狩人の夜
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『狩人の夜』(かりゅうどのよる)は、1953年にアメリカで発表されたディヴィス・グラッブによる小説。日本語版は、2002年に、宮脇裕子によって訳され、東京創元社から「創元推理文庫」の1冊(ISBN 4-488-23702-9)として刊行された。
1955年にチャールズ・ロートンとジェームズ・エイジーにより映画化されたが、日本では未公開であった。公開当時は評判が芳しくなく、それ故に日本公開もなかったが、その後、スティーブン・キングが自選の名作映画100選の1本として挙げて、影響を受けたことを公けにするなどしたため、そのカルト映画としての先見性が再評価され、日本での公開は、1990年になって、初めて果たされた。
目次 |
[編集] ストーリー
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
1930年代、大恐慌の嵐が吹き荒れる中、ウェストバージニア州、オハイオ川沿岸のクリーサップ埠頭に住むベン・ハーパーは、家族のために強盗殺人を犯して捕まるが、強奪した1万ドルの在り処を誰にも告げることなく、処刑されてしまう。ちょうど同じ監獄に入った、偽りの伝道師ハリー・パウエルも、ベンから金の在り処を聞き出すことができず、釈放される。ハリーは、未亡人ばかりを狙って、詐欺と殺人を繰り返す、まさしく後家殺しであったが、聖職者という隠れ蓑のお蔭で、凶悪な犯行に関しては、投獄されるのを免れていた。
ハーパー家には、未亡人となったウィラと、9歳のジョン、4歳のパールの3人が残された。ベンが処刑され、ウィラが地元のアイスクリーム屋で働いて生計を立てるようになった後のある日、クリーサップの街に、右手の親指以外の4本の指には「L・O・V・E」、左手の方には「H・A・T・E」の、それぞれの4文字が刺青されたハリー・パウエルが、突然あらわれた。その刺青をも用いた巧みな説教によって、人々に取り入ることに成功したハリーは、ジョンから金の在り処を聞き出そうとするが……。
[編集] 映画
この作品は、映画評論家としても著名であった作家のジェームズ・エイジーと、イギリスの俳優であったチャールズ・ロートンの初制作作品であり、結果的に、二人それぞれの唯一の脚本作品と、唯一の監督作品となった。しかし前述の如く、公開当時は全く当たらず、日本でも未公開に終わった。
しかし、ロバート・ミッチャム演じるハリーの人物像を中心に、この映画は後の作品に対して、多大な影響を与えた。例えば、1962年作品で、同じくミッチャムが犯人のマックス・ケイディ役を演じた『恐怖の岬』でも、その背中には、左右に「JUSTICE」「TRUTH」という文字が入った十字架の刺青を背負っていた。
また、前述のように、スティーブン・キングは、この映画が彼の創作の原点となったことを認めているし、また、著者のグラッブの没後に、最大級の賛辞を寄せている。
[編集] スタッフ
- 原作:ディヴィス・グラッブ
- 脚本:ジェームズ・エイジー
- 監督:チャールズ・ロートン
[編集] キャスト
- ハリー・パウエル:ロバート・ミッチャム
- ウィラ・ハーパー:シェリー・ウィンターズ
- ベン・ハーパー:ピーター・グレイブス
- レイチェル・クーパー:リリアン・ギッシュ