諏訪市
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諏訪市(すわし)は、長野県南信地方の市で、諏訪湖に隣接する工業都市。諏訪湖や上諏訪温泉、諏訪大社の上社(本宮)、霧ヶ峰高原を抱える観光都市でもある。セイコーエプソンの本社及び基幹部門、タケヤ味噌の竹屋の本社がある。江戸時代は高島藩の城下町であった。戦後、時計、カメラ、レンズなどの生産が増え、山と湖のある風土と相まって、東洋のスイスと称されたことでも有名である。地酒メーカーも沢山あり、真澄、舞姫、麗人、本金、横笛がある。
諏訪市周辺の3市2町1村からなる諏訪広域連合の一都市であり、中心都市である。
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[編集] 地理
北西側を諏訪湖に接し、西部、東部を山地に挟まれ、南側には茅野市、富士見高原を望む、諏訪盆地のほぼ中央に位置する。長野県内では南信地方・諏訪地域、天気予報では長野県中部もしくは松本・諏訪地方に分類される。 県内主要都市との位置関係は、一般的な交通手段を用いた場合、長野県第二の都市といわれる松本市から東南へ約35km、県庁所在地の長野市から南方へ約100kmである。交通手段としては、中央自動車道、JR東日本中央本線が市内をほぼ南北に通る。東京からのアクセスは2時間強、また、中央自動車道経由で名古屋からも2時間程度でアクセスでき、これらの都市圏からの交通の便が比較的良い。
山梨県に近く、障害となる山がないことから、天候がよい時、場所によっては平地でも富士山を望むことができる。
[編集] 地形
諏訪盆地には、峠を挟んで諏訪側が反対側に比べて急勾配である、という地形が見られるが、諏訪市も例外ではなく、同様の地形が、例えば諏訪市と上伊那郡辰野町を結ぶ県道50号(有賀峠)などに見られる。これは、諏訪地方に中央構造線と糸魚川静岡構造線が通ることに起因する断層地形である。なお、この2つの構造線は諏訪市付近で交差(接触)しているとされている。東側の山地のふもとは、いくつかの小さな扇状地を成しており、ここには住宅や田畑等が広がっている。
市内平地を見てみると、諏訪湖へ向かう幾本かの河川の間に田畑、住宅地が広がっている。赤沼(あかぬま)、中洲(なかす)といった地名が表すように、古くは沼だったり、もしくは諏訪湖が最大面積であったときに水中だった場所も多く、地盤は全体的にゆるい。そのためか、地震が観測されるときも、長野県の近隣地域に比べ震度が大きくなることが多い。このような点から、東海地震想定震度は最大で6弱となっており、非常に大きな揺れが懸念され、地震防災対策強化地域となっている。
- 山:茶臼山
- 河川:宮川、上川、中門川、角間川、島崎川、衣之渡川、舟渡川(いずれも一級河川)
- 湖沼:諏訪湖(一級河川)
- 景勝地・観光地は#名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事を参照されたい。
[編集] 気候
周囲を北東にかけては八ヶ岳に連なる山々、南西にかけては南アルプスに連なる山脈に囲まれ、それらの山々と諏訪湖の影響を受け、内陸的気候の特色を示す県内にありながら、例えば、春夏秋季の降水量は県内比で多め、冬季の降水量は圧倒的に少ないというように、内陸気候の中でも特徴的な気象環境下にある。 避暑地と呼ばれる傾向にあるが、平地では夏場の日中の最高気温は30度くらいに達し、それほど涼しくはない。但し、夜から朝にかけては気温は下がり、すごしやすい気温になる。熱帯夜になることはめったにない。
市北東、標高約1500mから約1900mに位置する霧ヶ峰高原は、夏場ひんやりとしていて、市内では避暑に最適な場所といえるだろう。
[編集] 歴史
[編集] 古代
縄文、弥生時代から、高原を中心に人類の生活の痕跡がある。下諏訪の和田峠を始めとする黒曜石による石器、また、縄文・弥生時代のものと見られる土器の破片も採掘される。
[編集] 戦国時代
