巡視船
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巡視船(じゅんしせん)とは、沿岸警備のための艦艇のことである。国によって、海軍、沿岸警備隊、警察などによって使用される。海上警備(密輸や密入国、海賊行為の取り締まり)、海難救助などを主な任務とする。
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[編集] 巡視船の機能と特徴
[編集] 海上警備
- 探知能力
- 指揮・通信能力
- 捜査能力
- 武装/兵器装備
- 速力・航続力
[編集] 海難救助
- 良好な航洋性(荒れた海でも活動可能)
- 大型船には救難用ヘリ搭載
- 救急救命処置が可能な人員と装備
[編集] 消防活動
- 消火機能
[編集] 海洋汚染対策
- 油防除:オイルフェンスなど
[編集] 日本の巡視船
日本において「巡視船」は海上保安庁に配備されている、警備救難業務用船の種類のことである。
主として法令の海上における励行、海難救助、海洋の汚染及び海上災害の防止、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕その他海上の安全の確保に関する事務に従事する。巡視艇より広範囲の海域で行動する船。現在119隻。
また、巡視船の中には海難救助に大きな役割を担う救難強化巡視船や潜水指定船、防災巡視船、または警備部隊の中核になる警備実施強化巡視船、その他に海上環境指定巡視船、鑑識巡視船、特捜巡視船などに指定されている船もある。
護衛艦とは異なり、船体が軍用規格ではない。そのため比較的安価であり、居住性にも優れている。おもな違いは、兵装、機関性能、航続距離、甲板強度、防水区画の細密化等のダメージコントロール能力、指揮通信機器、搭載ヘリコプターの運用能力などがあり、警備においては軍事武装を施さない低脅威度の目標に対して費用対効果の面で有効な設計となっている。しかしながら、不審船事件で実際に銃撃を受け、ロケット砲攻撃などに脅威を感じた海保は防弾構造や長射程機関砲を採用した武装強化型巡視船(高速高機能大型巡視船など)の配備も進めている。
画像転送装置による船舶と地上基地間の情報交換技術が順次装備されており、リアルタイムな海上警備体制が確立されつつある。しかし、海上自衛隊との暗号通信装置は装備されているものの、データーリンク等は、装備されていない。アメリカ沿岸警備隊では、アメリカ海軍との装備の共通化が図られており、統一された指揮系統で、共同作戦が可能であるが日本では巡視船、護衛艦の装備の共通化はあまり実現できていない。また最近、海自とヘリコプターの共同運用訓練が行われるようになった。
[編集] 型式
[編集] PLH型
PLH型(Patrol Vessel Large With Helicopter) は700トン型以上の大型巡視船で、ヘリコプター搭載型。現在13隻。各管区海上保安本部に1~2隻ずつ配備され、洋上での救難警備の指揮を行なうことになる。搭載ヘリはベル412(重量約5.5t)または、AS332L1(重量約8.6t)である。
- ヘリコプター1機搭載型。PLH01 そうや、PLH02~10 (つがる型巡視船)
- ヘリコプター2機搭載型。PLH21,22 (みずほ型巡視船)
- PLH31 しきしま はヘリコプター2機搭載型。世界最大級の巡視船。
- 配備状況
- 第一管区 PLH01 そうや(釧路),PLH02 つがる(函館)
- 第二管区 PLH05 ざおう(塩釜)
- 第三管区 PLH22 やしま(横浜),PLH31 しきしま(横浜)
- 第四管区 PLH21 みずほ(名古屋)
- 第五管区 PLH07 せっつ(神戸)
- 第七管区 PLH06 ちくぜん(福岡)
- 第八管区 PLH10 だいせん(境)
- 第九管区 PLH08 えちご(新潟)
- 第十管区 PLH03 おおすみ (鹿児島),PLH04 はやと(鹿児島)
- 第十一管区 PLH09 りゅうきゅう(第十一管区本部)
[編集] PL型
PL型(Patrol Vessel Large)は700トン型以上の大型巡視船で、ヘリコプターを搭載していない巡視船。ヘリコプターは常載していないがヘリ甲板が装備されている巡視船もある。
主力のしれとこ型の多くが昭和50年代につくられたため、建造されて30年以上経過している船が多い。そのため、より救難能力を強化したえりも型 、不審船事件をきっかけに建造された高速高機能大型巡視船(ひだ型、あそ型)等が順次配備されていく見通し。現在37隻。
- 3500トン型 PL31 いず は災害対応型。救難強化指定船。
- 3000トン型 PL21 こじま、PL22 みうら 「こじま」は海上保安大学校、「みうら」は海上保安学校の練習船。
- 1800トン型
- ヘリ甲板付高速高機能大型巡視船 ひだ型
- 1000トン型
- 高速高機能大型巡視船 あそ型
- PL101~128(しれとこ型)PL105は解役。
- PL01,PL02~08 (えりも型)
- 900トン型
- PL16むろと (だいおう型)1974年就役配備、2005年退役。
- 配備状況
- 第一管区 1000トン型6隻
- 第二管区 1000トン型6隻 (PL42 でわ)
- 第三管区 1000トン型5隻,3500トン型1隻
- 第四管区 1000トン型1隻
- 第五管区 1000トン型2隻
- 第六管区 3000トン型1隻 PL114 とさ PL104 きい
- 第七管区 1000トン型3隻 PL41 あそ 1隻 くにさき、ごとう、
- 第八管区 1000トン型3隻,3000トン型1隻
- 第九管区 1800トン型1隻(ひだ),1000トン型3隻 はくさん等
- 第十管区 1800トン型1隻(あかいし),1000トン型2隻
- 第十一管区1000トン型5隻,
[編集] PM型
PM型(Patrol Vessel Medium)は350トン型以上の中型巡視船。500トン型、特350トン型、350トン型がある。現在41隻。
[編集] PS型
PS型は(Patrol Vessel Small)は350トン型以下の小型巡視船。高速特殊警備船(つるぎ型、220トン)、180トン型、特130トン型がある。現在27隻。
[編集] 船名の由来
基本的に下記の原則に基づいて、配備された地域に関係深い名前がつけられる。
- PLH ヘリ2機搭載型-日本の旧国名
- PLH ヘリ1機搭載型-海峡・水道・山等
- PL型-半島・岬・湾・島等
- PM型-河川・島
- PS型-山
ただし建造時の社会情勢により原則どおりでない場合もある。 また配属替えに伴い船名の変更がある。
[編集] 出演作品
- 第三管区海上保安本部の「やしま」が、1999年に公開された劇場版アニメ、「逮捕しちゃうぞ the MOVIE」の中で、偽装警備艇を捕縛するため可動橋である勝鬨橋を通って、隅田川を封鎖し、配備されているヘリコプターで主人公達が乗るミニパトを吊り上げ、東京ヘリポート付近まで搬送した。
- 第四管区海上保安本部の「みずほ」が2005年発売のB'zのシングルOCEANのPV撮影で使用された。
- 映画海猿にて第七管区のPLH型ちくぜん、PL型はかた、PM型ふくえ、みささが出演。