燃えよドラゴン
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燃えよドラゴン(英語題名:ENTER THE DRAGON、中国語題名:龍爭虎鬥〈日本では龍争虎闘と書かれることもある〉)は、1973年製作・公開のブルース・リー主演映画。
ワーナー・ブラザーズ(アメリカ)とゴールデン・ハーベスト傘下のコンコルド・プロダクション(香港)の合作。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 解説
ブルース・リーとカンフーが世界的なブームとなり、多くのフォロワーが生まれ、現在の格闘技ブームにも大きな影響を与えた記念碑的作品。ラロ・シフリン作曲のテーマ曲もヒットチャート1位を記録した。
[編集] ストーリー
ハン(シー・キエン)が三年に一度開催する武術トーナメントへの招待を受けた少林寺の高弟リー(ブルース・リー)は国際情報局のブレイスウェイト(ジェフリー・ウィークス)に犯罪組織の疑いが高いハンの島の内偵を依頼される。準備の為に一度帰郷したリーは父親から、数年前ハンの屈強な手下オハラ(ボブ・ウォール)の仲間達によって追い詰められた妹スー・リン(アンジェラ・マオイン)が自害を遂げた事を聞き、ハンへの復讐を誓う。
招待客の中には借金を重ねマフィアに追われているローパー(ジョン・サクソン)、職務質問の警官を暴行し半ば逃亡状態のウィリアムズ(ジム・ケリー)も居た。到着した招待客を迎えるのは金髪の美人(アーナ・カプリ)と、筋肉隆々の男ボロ(ヤン・スエ)。島はまるで要塞のようであり、広大なコートでは大勢の男達が武術の訓練を行っていた。
トーナメント前夜の祝宴では正に至れり尽くせりであったが、リー、ローパー、そしてウィリアムズは徐々にハンに対する不信感を募らせる。祝宴も終わり、リーは夜を過ごす相手として祝宴会場で見かけたメイ・リン(ベティ・チュン)を指名。実は数ヶ月前よりハンの島に潜り込んでいた諜報員だった。その夜メイはリーに、ハンに呼び出された女性が次の日から忽然と姿を消す事を伝える。
翌日、トーナメントがハンの号令により開始され、ウィリアムズとローパーがそれぞれ出場し、勝ち進んでいく。夜になり、内偵を進めていたリーは警備員達に捕まりそうになるが何とか逃げ切る。それを偶然外で散歩をしていたウィリアムズが目撃していた。
翌日ハンは、失敗を犯した警備員達を見せしめとしてボロと闘わせた。放り投げ、骨を砕き、次々と片付けるボロ。トーナメントが再開され、リーの出番になる。その相手はなんと宿敵のオハラだった。しかしリーには相手ではなかった。サンドバッグの如くキックを何度も受ける赤子同然のオハラ。立ち去ろうとするリーに割れたボトルを突き付けてくるオハラだったがキックを脳天に食らい倒れた次の瞬間リーは宙に舞い上がりそのまま急降下、骨の砕ける音とともに勝負がついた。審判がオハラの安否を確かめたが既に事切れていた。
その後ウィリアムズがハンに呼び出され、前夜の散歩を警備員に目撃されていた事から内偵を疑われ追及される。島に嫌気がさしたウィリアムズはハンに反抗するが、金属の義手を持つハンになぶり殺されてしまう。次にハンに呼び出されたローパーは、麻薬工場の内部を案内され、部下になる事を切り出される。トーナメントの目的は世界で活動出来る部下を探す為であった。途中、労働力の為に連れて来られた囚人達の姿がローパーの目に止まった。答えを渋るローパーの目の前に待っていたのはウィリアムズの死体だった。ローパーは服従を誓うしかなかった。
その夜内偵を続けていたリーは麻薬工場等の様々な犯罪の証拠を発見、情報局に向けて信号を送る事に成功するがハンの手下達に追われ、攻防の末ハンに捕まってしまう。
