カルト映画
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カルト映画またはカルトフィルムとは、熱狂的ファンによる小グループによって支持される映画、または、そのような支持者によって長年に渡って支持され続ける映画のことである。すなわち、ある種のジャンル・テーマ・モチーフ・演出方法等による分類方法ではなく、その作品が特定の観客にどのように受け入れられているか、という現象面によって分類されるべき映画である。当然、厳密な分類は期待できず、また、定義自体が変わらなくても時代や社会によって、その外延は変化する。
ある映画がカルト映画として成立していく条件は、特定の観客がその映画をどう受け止めるか、その映画に対しどのような関係を築いていくかに依っている。(商業的な成績は関係ない)
例えば、『ロッキー・ホラー・ショー』(The Rocky Horror Show、1975年、英) は、公開当時は商業的大失敗に終わったが、翌年のニューヨークでの深夜上映会を皮切りに、パーティのような気分で劇場に通い詰める観客が急増していき、ある種の社会現象となっていった。この映画を「最初のカルト映画」として推す声は現在でも多い。
以下のリストには、『スターウォーズ』のように今ではカルトというよりメインストリーム映画の扱いを受けているものもある。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] カルト映画に見られる特徴
一般にカルト映画と呼ばれるものにはいくつかの特徴があり、それ故に興行的に大ヒットを収めるケースは少ない。しかしながらその特徴故に一部のマイノリティからは熱狂的な支持を受ける作品である。また内容的に世間との軋轢を生み、社会通念上好ましくないとされる作品も少なくなく、場合によっては上映禁止やフィルムの没収、廃棄などもおこなわれるケースがあり、それが更に作品のカルト度を高める結果に繋がる場合がある。
- 難解なシナリオ
- 生理的嫌悪感を催すようなテーマ、演出(暴力、エログロ、異常なSexプレイ、ある種のフェティッシュなど)
- 社会通念的にマイノリティであるテーマ、登場人物の設定(畸形、同性愛者、性格異常者、特定の主義主張を叫ぶ者など)
- 差別用語の多用
- サブカルチャーとの接点
- 演出、シナリオなどでの薬物との関連性。
- 監督を含む制作関係者、あるいは役者による奇行(エピソードとして作品のカルト性を補完する場合がある)
[編集] カルト映画一覧
以下に、カルト映画と呼ばれる作品を公開年順に列挙する。()内は特筆ない限り監督。
- リストに加筆する方はなるべく「その映画のカルト性」も書いてください。リストを伸ばす前に必ず合意事項に目を通すこと。
[編集] 1930年代
- フリークス(トッド・ブラウニング)
- 全米からサーカス等で活躍する畸形の人物を集めて撮影された。
[編集] 1950年代
- 狩人の夜(チャールズ・ロートン、主演:ロバート・ミッチャム)
- 禁断の惑星(フレッド・マクラウド・ウィルコックス、主演:レスリー・ニールセン)
- SF映画。人間の深層心理を重要な要素とした物語で、B級エンターティンメントが主流だったSF映画としては異質なものだった。現在では先鋭的な作品として評価が高い。
[編集] 1960年代
- 作曲家の團伊玖磨の原案に基づき、山田洋次が脚本を書き監督した異色作。ハナ肇主演。村会議員に騙されて土地を手放してしまった母のために、少年戦車兵あがりの男が戦車で復讐を試みるナンセンスコメディで、山田洋次の「馬鹿シリーズ」(ほかに『馬鹿まるだし』『いいかげん馬鹿』)の最高傑作と言われる。
- 死霊の盆踊り(A・C・スティーブン)
- 基本的にはポルノ映画であるらしく、ストリップを見せることが目的だった模様。しかしその設定が「墓場でゾンビがストリップをする」という途方もないもの。事実上ストーリーらしきストーリーがないことも含めて史上最悪の映画としての悪名の高さゆえか有名になり、カルト映画の系列に名を連ねた。脚本はかのエド・ウッド。ちなみに、今では大手配給会社であるギャガ・コミュニケーションズが最初に配給した作品でもある。
- 華氏451(フランソワ・トリュフォー)
- 第一次世界大戦を舞台にしたコメディタッチの戦争映画。狂気と正気の境目を描く。ブロカ監督のチームの意欲作でもある。
