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方向指示器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

方向指示器 右フロントウィンカーと右サイドマーカーが点灯している状態
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方向指示器 右フロントウィンカーと右サイドマーカーが点灯している状態

方向指示器(ほうこうしじき)とは、自動車オートバイ等に付ける保安部品で、右左折や進路変更の際に、その方向を周囲に示すための装置である。方向を灯火の点滅で示すことから、日本では通常、ウインカー(英語:winker 'まばたきするもの')と言うが、現在英語圏においてwinkerと言うことは稀である。アメリカではblinkerもしくはturn signal lamp、イギリスではdirection indicator、あるいは単にindicatorと表記する。ドイツ語も以前はWinkerと呼んでいたことがある。日本では年配の人中心に「アポロ」と呼ぶこともある(下記、歴史を参照)。またフラッシャーと呼ぶこともある。

自動車の方向指示器ランプの位置
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自動車の方向指示器ランプの位置

方向指示器は、自動車オートバイ等の車両が、右折/左折/進路変更(車線変更など)を行う際に、車両の前後側面に装備されたランプをドライバー、ライダーが操縦席に装備されたスイッチを操作することで点滅させ、周囲に車両の動きを通知する安全装備の一つである。また、全てのランプを同時に点滅させることでハザードランプとしても使用される。 前面に装備されたランプをフロントウインカー、側面に装備されたランプをサイドマーカー、後面に装備されたランプをリアウインカーと呼ぶ。最近の自動車には、サイドミラーにサイドマーカーをつけている事が増えてきている。

方向指示器は自動車/オートバイの走行機能に直接関係が無く、仮に故障したとしても走行そのものに支障をきたす事はない。しかし、多くの車両が同時に運用される近代の交通システムの中において、自車ならびに他の車両の安全確保に非常に重要な装備であり、それゆえほとんどの国において、構造、動作、操作に関するルールが定められている(下記、法令、規格を参照)。

目次

[編集] 歴史

初期の自動車においては、交通絶対量が少なかったこと、またオープンボディが大半であったことなどから、装備としての方向指示器は存在しなかった。進行変更を周囲に伝達する必要がある場合は、馬車時代からの身振りによる意思表示を用いており(これら身振りによる信号の中で手信号による合図は現在も法令上認められている)それで充分だったと言える。

その後、大量生産の時代を経て交通量が爆発的に増大し、交通の円滑性、安全性から進路変更時の合図が重要となり、同時にクローズドボディの普及により車外に何らかの信号装備が求められるようになった。

1893年イギリスのJ・B・フリーマンによって文字盤式の方向指示器が発明される、これは車体後部に表示内容を変更できるロール式の掲示板を設置して、手動操作によって「Left」「Right」の文字表示できるようにしたものであった。

1916年にはイギリスのF・フォークナによって、ボディサイドに装備する矢羽式(自動車では「やばねしき」が一般的、または腕木式・「うでぎしき」とも)の方向指示器が発明される。この矢羽式は、可動式の表示器を通常はボディサイド(外付けのものは灯体)に収納しており、操作時に飛び出させて周囲に方向を知らせる方式である。当時、電気式ヘッドランプが既に普及しはじめていたため、矢羽を透明樹脂製とし、内部に電灯を内蔵することで、夜間でも被視認性の高い方向指示が可能となった。矢羽式の方向指示器は、1918年にイギリスのネーリック信号機会社が商品化し、その後広く普及した。これは手旗信号を基にしたもので鉄道でも広く使われセマフォー信号機(Semaphore signal)と呼ばれた。車ではセマフォー方向指示器(Semaphore turn signal)を略して「セマフォー(Semaphore)」とよばれることも多い。

1930年代に入り、電気技術の発達に伴って車の電装品も進歩し、バイメタルを応用し、矢羽を廃した点滅灯式方向指示器が考案され、1935年イタリアフィアット1500に搭載された。アメリカにおいても1935年ビュイックに採用されている。

1940年代には、それまでワイアー操作等の手動式であった矢羽(腕木)の飛び出し操作が電磁石を利用した電磁式となり、同時にドライバーに作動を通知するインジケータが車内に装備されるようになった(ワイアー式でインジケーターを持つものもある)。電磁式のメーカーでは、米国のアポロ社が大きなシェアを持ち、米国内ではほぼ独占状態であった。当時輸入車の多くが米国車であった日本では、アポロ式が矢羽式方向指示器の代名詞となり、さらに省略して、方向指示器の事を「アポロ」と呼ぶ事もあり、一部では点滅式が主流となった後でも使われていた。

矢羽式と点滅式はしばらく共存していたが、点滅式は視認性の良さ(特に昼間の)と、断線、焼損の懸念のある電磁石と、機械的可動部が排除されたことによる信頼性の向上により、欧米では比較的すぐに、日本においても1950年代には主流となっていった。

日本で方向指示器が法定化された際、指示器を持たない既存の車両は、「アポロ」やそのライセンス製品(いづれも矢羽式)などの汎用品を後付けすることで対応した。三輪自動車バストラックなどでは新車においても汎用品を採用する例も見られた。汎用品は多くの車種に対応するため、大・小の二種類が用意されていた。また、矢羽内の表示灯は初期は常時点灯式であったが、後に点滅式も登場した。

1960年代に入り、特にアメリカでは道路交通の過密化、高速化が進み、自車と周囲の安全を確保するため、より多くの情報を伝達する必要が生じた。そのため、方向指示器は、その全て(前後、左右)を同時に点滅させることで停車中であることを知らせるハザードランプとしての機能も併せ持つようになった。日本車でも輸出向けから採用が始まり、全車に普及していった。

