ヘルメット
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ヘルメットとは頭部を守るためにかぶる防護帽のこと。ヘルメットには大きく分けて「作業用」と「乗車用」と「スポーツ用」があり、「軍事用」として現代の軍用ヘルメットや古来の主に鎧と共に着用する兜などもある。
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[編集] 産業用保護帽(作業用ヘルメット)
坑内や工事現場などで装着を義務付けられていて、落下物などから着用者の頭部を守るもの。保安帽ともいう。 飛来・落下物に対しての頭部保護の目的(飛来・落下物用)と、人間が墜転落したときの頭部保護の目的(墜落時保護用)があり、墜落時保護用には帽体と内装の間に発泡スチロールが入っている。墜転落時の保護のためには、あご紐をきちんとかけていないと脱げてしまい、保護帽の役目を果たさないことがある。ただし飛来・落下物の時にはこの限りではなく、衝撃で外れて衝撃を分散させるように、あご紐を締めない場合もある。これは野球用ヘルメット(後述)も同様である。
次のような場合に装着する。装着を指示された場合、労働者は装着しなければいけない。
- 物体の飛来落下の恐れのある場合。
- クレーンの通る範囲で作業する場合、上下で作業員が同時に作業する場合。
- 作業員が転落墜落の危険がある場合、2m以上の高所で作業する場合(囲い・手摺などを設けられない場合は安全帯も使用)。
- 大型貨物自動車の荷物の積み卸しをする場合(最大積載量5t未満の普通トラックは除外される)
- 感電の恐れがある場合(電気用としての検定を通過した保護帽を使用)
英語ではsculp guard(頭皮保護具)と称する。
[編集] 乗車用ヘルメット
自動二輪車や原動機付自転車では公道走行をするときは装着義務がある。自動車でもサーキットなどを走行するときは装着する。例えば、パトカーの警察官は、所属部署によっては乗車中もヘルメットをかぶっている(交通機動隊・高速道路交通警察隊。自動車警ら隊では被らない)。自分が障害物や地面にぶつかる時の運動エネルギーを吸収・対貫通するためのもの。
「メット」と省略されることもある。
形態による分類は、次の通りである。
- お椀型:半球形。
- ジェット型:側頭部、後頭部まで覆うタイプ。昔のジェット戦闘機のヘルメット形態からついた。
- フルフェイス型:ジェット型にチンガード(顎の部分の覆い)を付けたもの。視界を確保する部分以外は覆われることになる。
「半キャップ型」は以前はジェット型の側頭部が短いもの(セミジェット、ハーフジェット)をいったこともあったが、最近ではお椀型を指して呼ぶ事がほとんどである。以下もその用法に倣う。
ジェット型は視野の広さと開放感、利便性(顔を隠さないので、ヘルメットを被ったまま水を飲んだり、郵便物等を渡したりすることができる)、フルフェイス型は高い安全性(特に前輪がスリップダウンして顔面から転倒するような場合)が利点である。
お椀形のいわゆる半キャップ型ヘルメットは一見涼しそうに見えるが、通気性がないために夏場は中が蒸れ、冬は露出部の多さで顔が凍えるように寒くなる。実はジェットタイプやフルフェイスタイプのヘルメットよりも不快である。また、耳の上方にあたる部分の頭蓋骨は比較的薄いため、側頭部の衝撃は即致命傷になりやすい。
フルフェイス型やジェット型ではベンチレーションシステムと呼ばれる、通気口が帽体上部、チンガード部分にあり、走行中ヘルメット内部に空気の流れを作り出す仕組みを持ったものもある。一見フルフェイス型でありながらフェイスガード部分がシールドごと開閉出来たり、果ては帽体との分割・合体が自在な構造のものもある。これらは性能から見ると「前が覆えるジェット」と定義したほうが実態に即している。なお規格上認められていない半キャップ型ヘルメットで125ccを越えるオートバイでの公道走行をする場合、法律的な保護を受けられない可能性がある。
また車室のないオート三輪・バギー・トライク・ミニカーなどでの走行の場合には装着を義務付けられていないが、普及に伴い事故が多発すれば、規制は及んでくるものと思われる。屋根付きのオートバイ(ピザの配達などで使われるジャイロキャノピーなど)では装着の必要がある。
