Mozilla Firefox
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Mozilla Firefox 2.0 日本語版スクリーンショット |
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開発元: | Mozilla Foundation |
最新版: | 2.0 / 2006年10月24日 |
評価版: | 3.0a1 / 2006年12月8日 |
対応OS: | Windows / Mac OS X / Linux / BSD系 |
プラットフォーム: | クロスプラットフォーム |
種別: | Webブラウザ |
ライセンス: | MPL/GPL/LGPLトリプルライセンス |
公式サイト: | mozilla-japan.org/products/firefox |
Mozilla Firefox(モジラ ファイアフォックス)とは、オープンソース・クロスプラットフォームのWebブラウザである。開発元はモジラ財団(Mozilla Foundation)である。Webブラウザやメールクライアントが統合されたMozillaにおける、速度面での不満や複雑化するコードの解消を目的として、2002年中頃から開発が進められている。
目次 |
[編集] 歴史
[編集] Phoenix
Mozilla Firefox という名前は、幾度かの名称変更の後に付けられたものである。2002年9月にリリースされた最初のバージョン 0.1 は、Phoenix という名称であった。
しかし、この名称は Phoenix Technologies 社の商標権を侵害することが判明したため、変更せざるを得ない状況に追い込まれた。こうして次項にも述べられる名称、Firebird という名称が採用されることとなった。プロダクト名としての Phoenix は放棄されるも、開発ロードマップ上は、継続的に Phoenix という名称が使用された。バージョン 1.0 のコードネームは Phoenix である。
[編集] Firebird - ブランディング戦略の発表
ユーザからどのような名称がよいかなどを投票で集め、かつ商標権に抵触しない名称を考慮した結果、2003年4月に Firebird という新名称が決定した。しかしこの名称が新たな問題を引き起こしてしまうこととなる。Firebird という名前が、Mozilla と同じくオープンソースで開発されているリレーショナルデータベースプロジェクトの名称であることが判明し、同データベース Firebird プロジェクトからMozilla Organization に攻撃的な形で強い苦情があった。これを受けて Mozilla Organization は Mozilla Branding というブランディング戦略を発表した。
この戦略には、Apple Computer が同年1月に発表したブラウザ、Safari が Mozilla Organization の開発している Mac OS X 用のブラウザ Camino ではなく、KDE プロジェクトが開発しているレンダリングエンジン、KHTML を採用したことが同じく絡んでいるとされる。「軽量・高速性」への需要は、アプリケーションスイートとして開発されていたMozilla には満たせないものであったのだ。
Mozilla Branding で述べられていたことは次のようなものである。
- Mozilla プロジェクトはメインで開発している Mozilla を 1.4 まで開発する。その後は Firebird 及び同じく Mozilla 派生のスタンドアロンメーラ、Thunderbird をメインに開発していく。
- 開発体制がシフトしたあとは、Firebird、Thunderbird はそれぞれ Mozilla Browser、Mozilla Mail と名称を変えて開発していく。
- それまでの措置として Firebird、Thunderbird を Mozilla Firebird、Mozilla Thunderbird と呼ぶ。
このブランディング戦略によりデータベース Firebird プロジェクトとの名称問題は沈静化した。2003年5月には、Firebird として初のリリースとなる 0.6 が登場した。
その後、Mozilla Firefox 1.0 系列のプロダクトは、Mozilla 1.7 系列の基盤に即すものとする方針となった。
[編集] Mozilla Firefox
