アトランタ
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アトランタ(Atlanta)はアメリカ合衆国ジョージア州の州都であり最大の都市である。アトランタは、フルトン郡の郡庁所在地であるが、1909年に併合された市域の一部 はデカルブ郡に所属している。
2005年7月の人口推計によると、アトランタ市の人口は約470,688人で全米35位、都市圏全体では491万7717人と全米9位である。これは主にグレーター・アトランタ外部からの人口流入によるもので、このため市郊外では数年来建築ラッシュが続いている。グレーター・アトランタにはまだ森も多く残っており、開発する土地の余裕はあるので、一軒一軒広大な庭を持つ一戸建を数十軒以上まとめて開発する「development」や、敷地内に公園や遊歩道を持つ「apartment complex」が多い。 市の人口の3分の2を黒人が占めるが、郊外には白人が多く、グレーター・アトランタ全体で見るとアメリカ合衆国の平均的な比率とあまり変わらない。なお、統合統計地域(CSA)の2005年7月現在の推計人口は524万9121人である。
アトランタ市内は「ペリメーター」と呼ばれる環状高速道路インターステート285号によって取り囲まれており、この環状道路より外側がおおむね郊外である。戦後のいわゆる新南部(ニュー・サウス)の発展の中で、アトランタは中心的都市と位置づけられている。また、歴史および人口規模上の理由から、アトランタはアメリカ黒人の文化的・経済的中心地であると位置づけられている。現に、1974年以来のアトランタ市長はすべて黒人であり、そのほかの市役所の重職にも黒人が就任している場合が多い。
市の愛称は、「ホットランタ」(気温が高いことから)、ザ・ビッグ・ピーチ、ATLなど。同市は世界でもっとも利用客が多い空港のひとつであるハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港(デルタ航空のハブ空港)の所在地としても有名である。 またCNN(ケーブルニュースネットワーク)やコカコーラの本社所在地でもある。ハナミズキの花も名物で、春先は街の各所で咲きみだれる。
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[編集] 歴史
1837年にウェスタン・アトランティック鉄道の終点がこの地に置かれたことで、市名を「終着駅」の意味からターミナス(Terminus)と名付ける。現在の市名に改名したのは1845年である。一帯は綿花の産地であり、アラバマ州モンゴメリーらと共に綿花の集散地として栄え、後に紡績業が発展する。しかし、南北戦争の煽りを受けて市街地はほぼ灰燼に帰した。なお、南北戦争当時の女性、スカーレット・オハラを主人公とする小説・映画風と共に去りぬは、アトランタが舞台である。
その後復興し、1877年には州都となり、20世紀より地元に本社を置くコカ・コーラ社の大ヒットにより、市街地が発展、後に自動車、機械、食品工業が集まる。現在でも、コカ・コーラ社の企業城下町となっている。
1990年に、国際オリンピック委員会は、1996年の夏季オリンピックの開催地にアトランタを選んだ。アトランタオリンピック日本選手団も選手・役員499名が参加しメダル14個を獲得した。
[編集] 地理
アトランタは北緯33度45分18秒、西経84度23分24秒に位置し、日本の姉妹都市の福岡市(福岡県)とほぼ同緯度である。
アメリカ合衆国統計局によると、同市の総面積は343.0 km² (132.4 mi²) である。このうち341.2 km² (131.8 mi²) が陸地で1.8 km² (0.7 mi²) が水面である。総面積の0.51%が水面となっている。
海抜は約1000フィート(約300m)。Chattahoochee 川南岸の分水嶺上に位置する。アメリカのMSA(大都市圏)の25地域の中では、アトランタはデンバー、フェニックスに次いで、3番目に海抜が高い都市である。
[編集] 住民及び文化
[編集] 人口動静
2000年現在の国勢調査2で、アトランタ市は人口416,474人 (2003年現在423,019人の見込み)、168,147世帯、及び83,232家族が暮らしている。人口密度は1,221/km² (3,161/mi²) である。548/km² (1,419/mi²) の平均的な密度に186,925軒の住宅が建っている。この都市の人種的な構成はアフリカン・アメリカン61.39%、白人33.22%、アジア1.93%、先住民0.18%、及び混血1.24%である。ここの人口の4.49%はヒスパニックまたはラテン系である。この都市は国の中で最大のゲイ人口の1都市である;DeKalb 及びフルトン郡の両方の2000年国勢調査によればアメリカ国内でもっとも多いゲイの郡の10位以内に入っている。
168,147世帯のうち、22.4%が18歳未満の子供と一緒に生活しており、24.5%は夫婦で生活している。20.7%は未婚の女性が世帯主であり、50.5%は結婚していない。38.5%は1人以上の独身の居住者が住んでおり、8.3%は65歳以上で独身である。1世帯の平均人数は2.30人であり、結婚している家庭の場合は、3.16人である。
この都市内の住民は22.3%が18歳未満の未成年、18歳以上24歳以下が13.3%、25歳以上44歳以下が35.2%、45歳以上64歳以下が19.4%、及び65歳以上が9.7%にわたっている。中央値年齢は32歳である。女性100人ごとに対して男性は98.6人である。18歳以上の女性100人ごとに対して男性は97.6人である。
この都市の世帯ごとの平均的な収入は51,482米ドルであり、家族ごとの平均的な収入は55,939米ドルである。男性は36,162米ドルに対して女性は30,178米ドルの平均的な収入がある。この都市の一人当たりの収入 (per capita income) は29,772米ドルである。人口の24.4%及び家族の21.3% は貧困線以下である。全人口のうち18歳未満の38.8%及び65歳以上の20.7%は貧困線以下の生活を送っている。
グレーター・アトランタとされるエリアはアトランタ市周辺の20の郡にまたがり、デカルブ・スミルナ・オーステル等の市を含む。その人口は約411万人、159万世帯。人口の63%が白人、29%が黒人、7%がヒスパニック、3%がアジア系、0.3%がネイティブアメリカンである。
