名鉄1000系電車
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1000系電車(1000けいでんしゃ)は、名古屋鉄道の快速特急・特急列車に使われる特急形車両。本稿では1030系電車、1200系・1230系電車、1800系・1850系電車、1380系電車についても記述する。
この系統には、普通列車運用とされた「1380系電車」や一部特別車の増結用1800・1850系を除いて、「パノラマSuper」の愛称がある。同じく「パノラマSuper」の愛称をもつ1600系については、当該系列の項を参照のこと。
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[編集] 車両形式
[編集] 1000系
「全車特別車」編成は、4両編成を組み、両先頭車両が展望席となっている。「一部特別車」編成は、6両編成中、豊橋方2両が1000系の「特別車」である。
[編集] 車内設備
- 展望室
- 運転台を1階部分に設置し、客席を中2階部分とした。
- 一般客室
- リクライニング可能な回転クロスシートが設置されている。シートピッチは1000mm。
- 一部特別車編成では、カーペット敷きになっている。
- デッキ
- トイレ
- 洗面所
- 情報サービス装置
- 車内ラジオ再送信システム
- 車内案内表示器
- 次駅、現在の速度、新聞社(主に中日新聞)によるニュース、名鉄からのお知らせなどが流される。
[編集] メカニズム
- GTO界磁チョッパ制御、モーターは150kWの直流複巻電動機が使われる。これは5700系、6500系と同じシステムである。減速比は5700系と同一の4.82で、ブレーキの強化により最高速度が110km/hから120km/hに向上した。
- 技術的には5700・5300系、5500系、6000系、6500系、6800系、7000系、7700系、7100系、さらには8800系との総括制御(連結)運転が可能で、過去には名古屋本線の特急で、現在も車庫-駅間等の回送列車で行われている。
[編集] 1200系
1200系は、一部指定席(現・特別車)特急に使用する1000系の自由席(現・一般車)用として製作された車両である。車両性能は1000系に準じているが、車内設備は1000系と異なっており、展望室の省略、デッキの廃止と3ドア化、座席は転換クロスシートに扉付近収納式補助座席といった変化がある。補助座席の比率が多めな上、転換クロスシートと窓のピッチが一部合致しないのが難点。4両編成で運用していた1000系を2両ずつに分割して1200系を連結した関係で、2号車と3号車のトイレ・洗面所と車掌室の配置が入れ替わっている編成が6本ずつあり、2号車にトイレ・洗面所、3号車に車掌室のある車両は車両番号に100を加算した番号となっている。最近では号車表示を2200系と同じマグサイン風のステッカーに変更した編成が現れている(1000系の部分も同様)。
編成は豊橋方に特別車の1000系2両、岐阜方に一般車4両を連結した6両編成である。電動車比率、編成出力が高く、加速度は2.3km/h/sと1000系特別車のみの4両編成より若干の向上にとどめたが、高速域の加速力は7500系や3500系などと同等となっている。
[編集] 1030系・1230系
1030・1230系は、1992年10月に一部指定席(現特別車)特急編成不足を補うために、廃車された7500系の走行用機器を一部に使って製造された車両。内装は1000系・1200系に準ずるが、従来の車両が電動車4両、モーターなしの付随車2両に対し、この3編成は全車両が電動車となっている。
制御方式は7500系と同じ他励界磁制御で、モーターは75kWの直流複巻電動機である。ただし指定席車(現在の特別車)用となる豊橋方2両の車両については、補助電源装置がMG(電動発電機)からSIV(静止型インバータ)に変更されたため、他励界磁制御装置はGTOを利用したものが新製され、事実上界磁チョッパ制御となった。減速比は7500系の4.93から1000系と同じ4.82へとわずかに変更されている。最高速度は120km/hである。
[編集] 1800系・1850系
1800系は、名古屋本線一部特別車特急のラッシュ時における一般席増結用車両として製造された。一般車のみの2両編成。一見1200系と似ているが、先頭部の「パノラマSuper」パネルは無く、ミュージックホーンも装備していない。そのため、1800系が先頭車となる特急列車はミュージックホーンを鳴らすことができない。 制御方式は界磁添加励磁制御で、6800系や5700系6両編成の1Mユニット車と同じであるが、減速比は1000系と同じ4.82であり、120km/h走行に対応している。
