JR北海道785系電車
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785系電車(785けいでんしゃ)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)の交流特急形車両。JRグループの在来線新系列特急形として初めてVVVFインバータ制御を採用した。
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[編集] 概要
札幌~旭川間において整備が進む道央自動車道に対抗するべく、130km/h運転と、それまでの特急「ライラック」と合わせて30分ヘッドの運行ダイヤを実現するため、4両基本編成と2両付属編成がそれぞれ5本ずつ、計30両が製造された。1991年(平成3年)にグッドデザイン商品に選定された。
登場当初は特急「スーパーホワイトアロー」と、一部の特急「ライラック」として、札幌駅~旭川駅間に運用された。さらに、珍しいところでは781系の改造工事によって車両が不足したことから、札幌駅~室蘭駅間の特急「すずらん」に代走として運用された事もある。
全車普通車のモノクラス編成で、座席はテーブル付きのリクライニングシートで、肘掛部にあるレバーを引くことでリクライニングする。中央には腕掛けがあり、簡易的な足掛けもある。座席モケットの色は、NE-1~5編成は青色で、NE-101~105編成は緑である。このタイプの座席は、旧・「スーパーとかち」の一部の車両や、キハ281系にも採用された。
トイレは洋式で循環式汚物処理装置を備え、男子用小便器、洗面所もある。また情報案内表示器は指定席・自由席および、禁煙・喫煙表記ははめ込み式で、時計のほか号車番号の表記はデジタル式である。またこの情報案内表示器にはグッドデザイン商品のプレートが貼付されている。
2001年(平成13年)には、降雪時の見通し強化のため、先頭車腰部の前照灯を高圧放電灯(HID)に交換したり、列車後部への着雪を防止して折り返しの際の除雪作業を軽減するため、前面窓上部へのデフロスター(風洞)の取付けや、前面排障器(スカート)に丸穴を開けるなどの改造が開始された。さらに、線路上に落下した雪塊による窓ガラスの破損を防ぐため、ポリカーボネート板による窓ガラスへのカバー取り付けも開始された。また8月末~9月初めにかけて翌年の増結を見越し編成全体の方向転換を実施している。
2002年(平成14年)のダイヤ改正において、快速「エアポート」の恵庭駅停車と130km/h運転化に伴い、それまで旭川から直通運転されていた781系に代わって、本系列が新千歳空港駅に乗り入れる事となった。その際、785系にも指定席uシートを設定する事と、列車編成全体の輸送力と加速力を増強する為、731系に準じた性能を持つ中間電動車モハ784形500番台が5両、モハ785形500番台が2両増備された。同時に自動放送装置を搭載した。
中間電動車の増備により、4両基本編成の4号車にモハ784形500番台を組み込んだ5両編成が5本、2両付属編成を2本連結し、4号車にモハ785形500番台を組み込んだ5両編成が2本、合計7本の体制となった。2両の電動車に電源を供給することとなった元2両付属編成のクハ784形2両(1,2)については、変圧器を大容量のものに交換した。その際、2両付属編成1本(NE-105編成)が余剰となり、苗穂工場内に保留車として留置されている。
同年の12月ごろには、先頭車への着雪防止用のデフロスター取り付けと、スカートの穴開けが完了した。
2006年(平成18年)現在、札幌駅~旭川駅間の特急「スーパーホワイトアロー」と、札幌駅から新千歳空港駅に直通する快速「エアポート」に運用されている。また、宗谷本線旭川駅~旭川運転所(北旭川貨物駅向かい側)間は回送列車のみ運用されている。
2005年4月から自由席車両を対象としたリニューアル工事を実施中である(後述)。
[編集] 形式・番台区分
[編集] クモハ785形0番台