[編集] アトラクション、イベント、施設
アトランタは歴史から美術、自然史、及び飲料などの分野の評判が高い多様な博物館を誇っている。 本社のあるCNN(ケーブルニュースネットワーク)やコカコーラがそれぞれ運営する、CNNセンターや、ワールド・オブ・コカコーラには連日多くの観光客が訪れる。1929年にアトランタで生まれ、黒人解放に貢献してノーベル平和賞を受賞した、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの記念館もある。
[編集] メディア
アトランタの主要な日刊新聞は w:The Atlanta Journal-Constitution である。他の週刊新聞は w:Creative Loafing 及び Atlanta Nation が含まれる。
アトランタ大都市圏は幅のある多様なローカル・テレビジョン放送局によってサービスされていて、2,059,450 軒 (アメリカ国内の総計1.88%) と共にアメリカ合衆国内の9つ目に大きな指定した市場地域 (DMA) である。主要なネットワーク・テレビジョン系列はWXIA 11 (NBC)、WSB 2 (ABC)、WGCL 46 (CBS)、WAGA 5 (FOX)、WATL 36 (WB)、WUPA 69 (w:UPN)、WUVG 48 (w:Univision)、WPXA 14 (i)、及び WHSG 63 (TBN) である。2つの PBS 放送局もある: WGTV 8 (PBS) と WPBA 30 (PBS)、及び1つの独立運営放送局:WATC 54。
TBS Superstation、CNN、カートゥーン ネットワーク、Boomerang、及び TNTを含む、いくつかのケーブルテレビジョン・ネットワークはアトランタから運営を行っている。それらの放送局はw:Turner Broadcasting System (現在 タイム・ワーナー) によって所有されている。w:The Weather Channel (w:Landmark Communicationsによって所有) もまたアトランタ地域から放送している。
[編集] スポーツ
チーム | 種類 | リーグ | スタジアム | ロゴ |
アトランタ・ファルコンズ | フットボール | NFL; NFC | w:Georgia Dome | |
アトランタ・ブレーブス | 野球 | MLB; NL | ターナー・フィールド | |
アトランタ・ホークス | バスケットボール | NBA | w:Philips Arena | |
アトランタ・スラッシャーズ | アイスホッケー | NHL | w:Philips Arena |
アトランタは、1892年にw:Auburn University vs. ジョージア大学という南部初の大学対抗フットボールの試合が行われたことなど、豊かなスポーツの歴史を有している。また、世界最大の 10K 競技である、大学フットボールの毎年の w:Peach Bowl 及び w:Peachtree Road Race の開催地でもある。さらに、アトランタは100年目の1996年夏季オリンピックの開催都市となった。w:Centennial Olympic Park は荒廃したビルのダウンタウン地域内に、アトランタオリンピックのために建設された。現在はw:Georgia World Congress Center 公社 によって運営されている。
[編集] 社会基盤
[編集] 政治
アトランタは市長および市議会により統治されている。市議会は15人の議員により構成され、12の小選挙区からそれぞれ1人ずつ、また1つの大選挙区から3人が選出される。市長は市議会によって可決された法案を拒否することができる。一方、市議会は3分の2以上の賛成により市長の拒否権を無視することができる。
アトランタには黒人が多数居住しており、1973年以降の市長はすべて黒人であった。黒人が30年以上継続して市長を務めたのは、アトランタが初めてであった。メイナード・ジャクソンが1973年に市長に選出された後、1982年にアンドリュー・ヤングが、1990年に再びメイナード・ジャクソンが市長に選出された。その後ビル・キャンベル、シャーリー・フランクリンと続いた。
ジョージア州の州都としてジョージア州議会議事堂が置かれている。
[編集] 交通機関
世界一でもっとも利用者の多い空港のひとつであるハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港が市南部にあり、国内外各地と結ばれている。市中心部へのアクセスにはI-85およびMARTA(後述)がある。
I-20が東西に、I-75が北西から南東、I-85が北東から南西に、市を貫いている。市の中心部ではI-75とI-85は共用区間となっており、インターステートの中でも交通量の多い区間の一つである。また、環状のI-285が市周辺部をとり囲む形になっている。
アトランタ市内や周辺の都市圏を中心にアトランタ・マルタ(MARTA)が地下鉄と多数のバス路線を展開している。
また、市内にあるアムトラックの駅には、ニューヨークとニューオーリンズとを結ぶクレセント号などの長距離列車が停車する。
[編集] 友好姉妹都市
アトランタは Sister Cities International, Inc. (SCI) によって指定された19の姉妹都市を有している:
[編集] 治安
南部の成長都市のイメージとは裏腹に、アトランタはデトロイトやセントルイスと並ぶ、全米でも有数の犯罪都市である。かつてはモーガン・クイットノー社(Morgan Quitno)[1]の調査で「全米で最も危険な都市」とされたことがあった。2003年の連邦捜査局(FBI)の調査では暴力犯罪(殺人・強姦・強盗・傷害)の発生率が全米ワースト1であった。特に殺人発生率が高く、2004年には人口10万人あたりの殺人件数で26件を数えた。現在は犯罪発生率は低下傾向にあるものの依然として高く、上記モーガン・クイットノー社2005年の調査ではワースト7位である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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