ブランディング戦略により、Firebird という名前は一時的なものとなった。しかし Mozilla 1.4 がリリースされたあとも依然として Mozilla Browser という名称変更が行われる気配がなかった。Firebird の完成度がメインプロダクトとして機能するほど充分な状態になかったことが原因であったが、さらに Firebird という名称が使われ続ける原因となる「事件」が起こった。Mozilla Foundation の設立である。
2003年5月末に起こった AOL と Microsoft の和解により、AOL 傘下であった Netscape と Microsoft 間で起こっていた反トラスト法訴訟などがすべて取り下げられた。また同時に、Microsoft のウェブブラウザ、Internet Explorer を数年に渡りロイヤリティフリーで使うという契約を結んだことにより、ブラウザを提供する Netscape の存在価値が危ういものとなった。これは Netscape のコードベースにもなっている Mozilla の存在価値をも揺るがす問題であった。こうした事態を受けて 2003年7月、Mozilla Organization は、 AOL から資金提供を受け、Mozilla の開発を支援する団体である Mozilla Foundation を設立した。
Mozilla Foundation の設立により、Netscape が担っていた「エンドユーザへのソフトウェア提供及びサポート」という目標が Mozilla Foundation にも覆い被さることとなった。それまで Netscape がリリースしたもののサポートを含め、Mozilla Foundation は Mozilla を今後もリリースしていかざるを得ない状況となってしまった。これにより4月に発表されたブランディングにおける「Mozilla Firebird/Thunderbird への開発体制移行」が閉ざされてしまうこととなった。
これにより、一時的とされていた Firebird という名称を使い続けることに対する懸念が生まれた。そのため同年11月ごろから、Firebird 開発チームが新たな名称への変更をするための動きが水面下で行われた。商標に関するトラブルはもちろん、他のプロジェクトで使われている名称との衝突を避けるため、念入りにリサーチが行われた結果、Mozilla Firefox という名称がこのブラウザの正式名称となることが決定し、2004年2月にはMozilla Firefox 0.8 がリリースされた。
このブラウザの名称にまつわる問題は、Mozilla Firefox という名前に落ち着くことで解決となった。名称の由来はレッサーパンダ(Red Panda)の別名からきている。
なお、FireFox或いはFireFOX,FIREFOXなどと表記されることが多いが、Mozilla団体(Mozilla Japan)の公式ヘルプによるとこれらは誤植であり、Firefox(略称:Fx もしくは fx)が正しいスペルだという。[1][2]
また、新しいソースは全てMPL/GPL/LGPLのトリプルライセンスでライセンスすることが定められた。同時に公式リリース版に用いられるロゴはMozilla Foundationの商標として保護されることとなった。ただしCVSデフォルトのロゴはトリプルライセンスの下で利用可能である。
[編集] 特徴
- レンダリングエンジンにGeckoを採用
- Mozillaを開発する際に作られたレンダリングエンジンGeckoを使用することで、HTML、XML、CSS、canvas、SVGなどの多くのウェブ標準に対応している。基本的にはウェブ標準技術のみを採用しているが、過去に書かれたページとの互換性から非標準のタグなどもサポートしている。
- タブブラウズ機能
- 同一ブラウザウィンドウ上に、タブと呼ばれる表示ウィンドウ切り替え機能を搭載することで、複数ページの閲覧や操作性を向上している(関連:タブブラウザ)。また一つのウインドウだけでブラウジングができる「シングルウィンドウモード」も搭載されている。ポップアップウィンドウの制御も行いタブが無駄に増えないようにしている。
- ライブブックマーク
- RSS、Atomといったデータ配信技術への対応を標準で装備し、ブラウザ上から直接配信されたデータへ飛ぶことが出来る。
- プライバシー管理
- クッキーやページ履歴、入力履歴などの管理を行える。クッキーについては、クッキーの許容、拒絶をページ単位で管理でき、これにより、クッキーによる個人の追跡などを防ぐことが出来る。
- セキュリティ
- JavaScriptの制御、SSLやTLSのサポート、証明書管理機能などを備える。SSLを利用するサイトの場合は、証明書の確認を行い、証明書のやりとりが完全な場合のみ、アドレスバーの色が変わるようになっており、これにより、ユーザーにたいして安全であることを示すことが出来る。
- アドオン
- 1.5系列まで、拡張機能とテーマは別々に管理されていたが、2.0系列からアドオンとして統合された。追加インストールの言語パックもアドオンに含まれる。
