超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
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『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(ちょうじくうようさいマクロス あい・おぼえていますか)は、1984年7月21日(大阪および名古屋地区では7月7日)に東宝洋画系にて公開されたSFアニメ映画(上映115分)。1982年から1983年にかけて放送されたテレビアニメ『超時空要塞マクロス』の劇場用作品である。
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[編集] 概要
テレビシリーズが好評を博したことから、劇場版製作とロードショー公開が決定。この例では『機動戦士ガンダム』3部作のような再編集に新作カットを加えるダイジェスト形式が多いが、本作はファン人気にも支えられ全編新作フィルムで制作された。内容的にはテレビシリーズ第4話~27話を再構成したものだが、要点の抽出とオリジナルの味付けで、趣の異なる正統派の作風に仕上げられた。男女の恋愛や普遍的な文化(歌)を通して、地球人や異星人たちが「立場を超えて理解しあうこと」が簡潔に語られ、作品テーマへと昇華している。宇宙戦艦内に市街地がある理由など初見者には説明不足な面があるが、ロボットアニメの部類において、戦時下の人間ドラマとしても見応えのある作品となっている。
また、テレビシリーズを悩ませた作画の乱れも大きく改善されている。スクリーン映えする緻密な画面造りは当時のセル製作アニメの最高水準にあり、今日のCG製作アニメと比べても見劣りしない驚異的なレベルに達している。歌やBGMと一体化したドラマチックな展開はSFミュージカルとも評され、クライマックスにおいて例えようのないカタルシスを醸し出している(クライマックスの約7分強は日本アニメ史上屈指の名シーンである)。これらの魅力により、『風の谷のナウシカ』、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』と並び、1984年を代表するアニメ映画作品と賞されている。
監督はスタジオぬえの気鋭河森正治と、アドバイザー役の石黒昇。若干24歳の河森はテレビシリーズでバルキリーのメカニックデザイナーとして注目されたが、本作で人物の細やかな心情表現など映像作家としての感性も示した。その他、美樹本晴彦、板野一郎らテレビシリーズ制作スタッフに加え、原画には庵野秀明、合田浩章、森本晃司、北久保弘之、結城信輝らが参加している。
映画人気に乗り、主題歌『愛・おぼえていますか』はオリコンチャート上位に進出。歌手飯島真理(リン・ミンメイ役)は全盛期のTBSザ・ベストテンにも出演を果たした。エンディングテーマ『天使の絵の具』の背景にはリン・ミンメイのコンサート映像が流れる予定であったが、諸事情により制作が見送られた。公開3年後の1987年、このコンサートシーンを新作したOVA『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』が発売されたのを機に、本作もエンディングをこの新作映像に差し替えた『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 完全版』へ変わり、DVDなどの現行フォーマットになっている。
[編集] ストーリー
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
50万周期にわたり大宇宙で抗争を続ける巨人族の二大勢力、男のゼントラーディ軍と女のメルトランディ軍。西暦2009年、その戦火は地球にも及び、ゼントラーディ軍の奇襲をうけた地球統合軍の巨大宇宙戦艦SDF-1マクロスは、脱出時の動力不調から太陽系外周部へ飛び出してしまう。追撃をうけながら地球への自力帰還をめざす航海の5か月目、土星宙域から物語は始まる。
地球を離れる際避難した5万8千人の民間人は、広大な艦内に市街地を建設し生活を営んでいた。バルキリー隊パイロット一条輝はアイドル歌手リン・ミンメイや、上官早瀬未沙と近しい関係になっていく。そんなありふれた日常風景は、接触した巨人族たちの規律に思わぬ混乱を招くことになる…。
[編集] スタッフ
- 原作:スタジオぬえ
- 原作協力:アートランド
- 監督:石黒昇、河森正治
- 脚本:富田祐弘
- スト-リー構成、脚色:河森正治
- キャラクターデザイン:美樹本晴彦
- プロダクションデザイン:宮武一貴
- 作監:美樹本晴彦、板野一郎、平野俊弘
- 美術:宮前光春
- 撮影:橋本和典
- 音楽:羽田健太郎
- 音響:本田保則
- 制作協力:アニメフレンド
- 企画、製作:ビックウエスト、毎日放送、タツノコプロ、小学館
- 配給:東宝
