名鉄5700系電車
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5700系電車(5700けいでんしゃ)は、名古屋鉄道の一般形電車。
なお、本稿では同様の車体を持ち、ほぼ同時期の製造で車両性能が近い5300系電車についても記述する。
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[編集] 概要
両開き2扉、車内は車端部にロングシート、先頭車の乗務員室背後と各車の扉間には転換クロスシートを計16脚配置してある。先頭部分はくの字型で、通常の乗務員スペースをとりながら、客室から前方への眺望を提供するために車掌台側の窓が拡大されたスタイルである。5700系は完全な新造車、5300系は一部部品に1955年~1957年製車両からの機器を再用した車両である。
[編集] 車体(両形式共通)
初期のSR車両(5000系・5200系)は老朽化が進んだ1980年代半ばになっても非冷房でありながら高速、急行列車によく用いられる車両であったが、車体構造上冷房化改造が困難であった。また国鉄が名古屋本線と競合する東海道本線に「東海ライナー」と銘打って117系電車を登場させて攻勢に出ていたうえ、1987年の国鉄分割民営化によるサービス向上が予想されていた。このため、初期のSR車両を置き換え高速、急行列車の強化を図るべく投入された車両であり、それまでの名鉄2つドア車の快適性にさらに磨きを加えたものとなった。名鉄では、それまで、パノラマカーなど客室より前方への見通しのよい車両が好評を得てきた。そのため、5700系・5300系においてもこれが配慮され、支線乗り入れも考慮したためパノラマカーのような展望室構造とはならなかったものの、前面窓及び車掌台側の乗務員室と客室の仕切りの窓が拡大され、客室からの前方視野を十分に確保した。その直後の座席は広幅のものとし大人2人と子供1人が座れるように配慮した。ほかにも客室窓が連続窓であることや、先頭車の客室最前部にスピードメーターが取り付けられるなど、パノラマカーの後継車としてその伝統を受け継いでいる点が随所に見られる。
一方、5500系や7000系列では、ラッシュ時には乗降時間が延びて列車遅延につながるなどの問題があった。5700系・5300系では、乗降口は前記車両との併結などの関係から2ヶ所だが、ラッシュ時対策として先の車両のような幅の狭い片開き扉ではなく両開き扉を採用し、さらにその幅は6500系などの1.3mより広い1.4mとなった。戸袋の部分は、補助座席で、混雑時には乗務員室からの操作で折り畳んだ形でロックされ、立ち客スペースは6500系並の広さが確保される。また、混雑時に乗客が滞留するこのスペース向けに専用の冷房の吹き出し口が設けられた。車端部は、それまでの2つドア車には一部クロスシートが配置されていたが、5700系・5300系は乗務員室の背後を除く車端部にロングシートが設置された。ドア間は転換クロスシートとなっている。
[編集] 5700系
4両編成が1986年、1987年にかけて5編成が製造されたのち、1989年にモ5650形とサ5600形が2両ずつ製造されて、5701編成と5702編成が6両固定編成となった。これは当時、名古屋本線で高速、急行を終日6両編成以上で運行する方針が打ち出され、乗客や車掌の行き来を容易にするためであった。6両編成が2本12両、4両編成が3本12両在籍。
制御方式は、モ5750形とモ5850形のペアには界磁チョッパ制御が採用されたが、モ5650形は、界磁添加励磁制御が採用され、ともに回生ブレーキ装備となった。界磁チョッパ制御車は6500系と同様に惰行制御を採用し、再力行時のレスポンスが良い。但し6500系にあった発電ブレーキのバックアップを省略したので、回生ブレーキ失効時は空気ブレーキのみとなる。減速比は、6500系の5.60に対して7000系などに近い4.82とした。またマスコンも直列/並列指定式としたが、7000系などと異なり起動時並列ノッチに投入しても主制御器は直列段から進段する。これは5300系や1000系列も同様である。
性能は加速度2.0km/h/s、減速度3.5km/h/s、非常減速度4.0km/h/sで、営業最高速度は110km/h(設計最高速度130km/h)である。
[編集] 5300系
廃車とした5000系・5200系の走行機器などを再利用し、5700系に準じた車体を新造したもので、1986年にデビューしている。私鉄車両として初めて界磁添加励磁制御を採用した車両で、一部に旧車両の走行機器を生かしながら回生ブレーキを使用可能とした。全ての車両が電動車で、75kWのモーターを4台ずつ装備する。減速比は4.875。全電動車のため起動加速度のみ種車の5000系や7000系などと同等の2.3km/h/sで、5700系よりも若干高い。なお本系列も含めて、名鉄の界磁添加励磁制御の車両には惰行制御機能はない。高速走行時に揺れが目立ったため、5000系由来のFS-307系台車を履いていた全20両と、5200系由来のFS-315台車を履いていた車両のうち6両は、その後新造の空気バネを使用したFS-550台車に変更された。同時にブレーキの増圧改造と減速比の変更(4.50)を受けて120km/h走行対応とされたが、2006年の時点では、この台車交換は26両を以て中断状態で、最高速度は従来通りの110km/hである。4両編成が8本32両、2両編成が5本10両在籍。
[編集] 製造から現在まで
製造当初は、初期の目的のとおり名古屋本線の高速、急行などに用いられた。その後1990年10月のダイヤ改正において高速が特急に吸収され一部座席指定特急が誕生すると、その自由席車(当時の呼称は一般席車)での主力として指定席車の1000系電車や白帯を巻いた7700系電車と連結して運用された。しかし1991年から登場した1200系一部座席指定特急専用車によって特急運用はやがて置き換えられた。さらに、3つドアのロングシート車ながら120km/h走行対応性能を持つ3500系や3700系の増備が始まると、急行運用も多くがこれらに取って代わられた。
6両固定編成は7000系パノラマカーの6両編成と同じグループとして運行され現在も急行列車に使われることがあるが、4両と2両の編成は現在は普通列車での運行が中心である。
2006年9月29日付にて名鉄公式HPに掲載されたニュースリリースによると、今後5300系については新造車両に置き換えて順次廃車とするとのことであるが、それがいつまでに行われるのかは明確にされていない。
[編集] 編成
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5700系 | ||||||||||
ク5800(Tc2) | - | モ5850(M1) | - | モ5750(M2) | - | サ5600(T) | - | モ5650(M) | - | ク5700(Tc1) |
ク5800(Tc2) | - | モ5850(M1) | - | モ5750(M2) | - | ク5700(Tc1) | ||||
5300系 | ||||||||||
モ5400(Mc2) | - | モ5450(M1) | - | モ5350(M2) | - | モ5300(Mc1) | ||||
モ5400(Mc2) | - | モ5300(Mc1) |
[編集] 補足
2006年7月15日より放送が開始された名鉄の企業CM「いってらっしゃい。おかえりなさい。名古屋鉄道」では冒頭から登場し、名鉄の顔として主役に抜擢される。
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