また、点滅機構もバイメタルからトランジスタリレーを用いたものへと代わり、その後の改良により、タマ切れ時に点きっぱなしとなる欠点を補った、倍速点滅機能も盛り込まれた。

1990年代に入り車両電装品の電子制御化が進むと、方向指示器は外部から視認が容易な位置にある事、また元々、点滅機構を備えることから、盗難アラームリモコン操作の確認など、車外から何らかの合図を確認する目的でも使用されることになる。

オートバイでの方向指示器の装備は自動車よりも遅く、1950年代に矢羽式がオプション装備されたのが始まりで、すぐに点滅式に交代している。

[編集] 構造

方向指示器は、車外に取り付けられ合図を表示する表示部(ランプ)、車内に取り付けられドライバーが合図操作を行う操作部(レバーまたはスイッチ)、操作に従い表示部の動作を制御する制御部から成り立つ。

[編集] 表示部

フロント右ターンシグナルの視認範囲
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フロント右ターンシグナルの視認範囲

表示部は点滅を行うランプであり、乗用車の場合は車体前部(フロントターンシグナル)、後部(リアターンシグナル)、側面(サイドターンシグナル)の3カ所に装備される。大型車の場合は車体中央部側面にも装備される。オートバイの場合には車体前部側面および車体後部に装備される。

日本の法令では、点滅するランプの色は橙(だいだい)色または黄色でなくてはならず、その二色以外で点滅させることは現在の車両保安基準では禁止されている。ただし、在日米軍の車両については、日本の車両法、道路交通法が適用されないため、車幅灯、ブレーキ、テールランプと兼用(前部白、後部赤のみ)の車両がある。

取り付け位置も詳細に決められており、まず車体の周囲360度からいずれかのターンシグナルが視認できなくてはならない、さらに個々のターンシグナルの視認範囲が決められており、たとえば右のフロントターンシグナルの場合であれば、ターンシグナル中心を起点とした車体正面方向中心線から、左周り45度から、右回り80度の範囲から視認できなくてはならない。

旧来のランプユニットは金属のプレス品の反射部と電球を保持する口金(ソケット)とを溶接した本体に、ゴム製のガスケット(シール)をはさみ、着色された樹脂レンズをねじ止めする構造であったが、生産台数の増加した現在では、コストダウンのため、樹脂レンズと、やはり樹脂製の反射部兼用ハウジング(本体)は高周波溶着されており、温度変化による内部結露を防ぐブリーザー(呼吸機構)を持つ。また、同じくねじ止めであった車体への取り付け方法も、灯体のボスと車体側のゴム・ブッシュによるハメ込み式へと変わっている。

以前は溶着技術にメーカー間格差があり、特定の車種で溶着不良による内部への浸水がよく見られた。

電球(左:口金タイプ 右:ウエッジタイプ)
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電球(左:口金タイプ 右:ウエッジタイプ)

電球は規格化された口金タイプが使用され、JIS-C7506に規定されるBAタイプ、特にBA15sがよく使われる。このタイプは電球の口金側面に短いピンがあり、ソケットの口金側面に切られたL字型の縦溝にそってまっすぐ挿入した後、電球を捻ってピンを横溝に引っかける(スワン式と呼ばれ、ねじタイプのエジソン式に比べて振動に強い)。電球の極性は中心電極がプラス、口金部がマイナス(アース)で、ソケット底部にはスプリングが内蔵されており、電球を押し返してピンを横溝に圧着させる事で電球を固定するのと同時に、アースを確保している。通常ランプユニットは樹脂製のためボディアースは使用できず、カプラー化されたソケットからコードでアース接続されている。

ターンシグナルの電球は一般的に、フロント用が15または21~27W、リア用は21~27W(21、23Wが主流)が使われる。サイド用は小型であり、電球もウエッジタイプと呼ばれる小振り(5Wが主流)のものが使用される。いずれの場合も電球の交換には工具を使わなくてすむように考慮されて設計されている場合が多い。 ただし、近年のコンパクトカーやファミリーカーのクラスの車種では、電球交換の知識と技量を持たないユーザーに触られることを嫌い、点滅しなくなったときには販売店や整備店に相談するよう取扱説明書で指示しているものもある。

2002年頃からLEDの高輝度化に伴い、半永久的な実用性(不点寿命)、視認性向上、消費電力低減などのメリットから方向指示器にLEDを採用する車種が増えている。

普通の車に後付けするための口金タイプなどのLEDランプも発売されているが、中には安価な汎用LEDを用いた商品もあり、光が拡散せずに照射範囲が保安基準を満たさない「粗悪品」もある。電球は消灯している時はフィラメントが冷えており点灯時より抵抗値が低くなっているので、点灯する瞬間に定常電流の10倍近くの大きな電流が流れる(突入電流)が、LEDでは突入電流は発生しない。一見、LEDのほうが突入電流が発生しないため好ましいように思えるが、元々、電球を取り付けるよう設計されている車両では、突入電流を利用して機械式リレーの接点のゴミを焼き切り接点の接触不良を防止するように設計しているので、LEDに交換するとウインカーリレーの接触不良を招き故障に至らしめることがある。また消費電力が極めて小さいことから、装着車両側が認識できずに球切れを表示することもあるので注意が必要である。

ポンティアック・フィエロのシーケンシャル・リア・ターンシグナル
ポンティアック・フィエロの
シーケンシャル・リア・ターンシグナル

北米仕様車のターンシグナルは、日本・欧州のそれと比べ独自色が強い。北米仕様車は、フロントターンシグナルは橙色の車幅灯(スモールランプ、ポジションランプ)と兼用したものが多く、これも動作が別途切り替わるのではなく、光の増減のみで動作を示す「明滅式」である。リアターンシグナルは、日本では在日米軍の車両以外では現在認められていないブレーキランプやテールランプとの兼用型がよく見られる。また、サイドマーカー(側面方向指示器)は装備しなくても良い。