日本において通用する規格として、SG・JIS・SNELLなどが制定されており、SNELL2000規格の試験が一番厳格とされる。またサーキットにおいての競技使用を認める規格を日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)や日本自動車連盟(JAF)などが定めており、これらの規格も厳格度が高い。日本では消費生活用製品安全法により乗車用ヘルメットは特定製品とされ、事業者が検査をしている旨の表示であるPSCマークがないと販売及び陳列ができない。
[編集] 乗車用ヘルメットの種別について
オートバイに使用する乗車用ヘルメットの基準は、道路交通法により以下の様に定められている。
- [道路交通法 第七十一条の四]
- 1.大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない。
- 2.原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。
- (3~5.省略)
- 6.第1項及び第2項の乗車用ヘルメットの基準は、内閣府令で定める。
- [内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)]乗車用ヘルメットの基準
- 左右、上下の視野が十分とれること。
- 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
- 著しく聴力を損ねない構造であること。
- 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
- 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
- 重量が二キログラム以下であること。
- 人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
この様に道交法ではヘルメットの規格については特に定められておらず、道交法第71条4-1項(総排気量50cc超の小型/普通/大型自動二輪)、2項(総排気量50cc「以下」(not未満)の原動機付自転車)共に乗車時のヘルメット着用義務を謳っているに過ぎず、排気量によるヘルメットの基準分けは存在しない。国家公安委員会による「交通の方法に関する教則」ではSGマークやJIS規格のヘルメットが推奨されている、こちらはあくまで「推奨」であり強制でも無ければ罰則もない。
以上の点から、半キャップ型のヘルメットで原付に乗れるのであれば大型二輪に使用しても法的には何ら問題はなく、もし大型二輪で半キャップが違法になるなら原付でも違法になってしまうので、現実的にはバイクショップやホームセンターで販売されているオートバイ用の半キャップ型ヘルメットであれば、どの様なバイクに使用しても違法にはならない。
ただし乗車用として認められていない安全ヘルメットなど、容易に基準を満たしていないことが目視で確認できるヘルメットの場合は罰則が適用される恐れがある。SGマークの商品ならば乗車用ヘルメットの基準を全て満たしているので、確認して使用した方が良い。さらに半キャップよりもジェットタイプやフルフェイスの方が安全で好ましいのは言うまでもない。
- (参考)大型バイクにも使用可能な半キャップ型ヘルメット[1]
[編集] 乗車用ヘルメットの使用期限
ヘルメットは製造後時間がたつにつれ、緩衝材が劣化してくる。特にライディングに実用している際は劣化が早い。ところが見た目ではその劣化状況はわからない。そこで、ヘルメット業界では3年使用したらヘルメットを買い替えることを勧めている。ヘルメットの寿命がどの程度か、公道で破壊検査するような事態は避けたいものである。
[編集] 自転車用、徒歩通学用ヘルメット
日本では道路交通法上、自転車で公道を走行してもヘルメットを着用する義務はないが、自発的にヘルメットを被って走る人々向けに自転車用ヘルメットが発売されている(ニュージーランド、オーストラリア等では着用義務がある)。オートバイ用ヘルメットと同じくSG規格がある。また、自転車競技に出場するにはJCF(日本自転車競技連盟)認定のヘルメットを着用する必要がある。
