カメ
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カメ目 | |||||||||||||||
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アオウミガメ Chelonia mydas |
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亜目、科 | |||||||||||||||
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カメ(亀)は、爬虫綱・カメ目(Testudines)に分類される爬虫類の総称。
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[編集] 分布
南極大陸を除いた熱帯、温帯に300種類程が分布する。ブランディングガメのように耐寒性を持ち水面が凍りついた環境でも生息する種もいる。
[編集] 日本でみられる種類
外来種を含め、日本では以下の6科13種(うち2種は亜種のみ)がみられる。
- ウミガメ科 - アカウミガメ、アオウミガメ(アオウミガメ、クロウミガメ)、タイマイ、ヒメウミガメ(上陸例なし)
- オサガメ科 - オサガメ(上陸例なし)
- カミツキガメ科 - カミツキガメ(亜種不明)
- スッポン科 - ニホンスッポン
- ヌマガメ科 - アカミミガメ(亜種ミシシッピアカミミガメ)
- イシガメ科 - クサガメ、セマルハコガメ(亜種ヤエヤマセマルハコガメ)、リュウキュウヤマガメ、ニホンイシガメ、ミナミイシガメ
(備考 - 発見例の少ない外来種を除く。亜種分類には諸説があるものも含む。)
なお、ゼニガメは本来ニホンイシガメの幼体を指す俗称だが、クサガメの幼体もゼニガメと呼ばれる
[編集] 形態
甲長数cmのものから甲長2m以上(カメは甲羅に頭部や四肢、尾を収納する種がいるため全長の計測が困難なため大きさを表す際に甲長という独自のが用いられる)になるオサガメまで様々だが、中生代には恐竜と共に繁栄していた事が分かっている。アメリカでは、中生代・白亜紀の地層から甲長4mに及ぶアーケロン(Archelon spp.)という巨大なウミガメの化石が発見されている。
カメの外見上の最大の特徴は、甲羅を持つ事である。甲骨板は外側が鱗(角質甲板)、内側が皮骨(骨甲板)で形成され、それぞれの継ぎ目をずらす事で強度を上げる工夫をしている。爬虫類で甲羅を持つのはカメ類だけで、トカゲ、ヘビ、ワニ等他の爬虫類との中間的な動物が発見されていない。よって爬虫類の始祖からどのように進化し、甲羅を持つに至ったのか詳しい事は不明である。この為カメ類は爬虫類の中でも特異な種類とされている。
尚、甲羅を持つ故に他の生物には見られない特徴が存在する。本来肩帯は、肋骨のないカエルを別にすれば例外なく外側に、また尾部まで肋骨をもつヘビでは腰帯も外側に付いているが、亀は内側にある。また、それと関係してか、肘関節は他の爬虫類とは逆に外側に曲がるように出来ている。また、嘗て胴体を動かしていたと思われる筋肉は、甲羅により胴体を曲げたりしなくなった為退化したように見えるが、肺呼吸をする上で必要な力を供給する隔膜として転用されている。但し、隔膜は人間の横隔膜と違い、縦に付いている。
陸棲傾向の強い種では防御のため背甲(背面の甲羅)が軽量化しドーム状に盛り上がり、水棲傾向の強い種では水の抵抗を減らすため背甲が扁平になる傾向がある。スッポン科やオサガメでは、軽量化のため角質甲板がなく骨甲板も退化している。例外も存在し陸棲なのに扁平な背甲を持ち素早く動き岩の隙間等に潜り込むパンケーキガメや、水棲傾向が強いがドーム状の背甲を持つマレーハコガメ等がいる。
オスとメスの大きさは同じか、多くの種ではメスの方が大型化する。カンムリガメではオスの最大甲長が17.5cmなのに対し、メスは最大甲長が61cmに達する。主な二次性徴としてオスはヘミペニスを収納する関係から尾が太長く、交尾の時にメスに乗りやすいように腹甲(腹部にある甲羅)が凹んでいることが多い。
[編集] 生態
多くの種類が川、湖、池等の淡水域に生息する。水からあまり離れずに生活するが、リクガメ科は終生陸上で生活する。水棲種も爬虫類なので肺呼吸をしないと生きていけず、たまに水面に顔を出して息継ぎをしなければならない。しかしハヤセガメのように総排泄孔でガス交換を行うことにより空気呼吸を行わず、呼吸の為に水面に上がらない種もいる。
繁殖形態は卵生で、多くの種は産卵も陸上で行い海を広範囲に渡って回遊するウミガメ類も産卵時は砂浜に上陸するが、浅い水中で産卵を行う種もいる。
カメ類は細胞の代謝のサイクルが遅く、動物の中でも長寿の部類で、特にゾウガメは長寿の動物の代表的なものとされる。日本には「鶴は千年、亀は万年」という慣用句もあるが、当然カメが1万年生きたという記録はない。ゾウガメの生存最高記録は2006年6月24日オーストラリアの動物園で飼われていた175歳のガラパゴスゾウガメのハリエットが心不全で死亡したものだが、これはチャールズ・ダーウィンがガラパゴス諸島から持ち帰って飼育されたものともいわれ、寿命はさらに数年長いと考えられる。また、セーシェルゾウガメで152年生存した記録もあるが、これは野生個体を採捕したものが事故で死んで記録が途切れたもので、捕獲前の期間と寿命を考慮するともっと長くなるのは間違いない。これでも人間の平均寿命のおよそ2倍にあたる。
