甲信地方
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甲信地方のデータ | ||
山梨県+長野県の合計 | ||
面積 | 18,025.92km² | |
総人口 | 3,074,366人 (2005年3月31日) |
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人口密度 | 170.55人/km² (2005年3月31日) |
甲信地方(こうしんちほう)とは、日本の地方区分の一つで、本州中部の内陸側を指す。中央高地とも呼ばれる。
山梨県と長野県の総称であるが、稀に岐阜県の一部を含めることもある。
五畿七道の東山道(とうざんどう)に因んだ名称で、東山地方と呼ぶ場合もあるが、この名称が使われる事は殆どない。なお、「甲信」の名称は、東山道の代表的な令制国である甲斐国と信濃国の頭文字を取ったものである。
関東地方と併せて関東甲信地方と呼称する事も多い。
目次 |
[編集] 範囲
- 交通網、経済史、気象における甲信地方。経済史的には、水内地方を除く「狭義の甲信地方」と、東濃地方や飛騨地方の繋がりが深く、いずれも同じ内陸側に位置しているために、同一の地方として扱われる事もある。
- 内陸側の交通網では、中央自動車道・中央本線・飯田線・高山本線などが、幹線として通っている。交通網では、この中央自動車道・中央本線を基軸にした内陸ルートを甲信として区分し、気象など自然地理学では中央高地と呼んで、同一に扱う事が多い。
- これに対して、上信越自動車道・国道18号の沿線は、上信として区分される。
[編集] 自然地理
糸魚川静岡構造線(糸静線)が縦断し、諏訪湖から南に中央構造線が走る。糸静線沿いに上高地や安曇野、赤石山脈(南アルプス)が位置する。
気候は典型的な内陸性気候を呈しており、夏でも涼しい。霧ヶ峰、諏訪湖畔、軽井沢などの避暑地が多く集まる。例外的に、水内地方(長野県北部)は日本海側気候を呈し、岐阜県南西部は濃尾平野の一角とあって太平洋側気候を呈している。
(※ 国道18号沿線は斜体で示す。)
- 山地:赤石山脈(南アルプス)、飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈
- 盆地:甲府盆地、諏訪盆地、松本盆地、木曽谷、伊那盆地、高山盆地、佐久盆地、長野盆地
- 高原:霧ヶ峰
- 山:富士山、八ヶ岳、蓼科山、槍ヶ岳、穂高岳、焼岳、乗鞍岳、御嶽山、赤石岳、白馬岳
- 湖:諏訪湖、青木湖
- 川:笛吹川、富士川、天竜川、木曽川、飛騨川、信濃川
- 温泉:上諏訪温泉、下呂温泉
[編集] 地域
- 太平洋側である関東地方や東海地方との結び付きが強い。
- 山梨県は、距離的に比較的関東地方に近く、また国機関の管轄等でも関東地方と同一管轄となっているものが多いことから、関東地方として扱われることも多い。
- 長野県の中央道・中央本線沿線は、東京から名古屋までに跨がる太平洋側との交流が比較的盛んである。中京地方の私立大学が、松本で地方入試を実施する事もある。特に伊那地方は、天竜川を介して遠州灘沿岸のとの交流がみられる。
- 長野や軽井沢を初めとする上信越道・国道18号の沿線は、日本海側である北陸地方の影響が大きく、中央道・中央本線沿線との結び付きは弱い(→上信越)。「信越地方」として、北陸地方(東半分)の一角として扱われる事も多い。
- 元から関東地方(高崎、東京)や北陸地方との交流圏であるが、上信越道の開通以後は、関東地方(高崎、東京)との交流関係もより親密になっている。
[編集] 主な区割り
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[編集] 道州制と甲信地方
上記の区割りのように、現行での府県の区割りでは、交通網の広がりと一致しないとも言える。このため、道州制を導入するに当たっては、現行の県を分割するなどして、以下のようなパターンが挙げられている(便宜上、表記を「道」で統一する)。
- 地方制度調査会(諸井虔会長)を初めとする東京(中央)の政財界や、中央省庁に多く見られる。地方制度調査会は、関東地方との経済的繋がりから、山梨県と長野県を関東(北関東道や南関東道)の外縁として編入する枠組みを出している。
- 山梨県は、北関東との交流関係は限定的だが、南関東(静岡県を含む)との関係が密接である。一方長野県では、北部で新潟県あるいは北関東との結び付きが強いほか、南部では南関東(山梨県及び静岡県を含む)との結び付きが強い。
長野県を北関東、山梨県を南関東に区分するパターンは、経済的・文化的に合理的ではあるが、太平洋側との関係が深い中央本線・飯田線沿線からの反発も予想される。
- 共に富士山麓に位置する山梨県と静岡県が合併するパターン。南関東道に編入するか、三遠信や中京地方と合併するかの二つのパターンがある。
- 平松守彦・前大分県知事が、この案を出している。平松案では、長野県全域を北陸信越道として、山梨県と岐阜県を東海道としている。