当然、これらの北米仕様車を日本に輸入し販売する際は、サイドマーカーや独立した後部ウインカーを増設するなどの保安適合措置が必要とされる(なお、当記事では「サイドマーカー」の語を「車体側面の方向指示器」の意で用いているが、アメリカ車愛好家の間では「サイドマーカー」とは車体の四隅・前後部先端の側面に取り付けられる北米仕様車独自のスモールランプを指す場合がある)。

日野自動車の大型観光バスであるセレガ(旧型)のフロントターンシグナルは、オーナメントランプとしても使用されている。前照灯の点灯時は連動して常時点灯しているが、ターンシグナルとして点滅する際の点灯光量は常時点灯時よりも多く、点滅しない側のオーナメントランプとの差を設け誤認を防いでいる。

[編集] 操作部

[編集] ウインカー・スイッチ

方向指示器の操作部は、合図の開始と方向を指定するウインカースイッチが主なものである。初期の車用ウインカースイッチはダッシュボード上に装備されたトグルスイッチ等の電気的スイッチが主流であった。左右(あるいは上下)2方向に接点を有するスイッチがよく使われ、ドライバーは合図の開始と終了を、スイッチON / OFFすることで操作していた。1950年代頃からハンドル操作を阻害しないようにと、ステアリングコラムから延びるスティック状の操作桿(レバー)が主流となりウィンカー・レバーとも呼ばれるようになった。ステアリングコラムに装着された事によりハンドル操作と連動させる事が容易になり、ハンドルを戻した時に自動的に操作桿が中立位置まで戻り合図がOFFとなるオートキャンセルの装備が進むこととなる。ただし、オートキャンセルはアメリカ車等ではステアリングポストに装備された初期から普及したが、欧州車などでは近年までオートキャンセルを装備しない車種も見られた。

標準的なオートキャンセル付きスイッチの場合、レバーを操作して一定の位置を越えるとクリック感があり、スイッチがON位置で固定されオートキャンセルの待機状態となる。クリック位置を越えずにレバーを保持し続けると、合図は継続するがレバーは固定されず、指を離すとバネの力でレバーは中立位置(OFF位置)まで戻る。レーンチェンジなどの微少なハンドル操作の場合、ハンドル舵角が少ないためにオートキャンセルが作動しない場合が多く、戻し操作を手動で行う必要がある。上記機能はこの戻し操作の手間を大幅に軽減することができるが、初期のオートキャンセルには備わっておらず、この機能の普及初期には「レーンチェンジャー付き」と称したメーカーもあった。

 コンビネーションスイッチ(左)と単独スイッチ(右)
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 コンビネーションスイッチ(左)と単独スイッチ(右)

日本車の場合はウインカースイッチと、ヘッドライト等の他の燈火類のスイッチを組み合わせて操作桿としたコンビネーションスイッチが主流である。欧米車においてはヘッドライト等のスイッチがダッシュボードに装備されている場合もあり、ウィンカースイッチ単独の操作桿も見られる。また、まれにダッシュボードから板状の操作スイッチをハンドル付近に延ばす方式(三菱ギャラン)や、メーターパネルの角にロッカースイッチを装備する方式(シトロエンBX)なども見られる。

ウインカースイッチの位置は、日本国内で販売される国内メーカーの車では通常ステアリングコラムの右側に装備されているが、海外においては左右ハンドル位置にかかわらず左に装備される場合が多い。これは、ISO規格でウインカースイッチの位置が左側と規定されているためである。[1]そのため、日本国内で販売される日本車と、海外の左側通行国の中でも特に欧州圏(イギリス・アイルランド・マルタ・キプロス)で販売される右ハンドルの日本車とでは、ウインカースイッチの左右位置が違うという状態になっている。

  • イギリスは左側通行だが、現在生産されているイギリス車のウインカーは、右ハンドルにおいてもステアリングコラムの左に装備される。ただし、ISO規格が登場する以前は右側に装備した車種が大半であった。マニュアルトランスミッション車の割合が高い欧州で右ハンドルの場合、変速操作とウィンカースイッチ操作を同時に行わなければならない機会は多く、現在でも安全上の観点からこのISO規格の見直しが論議されている。
  • メルセデス・ベンツは、通常、ウインカーとワイパーの操作を一本のレバーで操作することが出来るよう一体化している。誤操作防止のためであるが、かつてこのレバーの位置には「右ハンドル=ステアリングコラムの右側/左ハンドル=左側」というポリシーが貫かれていた。(モデルW201W124W126の時代まで) 現在は、ISO規格と同様、レバーは左に統一されている。
  • 日本向けの輸入車の一部には、日本国内に合わせ右ハンドル/右側ウインカーを採用している車種がある。(GMサターン、GMキャディラック・セヴィル(4代目モデル)、キャディラック・CTSヒュンダイ各車など)

オートバイのウィンカースイッチは左ハンドルのグリップ付近に左右方向(または上下)のスライドスイッチが装備されている場合が多いが、ハーレーダビッドソンなどの一部車種では、左右のグリップ付近にそれぞれ右ウインカー、左ウインカーのスイッチが装備されている場合もある。ホンダスーパーカブでは「そば屋の出前持ちが片手で運転できるように」との配慮から、スロットル操作を担う右グリップ側に装備されている。オートバイは機械的スイッチを作動させるほどハンドルの回転角がなく、ハンドル連動式のオートキャンセルは装備されなかった(ウインカーが作動してから一定時間経過後に走行距離でOFFとなる時限/距離式のオートキャンセルが装備された事はある:カワサキ・Z1-R/Z1R-IIなど)が、代わりにオートバイの機構としてプッシュキャンセルが開発された。これは左右に動くスライドスイッチだが、スイッチは指を離すと中立の位置に戻り、さらに中立位置ではスイッチを押し込める(プッシュ)ようになっており、プッシュすると方向指示器の動作が終了するという機構である。プッシュキャンセルは中型以上の自動二輪を中心に広く普及したが、長年装備しない車種も見られた。1982年ホンダCBX400Fインテグラが角度検知センサなどを使用したオートキャンセルを装備したが、当時は動作が安定せず姿を消している。2000年前後になり大型スクータの人気が上昇するに伴い、装備の充実が見直されることとなり、最新のセンシング技術を用いたオートキャンセルが開発されて、普及している。

[編集] ハザード・スイッチ

メルセデス・ベンツのハザードスイッチ 外形とシンボルマークは三角停止板を模している
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メルセデス・ベンツのハザードスイッチ 外形とシンボルマークは三角停止板を模している

ハザードランプのスイッチはウインカースイッチと別体で用意される。ハザードランプはもともと停車中に使用するものであり、通常操作しやすいとはいえないハンドルの後ろ側のステアリングポスト上側などに装備されていた。現在でもアメリカ車の一部はステアリングポスト上側についている車種が多い。

1980年代、メルセデス・ベンツが緊急時のサインはあらゆる合図に優先するとのポリシーから、ダッシュボード中央の最も目立つ場所にハザードスイッチを装備するようになった。これに追随する格好で、現在、日本車と欧州車のほとんどの車種ではダッシュボード上などの操作しやすい位置にハザードスイッチを装備している。助手席からも操作できる位置にあるため、走行中の緊急時には助手席同乗者がスイッチ操作を補助できるようになった。

また、トラック・バスのハザードスイッチはステアリングコラム左側のレバーを手前に引くように設計されている車が多く、もう一度手前に引くことにより消灯する。これは、ハンドルから手を離さなくても操作できる事が利点であり、トラックドライバーからは一定の評価を得ている。

一方でオートバイはハザードランプの装備義務がないこともあり、独立したスイッチを装備しないものも多い。こういった車種にハザードランプを追加する場合は、別体スイッチを装備する場合もあるが、ウインカースイッチを利用して特定操作(例えば右、左、キャンセル、など)によってハザードランプを作動させるようにしたものも存在する。

[編集] インジケータ

 インジケータ左右別(上)と共通(下)
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 インジケータ左右別(上)と共通(下)

操作部の、もう一つの装備として、ドライバーやライダーに合図の動作を知らせるインジケータがある。多くの場合、メータパネル上に表示部と同調して点滅するランプが装備され、また、聴覚による動作確認として点滅のクリッカー音が発せられる。インジケータは日本車の場合、左右別のランプが装備される場合が多いが、欧州車の場合、動作が確認できれば良いとのポリシーで左右共用のランプを一つだけ装備する場合もある。オートバイの場合にはメータパネルのスペース上の問題から、左右共用タイプも比較的多くみられた。

動作音はリレーの動作音をそのまま利用する場合が多いが、操作部の電子化が進んだ車種では電子合成音を採用する事もある、ただ、その場合でもクリッカー音に似せる場合が多い(おそらく、習慣的な要求によるものと思われるが、まれに電子音然とした音色を採用した例もある)。また、トラックなどの大型車は方向指示を出したときにチャイムやチャイムと(右または左)へ曲がりますと音声で外の歩行者などに知らせるものもある。一部の路線バス車両では、左の方向指示器を出したときにチャイムが鳴るものがある。これによってバス停にいる乗客に停車を知らせることが出来る。

[編集] 制御部

制御部の主な機能は、ランプ(表示部)を一定間隔で点滅させる事である。点滅の周期は、日本アメリカの法令では毎分60~120回の一定周期と定められている。また、その他の地域においても、欧州を中心とした標準化委員会において同様の規格が採用されている[2]

点滅制御は通常リレー(ウインカー・リレー)が使用される。ウインカー各ランプの点滅は安全性の問題から完全に同期する必要があり(点滅時期がずれると、仮現運動知覚apparent motion perceptionにより幻惑されるおそれがある)そのため、各ランプは通常一つのリレーによって制御される。

ウインカー・リレーは、通電すると接点部分が一定間隔でOFF/ONを繰り返す素子であり、ランプへの給電ラインの途中に接続される。操作部のスイッチによりランプへの通電が開始されると同時にウインカー・リレーは動作を開始し、点滅制御を開始する(ランプへ通電する時は必ず点滅する回路となっている)。

従来ウインカー・リレーはサーモスタットに使用される物と同様のバイメタル方式が使用されてきた。これは温度変化に伴って形状が変化する2種類の金属を貼り合わせたバイメタルと、通電時に発熱するヒータを備えるもので、通電が開始するとバイメタルが変形しON(またはOFF)となり、同時にヒータへの通電が切れ、バイメタルが元の位置に戻る、以後同様の動作を繰り返すことで点滅制御を行う。バイメタルは金属物性を動作原理とするもので、非常に耐久性に富み、特性も極めて変化しにくい(=点滅周期が安定している)ためこの方式は長年主流であった。ただ、ヒータ部については加熱/冷却が繰り返されるため安定性の高い金属が採用され、これが部品を比較的高価としていた。

