高松琴平電気鉄道750形電車
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高松琴平電気鉄道750形電車(たかまつことひらでんきてつどう750けいでんしゃ)は、高松琴平電気鉄道に在籍した通勤型電車。
もと玉野市営電気鉄道のモハ100形で1951年日立製作所製。1965年に入線した。両運転台の制御電動客車で、750,760,770の3両が在籍していたが、2006年9月までに全車廃車となった。
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[編集] 車両概要
車体長15mの2扉車で側面の窓配置はd2D8D2d、2段上昇式の窓を持つ。 前面は貫通路つきである。また張り上げ屋根で当時、日立製作所が私鉄向けに製造した車両の特徴が見られる。 屋上にはガーラント式通風器と、長尾側車端にパンタグラフを持つ。
台車は阪神電気鉄道より購入した同社881形用U形イコライザーの川崎ボールドウィン形台車をコロ軸受け化したもので、 電動機はTDK-596FR[1]で釣り掛け駆動式、ギア比は3.14となっている。
[編集] 車両来歴
[編集] 琴電入線前
元々は未成に終わった蔵王高速電鉄(山形県)が発注した車両の注文流れ品を、備南電気鉄道(岡山県)が購入したものであったとされる。
当時、ドッジ・ラインの影響で国鉄車両の受注が激減していた日立製作所笠戸工場は、京王帝都電鉄などの大手私鉄のみならず、それまで受注実績の無かった地方の中小私鉄に対しても精力的なセールス活動を展開し、下津井電鉄モハ101-クハ21や十和田鉄道モハ2400形2401・2402-クハ2400形2401・2402、あるいは後に本形式と顔を合わせることになる高松琴平電気鉄道10000形電車1001-1002など、各社に対し、国鉄80系電車の流れを汲む車体設計の、当時としては高性能な電車を幾つか納入していた。
本形式もその1つであり、長柱を用いて張り上げ屋根とし、溶接を多用してすっきりと仕上げられた車体の造作や、日立オリジナル設計のMMC超多段式自動加速制御器の搭載など、他社向けの多くの形式と共通する、この時期の日立製作所の標準的な作風を示す設計となっている。
主電動機は日立HS-267[2]で、これは東京急行電鉄向けが大半を占め、地方私鉄での採用例は他に熊本電鉄や黒部鉄道などにわずかに見られるのみ、という珍しいモーターである。
これを装架する台車は日立製作所KBD-104で、これはU字型の釣り合い梁を備える、当時としては一般的なボールドウィン系の高速電車用型鋼組み立て式イコライザー台車であった。
備南電鉄においては、これらはモハ100形101~103と付番されたが、資金難で開業が大幅に遅れ、1953年まで宇野駅構内に留置されていた。
備南電鉄は開業後も経営難が続き、1956年に路線・施設の一切を玉野市に譲渡した。玉野市でもこの車両を引き続き使用したが、本形式の過剰出力による電力消費量の大きさが問題となり、1965年には経営合理化のため動力を内燃化し、不要となったモハ100形3両は対岸の高松琴平電気鉄道に譲渡された。
[編集] 琴電入線後
入線にあたり台車の改軌工事以外は特に大きな改造を受けなかった。日立MMC多段式制御と大出力電動機による性能を活かし、琴平線にて急行用車両として使用された。1967年には前面を貫通化している。
しかし、この仕様は日立製のさらに特殊な制御器を搭載していた10000形などの急行用車も含め、ラッシュ時に併結運転が困難であるなど、運用上様々な形でネックとなり、このため琴電は柔軟な車両運用を実現すべく、機器の統一に乗り出した。
まず、1974年には制御器を主流であったHL制御器に置き換えた。これにより他車との連結が可能になったが、力行時の内部ノッチ進段数が減少したため、加速時の衝動が目立つようになった。また、同時に出力が過剰だった主電動機を他車と交換した。
さらに、長尾線乗り入れのために複電圧化され、翌1975年には長尾線に転属した。
この時期には車両数の関係で750形同士で編成を組むことが多かった。その中でも770は予備車扱いであまり使用されなかった。
1978年11月3日の 踏切でのダンプカーとの衝突事故(詳細は学園通り駅を参照)により、770が事故廃車になった。770と連結していた760は仏生山工場で修理され、その後運用復帰した。
残る2両は長尾線・志度線にて使用されたが、同一形式の重連から他車との連結運転に変わって行く。そして、主電動機を75kw×4に交換してからは、860形制御車と編成を組むようになる。750は870と、760は860と連結することが多かった。
1994年の瓦町駅改良工事開始に伴い、長尾線専用となる。その後、冷房車両の600形投入に伴い、1998年7月、860形が廃車になり、再び他形式の電動車との連結運転となる。しかし、翌1999年には600形603-604入線に伴い、750が廃車となった。
残る760は、2004年にクリーム色と茶色の琴電旧塗装に塗り替え、主にラッシュ時の増結・増便時に使用されていた。2006年5月と同年8月にさよなら運転をおこない、9月上旬に営業運転を終了した。9月末に玉野市電保存会によって玉野市内で静態保存された。
[編集] 脚注
- ↑ 端子電圧750V時定格出力60kW/845rpm。台車同様に2代目30形であった元阪神電気鉄道881形の装備品であるTDK-596Aを昇圧改造の上、転用したものである。
- ↑ 端子電圧750V時定格出力94kW/1,000rpm。
[編集] 参考資料
- 宮崎光雄「私鉄車輌めぐり[69] 高松琴平電気鉄道(下)」、鉄道ピクトリアル191号、電気車研究会、1966年12月
- 真鍋裕司「私鉄車輌めぐり[121] 高松琴平電鉄(下)」、鉄道ピクトリアル403号、電気車研究会、1982年5月
- 真鍋裕司「琴電 近代化への歩み」、鉄道ピクトリアル574号、電気車研究会、1993年4月増刊
- 小林宇一郎「蔵王高速電鉄モハ100秘話」、鉄道ピクトリアル574号、電気車研究会、1993年4月増刊
- JTBキャンブックス『琴電-古典電車の楽園』(後藤洋志著)内、寄稿記事『琴電の車輌大全集』
- 著述・川波伊知郎 / ISBN 4533048579 / 発行:JTB
高松琴平電気鉄道の電車 |
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現用車両 |
営業用(カルダン駆動・冷房車):600形・700形・1070形・1080形・1100形・1200形 営業用(釣掛駆動・非冷房車):20形III・30形III・60形・1000形・3000形・5000形 事業用:デカ1形・13000形 |
過去の車両 |
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