。
海上保安学校は京都府舞鶴市に移転統合。
  • 1952年(昭和27年)4月26日 - 本庁に経理補給部を新設し、7部構成。
海上警備隊を設置。
  • 1952年(昭和27年)5月1日 - 海上保安大学校を広島県呉市に移転。
  • 1952年(昭和27年)8月1日 - 海上警備隊を保安庁所管の警備隊として分離。
船舶検査業務は運輸省船舶局に移管し、海事検査部は廃止して6部構成。
  • 1955年(昭和30年)4月1日 - 海上保安訓練所を廃止し、業務を海上保安学校に統合。
  • 1957年(昭和32年)4月4日 - 水路部を除く本庁を旧海軍省庁舎から中央合同庁舎第1号館(現農林水産省)南棟に移転。
  • 1962年(昭和37年)1月1日 - 第七管区から分離して第十管区を新設。
  • 1972年(昭和47年)5月15日 - 沖縄復帰に伴い、第十一管区(旧琉球海上保安庁)を新設。
  • 1972年(昭和47年)11月27日 - 水路部の新庁舎が東京都中央区築地に竣工。
  • 1973年(昭和48年)1月22日 - 水路部を除く本庁は、運輸省が入居する霞が関合同庁舎第3号館の増設階に移転。
  • 1984年(昭和49年)7月1日 - 本庁の経理補給部と船舶技術部を統合し、装備技術部を設置して5部構成。警備救難部の所掌事務のうち、通信設備、航空機に関する業務は装備技術部に移管。
  • 1997年(平成9年)9月3日 - 内閣に設置された行政改革会議は、海上保安庁を国家公安委員会に移管する中間報告を決定。
  • 1997年(平成9年)12月3日 - 行政改革会議は最終報告において、海上保安庁の国家公安委員会移管案を撤回。
  • 2000年(平成12年)4月1日 - 海上保安庁の英語表記を Maritime Safety Agency of Japan から Japan Coast Guard に改称。
  • 2001年(平成13年)1月6日 - 中央省庁再編により、海上保安庁は国土交通省の外局となる。
  • 2002年(平成14年)4月1日 - 水路部を海洋情報部に改組。
  • 2003年(平成15年)4月1日 - 警備救難部から航行安全業務を分離して燈台部と統合し、交通部に改組。