一般席増結用車両にも1230系のように7500系の走行用機器を一部に使った編成が存在し、これらは1850系と呼ばれている。制御装置は1230系と同じであるが、加速度は1800系に合わせて2.2km/h/sとしている。
昼間時間帯は、単独で名古屋本線西部、竹鼻線、津島線、河和線等各地の普通運用に就く。デビュー後の一時期、3重連の6両編成で本線の急行列車に運用された事もあった。
[編集] 1380系
1993年に一部指定席(現特別車)特急編成増備のため、7500系7519編成から機器を流用し、1030・1230系の1134編成として落成。
2002年9月26日に当該編成(1134F)が名古屋本線奥田-大里間で踏切に進入した自動車と衝突、脱線した。特別車部分(1030系)2両は大破したため廃車とし、後部4両のうち豊橋方のモ1384号に運転台を新設する工事を行い、新たな固定編成に修理・改造した編成である。1編成のみの特異な存在。増結用とされる1800系などとは異なり、運用上特急運用ではなく、単独で普通運用に就いていることから、1380系と呼称されている。格下げに伴い塗色は赤一色となったものの、内装は特急時代のままである。また、最高速度は10km/h引き下げ、110km/hとされた。一部特別車特急と言えば4号車は弱冷房車だが、この車両の元4号車(つまり、現2号車)は車両内外ともに「弱冷房車」のステッカーがなくなったため、弱冷房ではなくなった模様。
客室内のスピードメーターは電車のデザインが、1200系のものから3500系や3700系と同じものに変わっている。デジタル式の号車番号表示器は、他の編成(7000系など)と併結したときに、号車番号の認識ができないため非表示の処理が施されている。
2003年10月4日より、犬山線犬山駅-名古屋本線東岡崎駅間を普通列車として2往復の列車に限定運用されていたが、2005年1月29日のダイヤ改正で運用範囲が広見線の犬山駅-新可児駅間と、名古屋本線の東岡崎駅-伊奈駅間にも広がった。2005年2月18日には、混雑の激しい朝の新鵜沼駅発中部国際空港駅行き急行列車ほかの運用に、7000系に代えて使用され、常滑線等にも入っている。この列車では7000系との併結運転も行った。この運用は同年3月21日まで、平日運用で継続されたが、3月22日からは空港関係の列車が別形式車で運行されることになったため、再び普通列車中心の運用に戻った。平日の朝ラッシュ時は広見線内の折り返し運用に就いていることが多い。
[編集] 沿革
- 1988年 4両編成9本(1001~1009編成)デビュー。新岐阜(現・名鉄岐阜)-豊橋間特急で運転。
- この頃、豊橋駅で特急に折り返すため、料金を必要としない一部の急行列車で使われ、現在「特別車」となる有料の車両にも料金無しで乗車できたとされる。2006年現在もこのような列車はあるが、一般席車となる1200系のみに乗車でき、特別車には乗れない。
- 金山駅が東海旅客鉄道(JR東海)中央本線・名古屋市営地下鉄駅の近くに移転し、名古屋市で世界デザイン博覧会が開催された年である。このための輸送増強用として、新岐阜駅-西尾駅間の特急を設定。
- 2次車では、1次車にあった座席の置き枕がカバーに変わった。
- 1990年 4両編成4本(1013~1016編成)増備。
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- 名古屋本線で、座席指定車に特別料金の不要な一般席車を連結した一部指定席特急が運転開始。
- 最初は1000系の4両固定編成に、パノラマカーや5700系などの従来車両を、料金不要の一般車として連結。
- 名古屋本線で120km/h運転を開始。
- 1000系にも増圧ブレーキが設置され、早速1000系のみの編成に限りこれを行った。5700系・5300系などを連結した編成は110km/hのままで、大幅な所要時分短縮はない。
- 1991年 一部指定席特急のスピードアップ、列車の走行中にも指定席車と一般席車とを往来できるよう、一般車用の1200系がデビューする。増結用1800系も登場。
- この編成に改造されたのは、1990年製造の1013編成~1016編成。このときの編成替えは、枇杷島分岐点のデルタ線を用いて行われた。
- 1200系の車号の下2桁はこの1000系の下2桁に合わせてある。また1100番代車が先頭に立つ編成は、1000番代車の車号に全車+100。