[編集] 主題歌
『愛・おぼえていますか』 作詞/安井かずみ 作曲/加藤和彦 編曲/清水信之 歌/飯島真理
- 日本のアニメソング史上に残る名曲の一つといわれる。この曲は飯島真理の代表曲であり、1993年にリリースしたベスト盤「The Classics」で同曲をリメイクし、2002年リリースの「Mari Iijima sings Lynn Minmay」では弾き語りで同曲を歌っている。
- 後年カヴァーされることも多く、1995年に桜井智が「マクロス7」関連でリリースしたアルバム「Mylene Jenius sings Lynn Minmay」で最初にカヴァー(桜井は1997年にもCDドラマ「マクロス・ジェネレーション」において松尾早人編曲のバラード形式で同曲を歌っている)。2003年に下川みくにがアルバム「Review」で、2006年にMUH~がアルバム「ビタミンMUH~」でカヴァーしている。
- 他にもテレビゲーム、『スーパーロボット大戦α for Dreamcast』や『Another Century's Episode2』で挿入曲として使われた。
[編集] エンディングテーマ
『天使の絵の具』 作詞作曲/飯島真理 編曲/清水信之 歌/飯島真理
- この曲は飯島自らの曲の中でもっともバリエーションが多く、1984年発売のシングル版、同年発売のアルバム「blanche」収録版、1995年発売のベスト盤「Best of the Best」収録版、1997年発売のシングル「Friends~時空を越えて~」C/W版、2002年発売のアルバム「Mari Iijima sings Lynn Minmay」収録版と、それぞれ違うバージョンで歌っている。
- また、桜井智も「マクロス・ジェネレーション」において同曲をカヴァーしている。変わったところでは、フランス人シンガーJessy(ジェシー)が2005年のアルバム「ジェシーのワンダーランド」で「愛・おぼえていますか」とともに日本語でカヴァーしている。
[編集] 主要キャスト
[編集] 地球側
- 一条輝(声:長谷有洋)
- リン・ミンメイ(飯島真理)
- 早瀬未沙(土井美加)
- ロイ・フォッカー(神谷明)
- クローディア・ラサール(小原乃梨子)
- 柿崎速雄(鈴木勝美)
- マクシミリアン・ジーナス(速水奨)
- ブルーノ・J・グローバル(羽佐間道夫)
- ヴァネッサ・レイアード(佐々木るん)
- キム・キャビロフ(鶴ひろみ)
- シャミー・ミリオム(深雪さなえ)
- リン・カイフン(鈴置洋孝)
[編集] ゼントラーディ側
- ブリタイ7018(蟹江栄司)
- エキセドル4970(大林隆介)
- カムジン03350(目黒裕一)
- ワレラ25258(ジェフリー・スミス)
- ロリー28356(藤井つとむ)
- コンダ88333(ケント・ギルバート)
- ゴルグ・ボドルザー(市川治)
[編集] メルトランディ側
[編集] 注釈
[編集] マクロスシリーズ中の位置付け
本作はテレビシリーズ『超時空要塞マクロス』を元に制作されたものの、2時間の映画にまとめあげる上で設定の大部分にアレンジが施された。そのため、オリジナルの色合いが濃く、公開後ファンの間に「テレビ版と劇場版、どちらを公式設定(正史)と見なすのか?」という疑問が残った(パラレルワールドとも云われた)。その回答として、1990年代以降に製作された『マクロス7』などの続編作品内では、『愛・おぼえていますか』は「ゼントラーディ軍との第一次星間大戦(2009年 - 2010年)戦勝20周年を記念して、2031年に公開された歴史映画」と位置付けられるようになった(いわゆる劇中劇)。これとは別に『超時空要塞マクロス』はシリーズドラマとしてテレビ放送されたもので、演出により描き方が異なるものの、両作品も正史を扱った物語であると説明されている。
両作品の主な相違点は、
- 抗争図が「ゼントラーディ軍vs監察軍」から「ゼントラーディ軍vsメルトランディ軍」の男女関係へ。デザインも深海生物的なゼントラーディ軍と無機工学的なメルトランディ軍に色分けされた。
- マクロスは地球に墜落したメルトランディ軍の落伍艦を人類が修復したもの。その落伍艦を追ってきたゼントラーディ軍は、開戦5か月後(映画冒頭)でようやく地球人(マイクローン)が乗っていることに気づく。
- マクロスの両腕部が宇宙空母アームド-01、02へ。テレビアニメ版の左腕にあたる空母プロメテウスは撃沈された姿で登場する。
- キャラクターの設定や役柄。リン・ミンメイはすでにアイドル歌手、一条輝は軍人として出会うことになる。ゼントラーディ、メルトランディともキャラクター名はコードネーム(製造番号)付きになった。(例:ミリア・ファリーナ→ミリア639)
- デザイン全般のディティールアップ。VF-1バルキリーや敵バトルスーツ(クァドラン・ロー、ヌージャデル・ガー)など、メカニック全般のマイナーチェンジ。