電気回路の発達に伴い、大容量キャパシタ(コンデンサ)を利用した電気式リレー(渦電流式と呼ばれる)も使用されるようになるが、キャパシタ(コンデンサ)の容量劣化による点滅周期の変化が起きやすく、寿命の点ではバイメタル方式の方が優れていた。さらに電子回路の発達によりタイマICなどの半導体素子による制御による電子式リレーが登場する。ウインカー・リレーに使用される半導体制御式リレーは、通常の半導体リレー(電流接点自体も半導体で構成される)と異なり、点滅制御は半導体制御で実施するが、リレー自体は機械式のものを採用している。近年では、リレー自体もパワー半導体に置き換えるものも見られるようになってきている。電子式リレーは点滅精度では最も安定しており、部品単価も抑えられるため、近年はほとんど電子式リレーが採用される。

なお、高度に電子化された近年の自動車においては、車両構成部品点数削減によるコスト低減のために、バイメタル方式や電子式リレーを単体で設置せず、室内灯やドアロックなど他のシステムを制御するコンピュータユニットにウィンカー点滅制御を統合することがほとんどになっている。

機械式リレーを採用するもうひとつの理由は、断続時に生じる機械的作動音(メカニカルノイズ)により点滅の動作状態を聴覚的に認識できることである。近年では半導体リレーも用いられるが全くの無作動音化されてしまうので、この場合、機械的作動音を発生させるための発音回路を付加したり、ランプ点滅に寄与しないごく小さな機械式リレーを付加することが行われる。

制御部のもう一つの役割が、ランプの状態監視である。日本、アメリカ、EUの法令、規格では、方向指示器はランプ切れなどのトラブルが発生した場合に、異常をドライバに通知するように定められている[3]

通常、この機能もウインカー・リレーが請け負っている。ウインカー・リレーと各ランプは、それぞれ並列に接続されており、ランプのどれかが切れたとしても他のランプは点灯(点滅)可能である。しかし、ランプが切れる事によりウインカー・リレーの負荷が変化し(通常は負荷が減る)、点滅制御の特性を変えるようになっている(バイメタル式であればヒータの発熱量が変化する、電子式であれば時定数抵抗値が変化する、近年の電子式であれば電流検出抵抗により電流値の変化を検出する)。これにより、ウインカーランプの点滅間隔が短く(いわゆるハイフラッシャ状態)なったり、点灯状態にすることで異常をドライバに知らせるようになっている。

なお、近年の電子制御の発達により、イモビライザーに代表される盗難アラーム、遠隔ロックなどのリモコン機能が実装されるようになり、その車両側応答インジケータとして方向指示器が使用される傾向がある(アンサーバック機能)。これらの場合は、それぞれの回路はウインカーリレーとは別体に設置され、ハザードスイッチと同様の出力をウインカーリレーに一定時間与えるようになっており、これにより、これらの回路が故障したとしてもウインカー動作に影響が与えない配慮がされている。また、ハザードのポリシーを更に発展させて、エアバッグなどの安全装備と連動して、事故時に制御部が自動的にハザードを発するオートハザード機能を搭載する車種も増えている。

[編集] 法令、規格

方向指示器に関する法令、規格は次のようなものがある。

[編集] 日本

  1. 道路運送車両法第41条第1項第15号(方向指示器を装備しない自動車(二輪車等含む)の運用禁止)
  2. 道路運送車両法第44条第1項第9号(方向指示器を装備しない原動機付自転車の運用禁止)
  3. 道路運送車両の保安基準第41条(自動車・自動二輪車の方向指示器に関する詳細を定める条項)
  4. 道路運送車両の保安基準第41条の2(補助方向指示器に関する詳細を定める条項)
  5. 道路運送車両の保安基準第41条の3(非常点滅表示灯に関する詳細を定める条項)
  6. 道路交通法第53条(車両の進路変更時の合図に関する条項)
  7. 道路交通法第120条第1項第8号(進路変更時の合図不履行に関する罰則条項)
  8. 道路交通法第120条第2項(不必要な合図に関する罰則条項)

[編集] アメリカ

  1. Federal Regulations part571 Federal Motor Vehicle Safety Standards No.108 "Lamps, reflectivedevices, and associatedequipment"(方向指示器を含む灯火類に関する法律)
  2. SAE(Society of Automotive Engineers) Standard J588e"Turn Signal Lamps for Use on Motor Vehicles"(アメリカ自動車工業組合による方向指示器の構造規格)

[編集] EU

  1. UNECE Regulations (1958 Agreement and addenda)Addendum 5: Regulation No. 6"UNIFORM PROVISIONS CONCERNING THE APPROVAL OF DIRECTION INDICATORS FOR MOTOR VEHICLES AND THEIR TRAILERS"(方向指示器の構造規定)
  2. UNECE Regulations (1958 Agreement and addenda)Addendum 47: Regulation No. 48 INSTALLATION OF LIGHTING AND LIGHT-SIGNALLING DEVICES(方向指示器を含む灯火類の実装規定)

[編集] 様々な用法

本来、方向指示器は進路変更時の合図、ハザードランプは停車中の車両が交通の障害物(=ハザード)となっていることを表示するため(日本に限っては夜間駐停車中の使用が含まれる[4])に備えられている。 しかし、方向指示器、ハザードランプを本来の目的以外の様々な合図に使用する事が行われている。車両から何らかの合図を発信するには灯火類を使用するのが有効であるが(特に夜間)、前照灯テールランプなどの灯火装備は本来目的以外の目的に使用するには光量が大きすぎる、操作性が悪いなどの問題があり、これらの条件から方向指示器が使われてきたと考えられている。