旭川方に運転台を持つ制御電動車(Mc)。サハ784形0番台(TA)とユニットを組み、パンタグラフを持たないため電源はTAから供給される。旧基本編成の4号車で、禁煙席・一部指定席として使用されていた。6両編成の時は、全席指定席の場合もあった。uシート導入後は、1号車となり、自由席となる。クモハ785-1~5の5両が在籍する。登場時から2001年までは札幌方に運転台があった。
[編集] クモハ785形100番台
旭川方に運転台を持つ付属編成用の制御電動車(Mc)。クハ784形(TAc)とユニットを組む以外、0番台との差異はない。 旧付属編成の6号車で、禁煙自由席として使用。uシート導入後は、101・102が、3号車となり自動販売機、カード式公衆電話を設置した。103・104が、1号車となる。さらに座席モケット交換を実施した。クモハ785-101~105の5両が在籍するが、クモハ785-105は、余剰となり苗穂工場に留置されている。0番台と同様2001年までは札幌方に運転台があった。
[編集] モハ785形0番台
クハ785形(Tc)とユニット構成を組む中間電動車。旧基本編成の2号車で、禁煙自由席として使用。uシート導入後は、3号車となる。モハ785-1~5の5両が在籍する。なおユニット構成内に電力供給源を持たないため、隣接ユニット内のサハ784から電力を供給している。
[編集] モハ785形500番台
2002年に増備された中間電動車で、全室uシート。旧付属編成に組み込まれ、4号車。モハ784形500番台と同形であるが、パンタグラフを持たないため、電源は隣接するクハ784形0番台から供給される。モハ785-501・502の2両が在籍する。
[編集] モハ784形500番台
2002年に増備された中間電動車で、他車とユニットを組まない単独電動車である。全室uシート。旧基本編成に組み込まれ、4号車。車掌室、車椅子対応の座席・トイレを装備。またVVVFインバータ装置と主電動機は、731系に準じている。モハ784-501~505の5両が在籍する。
[編集] クハ785形0番台
札幌方に運転台を持ち制御車(Tc')、モハ785型0番台(M)とユニットを組む。床下に空気圧縮機を搭載する。旧基本編成の1号車で、禁煙自由席として使用。uシート導入後は、5号車となる。化粧室側の車端席(1A/1D)が一人掛けの座席となる。洋式トイレと、男子用トイレを設置。クハ785-1~5の5両が在籍する。登場時から2001年までは旭川方に運転台があった。
[編集] クハ784形0番台
札幌方に運転台を持つ制御車で、クモハ785形100番台とユニットを組む電源車(TAc)。旧付属編成の5号車で、喫煙自由席として使用。uシート導入後は、クハ784-1・2が、5号車となり禁煙化、化粧室側の車端席(1A/1D)が一人掛けの座席となる。クハ784-3・4が、2号車となり、2004年(平成16年)には全席禁煙化に伴い禁煙席となる。洋式トイレと、男子用トイレを設置。クハ784-1~5の5両が在籍するが、クハ784-5は、余剰となり苗穂工場に留置されている。登場時から2001年までは旭川方に運転台があった。
[編集] サハ784形0番台
クモハ785形0番台(Mc)とユニットを組み、集電装置や主変圧器などを搭載して、電動車に電源を供給する付随車(TA)。旧基本編成の3号車で、喫煙自由席として使用。uシート導入後は、2号車となり、2004年には全席禁煙化に伴い禁煙席となる。洋式トイレと、男子用トイレ、自動販売機、カード式公衆電話を設置。サハ784-1~5の5両が在籍する。
[編集] 編成
- NE-1(クモハ785-1+サハ784-1+モハ785-1+モハ784-501+クハ785-1)・・・2005年9月にリニューアル完了。
- NE-2(クモハ785-2+サハ784-2+モハ785-2+モハ784-502+クハ785-2)・・・2006年9月にリニューアル完了。
- NE-3(クモハ785-3+サハ784-3+モハ785-3+モハ784-503+クハ785-3)・・・2005年4月にリニューアル完了。
