貴族
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貴族（きぞく）とは、血統や門地の故に社会的特権を認められている人やその一族。またはその身分。多くは世襲されるが、特別な功績により新たに貴族になることもある。君主の一族を特に王族、皇族などと称し、これを貴族に含めない用語法もある。
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[編集] 日本の貴族
[編集] 古代
古代においては、天皇を頂点とした朝廷とその補佐的役割を果たした豪族が貴族の始まりといえる。蘇我氏、物部氏、大伴氏など。そして、大宝元年（701年）の大宝律令によって律令制の大枠ができ、その位階において四・五位の官人を「通貴」、三位以上を「貴」と称し、廷吏の中でも上層部に特権的階級が出来上がる。「源平藤橘」と呼ばれる藤原氏を筆頭に、源氏、平氏、橘氏、大江氏、清原氏、土師氏、菅原氏、在原氏などが代表的存在。
[編集] 中世
武家政権の成立に伴い政治の担い手としての古代の貴族層は没落したが、和歌などの古典文化や有職故実の学問を研究する公家・公卿文化の担い手として残り、応仁の乱で京都が荒廃すると地方へ移り、上方文化の地方伝播をもたらす。
一方、武家政権を担う将軍家、幕府の官僚、守護、が官位を持つ朝臣という面からも、中世ヨーロッパ風の封建貴族という面からも、新たな貴族と見なされるようになる。
[編集] 近世
江戸時代においては、天皇の直臣である公家は宮廷貴族。将軍の直臣である大名と大身旗本も高い官位と広大な領地を持ったので、彼らは封建貴族といえる。また、いわゆる士農工商の一番上として武士全体が、貴族階級にあたると考えることもできる。下級の武士はとても、貴族といったイメージではないが、ヨーロッパでも貴族の末端は貧しく（貧乏貴族）、特権を持つという観点からは貴族といえる。また、武士には貴族の責務（ノブレス・オブリージュ）の感覚があったことも見逃せない。
[編集] 近代
[編集] 古代ローマの貴族
共和制ローマでは市民は貴族（patricius）と平民 （plebeius）の2つの階級に別れており、当初は政治は貴族が握り、元老院議員を始めとして執政官（コンスル）は貴族が独占していた。
しかし、やがて平民の力が強まり、護民官が創設され、執政官にも平民が就くようになった。共和制末期には、両者はほぼ同等となり、貴族にはわずかな特権が残っているだけだった。派閥名として平民派、貴族派と使われたりしたが、この呼び名は実態を表しているわけではない。
帝政ローマに入ると、従来の貴族に加えて、帝国に勲功のあったものに新たに貴族の称号を与えるようになった。また、帝政ローマの地方官名（duces、comes）が後のヨーロッパの公爵、伯爵の語源となっている。
[編集] 中国の貴族
中国史に於いて貴族の語を使う場合、魏晋南北朝時代から唐末期にまで存在した血統を基幹として周囲からの尊崇を受けた存在をさす。
[編集] 貴族層の形成
前漢中期より、各地方に於いて経済的な実力を持った者たちが当地の農民たちを半支配下に置いて、豪族と呼ばれる層を作る。武帝によって導入された郷挙里選制により、豪族たちは一族の子弟を官僚として中央に送り出すようになった。豪族たちの勢力は極めて大きなものがあり、彼らの間での輿論が官僚に選ばれる者、その出世などを決めるようになる。
220年、魏文帝により、九品官人法が施行される。この法は中正と呼ばれる官職を設け、中正が地方の人物を見極めて官吏を登用するというものである。この中正を選任する権限が魏中期以降から地方豪族の手に委ねられるようになり、事実上、官吏任用権は彼らに掌握されるようになる。こうなると官吏になるのは能力ではなく、血統により決められるようになる。魏から禅譲を受けた西晋では更にその傾向は進む。
[編集] 貴族の全盛
西晋は36年と言う短い統一期間の後に匈奴の漢により追われ、江南に逃れて東晋となる。この時、司馬氏に付いて南遷した貴族たちは東晋において強い力を保持した。その門地の高さの筆頭は王導・王羲之ら琅邪の王氏、謝安・謝霊運らの陳郡陽夏の謝氏である。さらにその後の4王朝（宋、梁、斉、陳）でも貴族勢力は強い力を保持し、政権に近い位置を独占し、皇帝権力よりも強力であることが多かった。
これに対して皇帝側では寒人と呼ばれる家格の低い貴族層や貴族からは蔑視されていた軍人層と手を結んで、貴族勢力を押さえ込もうとした。宋以降の四王朝は全て功績を挙げた軍人が始祖となっている。
その一方、北朝に於いても北魏孝武帝により九品官人法が部分的に導入されたことで貴族制度が形成された。北朝に於ける貴族は鮮卑・匈奴の有力者の系譜が貴族へと変わっていったもので、氏族制の影響を濃厚に残すものであった。これらの北朝貴族は後漢代からの長い歴史を持つ山東貴族などの一流とされる漢族の名族からは下に見られており、この格差を埋めるために漢族の名族と婚姻を結んだり、あるいは漢族の名族に自らの血統を付会するなどといったことが行われた。北朝貴族の代表としては関隴貴族集団が挙げられる。
隋唐期には科挙制度が成立し、必ずしも世襲貴族でなくとも官吏になれるようになったが、貴族勢力はこれに対して詔勅の可否を決定する門下省と官僚の任免・賞罰などを司る尚書吏部を支配下に置いており、科挙出身者が政権の中枢へと近づけないようにした。また蔭位の制度などによって事実上貴族制度は温存され、唐前半の優雅な文化の担い手となった。但し、唐代以降、科挙官僚を輩出することになる宋代の士大夫（読書人）階層や明清の郷紳勢力にとっての教養が、科挙の出題科目であった儒教の経典（四書五経）であったのに対して、六朝貴族たちにとっての教養は、玄・儒・文・史と称せられるものであり、その筆頭には玄学が挙げられている点は、大きく異なっているのである。もちろん、玄学の中には、老荘思想のみならず仏教に関する教養も含まれていた。
