欧州憲法
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欧州憲法(おうしゅうけんぽう)は、それまでの欧州連合 (EU) 及び欧州共同体 (EC)、欧州経済共同体 (EEC)、欧州石炭鉄鋼共同体 (ECSC) の下で締結、批准された50以上の条約、議定書、付属文書に代り、これらの条約の理念及びその効力を憲法という形に纏めた物で、EU加盟国の統一した意思決定のための条約である。
EUの日本への出先機関である在日欧州委員会代表部のアナウンスによると日本語での正式な名称は欧州のための憲法を制定する条約で略称を欧州憲法条約としている。EUの主要な言語ではドイツ語で Vertrag über eine Verfassung für Europa, フランス語で Traité établissant une Constitution pour l'Europe, イタリア語で Trattato che istituisce una Costituzione per l'Europa, 英語では Treaty establishing a Constitution for Europeである。なおフランス語版Wikipediaでは Traité de Rome de 2004(2004年ローマ条約)という表題であるが、これは欧州憲法条約がローマにおいて調印された事によるもので、この表記(ローマ条約)を用いるメディアもある。
欧州連合 |
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欧州理事会 |
欧州連合理事会 |
欧州委員会 |
欧州司法裁判所 |
欧州投資銀行 |
欧州中央銀行 |
欧州憲法 |
欧州連合条約 |
欧州議会 |
欧州議会の政党 |
欧州議会選挙 |
構成国 |
目次 |
[編集] 経緯
[編集] 目的
1951年の欧州石炭鉄鋼共同体の創設以来、今日の欧州連合に至るまで、従来のEUの基本原則、法理念は8つの基本条約と、50以上の議定書、付属文書に拠っていた。これら複数の条約等に跨る法体系は複雑であり、その理解は容易ではなかったため、これらの法体系を分かりやすくまとめ、将来的な問題に耐えうるような構造とし直すことが求められた。
[編集] 調印までの過程
これらの問題を解決するため、2002年に最終的に欧州憲法草案を提出する事を目的としたコンベンション(協議会)が設けられ、元フランス大統領のヴァレリー・ジスカールデスタンを協議会の座長とした。2003年6月には欧州憲法草案がコンベンションによって採択され、欧州理事会へ引き渡された。
その後草案はEU首脳による協議にかけられ、2004年6月にEU首脳会議でも採択、続いて10月にローマにおいて各国首脳、外相が参加して条約への調印式が行われ欧州憲法条約が締結された。以降条約締結の2年後、2006年をめどにEUに加盟している全25か国でそれを批准するか否かを決める意思決定が行われる。
[編集] 草案の調印までに議論となった点
ポーランドなど7ヶ国が前文において「神」について言及するように求めた。なお「神」への言及を求めた国によれば、この「神」とは三位一体説に基づいた、イエス・キリストに限定されないとしている。この「神」への言及はフランスなど徹底した政教分離原則を維持する国々から大きな反発を受けた。一方で比較的厳格的なカトリック国であるスペインも言及する必要は無いとしている。
結果としては前文で「神」への言及を行わなくても、ヨーロッパを体現できるとして、欧州憲法前文での「神」への言及は見送られている。
[編集] 批准の状況
欧州憲法条約が発効されるためには全加盟国の批准が必要であるが、条約の批准に関しての手続きは各国に一任されている。先ず議会の決議のみで批准する国と批准の是非について国民投票を行う国に分かれる。又、国民投票の性格に関しても対応はまちまちであり、国民投票に拘束力は無く、議会においてそれを覆して批准しうる国と、国民投票に拘束力を認めている国に分かれる。又、条件付(投票率等)で拘束力が生じるとしている国もある。批准作業は議会での批准を行う国では順調に進んでいるが、国民投票を行う国では2005年2月に国民投票を実施したスペインでは可決されたものの、5月に行ったフランス、6月に行ったオランダでは相次いで否決され、続いて国民投票によって賛否の態度を表明する国へ動揺が広がる事が懸念されている。
以下、批准の可否の状況を示す:
- は可決。は否決。-印は未決。
- 国の順番は否決の時期の早さによる。未決の国に関しては予定順である。
- 何れにしろ、国民投票は最終的な条約批准の意思決定になり得ない。(条約の項を参照されたい。)そのため、全ての国で議会を通す必要があり、その詳細も以下に加える。
[編集] 議会の決議において批准の可否を決定する国
国名 | 批准した日付 | 可否 | 投票の詳細 |
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リトアニア | 2004年11月11日 | 賛成84、反対4 | |
ハンガリー | 2004年12月20日 | 賛成322、反対12 | |
スロベニア | 2005年2月1日 | 賛成79、反対4 | |
イタリア | 2005年4月6日 | 下院-賛成436、反対26・上院-賛成217、反対16 | |
ギリシャ | 2005年4月19日 | 賛成268、反対17 | |
スロベニア | 2005年5月11日 | 賛成166、反対27 | |