- 1992年 一部指定席特急編成をさらに増やすため、1200系を増備。1011・1012編成も一部指定席特急編成となる。1030系・1230系・1850系が登場。
- 1994年 再び全車指定席車の4両固定編成、1017~1019編成が新製される。
- この年の7月26日に、名古屋鉄道創業100周年を記念し、1007編成に一般公募によるデザインをペイントした「ブルーライナー」がお目見えする。青の地色に、車体の下り向き左側には犬山カルチャーゾーン(日本モンキーパーク・博物館明治村・リトルワールド)が、右側には南知多ゾーン(南知多ビーチランド・内海フォレストパーク)が描かれ、人気を博した。ミュージックホーンを名鉄イメージソング「しなやかな風」に変更した。1997年10月、もとの塗装に戻された。なお同種の塗装は、路面電車のモ770形にもなされていた。
- この年に名古屋本線の特急はスピードアップが極限に達し、最速で名豊間47分、名岐間23分にまで短縮。その後はJRとの勝負よりもきめ細かな停車サービス重視の政策に転換、早くも1999年には名豊間48分、名岐間24分へと延びた。さらに2005年以降は名古屋に向かう列車に余裕を盛り込み、豊橋→名古屋49分(快速特急)、岐阜→名古屋25分となっている。特急も名豊間で上下共2分延び、52分が現在の標準所要時分。
- 2003年に、1134編成のうち、破損が大きいモ1134とモ1184が廃車、残された1230系の4両は1380系に改造され、普通列車用となる。
- 2005年 1000系(特別車両)の側面側の方向幕を、従来の幕回転式から「オーロラビジョンR」へ変更。ただし、連結されている1200系(一般車両)の方向幕は従来通り。空港線開業に伴い、一部特別車編成が常滑線・空港線での運行を開始。
- 2006年 1200系一部特別車に、列車のドアが閉まる直前に、「ドアを閉めます ご注意ください」という車内音声がついた編成が登場した。順次、全車両に装備する予定。
- 2006年9月29日 名鉄は、2007年夏以降「ミュースカイを除く快速特急・特急を「一部特別車」に統一」と発表した。このため1000系のうち、特別車のみで構成される15編成が2009年度までに全廃されることが発表された。
[編集] 使用列車
名古屋鉄道の鉄道路線で、特急列車の大半に使われる車両である。
この他、一部特別車の編成が急行として運用されることもある。ただし特別車には乗車できない。
[編集] 在籍数及び編成等
- 1000系
- 全車特別車編成:4両×15本=60両
- 一部特別車編成:2両×15本=30両(うち1030系6両)
- 計90両
- 1200系
- 一部特別車編成:4両×15本=60両(うち1230系12両)
- 1800系
- 2両×12本=24両(うち1850系6両)
- 1380系
- 4両×1本=4両
[編集] 編成本数等
共に左側を豊橋駅方向とする 1000系編成(全車特別車編成)4両固定編成:15本(1000系登場時編成)
- ク1000(Tc)-モ1050(M)-モ1150(M)-ク1100(Tc)
1000系/1200系・1030系/1230系編成(一部特別車編成)6両固定編成:15本(1000・1200形12本、1030・1230形3本)
- 豊橋方2両が特別車、岐阜方4両が一般車
- ク1000(Tc)-モ1050(M)-モ1250(M)-サ1200(T)-モ1450(M)-モ1400(Mc)
- ク1100(Tc)-モ1150(M)-モ1350(M)-サ1300(T)-モ1550(M)-モ1500(Mc)
- モ1130(Mc)-モ1180(M)-モ1380(M)-モ1330(M)-モ1580(M)-モ1530(Mc)
1380系編成(全車一般車普通用)4両固定編成:1本(事故前の車両も含む)
- モ1134(Mc)-モ1184(M)-モ1384(M→Mc)-モ1334(M)-モ1584(M)-モ1534(Mc)
※モ1134,モ1184は2003年廃車、モ1384は2003年運転台取付改造。
- 最高速度120km/h(130km/h準備)
[編集] その他
- 1000系以前から存在する2扉クロスシート車が「SR車(スーパーロマンスカー)」と呼ばれており、単に「スーパー」と言ったのでは紛らわしいため、名鉄社内では1000系列の略称を「PS」としている。
[編集] 参考文献
[編集] 鉄道模型
[編集] 外部リンク
- 名鉄車両博物館
- 1000系
- 1200系(1230系も含む)
- 1380系
- 1800系(1850系も含む)
- 1000系列車両の運用列車検索ページ