毛皮
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毛皮(けがわ)とは、体毛が密生している哺乳類の皮革である。哺乳類は体表に体毛が生えていることが特徴である。密生した体毛に包み込まれた空気の層は断熱性に優れており、これによって哺乳類は体温の発散を防いでいる。
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[編集] 利用の歴史
人類は、毛皮を衣類として防寒などの目的に旧石器時代から使用していたと見られる。寒冷な気候の北ヨーロッパなどでは、毛皮は生活に欠かせない必需品であった。カエサルのガリア戦記にはゲルマン人が毛皮を着用してたことを示す記述が見られる。
封権時代のヨーロッパでは、高級な毛皮は宝石などと同様、財宝として取り扱われた。イギリスのヘンリー8世(在位、1509年 - 1547年)は皇族以外の者が黒い毛皮を着用することを禁じた。とりわけ黒テンの毛皮は子爵以上の者しか着用できないとした。18世紀以降にはヨーロッパ全土に広まり、貴族はキツネ、テン、イタチなど、庶民はヒツジ、イヌ、ネコなどの毛皮を使用していた。
黒テンやビーバー、キツネといった毛皮はロシアの主要な輸出品として、大きな商業上の利益をもたらした。16世紀以降、ロシア帝国は毛皮を求めて、東方に領土を広げ、シベリア開発を行った。ロシア政府はシベリアの少数民族に対し、毛皮の形で税を徴収した。この税はヤサクと呼ばれる。
18世紀にはラッコの毛皮が流行し、最高級品として高値で取引された。ロシア人はこれを求めて極東のカムチャッカ半島、さらにはアラスカまで進出し、毛皮業者に巨万の富をもたらした。乱獲により、20世紀初頭にはラッコは絶滅寸前まで減少した。
20世紀の半ば以降、狩猟による毛皮の採取は減少し、多くは飼育場で生産されるようになった。
シベリアやアラスカのエスキモーなど寒冷地方に生活する人々は、防寒用としてトナカイやアザラシの毛皮を愛用している。帽子、上着、ズボン、長靴、手袋など、ほぼ全身を毛皮で覆っている。
現代では動物愛護の意識の高まりから毛皮の利用に対して国際的な反対運動が展開されており、特に寒冷地等で「必需品」として利用するのではなく「贅沢品」として利用する事には強い嫌悪感を持つ人も多いと言われる。
[編集] 動物学における毛皮
[編集] 主な毛皮獣
毛皮獣として、キツネ、テン、イタチ、チンチラなど寒冷地に生息する種や、ラッコ、カワウソ、ビーバー、アザラシなど半水生ないし水生の種が主に用いられる。これらはいずれも断熱性に優れた毛皮を持つ。
- ミンク
- イタチ科の小動物。毛皮獣のなかでも飼育による生産開始時期が古く、1866年から行われている。1930年代以降、大量生産がなされるようになった。突然変異により、様々な毛色のものが得られている。
- シルバーフォックス
- アカギツネが突然変異により、銀色の毛色になったもの。劣性遺伝であるため、野生のものはまれであるが、1898年にプリンスエドワード島にて飼育が成功して以降、安定した供給が可能となった。
- チンチラ
- げっ歯類の小動物。青灰色の毛をもつ。20世紀初頭、乱獲により絶滅寸前まで減少した。野生のチンチラはワシントン条約により保護されている。
[編集] 毛皮の加工
最近では海外の愛護団体によって生きながら皮を剥ぐ映像が撮影されその惨酷さゆえに世界で批判の声が上がっている。
- なめし
- 脱脂後、なめし剤に漬込んで防腐処理を行う。なめし剤として、ミョウバンと食塩の混合溶液や、塩基性クロム塩と食塩の混合溶液などが用いられる。ミョウバンによるなめしは古くから行われてきたものであるが、水分に弱いため、染色には向かない。クロム塩によるなめしは耐水性、耐熱性に優れるが、毛皮が淡青緑色に着色してしまうという難点がある。皮革のなめしのことを英語でタンニングtunningと呼ぶが、毛皮の場合ドレッシングdressingと呼ばれる。
- 仕上げ
- 必要に応じて染色を行う。加脂によって皮繊維に油脂を浸透させ、「水分を加える」→「揉みと延ばし」→「乾燥」を繰り返すことで、柔軟性を良くする。さらに、剪毛機によって毛並みを整えて製品とする。
[編集] フェイクファー
人工毛皮、模造毛皮ともいう。化学繊維、羊毛、モヘアなどを材料に、本物の毛皮(リアル・ファー)に似せて人工的に作った織物。本物に比べて丈夫で安い上に、手入れ(保守)が楽なことや、動物愛護の高まりなどから、衣類はもとより、バッグやカーペット、日用小物など多くの分野で利用されている。
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