- NE-4(クモハ785-4+サハ784-4+モハ785-4+モハ784-504+クハ785-4)・・・2006年4月にリニューアル完了。
- NE-5(クモハ785-5+サハ784-5+モハ785-5+モハ784-505+クハ785-5)・・・リニューアル中。
- NE-501(クモハ785-103+クハ784-3+クモハ785-101+モハ785-501+クハ784-1)・・・(最後にリニューアル予定)
- NE-502(クモハ785-104+クハ784-4+クモハ785-102+モハ785-502+クハ784-2)・・・2005年12月にリニューアル完了。
- クモハ785-105とクハ784-5は、保留車。部品取り車となっており、自走不可。
現在、「ライラック」「すずらん」用781系の置き換え計画が挙がっており、今後の動向が注目される。
[編集] その他
[編集] 製造メーカー
クモハ785-1~5、サハ784-1~5、モハ785-1~5、クハ785-1~5、モハ784-501~505、モハ785-501,502が日立製作所、クモハ785-101~105、クハ784-1~5が川崎重工業である。
[編集] LED式愛称表示器
LED式愛称表示器で表示されるのは、「スーパーホワイトアロー(SUPERホワイトアロー)」(リニューアル車は「スーパーホワイトアロー(SWA)」)、「スーパーホワイトアロー/エアポート(SWA/AIRPORT)」、「試運転」、「臨時」、「回送」、「ホームライナー」、「ライラック」、「すずらん」などがある。「スーパーホワイトアロー/エアポート(SWA/AIRPORT)」以外はJRマークと北海道マークがつく。リニューアル車はJRマークで、全てのパターンに搭載されている。
[編集] リニューアル工事について
2005年4月から始まった。先頭のLED式愛称表示器をフルカラー式とし、ドアチャイムの追加および客用ドアの交換(2002年度増備のuシート車両と同じ気密性を高めたドア)、座席を新しいものに交換、情報案内表示器の改造やトイレおよび洗面所の改装、主変圧器や主変換装置を789系と同じものにするなどが施されており、電動車全てが電力回生ブレーキに変更となった。車内は新形車両とほとんど同じである。最初にリニューアルされたのはNE-3編成で、最後にリニューアルされるのはNE-501編成の予定であり、現在5編成が完了している。当初NE-3編成のLED式愛称表示は従来車と共通だったが、NE-1編成がリニューアル完了した時に現行のタイプに変更した。
リニューアル工事の内容は全てにおいて同じではなく、NE-1編成以降にリニューアルされた車両は座席の形状が若干違ったり、NE-2、NE-4編成の客用ドアの窓の大きさはリニューアル前と同じであるなど、細部に差異がある。
[編集] 車内放送チャイム
自動放送の開始時に流れるチャイム、「アルプスの牧場」、「ハイケンスのセレナーデ」、「鉄道唱歌」、緊急停車した時などに流れるチャイムが用意されている。
「アルプスの牧場」は、uシート導入前に主に始発の車掌放送前後に流れていた。現在は旭川の始発の自動放送前に流れる。
「ハイケンスのセレナーデ」は旭川発、新千歳空港直通の「スーパーホワイトアロー」で札幌到着前に自動放送前に流れる。そのほか旭川行きでは札幌発車後に流れる。
「鉄道唱歌」は全車禁煙前は旭川・札幌到着前に車掌放送前後に流れていた。現在は旭川・札幌(終着駅の場合)到着の自動放送前に流れる。
そのほか「スーパー北斗」、「スーパーおおぞら」、「スーパーとかち」、「スーパー宗谷」、「スーパー白鳥」の主要駅出発後・到着前自動放送のチャイムも2006年3月18日のダイヤ改正後は上記3種類が流れるようになった。
[編集] 模型
マイクロエースがNゲージ鉄道模型を登場時の「ライラック」と改装後の「スーパーホワイトアロー」の二種類で製品化している。
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