都電荒川線
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都電荒川線(とでんあらかわせん)は、東京都の三ノ輪橋から早稲田までの間を運行している都営の路面電車の路線。王子電気軌道を東京都(当時は東京市)が買収したもので、東京都電の生き残り路線である。
併用区間は、明治通り(正確には国道122号)上を走る飛鳥山~王子駅前間のほかに数ヶ所あるが、大部分が専用軌道である。現在は1両編成(単行)のワンマン運転で運行している。料金の支払いにはバス共通カードが使用可能である(車体には「バス共通カード取扱車」の表示がある)。なお2007年3月にはICカードPASMOが導入され、路線バスはもちろん、連絡可能な鉄道でも利用できるようになる。但し、パスネットは使えない。
目次 |
[編集] 路線データ
[編集] 歴史
1960年代の都電廃止の流れの中で、例外的に27系統(三ノ輪橋~赤羽)と32系統(荒川車庫前~早稲田)はともに路線の大半が元々私鉄(王子電気軌道)によって建設された路線ということもあって多くが専用軌道であること(江ノ島電鉄や京成電鉄のように、郊外電車の風潮が元々強かった)、代替バスの運転が難しいこと(ほぼ並行する明治通りは恒常的に渋滞がひどく、バスでは定時運行が困難)、沿線住民と都民からの存続要望が強くあったこともあって、北本通り上にあった27系統の一部(王子駅前~赤羽間。現在この区間には都営バス王57系統が運行されている)が廃止されただけで生き残った。1974年にそれまで別系統として運行されていた27系統と32系統を統合し、「荒川線」と改称された。
ちなみに、27系統終点の「赤羽」とは、JRの赤羽駅ではなく、都道311号(環八通り)・国道122号(北本通り)の「赤羽交差点」付近で、現在の東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線赤羽岩淵駅地上付近の北本通り上にあった。
[編集] 停留所一覧
停留所名 | 接続路線 | 所在地 | |
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三ノ輪橋 | 東京地下鉄:○日比谷線(三ノ輪駅:H-19)(徒歩連絡)※ | 東京都 | 荒川区 |
荒川一中前 | |||
荒川区役所前 | |||
荒川二丁目 | |||
荒川七丁目 | |||
町屋駅前 | 京成電鉄:本線(町屋駅) 東京地下鉄:○千代田線(町屋駅:C-17) |
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町屋二丁目 | |||
東尾久三丁目 | |||
熊野前 | 東京都地下鉄建設:日暮里・舎人ライナー(2008年3月開業予定) | ||
宮ノ前 | |||
小台 | |||
荒川遊園地前 | |||
荒川車庫前 | |||
梶原 | 北区 | ||
栄町 | |||
王子駅前 | 東日本旅客鉄道:京浜東北線(王子駅) 東京地下鉄:○南北線(王子駅:N-16) |
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飛鳥山 | |||
滝野川一丁目 | |||
西ヶ原四丁目 | |||
新庚申塚 | 都営地下鉄:○三田線(西巣鴨駅:I-16)(徒歩連絡、定期券のみ連絡業務あり) | 豊島区 | |
庚申塚 | |||
巣鴨新田 | |||
大塚駅前 | 東日本旅客鉄道:山手線(大塚駅) | ||
向原 | |||
東池袋四丁目 | 東京地下鉄:○有楽町線(東池袋駅:Y-10) | ||
雑司ヶ谷 | |||
鬼子母神前 | 東京地下鉄:○13号線(雑司ヶ谷駅)(2008年6月開業予定) | ||
学習院下 | |||
面影橋 | 新宿区 | ||
早稲田 | 東京地下鉄:○東西線(早稲田駅:T-04)(徒歩連絡。但し道のりで1km程度離れている。そのため、地下鉄路線図などでは乗り換え駅との記載はされていない) |
[編集] 沿線風景
東京メトロ日比谷線三ノ輪駅から日光街道を北へ3分程歩くと、レトロな「梅沢写真館」ビルが出現する。このビルは旧「王子電気軌道」本社ビルといわれ、ビルの中の通路をくぐると、昭和30~40年代を思い起こさせる商店街の中に、起点の三ノ輪橋電停がある。乗客は主婦や都営交通のシルバーパスを持った熟年層が多く、いわゆる下町の生活感が漂う中を走って行く。右手に東京都下水道局・三河島水再生センター(下水処理場)が見える。ここは日本初の下水処理場で、処理場の上に造られた人工地盤に荒川自然公園がある。約5分後、京成本線と東京メトロ千代田線が交差する町屋駅前電停に到着。1990年代に行われた再開発前は、ホームと一体化した木造の大衆食堂やパチンコ店、売店、写真店などがある、生活感あふれる気取らない下町の光景が良く残っていたが、再開発に伴い大きく様変わりした。