戦国大名諏訪氏によって治められる。代表的人物に諏訪頼重がいるが、彼は武田信玄に攻め込まれ、茅野市上原城、諏訪市四賀の桑原城に立てこもるが、甲斐にて自害している。 その従弟である諏訪頼忠によって諏訪氏が再興され、息子の諏訪頼水が1600年(慶長5年)の関ヶ原の戦いにおける功よって高島藩に封じられている。
[編集] 江戸時代
高島藩で、藩庁は高島城。以降10代にわたって、諏訪氏により治められた。中山道の終着、下諏訪の手前の宿場町として栄える。
[編集] 近世以降
- 1871年(明治4年) - 廃藩置県により、高島県。後筑摩県に編入。
- 1874年(明治7年)10月13日
- 大和村、下桑原村、小和田村が合併して上諏訪村となる。
- 上桑原村、赤沼村、飯島村、神戸村が合併し四賀村となる。
- 1874年(明治7年)10月22日
- 有賀村、上野新田村、硯石新田村、文出村、小川村が合併し豊田村となる。
- 神宮寺村、上金子村、中金子村、下金子村、福島村が合併し中州村となる。
- 北真志野村、南真志野村、大熊村、田辺村、後山新田村、板沢新田村、椚平新田村が合併し湖南村となる。
- 1875年(明治8年) - 高島城天守以下建造物が破脚される。
- 1876年(明治9年) - 長野県編入。また、高島城が高島公園として一般に開放される。
- 1889年(明治22年)- 市町村制施行。諏訪郡上諏訪村、豊田村、四賀村、中州村、湖南村は単独で発足。
- 1891年(明治24年) - 上諏訪村が町制施行。上諏訪町となる。
- 1905年(明治38年)11月25日 - 国鉄(官設鉄道)上諏訪駅開業。上諏訪機関区設置。
- 1941年(昭和16年)8月10日 - 諏訪郡上諏訪町、豊田村及び四賀村が合併して長野県内で6番目、諏訪地域では岡谷市に次いで2番目に市制施行。諏訪市が誕生する。
- 1955年(昭和30年)4月1日 - 諏訪郡中洲村及び湖南村を編入。
- 1958年(昭和33年)7月1日 - 市境界変更により、中洲新井地区の一部を茅野市に移動。
- 1962年(昭和37年)・1964年(昭和39年) - 上諏訪を挟む鉄道部分が電化され、機関車が淘汰され始める。上諏訪機関区は衰退へ。
- 1970年(昭和45年) - 高島城の天守・櫓・門・塀を復元。
- 1977年(昭和52年)9月1日 - 市境界変更により、四賀神戸地籍の一部を茅野市に、茅野市新井地籍の一部を諏訪市に移動。
- 1992年(平成4年)5月1日 - 飛び地解消のため、茅野市と境界変更。
[編集] 行政
[編集] 議会
- 市議会議長:河西保美
- 定員:23名(2004年現在、法定数30名)
- 選挙人名簿登録人数:42,595人(男20,885人、女21,710人)
[編集] 経済
[編集] 産業
諏訪市の産業は、明治から大正にかけては製糸業で賑わったが、セイコーの腕時計をはじめとする精密機械工業を経て、現在は、セイコーエプソンを中心とするハイテク産業が栄える。
[編集] 主要企業
- セイコーエプソン(本社、精密機械)
[編集] 事業所・農業・従事者数
- 全事業所数
- 事業数:4,211(2001年10月1日事業所・企業統計調査)
- 従業者数:34,923人
- 工業(2003年12月31日工業統計調査)(4人以上の事業所)
- 事業所数:252
- 従業者数:5,341人
- 製造品出荷額等:1,013億4,904万円
- 商業(2002年6月1日商業統計調査)
- 総数:946
- 従業者数:6,249人
- 商品販売額:2,145億円
- 卸売事業所数:282
- 従業者数:2,142人
- 商品販売額1,390億円
- 小売事業所数:664
- 従業者数:4,107人
- 商品販売額:755億円
- 飲食店:217(1992年10月1日商業統計調査)
- 従業者数:1,144人
- 商品販売額:86億円
- 農業(2000年2月1日農業センサス)
- 農家数:1,319戸(専業110戸、兼業1,209戸)
- 農家人口 5,690人(男 2,828人、女 2,862人)・農家率 6.4%
- 経営耕地面積 659.6ha (市全体面積の約6.5%、田455.7ha 畑174.2ha 樹園地 29.8ha)
- 林業 (2002年度末)