- 拡張機能
- XUL によって記述される Extension(拡張機能)をインストールすることが可能である。これによりブラウザのコアは最低限の機能のみ搭載し、ユーザーが自由に拡張機能をインストールし機能を向上させることが出来る。インターネットで公開されている拡張機能は、タブブラウズ機能拡張やマウスジェスチャー機能やRSSリーダー機能に関するものなど、多種多様に存在する。XULの機能を利用することでマルチプラットフォームに展開できるという利点もある。
- Mozilla Thunderbirdと共通して使えるものなどFirefox以外のXULアプリケーションにも対応しているものがある。
- また、Firefoxの普及に伴いGoogleなど主要ポータルサイトがIEに提供していた拡張ツールバーのFirefox版も増えてきている。
- テーマ
- 自分好みの Theme(テーマ)をインストールすることにより、ブラウザの外観を変更できる。
- 特定のXULアプリケーションでしか利用できないようになっているが、複数のアプリケーションに対して同様のデザインを提供しているものもある。
- 検索プラグイン
- ナビゲーションツールバー上の検索バーから直接 Webサイトを検索できる機能。初期状態ではYahoo!やGoogle、Amazonなどの検索プラグインが登録されている。また、各種の検索プラグインがWeb上で公開されており、それを導入することでさまざまなWebページの検索機能を利用することが出来る。Firefox 2.0からは従来の形式に加え、OpenSearch形式のXMLフォーマットに対応した検索プラグインが提供されている。
- スマートキーワード
- ロケーションバーから直接 Webサイトを検索できる機能。Yahoo や Google 、Wikipedia などの検索窓を登録しておけば、それらで瞬時に検索することが可能である。また、この機能については簡単な記述で設定の変更が可能であり内部Webサーバーに検索エンジンを使っている場合なら簡単にその検索エンジン向けに対応することが可能である。
- (ただし、2.0以降の初期設定では何も登録されていないため、ユーザーが手動で追加の作業を行う必要がある)
- プラグインサポート
- Flashや、Adobe Acrobatなどのプラグインをサポートしており、これにより、マルチメディアを利用したウェブページの閲覧が可能である。
- Talkback
- Netscapeよりmozilla.orgへ提供されたクライアントアプリケーションとサーバ、サーバインフラや開発・管理を担当する技術者などの事を指す。オープンソースではないが、安全性の向上などに貢献しているプログラムである。
- グローバル拡張機能として1.5系列より同梱されており、ユーザーが簡単にクラッシュデータ提供を行えるシステムになっている。ブラウザがクラッシュしたとき自動的に品質フィードバックエージェントとして起動し、不具合が起きたときの情報を送るかどうかの確認画面が表示される。同様の機能はMozilla Thunderbird 1.5、Mozilla Sunbird 0.3以降のアプリケーションにも搭載されている。
- 自動アップデート
- 1.0系列ではソフトウェアが更新を通知してユーザーが手動で上書きインストールを行う仕組みだったが、1.5系列より機能を強化したものが搭載されており、セキュリティパッチや新バージョンを簡単に入手できるようになっている。定期的に新バージョンの確認を行い、新バージョンの存在を確認できた時点で小さな差分ファイルをバックグラウンドで自動的にダウンロードし、インストールの準備ができたことを知らせてくれる。自動的に更新作業まで行わせるよう設定変更することも可能である。
- セッションマネージャ
- クライアント終了時の状態を保持する機能である。アドオンやソフトウェアそのもののアップデートによる再起動や、クライアントのクラッシュ時、次回起動では前回終了したときの状態を復元する。
- フィッシング詐欺サイト警告機能
- Firefox 2から搭載された機能で、フィッシング詐欺の疑いのあるサイトにアクセスすると警告画面を表示する。標準状態で使用する詐欺サイトのリストデータはGoogleが提供しているものを使用しており、定期的に更新される。また、Googleのサイトに直接サイトデータを送信して確認する設定もオプションで選択できるようになっている。
[編集] セキュリティ