オーストリア | 2005年5月25日 | 下院-賛成182、反対1・上院-賛成59、反対3 | |
ドイツ | 2005年5月27日 | 下院-賛成569、反対23・上院-賛成66、反対3 | |
ラトビア | 2005年6月2日 | 賛成71、反対5 | |
キプロス | 2005年6月30日 | 賛成30、反対19 | |
マルタ | 2005年7月6日 | 賛成65、反対0 | |
ベルギー | 2006年2月8日 | 下院-賛成118、反対18・上院-賛成54、反対9 | |
エストニア | 2006年5月9日 | 賛成73、反対1 | |
フィンランド | 未定 | - | - |
スウェーデン | 未定 | - | - |
チェコ | 未定 | - | - |
[編集] 国民投票を行うが国民投票の結果に拘束力を認めない国
国名 | 投票の実施日 | 批准した日付 | 可否 | 投票の詳細 | 議会での投票の詳細 |
---|---|---|---|---|---|
スペイン | 2005年2月20日 | 2005年5月18日 | 賛成76.7%(42.3%) | 下院-賛成319、反対19 上院-賛成225、反対6 |
|
デンマーク | 未定 | 未定 | - | - | - |
チェコ | キャンセル | 未定 | - | - | - |
[編集] 国民投票を行い国民投票の結果に拘束力を認める国
国名 | 投票の実施日 | 批准した日付 | 可否 | 国民投票の詳細(投票率) | 議会での投票の詳細 |
---|---|---|---|---|---|
フランス | 2005年5月29日 | 未定 | 反対54.7%(69.3%) | 未定 | |
ポーランド | 未定 | 未定 | - | - | - |
アイルランド | 未定 | 未定 | - | - | - |
[編集] 国民投票を行い条件付で国民投票の結果に拘束力を認める国
国名 | 投票の実施日 | 批准した日付 | 可否 | 国民投票の詳細(投票率) | 議会での投票の詳細 |
---|---|---|---|---|---|
オランダ | 2005年6月1日 | 未定 | 反対61.6%(62.8%) | 未定 | |
ルクセンブルク | 2005年7月10日 | 10月25日 | 賛成56.5%(87.77%) | 賛成57、反対1 | |
イギリス | 日程を凍結 | 未定 | - | - | - |
[編集] その他
国名 | 批准した日付 | 可否 | 投票の詳細 |
---|---|---|---|
欧州議会 | 2005年1月11日 | 賛成500、反対137 | |
ブルガリア | 2005年5月11日 | 賛成231、反対1 | |
ルーマニア | 2005年5月17日 | 賛成434、反対0 |
[編集] 内容
前文、第1部、第2部、第3部、第4部の合計448条からなる
[編集] 前文
- 人間の譲渡する事のできない普遍の権利として、自由、平等、民主主義、法の下の支配を規定
- ヨーロッパの多様性の尊重
[編集] 第一部
- 欧州議会
- 議席数は750を上限とする。
- 一カ国の議席数は96を上回ってはいけない。
- 一カ国の議席数は6を下回ってはいけない。
- 財政法における立法権限の強化。
- 加盟各国の国内法に対して、EU法が優先される事が確認される。
- 欧州理事会
欧州理事会の会合のメンバーに、従来の加盟国首脳、欧州委員会委員長に加え、欧州理事会議長とEU外相を加える。
- 欧州理事会議長
- 従来欧州理事会の議長国は持ち回りでこれにあたっていたが、この議長国制度を廃止し、常任の欧州理事会議長職を新設する。
- 注)欧州理事会議長はマスコミなどではEU大統領として言及される場合がある。
- 欧州理事会議長の任期は2年半とする。
- 再選は認めるが、2回以上の再選は認められない。
- 任期中に他の公職に付く事はできない。
- EUを代表する。
- EU外相
- EU外相のポストを新設する。
- EU外相は欧州委員会を代表する。
- 欧州委員会
- 加盟各国より一人の委員が選出される。
- ただし欧州委員会の総員は加盟国数の2/3に制限される。これにより2007年にブルガリア、ルーマニアが予定通りEUに加盟した場合の欧州委員会の委員の総数は18人となる。
- 欧州委員会委員長の選出は、欧州委員会内で行われるが承認は、欧州議会の過半数の承認を必要とする。又委員長は欧州理事会によって任命される。
- EUのシンボル
- 上に示されるこれまで慣例的にEUの旗として用いられてき旗を公式にEUの旗とする。
- 交響曲第九番第四楽章「歓喜の主題」(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作)を公式にEUの歌とする。
- 5月9日をEUの日とする。
[編集] 第二部
- 2001年に公布された欧州基本権憲章の内容を盛り込んだ、人権条項
[編集] 第三部
- 従来のECやEUの条約規定が盛り込まれている。
- スポーツに関してのヨーロッパにおける位置づけについて言及されている。
[編集] 第四部
- 詳細規定
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 欧州憲法条約草案(英語、*.pdfファイル)
- 欧州憲法条約草案(ウィキソース)
- 在日欧州委員会代表部による欧州憲法の解説
- 入稲福智による欧州憲法の解説のページ
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