翌日、ローパーを待っていたのは囚われの身となったリーであった。ローパーは見せしめとしてリーと闘う事を命じられ、断ると代わりにボロと闘う事になった。激闘の末ボロを倒したローパー。怒り狂ったハンは手下達に、リーとローパーを殺すよう命じる。襲い掛かる手下達を次々と倒していくリーとローパー。その時メイが解放した囚人達が手下達目掛けて向かってきた。形勢不利と感じ義手を変えながら逃げるハン、それを追うリー。いよいよ最後の対決となる…。
[編集] スタッフ
- 監督:ロバート・クローズ
- 製作:フレッド・ワイントロープ、ポール・ヘラー
- 共同製作:レイモンド・チョウ
- 音楽:ラロ・シフリン
- 脚本:マイケル・オーリン
- 武術指導:ブルース・リー
[編集] 共演者
[編集] 特記
- 1973年12月に初めて日本公開された時点で、ブルース・リー本人は既に故人となっていた(1973年7月20日死去)。
- ブルース・リーの主演映画は本作『燃えよドラゴン』以外は中国語版も英語版も全て声優による吹き替えとなっている(香港映画では声優が声を吹き替えるのが通常だからである)。しかし本作『燃えよドラゴン』の英語版のセリフは全て本人の肉声である。但し、有名な「アチョー」の奇声(怪鳥音)は、本作以外にも『ドラゴン怒りの鉄拳』『ドラゴンへの道』では本人の肉声である。
- 公開された映画では截拳道(Jeet Kune Do / JKD〈ジークンドー〉)に関する考えを話している3分間のシーンがカットされた。この部分は「燃えよドラゴン 特別版」で見ることができる。
- オハラ役のボブ・ウォールは、ブルース・リーのアメリカ時代の友人で、前作『ドラゴンへの道』でリーに誘われて悪役を演じたのが評判となり、続けての映画出演となった。後に『死亡遊戯』にも出演している。
- 『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』『ドラゴンへの道』と、ブルース・リーの一連の香港作品で共演しているトニー・リュウが、試合でローパーと対戦する役を演じているが殆ど目立っていない。
- 撮影に参加しているハンの部下のエキストラたちは、辺りにいたチンピラやヤクザを集めて撮影された。おかげで撮影現場は不穏な空気が漂っていたらしい。ハンの愛人のエキストラにも現役の娼婦がいた。
- 撮影中、上記の中からブルース・リーに勝って名を上げようとする挑戦者が現れた事実がある(共演者ボブ・ウォールの証言、対戦中と思われる写真が存在する)。闘志剥き出しのリーに挑戦者は全く成す術が無かったらしい。そのため撮影中に漂っていた不穏な空気は一掃されたという。
- オハラ役のボブ・ウォールが割れたビンでリーに襲いかかるシーンを撮影中、誤ってリーの手首を負傷させるアクシデントが発生してしまった。出血が酷く、撮影現場は一時騒然となり、前述の事件ですっかりリーに心服していたエキストラ達からはウォールを殺せという声が上がるほどだった。結局、この騒動は監督のクローズが「ボブは必要な役者だから」と説得して収拾した。また、リーが地下に侵入する際にコブラを捕まえるシーンでも、リーはコブラを掴むタイミングを誤り腕を噛まれてしまった。幸いにも、コブラから毒は抜かれていたので傷だけで済んだ。
- スタジオ・セット等は殆ど現地の中国人スタッフによって作られ、プロデューサーのフレッド・ワイントロープもその技術に脱帽するほどだった。しかし、鏡の間のシーンでは割った鏡から新聞紙が見えてしまうという少々お粗末な部分がある。
- 日本も含め世界的な大ヒットとなったが、何故か地元香港では大スター死去の直後にもかかわらず、前作『ドラゴンへの道』(その時点の最高興行記録)を凌ぐまでには至らなかった。
- ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウもチョイ役で出演している。詳細はブルース・リーを参照。
- 劇中の戦闘シーンでリラックスしているエキストラや爆笑しているエキストラがいたことがフジテレビ系の番組、「トリビアの泉」で取り上げられたが、同番組から問い合わせが来るまで、映画の制作者側もそのエキストラのことに気づかなかったらしい。