構造は、発泡スチロール成形に薄いプラスチックのシェルを被せた帽体。転倒の際には頭が受ける全ての衝撃を吸収し、破損させるためである。通気用のスロットが数多く切られている。
一方、大都市圏から離れた地域では中学生(一部地域は高校生も)の自転車通学の際、ヘルメット着用を義務付けていることが多い。さらには基本的に徒歩通学のみの小学生も登下校時にヘルメットを着用させる地域もある。こちらの構造は保安帽と大差ないが、物によっては前述の乗車用ヘルメットの基準を満たしている(PSCマークあり)ものもある。
いわゆるママチャリに幼児を乗せ、買い物等に出かける例はよく見るが、2004年以降、民主党は幼児を自転車に同乗させる際、幼児用ヘルメット着用を義務付ける法案を提出している。
- 自転車同乗幼児、ヘルメット義務に 民主、法案再提出へ asahi.comの記事
- 道路交通法の一部を改正する法律案要綱 民主党が2004年に提出した法案
[編集] スポーツ用ヘルメット
[編集] 野球用ヘルメット
打席に立つ打者は頭部保護の目的に装着する。 投手が投げるボールを打者が頭部に受けた際に素材の硬さや形状及び内装の緩衝材によりダメージが軽減される。 安全ヘルメットなどにあるあご紐はつけられておらず(このためベースへのダッシュによって脱げる事も)、前方に鍔、耳に当たる部分に耳あて(フラップ)がある。この耳あては左打者用では右耳に、右打者用には左耳についており耳の保護を行う。スイッチヒッターでは両耳付きヘルメットを使う選手もいる。頭部正面側にチームロゴ、頭部背面側には背番号が入れられることが多い。
日本のプロ野球では、1984年以降に在籍した選手、および1983年に在籍し耳あて付きヘルメットを着用した選手は耳あて付きヘルメットが義務、1983年に在籍し耳あて付きヘルメットを着用しなかった選手は選択可能となっていた。この基準は1996年シーズンから適用され、それ以前は1984年以降に入団した選手も耳あての無いヘルメットを着用することができ、和田豊や大豊泰昭はこの時に耳あて付きのヘルメットに変更している。この基準制定以降、落合博満や金森栄治、田村藤夫らが耳あての無いヘルメットを着用していたが、2000年に引退した愛甲猛が最後の着用選手となった。
走者に関しても、打者用のヘルメットをかぶってプレイする。アマチュア野球ではこれは義務づけられており、プロ野球は義務ではないものの同様にヘルメットを脱ぐことはない。守備についている野手は打球や送球の行方を見ながらプレーするため危険は少ないが、打者はボールを見ずに走塁せねばならず、背後から送球が来ることもしばしばであり、危険が伴うことが理由である。
捕手は、守備につく際にもヘルメットを着用する。通常は鍔も耳あてもないお椀のような捕手専用ヘルメットが多く使用されている。アメフトのヘルメットのような顔全体を覆うヘルメットやアイスホッケーのGKのマスクを改良した物も存在しメジャーリーグでは普及している。日本球界でも村田真一や相川亮二が過去に着用したことがある。
[編集] ヘルメットに関するエピソード
- かつて、トロント・ブルージェイズ、シアトル・マリナーズなどで活躍したジョン・オルルッド一塁手は、一塁守備の際にも常にヘルメットを着用していた。実は、オルルッドは大学時代の1988年に脳腫瘍で死の淵を彷徨い、手術で一命を取り留めている。手術の影響で強い衝撃は危険なため、頭部保護の目的で守備でもヘルメットを被るようになった。
- 元福岡ダイエーホークス(現ソフトバンク)の秋山幸二は、1999年に西武戦で松坂大輔から死球を顔面に受け、頬骨を骨折してしまう(ヘルメットに亀裂が入るほどの剛速球だった)。しかし、数試合後にはすぐにベンチに復帰。のち、契約メーカーにフェイスガードつきのヘルメットを特注した。それによって、スタメン復帰も果たし、ダイエーにとって初めての優勝に大きく貢献した。
[編集] 自動車競技用ヘルメット
ほとんどのモータースポーツにおいても、事故や火災から頭部を守るためにヘルメットの着用が義務づけられている。
