東京地下鉄半蔵門線
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半蔵門線(はんぞうもんせん)は、東京都渋谷区の渋谷駅~墨田区の押上駅間を結ぶ、東京地下鉄(東京メトロ)の鉄道路線。正式名称は11号線半蔵門線である。
車体及び路線図や乗り換え案内で使用されるラインカラーは「パープル」(紫):○Z。
名前の由来は徳川家康の家臣・服部半蔵正成の屋敷の側にあった事から名が付いた江戸城の門の一つ、「半蔵門」から。
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[編集] 路線データ
- 路線距離(営業キロ):16.8km
- 軌間:1067mm
- 駅数:14駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V架空電車線方式)
- 閉塞方式:車内信号閉塞式(2003年(平成15年)2月2日から新型の東京メトロCS-ATC(一段ブレーキ対応)に更新。それまでは旧型の東京メトロCS-ATC)
- 車両基地:鷺沼検車区(東急田園都市線鷺沼駅構内)
[編集] 概要
1972年(昭和47年)の都市交通審議会答申第15号において、東京11号線は、二子玉川園駅(現・二子玉川駅)~渋谷駅~半蔵門駅~蛎殻町(水天宮前駅)~深川扇橋駅間の路線とされた。その後1985年(昭和60年)の運輸政策審議会答申第7号において、蛎殻町(水天宮前駅)~住吉駅~四ツ木駅~松戸駅間が追加され終点が松戸まで延長された。このうち渋谷駅~押上駅間が半蔵門線として順次開業している。
千代田線、有楽町線に次ぐ「バイパス3路線」の1つで、銀座線の混雑緩和を狙いとしていたが、反対運動が発生したこと、さらにバブル崩壊とそれに伴う営団の減収などが原因で全通が当初予定より大きく遅れることとなった。
半蔵門線は日比谷線以外の東京メトロ・都営地下鉄全線と連絡している。銀座線とは公式な乗換駅でない渋谷駅を含めて乗り換え駅が5つあるが、このうち最も至便なのは同一ホームとなる表参道駅である。
東京メトロの路線の中で全駅間の所要時間が最も短く(距離は銀座線の方が2.5km短い)、また現在東京メトロの路線の中で駅数が最も少ない。ちなみに、直通運転先(東急田園都市線中央林間駅~東武日光線南栗橋駅間)を含めた運転距離は98.5kmもあり、これは東京メトロの車両としては一番のロングラン運転となる。
[編集] 沿革
- 1971年(昭和46年)4月28日 渋谷駅~蛎殻町駅(現:水天宮前駅)間の地方鉄道敷設免許を取得。
- 1972年(昭和47年)3月 渋谷駅~三越前駅間が着工される。当初は1975年(昭和50年)9月の完成を予定していた。
- 1978年(昭和53年)8月1日 渋谷駅~青山一丁目駅間(2.7km)開業、東急田園都市線長津田駅まで直通運転開始(快速のみ長津田駅まで運転、各停は入庫列車が鷺沼駅まで、他は全て東急新玉川線二子玉川園駅(現二子玉川駅)折り返し)。当時営団は自社で車両を所有しておらず、東急所有の車両(8500系)のみを使用。これは路線全体が2.7kmと短く、また自社の車庫を持っていなかったためである。
- 1979年(昭和54年)8月12日 終日に亘って青山一丁目駅~渋谷駅~(東急新玉川線)~二子玉川園駅~(東急田園都市線)~長津田駅まで直通運転。
- 1979年(昭和54年)9月21日 青山一丁目駅~永田町駅間(1.4km)単線開業(この当時は青山一丁目行と永田町行が交互に走っていた)。
- 1981年(昭和56年)4月1日 東急線との乗り入れ区間をつきみ野駅まで延長。自社の車両8000系営業運転開始。鷺沼検車区完成。
- 1982年(昭和57年)12月9日 永田町駅~半蔵門駅間(1.0km)開業。併せて青山一丁目駅~永田町駅間も複線化。
- 1984年(昭和59年)4月9日 田園都市線全通により、東急線との乗り入れ区間を中央林間駅まで延長。
- 1989年(平成元年)1月26日 半蔵門駅~三越前駅間(4.4km)開業。沿線の地権者が動員した後援者による反対運動で開通が大幅に遅れた。
- 1990年(平成2年)11月28日 三越前駅~水天宮前駅間(1.3km)開業。
- 1995年(平成7年)3月20日 地下鉄サリン事件に関連し午前の運転を休止し、午後から再開。
- 2003年(平成15年)1月7日 08系営業運転開始。
- 2003年(平成15年)3月19日 水天宮前駅~押上駅間(6.0km)開業。東武伊勢崎線経由日光線南栗橋駅まで相互直通運転開始。
- 2004年(平成16年)4月1日 帝都高速度交通営団の民営化により東京地下鉄(東京メトロ)に承継。
- 2004年(平成16年)6月23日 渋谷駅で発砲事件が発生、駅員が負傷した。