町屋駅前からは、川の手沿いの下町の住宅や町工場が密集する地区を走る。15分程走ると、近在の手軽なスポットである荒川遊園地前を経て、荒川線の中枢・荒川電車営業所のある荒川車庫前を過ぎ、王子駅前電停に到着する。ここで乗り換えなどでかなりの乗客が入れ替わり、明治通りを左に曲がって、左側に都内有数の桜の名所である飛鳥山公園を望みながら66‰の急勾配を上り、明治通りを右手に逸れて専用軌道に入り、飛鳥山電停に到着する。春の花見シーズンは混雑が激しく、休日は2~3本待たなければ乗れない程の混雑になる。この先は山の手の起伏に富んだ地区を走る。沿線に高校や大学が多いために、登・下校の時間帯は学生で混雑する。なお、その中で西ヶ原にあった東京外国語大学は2000年に府中市に移転した。「おばあちゃんの原宿」の異名を取るとげぬき地蔵の最寄りである庚申塚電停を抜け、大塚駅前電停を過ぎると、東池袋四丁目電停でサンシャインビルの横を通る。サンシャインビルと都電の組み合わせは、写真やテレビ撮影の定番として、しばしば取り上げられる。墓地のある雑司が谷、鬼子母神、学習院下付近は、東京メトロ13号線の建設工事が進行中で、線路沿いの民家が立ち退くなど景観が大きく変わっている。やがて、終着の早稲田電停に到着する。近在には早稲田大学がある。東京メトロ東西線早稲田駅は直線距離で南に約600m離れている。線路が切れた200m先の右側には、都営バス早稲田営業所があり、新宿・渋谷・上野方面への都営バスがあるほかに都電の定期券の発売も行っている。ここはかつての都電早稲田車庫で、都電全盛期には線路がつながっていた。
[編集] 使用車両
[編集] 現役車両
現在運行されている車両の駆動方式は8500形以外吊り掛け式となっており、都内で唯一その音を聞くことができる。
- 7000形
- 7500形
- 上記の2形式は荒川線成立以前より使用されている。但し2形式とも後年更新され、現在見られる形になっている。
- 8500形
- 上記の2形式の老朽化に伴い1990年より増備された形式である。当初は2形式を8500形で置き換える構想もあったが、財政面での関係や余剰車を出さないように、5両で打ち切られている。
財政難の東京都交通局の収益源を少しでも確保するためか、運行されている車両のほとんどは、車体外部に全面広告が施された、いわゆるラッピング車両で、広告のないオリジナルの車両は少ない。
[編集] 新造予定車両
[編集] 引退車両
- 6000形
- 昭和30年代の都電全盛期の主力形式。荒川線では1978年にワンマン化されるまで13両が活躍した。うち5両がワンマン化記念花電車「乙6000形」に改造されてその後廃車、唯一6152のみが応急車(事業用)として残された。この6152は1987年にイベント車両として復活し、後に黄色に赤帯から深緑(→緑)とクリームのツートン塗装に変更されて、月1度の休日のイベント運転「一球さん号」(ヘッドライトが1個で、中に裸電球が入っているため)や貸切列車を中心に運行されていたが、2000年の京福電気鉄道衝突事故の後の点検でブレーキが1系統しかないことが問題となり、同年に休車、2001年に廃車され、2003年以降はあらかわ遊園にて静態保存されている。
他に昭和30年代に大量に生産され、各営業所に投入された経済車8000形、杉並線から転属した軽量車体の2500形、王子電気軌道引継ぎの100形、150形などが走っていた。
[編集] その他
- 全車両に「2連打ベル制御器」が設置されており、発車前にドアが乗車用・降車用の両方とも閉じた際に「チンチン」という昔ながらの発車合図音(「チンチン電車」の由来でもある)を聞くことができるが、これは路面電車ではイベント用車両を除けば現在唯一のものである(路面電車以外を含めれば名古屋鉄道などにも残っている)。
- 毎年6月10日の「路面電車の日」や、10月1日の「荒川線の日」には、記念バス共通カードが発売されるとともに、記念イベントも開催される。
- 一時期に池袋駅東口への支線建設や高田馬場駅、新宿駅方面への延長が構想されたことがあったが、広島電鉄におけるグリーンムーバーシリーズの導入や富山ライトレール開業などに端を発する路面電車見直し・ライトレール導入の機運の中で、昨今再び検討がされつつある。
- 2004年のアテネオリンピックで、荒川区在住の北島康介選手が金メダル獲得を記念した特別電車を運行した。
- 少年ジャンプに連載中のこちら葛飾区亀有公園前派出所が連載30周年を突破した記念として、作中にも登場したことがある荒川線で7000形を利用してラッピング電車が運行された。
- 2007年の9000形営業運転に関連して、一部停留所の照明にガス灯を模した街路灯を設置する計画がある。
[編集] 事故
- 2006年6月13日9時37分、ブレーキ試験中の試運転車両(7020号車)に三ノ輪橋発早稲田行きの車両(7505号車)が梶原~栄町間で追突。乗客26人と追突された車両の運転士の計27人が重軽傷を負った。