F1など乗員の頭部が外部に出ている場合はオートバイ用のフルフェイスヘルメットに似た形状である。通常の車両の場合は顔が直接外気に晒されることがないため、ジェット型が主に用いられるが、火災から顔面を守るために、耐火繊維製のフェイスマスクを併用することが多い。
ラリーなど、他者との会話が必要な競技では、インカム(ヘッドセット)が組み込まれているヘルメットが使われる。
[編集] その他
登山(クライミング)、アメリカンフットボール、アイスホッケー、スキー、ローラースケートなどをはじめとしたスポーツ用のヘルメットがある。
[編集] その他のヘルメット
[編集] 現代の軍用ヘルメット
軍用のヘルメットは、砲弾の破片や銃弾から頭部を保護するものであり、軍服とともに用いられる。第一次世界大戦以来ベトナム戦争の頃まで材料として鋼鉄が使われたため、日本では鉄帽あるいは鉄兜などと呼ばれていた。旧日本軍(陸軍および海軍陸戦隊)のヘルメットの帽体はクロームモリブデン鋼を用いた当時としては硬質で比較的高性能なものであった。
近年はケブラーなどの繊維を数十枚重ね、フェノール樹脂を含浸させて成形したものが主流である。第二次世界大戦の頃は木の枝や草を差して偽装するためのネットを使っていたが、その後迷彩服の使用が普通になると、本体の上から迷彩服と同じ柄の迷彩カバーをかぶせることが多くなった。迷彩カバーにも木の枝葉を差す為のボタンホール状の穴つきのものがある。パラシュート降下を行う空挺部隊では、降下の際パラコードが引っかかって不開傘事故を起こすことを防ぐため周縁のつばの無いものを使う。いずれにしてもヘルメットは重く、敏捷な動きを制限したり屋内の戦闘では邪魔になったりするので、野戦に従事しない特殊部隊ではヘルメットを使わないか、ホッケー用ヘルメットに似た、より頭部にフィットするものをかぶる場合がある(登山用ヘルメットを流用する部隊もある)。アメリカ陸軍も従来は日本軍と同様のデザインのヘルメットだったが、第二次世界大戦後、耳まで保護するドイツ軍様式がより優れている事に気づき、以後同デザインを使用するようになった(“フリッツ”と言うが、これはドイツ人一般への呼び方にちなむ。アメリカ人をジャックだのマックだの呼ぶのと同義)。アメリカ軍が制式採用した事で、このフリッツタイプのヘルメットは各国の軍隊や特殊部隊で採用され始め、共産圏である中国人民解放軍でも採用された。
戦闘機・ヘリコプター乗員もヘルメットを着装する。材質はFRP。こちらは歩兵用と違い、強い日光や紫外線から目を保護する為の濃色シールドが内蔵されている(レバーを使って降ろしたり上げたり出来る)他、無線用の支持アーム付きマイク(ヘリ用)や酸素マスク(戦闘機用)が付けられる作りになっている。
戦車や装甲車乗員も車内の突起物による頭部の損傷を防ぐため、ヘルメットを着ける。ロシアや旧ソビエト連邦から技術供与を受けた国々では独特の緩衝パッド付きヘルメットを使用する。
[編集] 近代までのヘルメット
青銅器時代から兵士の頭部を保護するための革や青銅製のヘルメットが使われていた。「ウルのスタンダード」と呼ばれるモザイク画には革製と思われるあご紐付きのヘルメットを被ったシュメールの兵士たちが描かれている。古代のヘルメットと言えばギリシアやローマの馬毛で飾られた前立付きのヘルメットが有名だが、この種のヘルメットはアッシリアの浮彫にも見ることが出来る。
江戸時代以前の武士がかぶっていた兜も広い意味でヘルメットだといえる。刀や矢で傷付けられることから頭部を保護する目的と、装飾をもって威容をあらわす目的がある。
[編集] 新左翼のヘルメット
新左翼の参加するデモや集会では、色とりどりの工事用ヘルメットがみられた。これらは党派に応じて色分けされ、太字で党派の略称が記載されており、暴動などの際の戦闘用というよりはむしろ、かぶっている者の所属を明らかにするために用いられた。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
[編集] 産業用保護帽製造者
[編集] 乗車用ヘルメット製造者
- アライヘルメット(新井広武商店)
- SHOEI(昭栄化工)
- オージーケーカブト(OGK/大阪グリップ工業)
- ワイズギア(ヤマハ)
- agv
- シンプソン
- [2]OSBE(オズベ)
- [3]REEVU(リービュー)