[編集] 方向指示器の用法

[編集] 進路変更時

原則、右左折時の交差点進入30m手前までに進路変更を完了、車線の左側もしくは右側に車体を寄せる。実際の進路変更動作の3秒前に方向指示器を点滅させるのが原則。あるいは二車線以上の道路で他の車線に移る場合に活用する。この場合、やはり進路変更の約3秒前に方向指示器を点滅させるのが原則。最も多く見られる使用法であるが、四輪自動車の右左折時前の進路変更に関してはドライバー自身が進路変更に関する事項を認識していないケースが多く、方向指示器を点滅させていても実際は全く進路変更をしていないケースがほとんどである。(酷いケースになると普通乗用車のサイズでさえ左折する際、なぜか右に頭を振る右への進路変更も見られる。内輪差を把握し切れていない技量不足が原因。)近年は方向指示器も出さないままの右左折待機が非常に多い。進路無変更のまま、信号が変わる直前にての方向指示器点滅による法令無視の左折は、自転車や原動機付自転車、自動二輪等を巻き込む主因ともなっている。

[編集] 実際の右左折時

こちらは実際に交差点に進入する際の方向指示器の点滅を指す。進路変更時の方向指示器とセットになるのが通常である。ただ、右左折待機中には点滅させず、進入する直前にしか点滅させないドライバーも多く(取締まり指導監督する立場にある警察車両ですら行うケースも珍しくないが、もちろん彼等が目を光らせ取り締まりに力を入れているノーヘルやノーシートベルトと比較しても事故を起こす原因運転という意味においてははるかに危険な運転である)、左折時のそれは巻き込み事故の元になっている。

[編集] 排気ブレーキ使用時

大型、中型車には通常のブレーキの他に、排気を強制的に制限する事で強力なエンジンブレーキを発生させる排気ブレーキが装備されている。従来、排気ブレーキによる制動時は制動灯が点灯しなかったが、排気ブレーキの作動に気付かない普通車等の後続車が追突する事例があった。そこで排気ブレーキの作動時に方向指示器、あるいはハザードランプを点滅させる用法が見られたが、2000年代に入り排気ブレーキ使用時にも制動灯を点灯させるシステムが普及し、ほとんど見られなくなった。

[編集] 追い越しの意思表示

高速道路走行時などに、先行車に対して追い越しを開始する旨の伝達にはヘッドライトを用いたパッシングが使用されるが、追い越し車線を走行中に低速車に追いついた場合に、さらに道路の中央寄り(左側通行であれば右、右側通行であれば左)の方向指示器を点滅させる用法が見られる。行き場のない側へ車線変更することから転じて、先行車に進路を塞いでいる旨を伝える意味がある。
パッシングは先行車のドライバーに必要以上のプレッシャーを与えるために威圧感を生じさせない意味(日本ではパッシングを原因としたトラブルもあり、エチケット的意味で)で、また欧州においては一般に追い越しの行われる速度や頻度が日本より高く、追い越しをしようとする車とされる車との間でも意思疎通を行う慣行(追いつかれた車両が対向車線寄りの方向指示器を点滅させた場合、対向車・先行車があり「この場所での追い越しは危険である」との意思を表示する)から一般道・高速道路ともに用いられている。
なお高速道路の速度制限が非常に厳しいアメリカにおいては、本用法はほとんど見られず、一般道にはみ出し禁止規制の多い日本において、追い越ししようとする車両と追いつかれた車両との意思疎通用法としては確立を見ていない。

[編集] 譲り合い時の合図

大型車同士がすれ違うことのできない道路で、譲られた車が進行するときに右ウインカーを出す場合は、中央線がない場合(ある場合ならすれ違える)道路中央を大きく越えるという意味で使われる。また、高速道路本線第一通行帯の走行車両が加速車線からの車に前方進路を譲り流入を促す場合に、左ウインカーを点滅する場合がある。これは、誤解を招く可能性が大変高く危険な場合があるが、パッシングよりは誤解を招かないと考えられる。さらに、高速道路本線第一通行帯を定速走行中の大型車が、自車よりも速い車両に追いつかれた場合、後続車両に追い越しを促す意味で左ウインカーを点滅する場合がある。追いついた後続車両は大型車によって前方視界が塞がれている場合が多く、前車による安全な追い越し可能の意思表示ともいえる。この場合においても追い越す車両側に充分な安全確認が求められるのはいうまでもない。

[編集] リバース(バック進行)時の方向指示

本来、方向指示器は進路を変更する場合に使用しなくてはならない。その意味ではリバース(バック進行)時に進路変更する場合(車庫入れ、スイッチバック等)にも使用すべきものであるが、リバース時の使用については地域によって扱いが異なる。日本では後述のリバースハザードが使用される事からもあまり厳しく取り扱われない。一方、アメリカでは運転免許取得時の試験で必ず評価される州があるほど全体的に厳しく扱われる。

[編集] ハザードランプの用法

[編集] リバースハザード

大型車が転回、あるいは車庫入れなどの大きな方向変更する際に周りにバックの意志を明確にする目的でリバースの間ハザードランプを点滅させる用法が見られる、本用法はバスの方向転換時に使用され始め、徐々に他の大型車にも普及している、現在ではギアをリバースポジションに入れると自動的にハザードランプを点滅させる後付回路が販売されている。しかし、現在の法律ではリバースポジションに入れたときに自動的に点灯(点滅でも)する灯火は後退灯とみなされる為、そのような後付回路を取り付けた場合は保安基準に抵触するので注意が必要である。

[編集] 低速車の警告表示

車両トラブル、他車による牽引などで制限速度を大幅に下回る速度で走行する場合に、周囲の車両に注意を促す意味でハザードランプを点滅させる用法がある。この用法は危険を周囲に伝えるという意味で非常事態に準ずる用法として推奨されており、アメリカのSAEスタンダードのように明文化[5]している国も存在する。

[編集] 渋滞最後尾警告

高速道路などの渋滞最後尾についた場合などに、後続車に追突などの注意を促すためハザードランプを点滅させる用法がある。本用法も危険状態を周囲に通知するという意味で使用される。JAFは会員向け機関誌「JAFMATE」でこの使用法について触れており、イギリスなどでもこの使用法が見られる。用いる場合は、渋滞最後尾につく以前、渋滞発見時点の走行中から点滅を開始することが奨められる。

[編集] 濃霧走行時の警告表示

山岳部、海岸付近を通る高速道路、一般道を走行中に濃霧にあってしまった場合、「 渋滞最後尾警告」と同じく後続車の追突注意を促す為ハザードランプを点滅させる用法がある。(碓氷峠付近でこの用法がしばしばみられる。)

[編集] サンキューハザード

走行中の車両同士でコミュニケーションをとることは困難であり、また一般車両では専用の装備は搭載されていない。ハザードランプは通常の走行状態では使用しない合図であり、また前述の通り、最近の自動車においてはハザードスイッチが操作性のよい位置に移された事もあって、これをコミュニケーション手段に用いる用法が見られる。
当初は様々な意味で使用されたが次第に他車から進路を譲られた場合などに、感謝する意味で使用する用法が定着した。典型的用法は、渋滞中の本線合流などで、列に入れてもらった車両が、譲ってくれた後方の車両にハザードランプを数回点滅させる。これを感謝の合図という意味でサンキューハザードと称し、日本固有の使用法である。現在ではかなり定着したサンキューハザードであるが、これに対する批判も根強い。本来ハザードランプは交通を妨げる障害物となっている車両を察知しやすくさせるための合図であり、非常に重要な意味がある。これを他の目的に使用すると、目的外使用に慣れたドライバーが肝心のときに事態を的確に認識できなくなり、深刻な事態を招くおそれがあるというのが理由である。なお、「JAFMATE(前述)」によればこの用法は地域によっては浸透していないことがあり、他地域の車のサンキューハザードを緊急停車と勘違いして急ブレーキを踏み、事故につながった事例もあるとのことである。サンキューハザード向けの商品として、操作性向上を目的とするハザードスイッチ内蔵のシフトノブや、一定回数(2回や3回)点滅後に自動復帰するスイッチと後付回路が市販されたことがある。

[編集] 交差点での注意励起

交差点進入の際、単に自車の存在をアピールする目的でハザードランプを点滅させる用法が見られる、この用法はタイインドネシア他の東南アジアにおいて信号などの交通制御インフラが未整備の地域で見られる。当然本来の方向指示器の意味と矛盾するため危険な行為であるが、本用法が使用される地域では方向指示器の使用頻度が低いために重大な混乱を招かないという事情がある。

[編集] 自動車教習所内における警告

日本の自動車教習所で、キックダウンによる急発進、急制動などの危険回避教習を行う場合、安全性確保のために前照灯とハザードランプを併用して、周囲に注意を促す。

[編集] 特記項目

[編集] クリアレンズウインカー

クリアレンズウインカーは透明なレンズカバー(ランプカバー)を使用したものである。

方向指示器の表示部は法令で色が規定されていることもあり、橙に着色した樹脂レンズカバーを使用するのが一般的であった。橙色が視認性が高い色であることが規定の根拠であったが、これは同時に、方向指示器の存在が自動車のエクステリア(外装)デザイン上において非常に目立つと言うことである。特に外装が白などの淡色系のカラーの車の場合、フロント周辺には他に目立つ色の装備が存在しないこともあり、さらに顕著となる。従って、方向指示器をデザイン上どの様に消化するかが、エクステリアデザイン上の重要なポイントとなっていた。視認性を損なわない程度に小さくする、逆に強調させてアクセントとするなどの様々な手法が使われ来たが安全性が重要視されるようになってからは目立たないデザインは避けられるようになる。

このような風潮の中、逆転の発想としてレンズカバーを透明とし点灯時のみ橙色とするアイデアが生み出された。法令上の方向指示器は使用時の色を規定するとし、未使用時の色は問わないとする解釈である。元々、道路交通法において進路変更時の合図は、方向指示器に限らず昼間であれば前述のハンドサインでもかまわないと規定されている。夜間においては視認性の問題で方向指示器を使用する必要があるが、この場合、合図が視認されるのは点灯時のみである。したがって、装備使用上の条件に沿えば点灯時の状態のみを方向指示器と定義することができたのである。使用する電球などを、保安基準に適合した橙色で点滅させる事ができれば問題はないとされた。

クリアレンズウインカーは、メルセデス・ベンツがCクラスのマイナーチェンジで採用し、フロント周りの印象を大きく変える事に成功、その後大流行した。前述の通りフロント部分では他に目立つ色の装備が存在しない事から、方向指示器をクリアレンズ化しただけで雰囲気を一変させる事ができたのである。比較的安価な部品であった事も手伝い、アフターマーケット向けのドレスアップパーツとして多数車種のクリアレンズカバーが販売されるに至る。

しかし、当時は着色球があまり出回っていなかったこと、また、着色球を装備すると若干レンズを通して球の色が見えることから、クリア球のままクリアレンズとする者が多数見られた。本来、方向指示器の球は着色レンズを透過して十分な輝度を保つため、普通想像する以上にハイパワーである。単にレンズカバーのみをクリアに交換した場合、色において法令違反であることはもちろん、使用時に他者が眩惑されるほど眩しく非常に危険であった。

このような一時期の流行を経て、現在ではエクステリアデザインの定番として定着しており、多くの車に採用されている。また、リア側はブレーキランプと一体化させたものが多いが、この場合はブレーキランプも保安基準に適合した赤色に点灯させることが必要である。なお、反射板の設計にもよるが着色球の色が若干レンズを通して見える場合が多く、これを嫌う向きもあり、以下の画像のようにクリアレンズとLEDを組み合わせると無灯火状態ではほぼ無色となることから人気となっている。

[編集] 補助方向指示器

[編集] ドアミラーウインカー

ドアミラーウインカー。写真右が点灯時。
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ドアミラーウインカー。写真右が点灯時。
ドアミラーウインカー。写真右が点灯時、6個のLED光源が見える。
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ドアミラーウインカー。写真右が点灯時、6個のLED光源が見える。

ドアミラーウインカー自動車ドアミラーに方向指示器を付けたものであり、安全対策を図った装備である。メルセデス・ベンツSクラスで初めて採用し、国産車でも採用されるようになった。また、ドレスアップ用に後付けパーツとして売られている車種もある。なおドアミラーウインカーは道路運送車両の保安基準の第四十一条の二に規定された補助方向指示器の扱いとなる。形状が似ているオートバイ用のミラーウィンカーはフロントウィンカーであるため、車両前方から視認できるよう車両進行方向へ配光されており、補助方向指示器ではない。

[編集] 国産搭載車種の例

最近では下記の様に標準装備される車種が増えている。

クラウンカムリウィッシュなど数多くの車種にディーラーオプションで設定。ラクティスエスティマラッシュなどでは標準装備。
シーマ(標準)、エルグランド(標準)、マーチ(グレード別)
アコード(標準)、アコードワゴン(標準)、シビック(タイプ別装備)、フィット(タイプ別装備)インスパイア(標準)、エリシオン(標準)、ステップワゴン(タイプ別装備)、エディックス(標準)、レジェンド(標準)、オデッセイ(M/C前はオプション設定、M/C後は標準装備)、CR-V(3代目より標準)、ストリーム(オプション)
アテンザアクセラデミオ(オプション)、MPV(23T、23Cスポ-ティ-パッケ-ジに標準、その他のグレ-ドにオプション)
グランディス(標準)
レガシィ(B4、ツーリングワゴン、アウトバックのいずれも標準)、フォレスターステラ・カスタム
ビーゴ(標準)、ムーヴラテ(標準)、ムーヴ(4代目より標準)、タントカスタムミラジーノエッセ(オプション)
ワゴンRアルトMRワゴンエスクードスイフトSX4(いずれもオプション)

[編集] タクシーウインカー

タクシーは客を見つけると停止したり方向転換することが多いため、地域によっては屋根の上に方向指示器をつけて目立つようにしている。

[編集] 自動車・オートバイ以外の方向指示器

自動車、オートバイ装備以外の方向指示器としては以下のものがある。

自転車の一部車種にフラッシャとも呼ばれる方向指示器が装備されている、使用目的は自動車・オートバイ用のものと同様であるが法律などによる規定が存在しないために、その形状・動作は様々である。多くのものは横一列に並べた赤色ランプを発光パターンによって光が流れるように見えるフラッシュアクションを電気制御によって行う。また自転車は搭載電源を持たないために、乾電池を用いる。
自転車の方向指示器は1960年後半から子供用自転車に多く採用されたが、ギミック的な要素が多く実用性に疑問があったこと、また自転車の重量が増加することなどから1990年代にはほとんどが姿を消している。
戦車に代表される戦闘車両は、多くの国で一般車両の法令、規定適応の例外として扱われており、方向指示器を装備する義務はない。しかしながら近年では、一般道路を走行する場合の周囲への安全を考慮して方向指示器を装備している車両が多い。しかし、これらは法令、規定に沿ったものではなく、あくまで自主的な判断として装備しているもので、一般車両の方向指示器とは異なった実装がされている。一例として、日本の90式戦車の全長であれば、方向指示器は前後のみではなく側面に補助方向指示器が必要とされるが、実際には装備されていない。これらの事情はEU圏の戦車においても同様である。
  • 列車踏切の方向指示器
列車の踏切に装備される、通過する列車の進行方向を表して点灯する矢印型のランプを方向指示器と呼ぶ(正式には列車進行方向指示器)。

[編集] 脚注

  1. ISO 4040 Road vehicles Location of hand controls, indicators and tell-tales in motor vehicles
  2. UNECE(United Nations Economic Commission for Europe:国連欧州経済委員会)Regulations (1958 Agreement and addenda)Addendum 47: Regulation No. 48 Section6.5.9 "Other requirements"
  3. 日本の法令:国土交通省告示第六百十九号「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」別添40「灯火器及び反射器並びに指示装置の取付装置の装置型式指定基準」4.5.7.2項
    アメリカの法令:Federal Regulations part571 "Federal Motor Vehicle Safety" Standards No.108 "Lamps, reflectivedevices, and associatedequipment" Section5.5.6
    EUにおける条約:UNECE Regulations (1958 Agreement and addenda)Addendum 47,Regulation No. 48 "INSTALLATION OF LIGHTING AND LIGHT-SIGNALLING DEVICES" Section6.5.8 "Tell-tale"
  4.  :道路交通法第52条第一項,道路交通法施行令第18条第二項
  5. SAE Standards 890688 The Interaction of Tun,Hazard and Stop Signals

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 荒井 久治 『自動車の発達史〈下〉―ルーツから現代まで』山海堂、1995年、ISBN 4381100689
  • 国土交通省自動車交通局技術安全部監修 『道路運送車両法の解説』交通総合センター、2003年、ISBN 487497001X

[編集] 外部リンク

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