[編集] 分類
カメ目は、頸部(首)を甲羅に収める方法によって大きく2つに分類される。曲頸亜目のカメは南半球に分布し、頸(くび)を水平に折り曲げて甲羅に収める。これに対して潜頸亜目のカメは、頸を垂直にS字形に縮めるようにして収める。尚、オオアタマガメのように、頭が大き過ぎて甲羅にしまう事の出来ないカメもいる。他に三畳紀に生存していたプロガノケリス亜目がある。
[編集] プロガノケリス亜目 Proganochelys
- プロガノケリス科 Proganochelys - プロガノケリス
[編集] 曲頸亜目 Pleurodira
[編集] 潜頸亜目 Cryptodira
カミツキガメ上科 Chelydridea
ウミガメ上科 Chelonioidea
ドロガメ上科 Kinosternoidea
リクガメ上科 Testudinoidea
- ヌマガメ科 Emydidae - ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)等
- イシガメ科 Geoemydidae - クサガメ、ニホンイシガメ、セマルハコガメ等
- リクガメ科 Testudinidae - インドホシガメ、ガラパゴスゾウガメ、ケヅメリクガメ、ギリシャリクガメ、ホルスフィールドリクガメ、クモノスガメ等
スッポン上科 Trionychoidea
- スッポンモドキ科 Carettochelyidae - スッポンモドキ
- スッポン科 Trionychidae - スッポン等
(備考 - オオニオイガメ科 Staurotypidae はドロガメ科に含めた) 備考 - スッポン上科はドロガメ上科に含める説もある)
[編集] 人間との関係
[編集] ペット
日本ではクサガメの幼体やミドリガメの流通名で販売されるミシシッピアカミミガメのようにペットとして飼育される。 多くの種類が流通するが、近年では日本に分布しないリクガメの人気がある。しかしインドホシガメのように生息地からの輸出が禁止されてるにもかかわらず密輸され流通する種もいる。
[編集] 食用
最も多く食用に用いられているのはスッポンで、工場の廃熱などから得られた温水を利用し養殖が行われている。日本では雑炊などの鍋物や、全体を乾燥して粉末化した健康食品に用いられる事が多く、中国では、煮込み料理にされる事が多い。同じくスッポン科で大型のコブクビスッポン(Palea steindachneri)も中国では食用に珍重されていたが、養殖が進まず、絶滅が危惧されている。
香港などではミスジハコガメ(Cuora trifasciata)などの腹甲が、茯苓などの生薬とともに煮込まれて、亀苓膏(きれいこう)、俗に亀ゼリーと呼ばれて、解毒、美容の効果がある食品として食べられているが、ミズジハコガメが絶滅の危機にあるため、近年は材料がクサガメなどに変えられている。弱い弾力があり苦甘い。
ヨーロッパでは、アオウミガメのスープが極めて美味なものとされた。不思議の国のアリスに偽ウミガメというのが出てくるのは、乱獲で品薄になったため、仔牛で代用したことにひっかけたものである。また大航海時代には、大西洋やインド洋の島々に生息するゾウガメが船員の食料として乱獲され、多くの種が絶滅した。日本においても、ウミガメは貴重なタンパク源であった(特に卵は美味であるとされる)し、小笠原諸島では刺身を含む各種の亀料理が発達していたが、ワシントン条約以後、捕獲が禁止されたため食用とされることはなくなった(公式には)。味は鶏肉に似ている。
俗に、「淡水に生息する亀と海水に生息する亀の相の子は、毒を持つので食べてはならない」と言われるが、実際には起こりえない。
[編集] 鼈甲細工
タイマイの甲羅は鼈甲(べっこう)細工の材料になり、櫛、眼鏡フレームなどの工芸品に加工されていたが、ワシントン条約以後、捕獲が禁止された。現在は代替の人工的に作られた鼈甲で賄われている。
[編集] 風習と伝説
日本では「鶴は千年、亀は万年」と言われ、ツルと共に長寿の象徴、夫婦円満の象徴とされる。その他、動作が鈍い事、守備が堅い事の象徴としても用いられる。
伝説上の亀として、浦島太郎に登場する亀がある。亀が夫婦円満の象徴とされるのは、この浦島伝説に於いて、乙姫(亀姫)が浦島太郎が老人になって以後、太郎を慕って添い遂げ、太郎が鶴に、乙姫が亀に化身したと言うところから来ている。
[編集] ウサギとカメ
あまりにも有名なイソップ童話の一つ。地道に進む勤勉なカメが、足は速いがさぼり癖のあるウサギに勝つ話。なお、これを実際に試した人がいるが、本当にカメが勝ってしまったという。ウサギは数m走ると立ち止まってしまうらしい。
この話にはもう一つあって、ジョーエル・チャンドラー・ハリスの「リーマスじいやの話」にも含まれている。こちらは、カメが親類一同を集め、ウサギ一匹に対してリレーで戦って勝ってしまう話。ウサギにはカメの区別がつかないのを悪用したのである。
[編集] 保護
環境破壊や食用、ペット用の乱獲等により生息数は減少している種が多い。そのためワシントン条約により流通が規制されたり、原産国により保護される種が増えている。
[編集] 関連項目
- 浦島太郎
- ウサギとカメ
- 鶴亀算 - 亀の足は4本
- 甲骨文字 - 亀の甲に彫られた古代文字
- ゼノンのパラドックス - アキレウスと亀
- 玄武 - 北方を守護する霊獣
- ガメラ - 亀型の巨大怪獣=古代亀「シネミス・ガメラ」の名前の由来となった。
- 鼈甲(べっこう)
- 亀甲模様 - 6角形の模様。