- 2005年(平成17年)5月9日 女性専用車両導入(東京メトロでは初)。
- 2006年(平成18年)3月18日 東武伊勢崎線との相互乗り入れ区間を東武動物公園駅から久喜駅まで延長(南栗橋行の運転も継続)。
[編集] 運転形態
東急側は渋谷駅から東急田園都市線の中央林間駅まで、東武側は押上駅から東武伊勢崎線久喜駅及び東武動物公園駅から分岐して日光線の南栗橋駅までそれぞれ相互直通運転を行なっている。東急田園都市線へはすべての電車が直通しており一体的に運用されている。東武乗入れが決定して以降、一時は渋谷駅に東武車用の折り返し設備を設ける予定があったが、東急線との完全乗入れ形態を東武線直通運転開始後も継続したため、実現には至らなかった(直通需要は田園都市線側の方が大きかったうえ、田園都市線内の渋谷方面への折り返し設備が不十分である)。結果、東急・東武の車両共に半蔵門線を通りそれぞれの路線に乗り入れるという、日比谷線の例とは対照的な車両運行形態となっている。
伊勢崎線への直通列車は、押上延伸当初は日中1時間3本(約20分毎)の運転だったが、2006年3月18日のダイヤ改正から大幅に増発し、ほとんどの時間帯で1時間5~7本(約10分毎)となっている。なお直通電車は急行または準急(朝・夜間のみ運転)に限られる。また、東急~東武までの全区間で急行運転する電車を30分おきに運行している(東急線の急行が15分間隔、東武線直通列車が10分間隔でありこのサイクルが30分おきに重なる。半蔵門線内は各駅に停車する)。
乗り入れ先の鉄道会社の運用・乗客案内上、各駅停車・準急(東武)・急行(東急・東武)と3種別の表記が使用される事になるが、いずれも半蔵門線内は全て各駅停車となる(ただし臨時列車もみじ号は半蔵門線内では各駅停車ではなく急行(渋谷-表参道-永田町-大手町-清澄白河-押上)で運行された)。これらの種別は1つの列車につき直通3社間で一定というわけではない。
例えば東武伊勢崎線内で急行運転でも、東急田園都市線内で引き続き急行運転とは限らない。東武伊勢崎線・日光線に直通運転する車両は渋谷駅(または始発駅)で準急または急行に、東急田園都市線に直通運転する車両は押上駅(または始発駅)で各駅停車または急行にそれぞれ列車種別が変化する。これは都営浅草線でも見られる運行形態である。
線内の日中の運転間隔は5分。押上方面は、東武線直通急行(久喜行きと南栗橋行きが交互)と、押上止まり(30分に一本は清澄白河止まり)が交互に運転され、渋谷方面は、各停(鷺沼で急行待ち合わせ)・各停(桜新町で急行通過待ち・長津田で急行待ち合わせ)・急行の順に運転される。
朝ラッシュ時には田園都市線→半蔵門線方面で半蔵門行、逆方向の半蔵門線→田園都市線方面には鷺沼行が設定されている。東武線直通列車では北越谷折り返し準急もある。
車両基地は自社路線内に用地を確保できなかったため、東急田園都市線の鷺沼駅の横に鷺沼検車区として置かれている。
東急5000系電車の一部編成には5号車と8号車に6扉車が連結されており、平日朝の押上方面の電車の場合東急田園都市線の長津田駅から当線の半蔵門駅まで座席が使用できない。
半蔵門線内または乗り入れ先の東急・東武線内で大幅な運行の乱れが生じた場合、東武線との直通運転を一時的に中止する事は多いが、東急線との直通運転が中止になることは滅多にない。
[編集] 駅のホーム・案内表示
- 押上延長後の半蔵門線各駅の発車案内表示器には、時刻や行き先とともに車両の所属会社が「○○車両がきます」「○○の車両です」(○○:東京メトロ・東急・東武、営団時代は営団)といった形で表示される。車いすスペースを設置した車両の連結位置が東武(同じ東武の車両である30000系と50050系でも車いすスペースの位置が違う)と東京メトロで異なるためである。「○両目に車いすスペースがあります」という表示だと表示装置が表示できる字数を超えてしまうため、「東武の車両です」や「東京メトロの車両です」と表示しているという。
- 他線の殆どの駅ではA線の方がホーム番号が若いが、当線のみ逆で、B線の方に若い番号を振っている。これはホーム番号を銀座線にあわせたためである。
- 東急線方面(奇数番線)のホームではアナウンスで種別(各停はなし)、行先、急行の場合東急線内の停車駅が放送される。
- 東武線直通方面(偶数番線)のホームでは種別(急行・準急《押上・清澄白河ゆきはなし》)、行先、急行・準急の場合東武線での停車駅が放送される。
- 案内表示で有楽町線・南北線などとは列車種別表示される場所が違う。有楽町線・南北線などでは [時刻 直通先での種別 行先] の順番で、半蔵門線では [時刻 行先 直通先での種別] である。
[編集] 車両
[編集] 自社車両
[編集] 乗り入れ車両
[編集] 女性専用車
平日朝始発から9:30までの全列車の進行方向最後尾車両(実施区間は押上~渋谷間)(9:30で女性専用車の扱いは取りやめとなる)
