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刺身

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刺身の盛り合わせ例
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刺身の盛り合わせ例
刺身(フグ刺し)
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刺身(フグ刺し)

刺身(さしみ)とは、鮮度のよい魚介類を生のまま切り、醤油味噌などの調味料ワサビショウガなどの薬味を合わせて食べる料理の総称である。副食物(刺身の場合は「つま」という)として、千六本にした大根や、大葉(青じそ)、ハマボウフウなどの野菜ワカメやトサカノリなどの海藻を添えることが多い。

また、馬刺し鶏刺しレバ刺し、こんにゃく刺し、生湯葉といった、肉類植物食品など、魚介類以外のものであっても、生のまま切り身にした料理を刺身ということもある。

目次

[編集] 刺身の歴史

[編集] 刺身前史

新鮮なの肉・魚肉を切り取って生のまま食べることは人類歴史とともに始まったと言ってよいが、人類の住むそれぞれの環境に応じて、生食の習慣は或いは残り、或いは廃れていった。日本は四方をに囲まれ、新鮮な魚介類をいつでも手に入れられるという恵まれた環境にあったため、生食の習慣が残った。即ち「なます(漢字では「膾」)」である。なますは新鮮な魚肉や獣肉を細切りにして調味料を合わせたもので、文献上は古代中国の膾が先行するので、中国から日本に伝わったという可能性もあるが、原始的な料理だけに、独自に発生、発達したと見るのが自然である。なますの語源は不明であるが、「なましし(生肉)」「なますき(生切)」が転じたという説がある。一般には「生酢」と解されているが、それは調味料としてもっぱらを使用するようになったことによる付会の説であり、古くは調味料は必ずしもとは限らなかった。この伝統的ななますが発展したものが刺身である。

[編集] 刺身の登場

『康富記』文安5年8月15日1448年9月13日)の記事に「鯛指身」とあるのが刺身の文献上の初出である。醤油が普及する以前は、生姜酢や辛子酢、煎り酒鰹節梅干、溜まりを合わせて煮詰めたもの)など、なますに使用する調味料がそのまま用いられた。「切り身」ではなく「刺身」と呼ばれるようになった由来は、切り身にしてしまうと魚の種類が分からなくなるので、その魚の「」を切り身に刺して示したことからであるという。一説には、「切る」を忌詞(いみことば)として避けて「刺す」を使ったためともいわれる。いずれにせよ、ほどなくして刺身は食材を薄く切って盛り付け、食べる直前に調味料を付けて食べる料理として認識されるようになったらしく、『四条流包丁書(しじょうりゅうほうちょうがき)』(宝徳元年・1489年)では、クラゲを切ったものや、果ては山鳥塩漬けを湯で塩抜きし薄切りしたものまでも刺身と称している。関西では江戸時代以降、「作り身」「お造り」などというようになったが、これは「作る」という動詞に調理するという意味があるため、魚の切り方を「~作り」という表現で示すようになったことによる。ただし、原則としてなどの海の物に限られていたようで、淡水魚の場合は関西でも「刺身」といったことが幕末の喜多川守貞『守貞謾稿(近世風俗志)』に記されている。

[編集] 打ち身と刺身

刺身とよく似た料理に「打ち身」がある。文献によっては刺身と混用されていることもあるが、こちらは総じて刺身よりも分厚く切り、盛り付けに鰭(ひれ)だけでなくや中落ちまでも利用するなど、調理法が極めて多彩かつ複雑であった。しかし、対象となる魚の種類がに限られていたこともあり、より簡便な刺身が普及するにつれ、室町末期にはほとんど刺身と区別がつかなくなり、江戸時代に入るとともに料理名としても廃れた。

[編集] 近世~現代

料理としての刺身は、江戸時代に江戸の地で一気に花開いた。そもそも京都は、のような淡水魚を除けば新鮮な魚介類が得られにくいため、いわゆる江戸前の新鮮な魚介類が豊富に手に入る江戸で、刺身のような鮮度のよい魚介類を必要とする料理発達するのは当然のことであった。幕末には、京阪四季に関係なくばかりを使用している上、切り方から盛り付けまで乱雑である(『守貞漫稿』)と批判されるほどにまで差がついていた。近代に入ると、流通の発達や冷蔵設備の普及に伴い、日本全国津々浦々で新鮮な刺身が食べられるようになった。そして今では日本料理の代表格として海外にも進出を果たし、「sashimi」で通じるほどにまでなっている。

[編集] 刺身の種類

ヒラマサの姿造り、日間賀島の民宿にて
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ヒラマサの姿造り、日間賀島の民宿にて

作り方や切り方によって多彩な種類がある。

  • 姿作り
尾と頭をつけた状態で供する。祝い事の席などで用いられることが多い。
  • 平作り
  • 薄作り
  • 細作り
  • たたき
  • 背越し作り
  • 皮霜作り
  • 洗い
  • 生け作り(「活け造り」の表記も)
  • 松皮作り
  • 花作り
  • 昆布じめ
  • 中落ち
背骨。または周りの赤身を寄せ集めたもの。中打ちとも。
  • かき身作り