- 森林面積:7,232ha(市全体面積の約65.8%)
- 市民所得:337.7万円/人 (1997年度推計)
[編集] 姉妹・友好都市
[編集] 国内
- 静岡県伊東市 - 1965年(昭和40年)5月20日 - 姉妹都市提携。
- 東京都台東区 - 1984年(昭和59年)7月10日 - 友好都市提携。
- 神奈川県秦野市 - 1984年(昭和59年)10月25日 - 姉妹都市提携。
- 長崎県壱岐市(旧 壱岐郡勝本町) - 2005年(平成17年)10月15日 - 姉妹都市提携。
[編集] 海外
- ヴェルグル市(オーストリア共和国) - 1960年(昭和35年)9月27日 - 姉妹都市提携。
- クンドル町(オーストリア共和国) - 1960年(昭和35年)9月27日 - 姉妹都市提携。
- セントルイス市(アメリカ合衆国) - 1974年(昭和49年)9月23日 - 姉妹都市提携。
- アンボワーズ市(フランス共和国) - 1987年(昭和62年)3月4日 - 姉妹都市提携。
[編集] 地域
[編集] 保健・衛生・福祉
- 公共保険・衛生施設
- 諏訪市保険センター
[編集] 社会福祉
- 総合福祉
- 諏訪市総合福祉センター「湯小路いきいき元気館」
[編集] スポーツ・健康増進施設
[編集] 教育
[編集] 小学校
市内の小学校は全て市立小学校で、私立、国立等の小学校はない。
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- 小学校5年生の保養施設蓼科保養学園(所在地:茅野市北山小斉。希望者で親元から離れて60日から70日の間、諏訪市内の小学5年生、指導員及び保育士と共に生活する。定員は各季節最大40名(男子20名、女子20名)で、年間160名。学校は、平日の授業時間が5時間、40分授業と通常学校に比べ短い分を、土曜日の午前中に3時間授業を行うことで補填している。)
[編集] 中学校
市内の中学校は全て市立中学校で、私立、国立等の中学校はない。
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[編集] 高等学校
市内の高等学校はすべて長野県立であり、私立、国立等の高等学校はない。
[編集] 交通
[編集] 鉄道
- 四賀地区にある普門寺信号場(上諏訪-茅野間。上諏訪駅から3km、茅野駅から3.7kmの地点に位置する)から下り(松本)方面は、岡谷駅まで単線区間となる、中央本線では数少ない区間となっており、最高密度のダイヤでも10分に上下各1本程度しか運転することができない。この区間が、中央本線高速化のネックとなっている。松本広域連合に事務局をおく中央東線超高速化実現期成同盟会等によって、中央本線単線区間の複線化をはじめとするさまざまな研究がなされている[1]が、JR東日本は現行のままで十分に旅客対応ができることから、複線化の予定はないとしている。[2]
[編集] 隣接市町村への連絡
- 諏訪地域内輸送
- 隣接地域都市間輸送
[編集] 都道府県庁への連絡
[編集] 広範囲な連絡
- 新宿(東京都) - 特急「あずさ」:約2時間15分から約2時間45分、特急「スーパーあずさ」:約2時間5分から約2時間15分(上諏訪駅 - 新宿駅)
- 名古屋(愛知県) - 普通列車で塩尻まで、塩尻より特急「しなの」に乗り換え:合計約2時間20分(待ち時間を除く、上諏訪駅 - みどり湖・塩尻経由 - 名古屋駅)
- 甲府(山梨県) - 普通列車:最短で約1時間10分、特急「あずさ」「スーパーあずさ」:最短で約45分(上諏訪駅 - 甲府駅)
[編集] バス
- 諏訪バス
- かりんちゃんバス
- スワンバス(諏訪湖周遊バス)
[編集] 道路
[編集] 高速道路
[編集] 一般国道
- 市内で2箇所、中央本線踏み切りと交差することから、渋滞の発生が日常化し、渋滞解消のため、1964年から、さまざまな議論等が行われている。
- しかし、国が、踏み切り解消、立体交差工事を、街づくりを推進する上で、広範囲にわたる事業が行える機会として、連続立体交差事業区間において、市街地再開発事業や都市計画事業、街路事業等の具体的な街づくり事業を伴わせることを事業実施の条件としているため、諏訪市では駅周辺の開発等に関わる議論が行われてきたが、進展がみられないため、この計画は遅々として進んでいない。参考[3]