[編集] 駅一覧
駅所在地は全て東京都内。
駅番号 | 駅名 | 接続路線 | 所在地 |
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東京急行電鉄田園都市線中央林間駅まで直通運転 | |||
Z-01 | 渋谷駅 | 東京地下鉄:○銀座線(G-01)(※下記注意を参照)、○13号線(2008年6月開業予定) 東日本旅客鉄道:山手線、埼京線、湘南新宿ライン 東京急行電鉄:田園都市線(直通運転)、東横線 京王電鉄:井の頭線 |
渋谷区 |
Z-02 | 表参道駅 | 東京地下鉄:○銀座線(G-02)、○千代田線(C-04) | 港区 |
Z-03 | 青山一丁目駅 | 東京地下鉄:○銀座線(G-04) 都営地下鉄:○大江戸線(E-24) |
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Z-04 | 永田町駅 | 東京地下鉄:○有楽町線(Y-16)、○南北線(N-07)、○銀座線(赤坂見附駅:G-05)、○丸ノ内線(赤坂見附駅:M-13) | 千代田区 |
Z-05 | 半蔵門駅 | ||
Z-06 | 九段下駅 | 東京地下鉄:○東西線(T-07) 都営地下鉄:○新宿線(S-05) |
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Z-07 | 神保町駅 | 都営地下鉄:○三田線(I-10)、○新宿線(S-06) | |
Z-08 | 大手町駅 | 東京地下鉄:○丸ノ内線(M-18)、○千代田線(C-11)、○東西線(T-09) 都営地下鉄:○三田線(I-09) |
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Z-09 | 三越前駅 | 東京地下鉄:○銀座線(G-12) 東日本旅客鉄道:総武線(快速)(新日本橋駅) |
中央区 |
Z-10 | 水天宮前駅 | ||
Z-11 | 清澄白河駅 | 都営地下鉄:○大江戸線(E-14) | 江東区 |
Z-12 | 住吉駅 | 都営地下鉄:○新宿線(S-13) 東京地下鉄:有楽町線支線(計画) |
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Z-13 | 錦糸町駅 | 東日本旅客鉄道:総武線(快速)、中央・総武線(各駅停車) | 墨田区 |
Z-14 | 押上駅 | 都営地下鉄:○浅草線(A-20) 東武鉄道:伊勢崎線(直通運転) 京成電鉄:押上線 |
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東武鉄道伊勢崎線久喜駅・伊勢崎線経由日光線南栗橋駅まで直通運転 |
- ※注意
渋谷駅では半蔵門線・東急田園都市線と銀座線は接続業務を行っておらず、事実上異なる駅として扱われている(相互に乗り換えるには必ず一旦改札の外に出る事になる)。半蔵門線・東急田園都市線と銀座線の乗り換えは公式には同一ホームで乗り換え可能な表参道駅が案内されている。
[編集] その他
- 他社との乗り入れを行う東京地下鉄の路線の中では、珍しく両端とも自社管理駅である(他線では、乗り入れ側の管理駅が1つはある)。
- 2006年現在未開業の区間については、2000年の運輸政策審議会答申第18号で「2015年までに整備着手することが適当である路線」として位置付けられている。しかし、東京メトロは株式の上場を最優先するため13号線で路線建設を全て終了すると発表しているため、実現する可能性は低い。
- 当初は永田町駅-大手町駅間は皇居の下を通る予定(途中駅なし)であったため、永田町駅は比較的深いところに作られたといわれている。しかし、「天皇家の家下を地下鉄が通る」ということに難色を示し、永田町駅-九段下駅-神保町駅経由の迂回ルートに変更された。ルート変更にあたっては地元住民の説得が試みられたものの決裂し、ついに一坪共有運動にまで発展した。このため、営団は土地収用法を基に強制収用の申請をしたが、一連の土地買収に10年ほどの期間を要したうえ、半蔵門駅以東の開業が大幅に遅れることとなった。なお、神保町駅は当初通らないルートであったため、都営新宿線の神保町駅に比べ、ホームが狭かったり、地上から駅改札までの歩行ルートが複雑化することとなった。
- 南北線と同じく、直通先を除いて半蔵門線内区間内では地上に出る箇所は無く、全ての駅が地下駅である(半蔵門線・南北線以外の東京メトロの路線の中はどの路線も必ず自社内で地上に駅が1つはある)。
[編集] 参考文献
- 『帝都高速度交通営団史』 東京地下鉄、2004年12月。
- 『営団地下鉄半蔵門線建設史』 帝都高速度交通営団