[編集] 海外の刺身に似た料理

刺身を生の魚の切り身とすると、日本以外でも伝統的に食べている地域、民族はある。

  • ホジェン族(ナナイ)
中国・ロシアアムール川(黒龍江)流域やその付近に住むホジェン族ナナイ)には、薄切りや細切りにした刺身を食べる伝統がある。またルイベに似た凍った薄切りの刺身もある。従来は味付けをしていなかったが、最近は醤油、酢などで味付けをして食べる。
  • 閩西客家
中国福建省の清流県や寧化県には客家が住んでいるが、ソウギョの刺身を食べる伝統がある。味付けは、唐辛子、醤油、酢など。近年は練りわさびも使われる。ソウギョには有棘顎口虫が寄生している事が多く、生食は非常に危険であるが、この両県の渓流に棲むソウギョに限っては寄生していないといわれ、問題なく食べられ続けている。
  • 広東省南海市、順徳市
中国広東省南海市や順徳市周辺では、薄切りにしたソウギョなどの淡水魚または海水魚に、ネギ落花生ニンニク、唐辛子、ゴマなどの薬味をのせ、醤油や酢などで和えて食べる「魚生 ユーサーン」という料理がある。彩りよく盛るため「七彩魚生 チャッチョイユーサーン」ともいう。肝吸虫、有棘顎口虫などの寄生虫の問題があるため、衛生当局は生で食べないように呼びかけているが、相変わらず食べる地元民は多い。日本の広東料理店では寄生虫の問題がほとんどない鯛などを使って作られる事が多い。近年は香港の海鮮料理やヌーベルシノワの流行もあり、海水魚を使って出す店が中国でも増えており、また、伝統的な味付けにとらわれず、ドレッシング風のたれが使われる例も多くなった。
シンガポールマレーシア華人は、旧正月の、特に7日に「魚生 ユーサーン」を食べる習慣がある。七草粥ならぬ、「上七羹 ションチャッカーン」という7種の材料を加える正月のスープと、広東省南海、順徳周辺の「七彩魚生」が合わさったものとも言われる料理で、ソウギョやサケなどの刺身の上に、ショウガダイコン柑橘類の皮などの細切りや落花生、小麦粉を揚げて作るフレークを乗せ、甘酸っぱい調味料を加える。テーブルに出された後で、出席者が口々に「撈起 ローヘイ」、「發 ファーッ」などと唱えながらで混ぜ合ってから食べ、商売で儲かることを祈願するので、この食べ方は「撈魚生 ローユーサーン」と呼ばれている。企業商店新年会にも欠かせない料理でもある。

[編集] 世界の料理に取り込まれる刺身

20世紀には、刺身は各国の料理にも取り入れられることとなった。

日本が統治を行った台湾では、地元の海産物を使った刺身を食べる習慣台湾人にも徐々に広まった。台湾の俗語では「沙西米」(サシミ)と呼ばれており、日本食としての扱いであるが、夜店の屋台でも食べさせる例は多い。クロマグロカジキマグロが好まれている。

韓国では刺身のことを「フェ()」という。もとは文字通り「なます」の意であったが、日本統治時代以前に日本風の刺身がプサン(釜山)に伝わり、日本統治時代以降は全土に広まって、日本風の刺身をも「フェ」というようになった。今では一般的な料理として通用しているが、コチュジャンニンニクを添えたりするなどの独自の変化を遂げている。このため韓国内では、刺身の発祥は韓国であると誤解している者が多い(韓国起源説)。韓国には他に、生のワタリガニを唐辛子や塩辛などを使って漬けたものもある。

中国遼寧省大連周辺でも、日本の統治時代の影響で、ヒラメなどの海水魚の刺身や生ウニを食べる習慣が一部の中国人にも残された。

1980年代になると、日本料理は欧米などでも流行し、各国の料理にも影響を与えるようになった。イタリア料理と結びついた例では、イタリアでは牛肉を用いて作るカルパッチョマグロなどの魚で作り、供される事が多くなっている。ヨーロッパでは冷凍の刺身も簡単に購入できるようになっている。

中国の中華料理店でも順徳魚生の様にたれや薬味と和えて食べる料理だけでなく、イセエビサーモンなどを切り分けて、練りわさびをたっぷり入れた醤油につけて食べる事が一般的になっている。

[編集] 背景

刺身は、言わばその食品の持ち味を最大限に利用した食品である。

[編集] 問題点など

良く理解されないところでは「日本では魚などを生のままで食べている」という理解になっている場合がある。かなり気持ち悪い、という感覚である。(うまく翻訳しないと“生”を“釣ったばかりで未調理の丸のままの魚”の意味にとられやすい)

他方、生で食べる事は寄生虫に感染する危険がある。もちろん、伝統的に食されているものにはそのような危険がない。ないからこそ食べられているのであるが、刺身になれた日本人が他国で刺身を求める場合もある。地元の料理人が、伝統にない材料を刺身として提供した場合には、そのような危険が生じる。顎口虫(がっこうちゅう)などはその例である。

また、調理法について「生魚を切っただけ」といった誤解も多い。実際には紙塩といった下ごしらえや、様々な切り方等、生魚の食味を最大限に引き出す創意工夫(柳刃包丁の創出など)があり、極めて高度な調理法である。

[編集] 関連項目

[編集] 関連書籍

  • 『さしみの科学 おいしさのひみつ』畑江敬子(ベルソーブックス) 成山堂書店 ISBN 4-425-85221-4

[編集] 外部リンク

Wikimedia Commons
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