列車特定区間
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列車特定区間(れっしゃとくていくかん)は、JR線の運賃・料金計算制度の特例とされるものの一つ。
[編集] 概要・歴史
JR各社の「旅客営業取扱基準規程」は、列車特定区間について次のように規定している。
- 110条 次の各号に掲げる場合で、当該記号の末尾のかつこ内上段の区間を乗車するときは、規則第67条の規定にかかわらず、○印の経路の営業キロによつて旅客運賃、急行料金及び特別車両料金を計算することができる。この場合、乗車券の券面の経路は、旅客運賃の計算経路を表示するものとする。
- 154条 第110条の規定により発売した乗車券を所持する旅客に対しては、同条各号に掲げる急行列車に乗車する場合に限り、別に旅客運賃を収受しないで、当該列車による迂回乗車の取扱いをすることができる。ただし、迂回乗車区間内におけるは、途中下車の取扱いはしない。
経路特定区間に類似した制度であるが、利用する列車を特定し、途中下車しない条件で、短い距離の経路で運賃と料金を計算する制度である。
1947年に上野駅~金沢駅間に上越線経由の列車が設定された際に、信越本線経由の運賃の適用を認めたことが、最初の制定とされる。輸送力が不足していた時代に、最短ルート以外の列車に乗客を誘導する(最短ルートの列車を利用できない乗客を救済する)ことを主な目的としていた。代表的なものとしては、福島駅~青森駅間(奥羽本線経由でも東北本線経由で計算)、大宮駅~秋田駅間(上越線・羽越本線経由でも奥羽本線経由で計算)などがあった。
しかし、ミニ新幹線を含む新幹線の開業などにより、在来線直通列車が消滅した結果、制度の対象は大きく減少した。中には天北線と宗谷本線のように、片方のルートの廃止でなくなったものもある。2006年現在、存続するものは以下の通り。
- 赤羽線経由で計算。
この3例の中でかつての「輸送力救済形」の姿を残すのは、「尼崎駅~和田山駅」間のみである。しかし、列車の運行目的自体が登場当時と変わったこともあり、制度の意義はほぼ失われてしまっている。残る2例は首都圏で山手貨物線を経由した特急を設定した際に誕生したものである。大都市近郊区間の適用を受け、最短経路の乗車券で迂回ルートの乗車ができるため、運賃面ではこの制度を必要としないが、列車特定区間の制度は、特急料金やグリーン料金にも適用されるところに意味がある。
また、複数の経路を通る特急列車があっても、距離の長い方が所要時間が短く救済列車とみなされない場合には設定されない。「サンライズ出雲」と「出雲」(2006年廃止)のケースがその典型である。
かつては市販の時刻表では、本文中で適用される個別の列車の箇所にこの制度についての注記が記載されていたが、数が減ったこともあり現在は営業制度のページ(いわゆる「ピンクページ」)にまとめて記載されている。