鉄道保存展示施設
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鉄道保存展示施設(てつどうほぞんてんじしせつ)とは、過去において使われた歴史的価値のある鉄道車両や鉄道施設、その他の鉄道関連資料などを収集・保存し、来訪者に展示・公開している施設の総称である。
「鉄道保存展示施設」に関する明確な定義はなく、展示内容や方針によって博物館的な性格を持つ施設、公園的な性格を持つ施設など様々である。本格的なものは博物館法の適用を受ける施設もある。展示物についても様々で、交通機関全般を扱っている施設もあれば、鉄道関連の展示物のみ展示している施設もある。経営母体も鉄道事業者が運営する企業博物館的なもの、自治体が運営するものなど様々である。
下記の項では、鉄道を中心とした展示を行っている博物館、もしくはそれに類似する施設の一覧を挙げている。各施設の詳細については、それぞれのリンク先を参照のこと。下記以外にも、国立科学博物館などのように展示の一つとして数点程度の鉄道車両・資料が展示・公開されている博物館が数多くある。さらに、公園など公的施設をはじめとする各種施設にも鉄道車両が保存されている例も多い。
主に、鉄道が歴史的に果たしてきた役割を称え、未来における鉄道の発展を教えるという形を取る。これらの施設は先進国・発展途上国を問わず存在する。
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[編集] 日本の鉄道保存展示施設一覧
[編集] 公開中のもの
[編集] 北海道地方
- 札幌市交通局の運営による施設で、同局の車両や資料を保存している。
- 約50両におよぶ鉄道車両が展示されている。日本の鉄道保存展示施設としては最大級の規模を持つ。なお、この施設は2006年(平成18年)3月限り(冬季は閉鎖しているので実質的には2005年秋)で一旦休館し、小樽市の社会教育施設としてリニューアルを行った上で翌2007年(平成19年)春に再開することが発表されている。
- 夕張市が出資する第三セクターが運営する体験型博物館「石炭の歴史村」の中にある保存施設。夕張市石炭博物館の展示サテライトとして1980年に開館。建物全体が巨大な蒸気機関車(D51形)を模した形をしている。夕張鉄道の14号機や大夕張鉄道の4号機が保存されている。第三セクターに出資している夕張市の財政再建団体申請に伴う事業見直しにより、2006年10月15日限りで閉館されることが2006年9月に発表され、2006年度の営業は発表通り10月15日で終了したが、公園施設として来年以降も開放されるという情報もあり、その存廃は流動的である。地元ではいったん閉鎖後に民間への運営委託で再開することを検討していると報じられた。
- 標津線西春別駅跡に整備された施設である。
- 青函トンネルの建設資材や記録映像を展示している。この施設の前身はトンネル建設中の1976年に開館した道立青函トンネル記念館であったが、利用者の減少などにより2002年に閉館された。その後福島町が新施設を建設・運営することとなり、2005年に開館した。
[編集] 東北地方
- 青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸(青森県青森市)
- 旧青函連絡船「八甲田丸」を改装した施設で、船内の鉄道車両搭載用スペースを利用し、9両の車両が保存されている。
- 旧・下北交通大畑線大畑駅構内の施設を利用し、同線で使用されていたキハ85形(旧キハ22形の動態保存運行が定期的に行われている。なお、大畑町は同地を鉄道公園化する構想を持っていたが白紙撤回され、現在はNPO法人の援助を得て運営されている。
[編集] 関東地方
- 旧横川運転区を利用した施設で、電気機関車の体験運転などもできる。
- 秩父鉄道で使用されていた車両10両が保存されている。
- 東武鉄道の車両や資料が展示されている。
- 蒸気機関車を中心とする国鉄車両が数多く展示されている。
- 京王電鉄関連の資料を展示している。鉄道グッズの販売もある。
- 東京急行電鉄の車両や資料が展示されている。
- 別館として野外に青函連絡船「羊蹄丸」が展示され、デッキに当時の車両が保存されている。
[編集] 中部地方
- 日本海側では数少ない鉄道保存展示施設である。
