深夜バス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
深夜バス(しんやばす)とは、主に深夜時間帯(23時以降)に運行される、短距離から中距離の路線バスをいう。
目次 |
[編集] 概要
日中に運行される通常バス路線の中で、深夜の時間帯に運行されるものの他に、大都市のターミナル駅からの鉄道路線の最終電車の発車後の代替輸送の目的で運行されるものがある。
後者の場合は深夜急行バス(しんやきゅうこうばす)、又は深夜中距離バス(しんやちゅうきょりばす)と呼ばれる事がある。
主に残業などで帰宅の遅くなる通勤客を想定しているため、多くの路線では会社が休みとなる土・日曜日、祭日、お盆休み、年末年始には運休となる(0時を過ぎて間もない時点の深夜は前日と見なす)。また、大阪発の路線ではゴールデンウィークも運休となる。
[編集] 通常バス路線の深夜バス
[編集] 概説
多くの場合、23時以降に始発バス停を発車し、通常より高い運賃を徴収するバスと定義されている。運賃は通常の倍額である事が多く、この場合、定期券や各種一日乗車券で利用するには差額分として通常運賃額の支払いが必要となる。首都圏及び近畿圏では鉄道駅と団地などの住宅地を結ぶ路線が多く、深夜バスの最終便は最終電車の到着に接続する形でダイヤが組まれている場合が多い。近年では郊外駅発着の一般路線を都心寄りの終電終着駅まで延長した形を取るものもあり、国際興業バスや東急バスなどが一部地域で実施している。大都市圏以外の地域では都心部から郊外へ運行されるものが多い。西日本鉄道の「ひきの号」やJRバス関東・関東鉄道の「つくば号」の場合、高速バスでありながら深夜バスを運行している。なお23~0時以降も通常運賃で運行している事業者もあるが、それらは深夜バスとは呼ばない。
深夜バスは、通常の路線バスとは異なるサービスを提供するという観点から、貸切免許での運行が認められており、以後の深夜バスでも貸切免許による運行によるものが多くなっている。
[編集] 歴史
深夜時間帯の路線バスの運行については、1960年代後半より利用者からの要望が高まっていた。これにはベッドタウンの外延化があり、通勤時間が長くなるに連れ、必然的に利用者が最寄駅に到着する時刻が遅くなる事が背景にあった。当時の運輸省ではこれに応えるべく、1970年12月に「大都市周辺部の深夜バス輸送について」という通達を出し、バス事業者に対して深夜時間帯の路線バス運行について検討を呼び掛けた。
これに先立つ5月に入居が開始されて間もない鶴川団地の住民より、路線バスを運行する神奈川中央交通に対して、鶴川駅発最終バスの延長を申し入れた。これに対して、同社では23時台に2本の深夜バスの運行を開始し、運賃は通常運賃の3倍とした。これが日本初の深夜バスである。
翌1971年には当時バス事業も行っていた東武鉄道が運輸省の通達を受けて深夜バスの運行を開始し、さらに1980年年には当時バス事業も行っていた京王帝都電鉄が一挙にエリア内の全域で深夜バスの運行を開始している。
採算ラインは通常の路線バスよりも高くなるため、中には採算性から運行を廃止するケースも見られるものの、多くの路線が運行されている。
[編集] 深夜の鉄道代替バス(急行・中距離)
東京都内や大阪市内のターミナル駅からの鉄道路線の最終電車の発車後、クローズド・ドア方式を採って一般路線バスよりも長距離(だいたい10~50km程度)を走り、鉄道運行終了後の輸送を確保する深夜バスである。
運賃は同区間の鉄道運賃よりはかなり割高であるが、タクシーよりは割安な金額(距離により1,000~4,000円程度)が設定される。また、高速バスが運行している区間では、その運賃の4倍前後となっている。
多くは目的地となる駅への終電が発車した後の午前0~1時頃の出発で、目的地には1~3時頃に到着するダイヤが組まれている。高速道路を利用する路線が多く、快適に帰宅できる様にするために、観光バスタイプの車両による座席定員制を採用するところが多い。また、酔って気分を悪くした乗客のために、エチケット袋が各座席に用意されている路線も多い。また、自動車電話を設置している路線もある。
バブル経済絶頂期の1988年頃から運行が開始されたが、経済の変化により利用客が減少し、運行日を金曜日のみに縮小したり、或いは廃止される路線も出ている。
[編集] 深夜急行(中距離)バス路線一覧
- ★…金曜深夜のみ運行 ☆…ゴールデンウィークも運休
[編集] 東京発
- 新宿駅→新浦安駅・行徳駅・検見川浜駅・稲毛海岸駅・千葉みなと駅・千葉駅(東京空港交通)
