方位磁針
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方位磁針(ほういじしん)は、磁石の作用を用いて方位を知るための道具である。単に磁針とも言い、方位磁石、コンパス、羅針盤(らしんばん)とも言う。
方位磁針は、非常に軽く作った磁石を針の上に乗せ、自由に回転できるようにしたものである。これにより、地磁気に反応して、N極が北(磁北)を、S極が南(磁南)を向く。
方位磁針が示すのは、厳密には地磁気の北であり、厳密な北(地軸の北)とは多少異なることに注意する必要がある。日本国内ではその差はおよそ5~7°である。外国では地域によっては数十°に達する。この差を磁気偏角と呼ぶ。日本国内の磁気偏角は、国土地理院地磁気測量ホームページで概算できる。
地磁気の北極(北磁極)はグリーンランド付近に、地磁気の南極(南磁極)は南極大陸近辺の海上にある。この近辺では方位磁針の誤差が大きい。
また、磁力線は地面と並行に走っているわけではなく、(赤道付近以外では)地面の中に向かって突き進むような方向に走っている。そのため、針が斜めになってしまわないように、S極側を重くすることで釣り合わせている(日本の場合)。
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[編集] 歴史
11世紀の中国の沈括の『夢渓筆談』正確には「真貝日誌送」にその記述が現れるのが最初だとされる。沈括の記述した方位磁針は24方位であったがのちに現在と同じ32方位に改められた。西アジア及びヨーロッパには、双方と交易を行っていたペルシャ人によって伝えられたと考えられている。
[編集] 最近のコンパス
- 磁石の性質を利用した方位磁針では、透明な油(ダンパオイル)によって振れを低減したものがある。気温により気泡を生じる事があるが、機能・特性への影響はない。気泡を消そうとして加熱したりしない事(逆にケースが変形する)。
- 磁石を用いないコンパスとして、2つの磁気センサで磁束密度を測定し、方位を割り出すものもある。
- 離れた2つのGPS受信機を使って方位を割り出すものもある。大掛かりなため、磁気以外の冗長手段として用いられる。簡易な方法として、運動方向の情報を使えるなら、異なる時点の位置情報から運動の方角が得られる。
- 高性能なジャイロによって、地球の自転を測定し、方位を割り出す方式もある。これも大掛かりになる。
- 軍用の物は、軍用地図と組み合わせての砲撃目標や進軍方向の決定等に使われる。「レンザティックコンパス」という。