- かつて上松町で林業に使われた木曽森林鉄道に関する車両や資料を展示している。
- 明治時代の建築物の保存を中心とする施設だが、鉄道車両の保存数も多く、1874年製造の12号蒸気機関車や京都市内を走っていた京都市電が館内の往来用として実際に走行している他、国内現存唯一の蒸気動車キハ6401なども保存されている。
[編集] 近畿地方
- 現存する駅舎としては日本国内最古の旧長浜駅駅舎を中心に整備された施設である。
- 梅小路機関区の扇形庫を活用し、国鉄の蒸気機関車が数多く保存されている。
- 福知山鉄道館ポッポランド(京都府福知山市)
- 交通博物館と並び、日本の交通関連の博物館を代表する施設である。
[編集] 中国地方
- 1991年に廃止となった同和鉱業片上鉄道旧吉ヶ原駅敷地内にあり、旧吉ヶ原駅駅舎(国の登録有形文化財)・ホーム・旧片上鉄道の線路約300mと同鉄道で活躍した車両11両が保存されているほか、同公園内にある鉱山資料館にも片上鉄道に関する資料が展示されている。保存車両のうち8両(ディーゼル機関車1両、気動車3両、客車3両、貨車1両)は片上鉄道保存会の手により整備・動態保存されていて、毎月第一日曜日に旧片上鉄道の線路を使用して展示運転されている。
[編集] 四国地方
[編集] 九州地方
- 南薩鉄道記念館(鹿児島県南さつま市)
[編集] 公開予定のもの
[編集] 関東地方
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)が大宮総合車両センターの隣接地に建設。2007年10月14日開館予定。
[編集] 四国地方
- JR予讃線伊予西条駅に隣接した場所に2007年秋にオープン予定。日本ナショナルトラストが四国旅客鉄道(JR四国)の協力を得て建設・運営する。現在西条市内に保存されている新幹線0系電車のカットボディや、西条出身の十河信二元国鉄総裁の遺品、以前四国で使用されていた鉄道用品などが展示されることになっている。
[編集] かつて存在したもの
- 庄内交通湯野浜線の善宝寺駅舎(近くの善宝寺にちなんだ特徴あるもの)を利用していた。同路線の事績を紹介し、ホーム跡には車両も展示されていた。しかし、来客数の減少により閉鎖された。現在も施設・車両とも現地に残っているが、車両は荒廃が進んでいる。
- 戦前に開設された「鉄道博物館」を前身とする日本を代表する鉄道保存展示施設施設で、保存内容は鉄道関連以外にも及んでいた。2006年5月14日限りで閉館し、鉄道関係の展示内容は大部分が翌2007年10月14日に埼玉県さいたま市大宮区・北区に開館する鉄道博物館に継承される予定である。
- 名古屋市電展示場(愛知県名古屋市)
- 名古屋市営地下鉄の藤ヶ丘工場内に設けられており、露天に市電車両と電停が保存展示されていた。工場施設の拡張に伴い閉鎖され、現在保存車両は一部が保管された後、前述の「レトロでんしゃ館」に移されたが、残りは解体された。
- 市電保存館(大阪府大阪市)
- 港区の八幡屋交通公園内に建てられ、大阪市電の車両を展示していた。同公園の再開発に伴い1993年に閉鎖され、現在は保存していた車両が四つ橋線の緑木検車場で保管され、時折公開されている(現在も同検車場内で「市電保存館」を名乗っているが、常設またはそれに近い形ではないのでここでは対象外とする)。
- なお、大阪市はフェスティバルゲート(元は市電の車庫跡)に「市営交通記念館」を設ける構想を持っているが、同施設の再利用問題とも絡んで先行きは不透明である。フェスティバルゲートの項目も参照のこと。
- 宝塚ファミリーランドのりもの館(旧・電車館)(兵庫県宝塚市)
- JR琴平駅舎の一角を利用して1989年に四国の鉄道(伊予鉄道を除く)開業100周年を記念して開設された無料施設だった。四国の国鉄路線で使用された行先板などの展示や、快速「マリンライナー」で使用されていた213系電車の列車運転シミュレータなどがあった。現在は展示物をそのままにした上で閉鎖されている。前記したが、JR四国は日本ナショナルトラストに協力する形で西条市に四国鉄道文化館の開館を予定しているが、展示物がそちらに移管されるかどうかは不明である。
- 米子駅前商店街の中に設置されている小規模施設だったが、2006年3月末限りで閉鎖された。
- 北九州市立交通科学館(福岡県北九州市)