- 新橋駅・有楽町駅→新浦安駅・行徳駅・海浜幕張駅・検見川浜駅・稲毛海岸駅・稲毛駅・千葉駅(京成バス)
- 数寄屋橋・東京駅→新検見川駅・稲毛駅・都賀駅・四街道駅・千代田団地(平和交通)
- 数寄屋橋・東京駅→鎌取駅・ちはら台駅・誉田駅・土気駅・大網駅・山田インター(同上)
- 数寄屋橋・東京駅→千葉寺駅・蘇我駅・学園前駅・おゆみ野駅・ちはら台駅・八幡宿駅・五井駅(同上)
- 新橋駅・有楽町駅→船橋駅・津田沼駅・八千代台駅・勝田台駅・京成佐倉駅(ちばグリーンバス)
- 有楽町駅・上野駅→金町駅・松戸駅・北松戸駅・新松戸駅・常盤平駅・五香駅(京成バス)
- 有楽町駅・上野駅→三郷駅・流山駅・豊四季駅・柏駅・東急柏ビレジ第2(東武バスイースト)
- 上野駅→草加駅・松原団地駅・新越谷駅・越谷駅・せんげん台駅・春日部駅(東武バスセントラル)
- 北千住駅→草加駅・松原団地駅・新越谷駅・越谷駅・せんげん台駅・武里駅・春日部駅・北春日部駅・姫宮駅・東武動物公園駅・和戸駅・久喜駅(同上)
- 池袋駅→王子駅・王子神谷駅・東十条駅・赤羽駅・川口駅・西川口駅・蕨駅・鳩ヶ谷駅・新井宿駅(国際興業)
- 池袋駅→戸田・武蔵浦和駅・浦和駅・北浦和駅・北与野駅・大宮駅(同上)
- 池袋駅→板橋区役所前駅・板橋本町駅・本蓮沼駅・志村坂上・西台駅・高島平駅・浮間舟渡駅(同上)
- 池袋駅→大山・中板橋駅・ときわ台駅・上板橋駅・東武練馬駅・下赤塚駅・西浦和駅・中浦和駅(同上)
- 池袋駅→新桜台駅・氷川台駅・光が丘・成増駅・和光市駅・朝霞駅・朝霞台駅(同上)
- 池袋駅→志木駅・ふじみ野駅・上福岡駅・川越駅・本川越駅・神明町車庫(東武バスウエスト)
- 池袋駅→練馬駅・石神井公園駅・大泉学園駅・保谷駅・清瀬駅・所沢駅・新所沢駅・小手指駅(西武バス)
- 銀座・四谷三丁目・新宿駅・中野坂上駅→新中野駅・東高円寺駅・新高円寺駅・南阿佐ヶ谷駅・荻窪駅・三鷹駅(関東バス)
- 渋谷駅→明大前・永福町・西永福・浜田山・富士見ヶ丘・久我山・吉祥寺駅(京王バス東)
- 新宿駅→府中駅・武蔵小金井駅・国分寺駅・国立駅(同上)
- 新宿駅/渋谷駅→芦花公園駅・千歳烏山・つつじヶ丘駅・国領・調布駅・西調布駅・飛田給駅・武蔵野台駅・多磨霊園駅・東府中駅・府中駅(同上)
- 新宿駅→中河原駅・聖蹟桜ヶ丘駅・高幡不動駅・南平駅・平山城址公園駅・北野駅・京王八王子駅・八王子駅(同上)
- 新宿駅→稲城駅・若葉台駅・京王永山駅・京王多摩センター駅・京王堀之内駅・南大沢駅(同上)
- 新宿駅→町田バスセンター・相模大野駅・小田急相模原駅・相武台前駅・本厚木駅(神奈川中央交通)★
- 渋谷駅→大橋・三軒茶屋・駒沢・二子玉川駅・高津駅・溝の口駅(東急バス ※当該記事も参照)
- 渋谷駅→鷺沼駅・たまプラーザ駅・あざみ野駅・江田駅・市が尾駅・青葉台駅(同上)
- 渋谷駅→センター北駅・センター南駅・仲町台駅(同上)
- 渋谷駅→都立大学駅・武蔵新城駅・武蔵中原駅・武蔵小杉駅・元住吉駅・日吉駅・綱島駅・大倉山駅・新横浜駅・新羽営業所(同上)
- 東京駅・新宿駅→戸塚バスセンター・立場駅・湘南台駅・藤沢駅・辻堂駅・茅ヶ崎駅・平塚駅(神奈川中央交通 ※当該記事も参照)
- 新橋駅・品川駅→大船駅・町屋・深沢・鎌倉駅(京浜急行バス)
- 新橋駅・品川駅→上大岡駅・金沢文庫駅(横浜京急バス)
[編集] 大宮発
- 大宮駅→東大宮駅・伊奈栄・蓮田駅・蓮田西新宿・白岡駅・白岡ニュータウン入口・新白岡駅・久喜駅(国際興業)
- 大宮駅→宮原駅・上尾駅・北上尾駅・桶川駅・二ツ家・北本駅・鴻巣駅(同上)
- 大宮駅→岩槻駅・豊春駅・八木崎駅・春日部駅(東武バスウエスト)
[編集] 横浜発
[編集] 大阪発
- 梅田・なんば→堺東駅・三国ヶ丘駅・中百舌鳥駅・泉ヶ丘駅・光明池駅・和泉中央駅・和泉府中車庫前(南海バス)☆
- 梅田・なんば→金剛駅・千代田駅・河内長野駅・三日市町駅・南ヶ丘(同上)☆
- なんば→生駒駅・登美ケ丘・学園前駅・近鉄奈良駅・白土町(奈良交通)☆
- 梅田→桃山台駅・JR茨木駅・阪急茨木駅・JR富田駅・JR高槻駅・阪急高槻駅(阪急バス)☆
- 梅田→桃山台駅・千里中央・北千里・栗生団地(同上)☆
- 梅田→川西能勢口駅・清和台・日生中央・伏見池公園前(同上)☆
[編集] 早朝に運行するバス
前述の「深夜急行(中距離)バス」とは逆に、平和交通が平和交通本社から東京駅八重洲口まで「早朝特急バス」を平日の早朝に運行している。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 「バス・ジャパン」8号「深夜バスの人気を探る」(バス・ジャパン刊行会 1988年4月発売)