[編集] 貴族制度の崩壊
中唐を過ぎる頃になると新興地主層と科挙出身者（これは兼ねられる場合が多かった）の台頭により、貴族の優位は揺らぎ始め、科挙出身者と貴族勢力が激しい権力争いを繰り広げるようになった。これを原因として起こったのが牛李の党争である。
しかし唐末の戦乱の中で、貴族勢力は壊滅的な打撃を受け、朱全忠のような貴族制度に権威を感じない人物の手によって貴族が多く殺害され、これによって事実上貴族制度が崩壊したと考えられている。北宋以降は、士大夫と呼ばれる新しい層が支配層を形成するが、これと貴族とは普通分けて考えられる。
[編集] 貴族制度の特徴
では貴族と後漢以前の豪族とではどこが違うのであろうか。これに関しては明確な基準は無い。中国史に於ける豪族という存在は明確な定義がされていないからである。ただ豪族があくまで地方に於ける財産と指導的地位によって豪族であったのに対して、南遷した際に北来貴族はその財産のほとんどを失ったはずであるので、貴族が貴族たる所以は財産ではなく、あくまで血統であると考えられる。
では西周・春秋の頃の卿（けい）・大夫（たいふ）といった階層とはどこが違うのであろうか。西周・春秋の身分制度は氏族制の名残を残すものであり、彼ら卿・大夫は彼らの持つ領地を独自の裁量で統治した、いわば小国家の主であった。例えば春秋の衛の宰相であった孫林父は自国の君主に憎まれていることを恐れて自らの領地ごと晋へ寝返った。このようなことは六朝貴族には到底不可能である。
では宋以後の士大夫、更に清代以降の郷紳と貴族はどこが違うのであろうか。士大夫はまず科挙を通過した官僚であり、理念上では一般民衆より能力に優れ、国家に対して奉仕することが求められた。これに対して貴族にはそのような理念はなく、自分が実務的に無能であることを誇る風すらあった。『顔氏家訓』によれば、梁の貴族は家の中では自らの体を支えることすらせずに召使に支えさせ、外出時には常に車に乗り、装甲された軍馬を見ては虎を見たかのように恐れたという。
後漢から魏晋南北朝にかけての豪族・貴族勢力は皇帝権力と対立するわけではなく、かといって大いに協力するわけでもなく、ある種の独立した関係にあった。豪族・貴族勢力が求めていたものは彼らの勢力を保護してくれる国家権力であり、頼るに足りないと感じられた場合にはこれを見捨てる場合もあった。九品官人法は貴族を生むことになったと評されることが多いが、別の見方からすれば貴族層が国家から離れて独自の権力を振るうことを防止し、ある程度国家の影響下に置く効果があったとも考えられる。科挙の実行により生まれた士大夫層は科挙合格者であることが必要条件であったので、国家と分かれて存在することが出来なくなり、皇帝独裁体制への道が開かれることになる。
[編集] 朝鮮の貴族
両班を参照。
[編集] 琉球の貴族
琉球の位階を参照。
[編集] ヨーロッパ・ロシアの貴族
ヨーロッパの封建貴族はゲルマン系、特にフランク王国の制度が基礎になっている。 また爵位の呼称については日本の五爵を当てはめているため、爵位の項も参照のこと。ドイツの貴族は「フォン(von)」、フランスの貴族は「ド(de)」を名前に付けた。
- フランク王国における地方官が、後に伯爵となる。
- 国境地帯の地方官が辺境伯で、後に侯爵となる。
- 上記以外の豪族で強力なものが後に男爵と呼ばれる。
- ドイツでは、ゲルマン部族制が残っており、広大な地域を領有する部族長が公爵となる。他の地域では王族などで広大な領地を与えられたものが公爵となっている。
- 当初、伯爵より下の位で副伯と呼ばれたものが子爵となる。
- 騎士は当初は騎馬で戦う戦士の名誉称号だったが、やがて貴族の称号を持たない者の称号となった。
一方、北イタリア等の都市国家（ベネチア、フィレンツェ等)は共和制ローマの貴族の衣鉢を継いでおり、世襲で元老院議員となる者や、金や功績により新たに元老議員に選ばれた者などが貴族に当たる。しかし、やがて多くの都市国家で実力者が僭主（シニョーレ signore）となり、さらにローマ教皇や神聖ローマ皇帝から爵位をもらって小公国を作るようになる(例：フィレンツェのメディチ家→トスカナ大公）。
近世に入り、王権が強化され中央集権化が進むと、封建貴族は支配地を失い宮廷貴族となり、王の役人や軍事的、政治的功績があった者が新たに貴族に任命されるようになった。イギリスにおいても現在の貴族の大部分は、この時期に新たに任命されたものである。
近代の市民革命により、多くの国で貴族の称号は廃止されるか、特権を持たない名前だけになった。王制を維持している国（イギリス、オランダ、ベルギー、北欧3国等）では若干の特権が残っているが、ほとんどは形式的なものである（会社員や公務員勤めをしている侯爵家当主さえいる）。
Genealogisches Handbuch des Adelsやカテゴリー(Adelsgeschlecht)など参照。また人名一覧に貴族の一覧があることがある。
[編集] イスラム圏の貴族
[編集] インドの貴族
[編集] 東南アジアの貴族
[編集] 転語
転じて、経済的に恵まれていたり、特権的に振舞う人をさす。
[編集] 関連項目
[編集] リンク
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