『愛・おぼえていますか』が映画化された2031年当時は、人類の生活圏が銀河系全域に拡大した反面、植民惑星間の紛争やゼントラーディ人の武装蜂起が深刻化しつつあった。そのため撮影に全面協力した統合政府の意向で、先人が果たした「異星間交流」の意義をひろく再認識させたいというプロパガンダの意味合いも含まれており、その視点で劇場版独自の設定を考察されるのも一興である。公開後大ヒットした本作のメッセージは、14年後の2045年代を舞台とする『マクロス7』の登場人物の生き方にも影響を与え、ロックバンドFIRE BOMBERの活動に関係することになる。
[編集] 劇場版の全容
後に発売されたマクロス関連のゲーム作品内では、映画では描かれなかった「劇場版ストーリー」が補足されている。1997年のSS/PS用『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のゲームムービー(河森正治監修)や2003年のPS2用『超時空要塞マクロス』では、テレビシリーズ1話~3話のエピソードに相当する「序章」というべき開戦時の状況が描かれている。このゲームムービーは他にDVD『マクロス20周年プレミアムコレクション』(バンダイビジュアル 2002年)にも収録されている。
「2009年2月7日、南アタリア島でSDF-1マクロスの進宙式展が催され、ミス・マクロス・コンテストでリン・ミンメイが優勝。しかし、突如ゼントラーディ軍上陸部隊の奇襲を受け、島民5万8千人が艦内に避難する。支援のため洋上の空母プロメテウスからバルキリー隊が発進するが、直後に衛星軌道上からのビーム攻撃でプロメテウスが撃沈。母艦を失ったロイ・フォッカー指揮下の一条輝・マクシミリアン・ジーナス・柿崎速雄らスカル小隊は南アタリア島へ急行する。バルキリー隊と敵機動兵器の交戦中、マクロスは地上付近で緊急フォールドを敢行(ただし、南アタリア島は巻きぞえで空間転移しない)。脱出直後、間一髪で島にビームの集中砲火が降り注ぐ。マクロスは大爆撃から逃げ延びたが、フォールドシステムの誤作動で太陽系外周の冥王星付近まで飛ばされ、地球の安否も分からぬまま7か月の帰還航海の途に就く(地球帰還は2009年9月)。艦内には長距離航海用の仮設居住空間があり、南アタリア島市民は市街地を建設して生活を始めた。その街でリン・ミンメイはアイドル歌手としてデビューし、たちまち大成功を収める。」
また、ゲーム中では一条輝らが行方不明になっていた間のマクロスの1か月半の航海(土星~地球)についても触れられており、木星付近でのゼントラーディ軍放棄戦艦の調査(敵の正体の判明)や火星基地での補給といったエピソードが追加されている。
[編集] 関連作品
[編集] 小説
- 富田祐弘著 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』 小学館刊 1984年
- 基本構成は同じだが、荒廃した地球上での一条輝と早瀬未沙の触合いを描いたオリジナルに近い内容である。
- 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか ポストカードブック』 秋田書店刊 1984年
- 富田祐弘の脚本原本を収録。テレビアニメ版の印象的なエピソードをつなげた構成になっている。
[編集] 映像
- OVA『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』 1987年
- ビデオ/LD 『SUPER SPACEFORTRESS MACROSS』 1987年 (北米輸出用の英語吹替え版)
- ビデオ/LD/DVD 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 完全版』
[編集] ゲーム
- 『超時空要塞マクロス』 FC 1985年 ナムコ/バンダイ
- 『超時空要塞マクロス』 アーケード 1992年 バンプレスト
- 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』 SS 1997年/PS 1999年 バンダイビジュアル
- 『超時空要塞マクロス』 PS2 2003年 BANDAI
詳細は超時空要塞マクロス (ゲーム)を参照。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
マクロスシリーズの作品 | |
テレビアニメ: | 超時空要塞マクロス - マクロス7 |
OVA: | Flash Back 2012 - マクロスII - マクロスプラス - マクロス ダイナマイト7 - マクロス ゼロ |
劇場版: | 愛・おぼえていますか - マクロスプラス MOVIE EDITION - マクロス7 銀河がオレを呼んでいる! |
ゲーム: | VF-X2 |
マクロスシリーズの関連項目 | |
関連項目: | シリーズ一覧 - ゲーム作品 |