- アーサー・C・クラーク原作のSF映画。リアリティあふれる画像と極めて難解な物語で毀誉褒貶が著しかったが、後日名声を確立。
- ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/ゾンビの誕生(生ける屍の夜)(ジョージ・A・ロメロ)
- 後に作られるゾンビ映画の礎的な作品で、多くの続編(正式なものだけでなく、勝手に名乗っているだけのも含む)やパロディ作品が制作されている。
- マジック・クリスチャン、キャンディ(原作:テリー・サザーン)
- 既存のハリウッド式映画製作に飽き足らなかった映画人がよってたかって作り上げた怪作。アメリカン・ニューシネマ系のみならず名声を確立していた俳優なども参加。ユル・ブリンナーがスキンヘッドのオカマを熱演していたりする。
[編集] 1970年代
- ディープ・スロート(ジェラルド・ダミノア)
- 惑星ソラリス(アンドレイ・タルコフスキー)
- ポーランドのスタニスワフ・レム原作のSF映画。人間の潜在意識を具現化する能力を持った海とその研究者の物語。ロシア映画の常としてたいへん上映時間が長く、ビデオが一般化する前はなかなか見られない作品でもあった。
- ピンクフラミンゴ(ジョン・ウォーターズ)
- 映画史上もっとも下品な作品とも評される。世界一お下劣な人間を競って繰り広げられる変態行為のオンパレードで、特に主演のディバインが犬の糞を食べるシーンは有名である。
- 従来のヒロイックな任侠映画と一線を画した殺伐とした暴力描写で、のちのヤクザ映画の方向性を決定づけた。この映画の影響があまりに大きかったため、主要な設定場面である広島、神戸には「ヤクザ」のイメージが定着してしまった。
- ロッキー・ホラー・ショー(ジム・シャーマン)
- モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル(テリー・ギリアム、テリー・ジョーンズ)
- 新幹線大爆破(佐藤純弥)
- 日本では予想ほどヒットしなかったが、特にフランスではカルト的な人気がある。その背景には、大戦後の鉄道の高速化競争において、最先端をかつてはフランスが独占していたにも関わらず、この当時には新幹線の後塵を拝する状況になっていたという事情がある(本作品はTGV開業前の製作である)。
- 片腕カンフー対空とぶギロチン(ジミー・ウォング)
- 低予算カンフー映画。キル・ビルでオマージュされたことで人気が再燃した。
- アメリカの病める現代社会を独特の映像美と音楽で綴った作品で、一部のファンに熱烈な支持を受ける。
- 「カルトの帝王」デヴィッド・リンチの長篇映画デビュー作。不安感をかき立てるようなモノクロの映像と奇妙な造形が強烈な印象を残す。
- スター・ウォーズ・シリーズの第1作。この作品が契機となってSF映画の大ブームが引き起こされた。
- アタック・オブ・ザ・キラートマト(ジョン・デ・ベロ)
- ライフ・オブ・ブライアン(T・ジョーンズ)
- マッドマックス(ジョージ・ミラー)
- 派手なカーアクションが見物のバイオレンス・アクション映画。また本作に登場する主人公の乗る車「インター・セプター」や暴走族の乗るバイクにも人気があり、車やバイクをこれらに真似て改造するファンもいる。世紀末的世界に変貌した続編の『マッドマックス2』も人気がある。
- 宮崎駿の初監督長編映画。本作は一部熱心なファンに支持されたにとどまり、ヒットメーカーとなったのは次回作の『風の谷のナウシカ』以降である。
[編集] 1980年代
- ブルース・ブラザース(ジョン・ランディス)
- シャイニング(スタンリー・キューブリック)
- B級エンターティンメント作品の名手によるシチュエーション・ホラー。荒廃の結果、閉鎖され自治が認められた牢獄となったマンハッタンにエアフォース・ワンが墜落し、大統領の救出作戦が行われる。低予算であるにもかかわらず極めて完成度が高く注目を集めた。
- イザベル・アジャーニの、本当に取り憑かれたようなエグい演技。北斎のタコの浮世絵を思わせるシーンやピンクの靴下など、ストーリーに謎が多い。
- トロン(スティーブン・リスバーガー)
- 世界初の「CG映画」というふれこみで製作された。物語は陳腐なものだったが、画像の新規性が注目を集めた。実際には大半がアニメーションと合成によるものだったが、CG利用の先駆的作品となった。
- フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作とした映画。原作小説もカルト的な人気を誇っていた。映画としては当初は著しい不入りだったが、その後ビデオレンタルで大ヒットした。
- オン・ザ・ロード(和泉聖治)
- デッドゾーン(デヴィッド・クローネンバーグ)
- コヤニスカッティ(ゴッドフリー・レジオ)
- 死霊のはらわた(サム・ライミ)
- 人生狂騒曲(T・ジョーンズ)
- 特にネットユーザー、特に2ちゃんねらーに絶大的な支持を集めている。
- バッド・テイスト(ピーター・ジャクソン)
- ヘルレイザー(クライヴ・バーカー)
- ロボコップ(ポール・バーホーベン)
- ヒドゥン (ジャック・ショルダー)
- アリス(ヤン・シュヴァンクマイエル)
- 裸の銃を持つ男(デヴィッド・ザッカー)
- 1999年の夏休み(金子修介)
- 寄宿制の学校。帰るところがない4人だけが残る夏休み。少年どうしの恋愛が自殺を引き起こす。耽美主義的な世界を丁寧に構築した小品。
[編集] 1990年代
- ドアーズ(オリバー・ストーン)
- 遊びの時間は終らない(萩庭貞明)
- 銀行強盗を題材としての防犯訓練が行われた。ところが犯人役をまかされた警察官が融通のきかない堅物で、大真面目にプランを立案し、逮捕役の警官を見破り、銀行に立てこもってしまう。いったい誰がどのように幕を引くのか。日本では珍しいくらいに羽目を外したコメディ作品。
- ニュー・ジャック・シティ(マリオ・ヴァン・ピープルズ)
- プロスペローの本(ピーター・グリーナウェイ)
- シェークスピアの真夏の夜の夢をモチーフとした作品。技巧的にはハイビジョンによる合成を世界で初めて映画制作に用いたことで注目されるが、ヨーロッパ神秘主義を基調とする耽美的演出と多数の裸体の乱舞などで物議をかもす。
- 少女椿(絵津久秋)
- 丸尾末広原作のコミックを映画化したアニメーション作品。作品中に畸形の描写であるとか差別用語、サーカス団体への偏見助長などがあるとされ、海外での映画祭公開後に日本に持ち帰ったフィルムが1999年に日本の税関で没収されてしまう。上映時には場面にあわせて劇場内にスモークを炊くなど独特の演出を要求していた事も特筆に値する。
- みんな~やってるか!(ビートたけし)
- パルプ・フィクション(クエンティン・タランティーノ)
- ゴッド・アーミー/悪の天使(グレゴリー・ワイデン)
- 悦楽共犯者(J・シュヴァンクマイエル)
- トレインスポッティング (ダニー・ボイル)
- フロム・ダスク・ティル・ドーン(ロバート・ロドリゲス)
- (ハル)(森田芳光)
- パソコン通信を舞台とした恋愛映画。この当時、パソコン通信は、まだかなり特殊な世界と思われていた。丁寧な描写もあり、パソコン通信ユーザからの熱狂的な支持を集めた。
- 斬新なストーリーと無機質な映像美で、一部のファンに熱烈な支持を得ている。
- 新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に(庵野秀明)
- スターシップ・トゥルーパーズ(P・バーホーベン)
- メン・イン・ブラック(バリー・ソネンフェルド)
- オースティン・パワーズ(ジェイ・ローチ)
- 1999年には続編『オースティン・パワーズ:デラックス』が公開された。
- CURE(黒沢清)
- パーフェクトブルー(今敏)
- ビッグ・リボウスキ(コーエン兄弟)
- イディオッツ(ラース・フォン・トリアー)
- 精神障害者のふりをして楽しむ人々を通して、人の偽善性を暴く。
- ブレア・ウィッチ・プロジェクト(ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス)
- マルコヴィッチの穴(スパイク・ジョーンズ)
- パイレーツ・オブ・シリコンバレー(マーティン・ バーク)
- 若き日のビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズの仁義なき抗争を描く。
[編集] 2000年代
- 最終絶叫計画(キーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ)