Privacy Policy Cookie Policy Terms and Conditions 蒸気機関車 - Wikipedia

蒸気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

蒸気機関車(じょうききかんしゃ)とは、蒸気機関ボイラー)によって動く機関車のことである。SL(Steam Locomotive, エスエル)とも呼ばれる。

デゴイチの愛称で親しまれるD51200(2001年9月 梅小路蒸気機関車館)
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デゴイチの愛称で親しまれるD51200(2001年9月 梅小路蒸気機関車館
ペリー提督が幕府に献上した蒸気車、瓦版
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ペリー提督が幕府に献上した蒸気車、瓦版

蒸気機関車、または蒸気機関車が牽引する列車のことを汽車とも言う。しかし、地域や世代によっては、電気で動く物も含めて全ての列車のことを「汽車」と呼んだり、国鉄JRを「汽車」、路面電車私鉄を「電車」と呼んで区別したりする習慣が、今でも残っている。また、明治時代には蒸気船に対して陸の上を蒸気機関で走ることから、「陸蒸気」(おかじょうき)とも呼んでいた。

最近では非電化路線では機関車が牽引する列車が少なくなり、一部の特急列車以外は気動車での運行が一般的となっているため、気動車を「汽車」と呼んで電車と区別する者も中高年者を中心に存在する。(実際、気動車は電車ではないので、区別されて然るべきなのだが)

また、法律用語としての「汽車」には列車ばかりでなく、自動車をはじめとする(人力あるいは動物の力に頼らずに)機械による物理的・化学的変化を動力源として動く全ての陸上交通を指す場合がある。

目次

[編集] 蒸気機関車の分類

[編集] 駆動方式による分類

蒸気の圧力をシリンダーに導きピストンを作動させることで往復運動に変換し、その往復運動で動輪を駆動する方式である。
  • 直接駆動方式
ピストンの往復運動をロッドで直接に動輪へ伝え回転させる方式。シリンダーとメインロッドと動輪そのものがレシプロエンジンを構成するが、通常はレシプロと言う用語を用いない。スチーブンソンロケット号がこの方式であった。蒸気機関車の殆んどがこの方式である。
  • 間接駆動方式
ピストンの往復運動を回転運動に変換し、その回転運動をギアやロッドにより間接的に動輪に伝達する方式。。リチャード・トレビシックペナダレン号がこの方式であった。クランクを回して動力をシャフトやギアで動輪に伝達するシェイ/ハイスラーギヤード/クライマックスなどが近年まで山岳路線で使用されていた。
蒸気の圧力を蒸気タービンに導き、直接に回転運動に変換する方式である。タービンで発生した回転運動はギアやロッドにより間接的に動輪に伝達される。整備性が悪い等の理由により普及しなかった。
車上のボイラーで発生させた蒸気を、蒸気タービンや多気筒式蒸気エンジンに導き電力を発生させ、電気モーターにより駆動する方式である。アメリカなどに存在、計画されたが、非常に重量が重くなるため普及はしなかったと思われる。一見するとディーゼル機関車のように見え、とうてい蒸気機関車には見えないものが存在する。

[編集] エネルギー源による分類

  • 化学燃料
石炭コークス重油などの化石燃料、その他薪やガスなどの炭素資源を燃焼させることにより熱エネルギーを発生させ、これによりボイラー内の水を沸騰させて蒸気を得る方式である。蒸気機関車の殆んどがこの方式で、燃料には主に石炭、コークスが用いられる。旧国鉄の制式機では蒸気機関車時代の後期に補助重油タンクを装備し、勾配区間などパワーが必要な際に重油を投入したほか、C59の127号機が重油のみを燃料とする重油専燃機であったことで知られている。海外では重油専燃機がある程度普及した。タイなどの東南アジア各国では薪が多く使われた。変わった例としては、東南アジアの製糖工場で、砂糖の原料となるサトウキビの絞りかす(バガス)を機関車の燃料として用いた例が多くある。
  • 圧力
ボイラーを有さず、外部から熱水とともに高圧蒸気を供給し、それをタンク内に蓄圧してピストンを駆動する方式を無火機関車と言う。走行できる時間は長くないが、火気厳禁の産業施設等で使用された。日本では1963年まで、八幡製鐵で数多く使われていた。日本国外では21世紀に入ってからの活動も伝えられており(ドイツマンハイムの産業施設など)、或いは現在もどこかで稼動しているかも知れない。
  • 電力
架線からパンタグラフで集電し、その電気エネルギーでボイラー内の水を沸騰させて蒸気を得るという機関車がスイスに存在した。特異な存在であり、これが蒸気機関車と電気機関車のどちらに分類されるかは定かではない。
アメリカ・旧ソ連などでは、原子炉を搭載し蒸気を発生させる機関車が1950年代~60年代に計画されたが、重量が極端に大きくなるなどの理由により、実現した例はなかった。アメリカで計画されたものは蒸気タービンで発電しモーターを駆動する方式であったと思われる。

[編集] ボイラーによる分類

  • 飽和式
ボイラーで発生させた蒸気(飽和蒸気)を直接シリンダーへ導く方式。蒸気の膨張により温度が下がると水滴が凝結した。蒸気の持つエネルギーが少なく効率も良くない。
  • 過熱式
ボイラーで発生させた蒸気を細いパイプ(過熱管)で煙管内に導き、再過熱する方式。蒸気機関車の出力向上に大きく貢献した。理論上での提案はされていたが、高温の蒸気を使用するため、シリンダー潤滑油が改良されるまで実用化できなかった。

[編集] 火室による分類

  • 狭火室
火室の幅が線路の幅より狭く、古典機や小型機に見られた。特に狭軌の日本では十分な火室面積が確保出来ず、高出力化の障害となった。
  • 広火室
火室の幅が線路の幅より広く、近代の大型機では一般的な方式である。広い火室面積を確保出来るため、蒸気機関車の出力向上に大きく貢献した。小車輪径の貨物型では動輪の上に広火室を配置するものもあったが、大きな動輪を持つ高速用機関車では動輪の後ろに広火室を配置することになるため、狭火室よりも全長が長くなる。その為、小型機やタンク機では最後まで動輪の内側に配置出来る狭火室を採用するものも多かった。
  • 燃焼室の設置
蒸気機関車の燃料として最も望ましい瀝青炭の燃焼時の炎は長く、火室内では収まりきらないので、ボイラー前方に副室を設けこれを燃焼室と呼んだ。燃焼室を設けることにより高温の炎からの輻射熱を十分に吸収でき、効率が上昇した。また、燃焼時間が長くなったことにより煤煙の発生の減少し、煙管のつまりも防がれた。国鉄ではD52に採用されたのが最初。外見から燃焼室の有無を知るには火室の前方にも洗口栓があるかどうかを調べればよい。
  • 特殊な火室
    • ベルペヤ火室
      ベルギーの鉄道技術者、A・ベルペヤが考案した火室形状で、内火室と外火室の形状を相似形にしているため、内火室を支えるステイの形状を単純にでき、缶水の循環が良く水垢の付着が少ないという利点を持つ。上部が角張った形状が特徴であるが、円筒形の煙管部との接合工作が難しいという欠点がある。
    • ウーテン火室
      広火室の一種で、外見上は下部が大きく広がっているのが特徴である。質の悪い石炭を燃焼させるためのもので、日本では日本鉄道が質の悪い常磐炭を使用するために、一部の形式で採用した。

[編集] 弁装置による分類

ワルシャート式弁装置の動作機構アニメーション。赤色は吸気を、青色は排気を表す。
ワルシャート式弁装置の動作機構アニメーション。赤色は吸気を、青色は排気を表す。

日本の国有鉄道に在籍した蒸気機関車の弁装置の種類は次のとおりであった。

  • スティーブンソン式(基本形、ハウ形、アメリカ形) - 初期の蒸気機関車の標準型として広く用いられた。弁室は、基本形ではシリンダの内側に置かれるが、アメリカ形では上部に置かれる。
  • アラン式(トリック式)
  • ジョイ式(基本形、ウェッブ形)
  • ベーカー式(深川形)
  • 宇佐美式
  • マーシャル式(ヴィンターツール形、コッペル形)
  • グレスレイ式 - 3シリンダ式機関車の中央シリンダ用に使用される方式で、左右の弁装置の動きを合成することで、中央シリンダの弁装置を作動させる。
  • ワルシャート式(ヘルムホルツ形、ホイジンガー形) - 近代の大型蒸気機関車の殆んどがこの方式で、動作機構が全て動輪の外側にあるため、整備性が良い。