[編集] 海上保安官

[編集] 歴代の海上保安庁長官

氏名の末尾に※印を付したのは海上保安庁長官のあと運輸事務次官を務めたことを指す。

海上保安庁長官
氏名 在任期間 退任後の主要な役職
1 大久保武雄 1948年-1951年 衆議院議員、労働大臣
2 柳澤米吉 1951年-1953年 アジア航空測量社長、同会長
3 山口傳 1953年-1955年  
4 島居辰次郎 1955年-1958年 日本原子力船開発事業団理事長
5 安西正道 1958年-1959年 全日本空輸社長
6 林坦 1959年-1961年 船舶整備公団理事長
7 和田勇 1961年-1963年  
8 辻章男 1963年-1964年 関西国際空港ビルディング会長
9 今井榮文 1964年-1965年 新東京国際空港公団総裁
10 栃内一彦 1965年-1966年 日本航空開発社長
11 佐藤光夫(※) 1966年-1967年 国際観光振興会会長
京成電鉄社長
12 亀山信郎 1967年-1968年 船舶整備公団理事長
13 河毛一郎 1968年-1970年  
14 手塚良成 1970年-1972年 国際観光振興会会長
15 野村一彦 1972年-1973年 日本原子力船開発事業団理事長
16 佐原亨 1973年-1974年 ジャパンライン副社長
17 寺井久美 1974年-1975年 日本アジア航空副社長
日本貨物航空副社長
18 薗村泰彦 1975年-1978年 帝都高速度交通営団総裁
19 高橋壽夫 1978年-1979年 日本空港ビルディング社長、同会長
20 眞島健 1979年-1980年 船舶整備公団理事長
21 妹尾弘人 1980年-1982年 船舶整備公団理事長
京成電鉄社長、同会長
22 永井浩 1982年-1983年 日本鉄道建設公団総裁
23 石月昭二 1983年-1984年 新幹線鉄道保有機構理事長
日本国有鉄道清算事業団理事長
24 角田達郎 1984年-1985年 西日本旅客鉄道社長、同会長
25 山本長 1985年-1986年 新東京国際空港公団総裁
26 栗林貞一 1986年-1987年 日本航空副社長、日本アジア航空会長
27 山田隆英 1987年-1989年 エアーニッポン社長、同会長
28 塩田澄夫 1989年-1990年 日本鉄道建設公団総裁
29 丹羽晟 1990年-1991年 国際観光振興会会長
30 宮本春樹 1991年-1992年 船舶整備公団理事長
運輸施設整備事業団理事長
31 井山嗣夫 1992年-1994年 国際観光振興会会長
32 秦野裕 1994年-1996年 帝都高速度交通営団副総裁
33 土坂泰敏 1996年-1997年 帝都高速度交通営団総裁
34 相原力 1997年-1998年 運輸施設整備事業団理事長
35 楠木行雄 1998年-1999年 軽自動車検査協会理事長
36 荒井正吾 1999年-2001年 参議院議員
37 縄野克彦 2001年-2002年 日本航空常務
38 深谷憲一 2002年-2004年 日本政策投資銀行理事
39 石川裕己 2004年-

39代海上保安庁長官 石川裕己 (いしかわ ひろき) 略歴

[編集] 階級

海上保安監、海上保安正、海上保安士に分けられる。詳細は海上保安官の階級参照。

[編集] 職種

  • 航海科
  • 機関科
  • 通信科
  • 主計科
  • 飛行科
  • 航空通信科
  • 整備科

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

公的刊行物
  • 海上保安庁 編 『海上保安レポート2003』 国立印刷局、2003年、ISBN 4171501792
  • 海上保安庁 編 『海上保安レポート2004』 国立印刷局、2004年、ISBN 4171501806
  • 海上保安庁 編 『海上保安レポート2005』 国立印刷局、2005年、ISBN 4171501814
  • 海上保安庁 編 『海上保安レポート2006』 国立印刷局、2006年、ISBN 4171501822
一般刊行物
  • 大久保武雄 『海鳴りの日々:かくされた戦後史の断層』 海洋問題研究会、1978年
  • 北岡洋志 『海上保安庁特殊救難隊 限りなき挑戦』 海文堂出版、1997年、ISBN 4303634603
  • 小峯隆生 『海上保安庁特殊部隊SST』 並木書房、2005年、ISBN 4890631933
  • 財団法人海上保安協会 監修 『海上保安庁21』 財団法人海上保安協会、2001年
  • 世界の艦船編集部 編 『海上保安庁ハンドブック』 海人社<世界の艦船別冊>
  • 世界の艦船編集部 編 『海上保安庁全船艇史』 海人社<世界の艦船増刊>、2003年
  • 歴史群像編集部 編 『海上保安庁パーフェクトガイド』 学習研究社<歴史群像シリーズ>、2005年、ISBN 4056037205
  • <イカロスムック>『知りたい!海猿の世界 海上保安庁の力』イカロス出版 2006年 ISBN 4871498093
  • 邊見正和 『海を守る海上保安庁巡視船』交通研究協会(成山堂書店)2006年 ISBN 4425771419
定期刊行物
  • 週刊紙『海上保安新聞』 財団法人海上保安協会 (木曜日発行、正確には月4回刊)
  • 月刊誌『世界の艦船』 海人社(毎月25日)
  • 季刊誌『J-SHIPS』 イカロス出版 (2月・5月・8月・11月の11日)
  • 季刊誌『かいほジャーナル』 財団法人海上保安協会 (1月・4月・7月・10月発行)

[編集] 外部リンク

日の丸 日本の行政機関
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