- しかし、甲信地方と東海地方は、糸静線(親不知~諏訪湖~安倍川)を境に地域圏が大きく変わっており、糸静線より東側は東京との、西側は名古屋との繋がりが大きいことも考慮すべきとされる。
山梨県と静岡県がともに南関東に属する枠組みにより、経済的・文化的繋がりを尊重しようとする動きもある。
- 北陸地方、特に新潟県の自治体関係者に多く見られる。新潟県と長野県が合併して信越道としたり、北陸地方と長野県が合併して北陸信越道とするパターンである。
- しかし、一般に「信越」と呼ばれる地域は主に国道18号沿線であり東西に広いため、現実的な経済的・文化的繋がりに整合しないともいわれる。
- 長野県と岐阜県が愛知県と合併するパターン
- 尾張・西三河地方の財界や、三遠信の自治体関係者に見られる。甲信地方と中京地方の交流関係や、名古屋を中心にした交通網の広がりから、三重県・愛知県・静岡県・岐阜県・長野県の全域を「中部五県」や「中部道」と総称して一括するパターンである。
- 但し、県を分割しないと、長野県の場合は、北陸地方との交流が深い国道18号沿線からの、静岡県の場合は、南関東との交流が深い沼津近辺からの反発が予想される。
[編集] 歴史
[編集] 律令時代
律令時代には、畿内から東の内陸側は、東山道として区分された。当時の東山道は、現在の滋賀県(近江国)、岐阜県(美濃国・飛騨国)、長野県(信濃国。一時期は諏方国も並立した)、山梨県(甲斐国)、群馬県(上野国)、栃木県(下野国)に相当する広大な地方であった。しかし、これらの国々は同じ内陸側ではあったが、「一つの地方」としての総まりには乏しかった。
[編集] 戦国時代
戦国時代になると、甲府(甲斐国)に武田信玄、上諏訪(信濃国)に諏訪頼満、岐阜(美濃国)に斎藤道三と織田信長が、高山(飛騨国)に金森長近が、それぞれ本拠地を構えた。
中でも、織田信長が東山道の二国である美濃国と近江国を地盤として、東海道諸国に勢力を伸ばすと、これ以後の東山道の勢力は一変する。米原から岐阜にかけての東山道は、「内陸側」から「東海道の要衝」に色を変えた。その結果、東山道は美濃国を除いて、「地方豪族の拠点」の色が濃くなった。この「東海道の要衝」という色がピークに達した時が、1600年の関ヶ原の戦いであった。
一方で、岐阜以東の東山道には、東山道の一大武将であった武田氏などによって、交通網が整備されるようになった。
[編集] 江戸時代
江戸幕府は、江戸と京都を結ぶ内陸側の幹線道路として、中山道と甲州街道を整備した。これ以来、東山道は中山道と呼ばれるようになる。これ以後、甲信地方は、「中山道」という「線」の総まりを持つようになった。
甲信地方には、天領として甲府藩や高山代官所が置かれ、藩としては松本藩や高遠藩や飯田藩などが置かれた。但し、木曽郡と東濃地方は、尾張藩のエリアとなった。
尾張藩は林業を基盤産業として奨励した為、木曽谷や高山盆地は木材の産地となった。尾張藩の領地以外でも、伊那盆地も木材の産地となった。又、東濃地方で陶磁器が主力産業になったのも、この時代からである。
[編集] 明治から第二次大戦まで
明治時代に入ると鉄道が整備され、中央本線・信越本線・高山本線・太多線などが敷設された。特に、養蚕業が国家の主力産業として位置付けられた為、養蚕業の盛んな地方となり、内陸側(甲信地方)同士の地域間交流も親密になった。現在の信州大学繊維学部は、旧制上田蚕糸専門学校(国立)が母体になっている。
[編集] 第二次大戦後
高度経済成長期から高速道路の建設が始まると、中央自動車道も建設された。以来、対東京や対名古屋の交流関係が増すと、東京や名古屋への流出が進むようになり、内陸側同士の地域間交流が課題となっている。
[編集] 経済
涼しい気候を利用して、明治時代には養蚕業が多く立地し、高山盆地や伊那盆地の山村から女性工員が、諏訪湖界隈に多く集まった。そして、第二次大戦後は時計などの精密機器工業が多く立地している。この経緯から、特に上諏訪・諏訪大社周辺は、「日本のスイス」とも呼ばれていた。
[編集] 第一次産業
代表的な農産物としては、甲府盆地のブドウ、野辺山高原の高原野菜が有名である。
[編集] 第二次産業
甲府の宝石研磨業や、上諏訪の精密機器工業など、精密な部品を製造する工業が多く立地している。
[編集] 交通
(※ 甲信地方の交通史については、中山道 や 東山道 のページを参照せよ。)
[編集] 主な鉄道
- 太平洋側ルート
- 日本海側ルート
[編集] 主な道路
- 高速道路
- 太平洋側ルートの国道
- 日本海側ルートの国道
[編集] 関連項目
- 女工哀史
- 中山道 東山道 甲州街道
- 中央本線 信越本線(しなの鉄道線)
- 東山地方(呼称についてはこちらのページへ。)
- フォッサマグナ
- 日本海側:北陸地方 信越地方 上信越 甲信越地方
- 太平洋側:南関東 東海地方 中京地方
- 広域関東圏
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