[編集] 気筒による分類

  • 1気筒
蒸気機関車の黎明期に存在した。
  • 2気筒
ごく一般的な方式である。2組の気筒(シリンダ)があるため、より円滑な動作が可能である。ロッドが死点に位置して、起動不能となるのを防ぐため、左右の位相は90°ずらされている。日本の国有鉄道においては右側先行が原則であったが、9600形など左側先行の例外も少数ながら存在した。
  • 3気筒・4気筒
国鉄ではC52・C53が3気筒である。構造が複雑で整備性が悪く、特に狭軌の日本では運用に労が多くC53以降は採用されなかったが、メインロッドを3本とすることで死点をそれぞれ120゜ずらし、ハンマー・ブロー現象を抑えることができる利点があり、さらに複式とすることで蒸気を有効に利用出来るため、欧州などでは普及した。日本のC53は停車時のロッドの位置によっては発車不能になることがあり、問題視された。
碓氷峠で使用されたアプト式機関車は、動輪用の駆動装置の他に歯車用の駆動装置を別に備えており、4気筒式であった。
  • 単式・複式
ボイラーで発生させた蒸気を一度だけ使用するのが単式で、ごく一般的な方式である。それに対して、一度使用した蒸気を、もう一度別のシリンダに送り込んで再使用するのが複式である。一度使用した蒸気は圧力が下がるので、1次側(高圧)のシリンダより2次側(低圧)のシリンダの方が径が大きくなる。
複式には種々の方式があり、左右のシリンダをそれぞれ高圧・低圧とした2シリンダ式、左右のシリンダそれぞれに高圧・低圧のシリンダを装備した4シリンダ式、高圧・低圧の2組の走行装置を有するマレー式などがある。日本においては、山陽鉄道が4シリンダ複式を積極的に導入した以外は、明治時代末期に官設鉄道が試験的にマレー式を導入した程度で、ほとんど普及しなかったが、1893年に官設鉄道神戸工場で製作された国産第1号機関車(860形)が2シリンダ複式であったのは特筆される。

[編集] 車輪配置による分類

詳細は、車輪配置の項を参照されたい。

蒸気機関車にとって、動輪と従輪の配置は非常に重要な要素である。これによって、機関車の用途が決まってしまうといっても過言ではない。動輪径を大きくすれば運転速度を高くすることができるが、一定の長さに収まるようにするには、数を減らすことになり、牽引力が低下する。そのため、高速が要求される旅客列車牽引用ということになる。逆に動輪数を増やせば牽引力は増すが、その分動輪径は小さくせざるを得なくなり、高速性能が犠牲になることになるため、貨物列車牽引用ということになる。

従輪については、機関車重量の一部を負担するばかりでなく、先従輪には曲線通過時に、動輪をスムーズに導く機能があり、高速を要求される旅客用機関車では、2軸としたボギー台車が装備されることが多い。一方で、貨物用機関車では動輪上重量を増して粘着力を高めるため従輪の数は少なく、高速も要求されないため、より簡便な構造の1軸先台車が採用されることが多い。

[編集] 車体構成による分類

石炭及び水を機関車本体に搭載する方式、主に小型機が多いが例外の形式E10型がある。
石炭や水をテンダー(炭水車)に積載し、機関車本体に牽引させる方式。通常、機関車本体と炭水車を分離して運用することはないが、検査時は切り離しが可能。
  • キャブ・フォワード型
テンダー式機関車のうち、機関車本体の前後を逆にしたもの。重油専燃とすることによりテンダーと火室を分離することが可能となった。キャブ(運転室)を最前部に設けることにより機関士は煙害から免れることが出来、また良好な前方視界を得た。米国カリフォルニア州の山岳地帯のトンネルが多い線区で使用された。