[編集] 県道
[編集] 主要地方道
[編集] 一般県道
- 長野県道183号神宮寺諏訪線
- 長野県道194号霧ヶ峰東餅屋線
- 長野県道424号諏訪茅野線
- 長野県道442号諏訪箕輪線
- 長野県道487号諏訪湖四賀線
[編集] 名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
[編集] 寺社・旧跡
- 諏訪大社本宮
- 寅・申の年に御柱祭(式年造営御柱大祭)
- 八剣神社
- 手長神社
- 足長神社
- 貞松院
- 温泉寺
- 教念寺
- 高島城(別名:諏訪の浮城、島崎城)
- 桑原城址
地蔵寺
[編集] 美術館・博物館
- 諏訪市美術館
- 諏訪市博物館
- (2004年4月1日現在、展示品 2,834点、収蔵品 40,115点、寄託品 8,200点)
- 北沢美術館
- 諏訪ガラスの里 北澤美術館新館
- サンリツ服部美術館
[編集] 温泉
[編集] 名勝・景勝
- 八島ヶ原植物群落、踊場湿原(池のくるみ)植物群落、車山樹叢、湿原及び草原植物群落から成る霧ヶ峰湿原植物群落は国指定の天然記念物である。亜高山性植物の宝庫で、コバイケイソウ、レンゲツツジ、ニッコウキスゲ、マツムシソウ、ススキ等が春夏秋冬替わって咲き乱れる。
- 長野県最大の湖。湖周は約16kmで、岡谷市、下諏訪町にも接している。諏訪市内においては、ジョギングロード、湖畔公園、石彫公園、ふれあいなぎさなどが整備されており、遊覧船の発着所もある。また、周囲には諏訪市原田泰治美術館、諏訪市ガラスの里、サンリツ服部美術館や片倉館等がある。
[編集] 祭・催事
- 諏訪大社式年造営御柱大祭(寅年、申年の4月、5月)
- 小宮御柱祭(原則寅年、申年の夏~秋にかけて。一部例外あり)
- 高島城祭
- 諏訪よいてこ
- 諏訪湖まつり(及び湖上花火大会)
[編集] 主な出身者
- 河合曾良 - 紀行家
- 美川憲一 - タレント
- 小口絵理子 - 元ニッポン放送アナウンサー
- 原田泰治 - 画家
- 新田次郎 - 気象学者で、後に作家
- 岩波茂雄 - 岩波書店創業者
- 平林たい子 - 昭和期の女流作家
- 茅野蕭々 - ドイツ文学者、妻は茅野雅子
- 伊藤洋一 - 住信基礎研究所主任研究員
- 藤森慎吾 - お笑い芸人(吉本興業所属「オリエンタルラジオ」ツッコミ)
- 藤原咲平 - 中央気象台長、「お天気博士」の愛称で知られる。新田次郎のおじ
- 永田鉄山 - 陸軍省軍務局長、陸軍中将
- 飯田譲治 - 映画監督、作家
[編集] その他
- 日本の音風景100選:八島湿原の蛙鳴
- 長野県の自治体
-
市部: 長野市 | 松本市 | 上田市 | 岡谷市 | 飯田市 | 諏訪市 | 須坂市 | 小諸市 | 伊那市 | 駒ヶ根市 | 中野市 | 大町市 | 飯山市 | 茅野市 | 塩尻市 | 佐久市 | 千曲市 | 東御市 | 安曇野市 南佐久郡: 小海町 | 川上村 | 南牧村 | 南相木村 | 北相木村 | 佐久穂町 北佐久郡: 軽井沢町 | 御代田町 | 立科町 小県郡: 青木村 | 長和町 諏訪郡: 下諏訪町 | 富士見町 | 原村 上伊那郡: 辰野町 | 箕輪町 | 飯島町 | 南箕輪村 | 中川村 | 宮田村 下伊那郡: 松川町 | 高森町 | 阿南町 | 清内路村 | 阿智村 | 平谷村 | 根羽村 | 下條村 | 売木村 | 天龍村 | 泰阜村 | 喬木村 | 豊丘村 | 大鹿村 | 木曽郡: 木曽町 | 上松町 | 南木曽町 | 木祖村 | 王滝村 | 大桑村 | 東筑摩郡: 麻績村 | 生坂村 | 波田町 | 山形村 | 朝日村 | 筑北村 北安曇郡: 池田町 | 松川村 | 白馬村 | 小谷村 埴科郡: 坂城町 上高井郡: 小布施町 | 高山村 下高井郡: 山ノ内町 | 木島平村 | 野沢温泉村 上水内郡: 信州新町 | 信濃町 | 小川村 | 中条村 | 飯綱町 下水内郡: 栄村