[編集] 関節型機関車

1両の機関車に2両分の走り装置を装備し、出力強化を図ったもの。

  • マレー式
ボイラーの下に2組の走り装置を設けた方式。複式仕様のもの。後部動力台車はボイラーに固定されていて、高圧蒸気の供給を受け、その排気を左右に首を振れる前部動力台車に送る。大型機が急曲線を通れるようにし、効率も上昇させることができる方式。出発時は前部台車にも高圧蒸気を供給する。構造が複雑で、日本では9750形・9800形・9850形(いずれも0-6-6-0)が存在したが、短命であった。その特徴から現在では複式機関車全体を「マレー式」と呼ぶが、本来「マレー」は複式機関車の中でも0-6-6-0の動輪配置のもののみを指す。日本では0-4-4-0の9020形が存在したが、マレーに満たないと言う意味で「ベビーマレー」と呼んだ。
  • 単式膨張型関節機関車
日本にはない形式でsimple expansion articulated engineの訳語である。マレーは複式であるがこれは前部・後部のシリンダーが同径で、同じ圧力の蒸気が供給される。アメリカで発達しビッグボーイなどの超大型機関車はすべて単式であり、マレーと呼ぶのは間違いである。唯一、ノーフォーク&ウェスタン鉄道のY-6b(2-8-8-2)のみが走行時に複式・単式を自由に選べる機能を持っていた。
  • ガーラット式
2組の走り装置を別々の車体に設け、その両車の間に跨ってボイラーが載る方式。大型機に見られたタイプであるが、小型機にもこのタイプのものがあった。炭水車が大型で燃料・水の積載量が多く長距離を走行できる、急曲線に強い、車輪数が多いため軸重が軽いなどの利点があり、インド、南アフリカなどで多く採用された。日本では採用されなかった。

[編集] 特徴

長所
短所
  • 機構が簡単だが調整が難しく、ずぼらな調整ではうまく走れない(したがって修理作業に熟練を要する)。
  • 電気機関車ディーゼル機関車より燃費効率が悪く、牽引力も弱い
    • 蒸気機関車の熱効率は10%程度といわれ、ディーゼル機関車の熱効率35%程度に比べてかなり劣る。
  • 運転には、走行操作をする機関士と、ボイラーに水や石炭を送る操作をする機関助士の2人が必要となるため、2倍の人員を必要とする(電気機関車やディーゼル機関車の場合1人で運転可能)
  • 高温を発するボイラーを稼動させるために、運転士(機関士、機関助士)が過酷な労働を強いられる(とりわけ夏場の高温環境における石炭投入などの肉体労働の負担、冬場の寒気や雪の進入による肉体的負担)
  • 性能が条件により変化し、一定しない(燃料の発熱量、タンク機関車の場合は燃料と水の残量も影響する)
  • 有害な煤煙を排出する(運転士、乗客、沿線住民いずれにとっても深刻な問題となった)
  • 煙の火の粉により、時として火災を発生させる(藁葺きや木の屋根が普通であった時代には多発した)
  • 保守に手がかかる
    • 摩耗部分が多い
    • ボイラー部などの熱・高圧疲労・耐用年数による老朽化
    • 水垢の蓄積
    • 国鉄の蒸気機関車全廃による機構部品の生産終了
  • 稼動の多い付属品では交換が多く部品が不足(コンプレッサー、給水ポンプなど)
  • 燃料と水を補給する必要があり、大型機では約100kmごとに補給が必要。そのため、長距離列車では燃料や水を満載した機関車への交換が必要となる。また、駅や機関区などに水、石炭などの補給や、使用済みの石炭ガラ処理用の大型設備が必要となる。
  • 設計上逆向き運転が考慮されておらず、転車台デルタ線・袋状の小さな環状線など方向転換のための設備を必要とする(後年にはC11やC56など逆向き運転が容易な形式も出現した)

電気機関車・ディーゼル機関車は当初性能面における信頼性が低く、そのため蒸気機関車が日本では昭和後期まで使用されていたが、以上のように欠点が多いため国鉄は「動力近代化計画」として1959年(昭和34年)より蒸気機関車を15年間で全廃する計画を立て、予定より2年遅れたが1976年(昭和51年)には完了させた。

[編集] 日本での歴史

鉄道省、そして規模の大きな私鉄向けの蒸気機関車は規格化・国産化された。しかし資本力の小さな鉄道向けの小型蒸気機関車までは国は関与しなかった。軽便鉄道、産業鉄道に向けては主にドイツ、コッペル社の小型蒸気機関車が廉価で高品質であったこともあり、第一次世界大戦までは大量に輸入され続けた。
  • 軍用鉄道

[編集] 稼動している蒸気機関車

[編集] 海外の歴史

[編集] 蒸気機関車の発明・開発に関わった主要な人物

 蒸気機関車の実用運転化。
1804年イギリスで蒸気機関車を走行させる。鉄道史上初とされている。

[編集] 代表的な形式

[編集] 日本の国有鉄道・JR

旅客機

貨物機

国立科学博物館に保存されているD51(D51231)
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国立科学博物館に保存されているD51(D51231)

タンク機

入換用小型タンク式蒸気機関車

[編集] 東武鉄道

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

珍しい蒸気機関車

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