FirefoxはOSと統合されておらず、しばしばセキュリティーホールの原因となるVBScriptやActiveXを標準でサポートしていない。そのため、それらを悪用するコンピュータウイルスやスパイウェアが侵入できないことから、FirefoxはWindows版のInternet Explorerよりも安全だと言われている。一方で単にシェアが低いために、ウイルスなどの製作者に標的にされることが少ないからだという主張もある。Firefoxのシェアの上昇に伴い、脆弱性の報告数は増えており、注意が必要である。
[編集] バージョンの変遷
1.5系列以降の開発コードネームは世界各国にある有名な公園の名称から取られている。また、trunk(本流の開発ライン)については2006年4月頃よりMinefield(地雷原の意)のコードネームが使われている[3]。
[編集] 1.0系列
基本的に1.0のセキュリティフィックス。現在セキュリティアップデートは終了している。Geckoエンジンのバージョンは1.7.x。先述のとおり、コードネームはPhoenixである。
- 2004 年 9 月、バージョン 1.0 を見据えて一般向けのプレビュー版 (PR : Preview Release) がリリース
- 1.0 - ファーストリリース (2004年11月9日)
- 1.0.1 - .lnk ファイルに関する問題等を修正(2005年2月24日)
- 1.0.2 - gif 画像の処理におけるヒープオーバーフロー等を修正(2005年3月20日)
- 1.0.3 - javascript: 形式の favicon を通じてコードを実行できる脆弱性等の修正(2005年4月15日)
- 1.0.4 - javascript: 形式の iconURL を通じて任意のコードを実行できる脆弱性等の修正(2005年5月11日)
- 1.0.5 - スタンドアロンアプリケーションからブラウザを通じて任意のコードが実行される脆弱性等の修正(2005年7月12日)英語版のみ
- 1.0.6 - 1.0.5 における拡張機能関連 API の不具合の解消 (2005年7月19日)
- 1.0.7 - 国際化ドメイン名(IDN)に関する脆弱性等を修正。(2005年9月20日)
- 1.0.8 - Intel Macへの対応を除き1.5.0.2とほぼ同じ。1.0系列の最終アップデート。(2006年4月13日)
[編集] 1.5系列
もともとバージョン 1.1 としてリリースされる予定だったが、リリース予定時期が延期されるとともにバージョン 1.5 として改められた(ベータ版の時は 1.4.x であった)。アルファ版の公開時には一般ユーザのダウンロードを防ぐため、コードネームの Deer Park (ニュージーランドケルビン・ハイツにある動物公園の名前)という名前が使われた。Geckoエンジンのバージョンは1.8.0.x(下一桁の数字はブラウザのバージョンに依存する)
- 1.5 - ファーストリリース (2005年11月29日)
- 1.5.0.1 - 安定性の向上、Mac OS Xサポートの向上等。(2006年2月1日)
- 1.5.0.2 - Intel Macへの正式対応、安定性の向上、セキュリティフィックス。(2006年4月13日)
- 1.5.0.3 - サービス妨害 (DoS攻撃)の脆弱性の修正。(2006年5月2日)
- 1.5.0.4 - 安定性の向上、セキュリティフィックス。Thunderbird 1.5.0.4と同時リリース。(2006年6月1日)
- 1.5.0.5 - 脆弱性の修正、安定性向上、フリジア語版の公開。Thunderbird 1.5.0.5と同時リリース。 (2006年7月27日)
- 1.5.0.6 - Windows Mediaコンテンツの再生に関する不具合の修正。(2006年8月2日)
- 1.5.0.7 - 安定性の向上、セキュリティフィックス。Thunderbird 1.5.0.7と同時リリース。(2006年9月14日)
- 1.5.0.8 - 安定性の向上、セキュリティフィックス。Thunderbird 1.5.0.8と同時リリース。(2006年11月7日)
[編集] 2.0系列
2006年12月現在、一般ユーザー向けに公開されているバージョン。Geckoエンジンのバージョンは1.8.1.x。コードネームはBon Echo(カナダオンタリオ州にある公園の名前に由来)。初期の計画では9月19日に正式版がリリースされる予定と発表されていたが、さまざまな問題により約1ヶ月延期。最終的に米国時間の10月24日に全世界で同時リリースされた。[4][5]
[編集] 3.0系列
Geckoエンジンのバージョンが1.9系列になる予定。2006年12月現在、英語版のみアルファ版が公開されている。3.0より、Microsoft Windows 95、98、MEおよびMac OS X 10.2以前のサポートは終了する。コードネームはGran Paradiso(イタリア北西部の山でありそこにある国立公園の名前でもあるグラン・パラディーゾに由来)であるがまだブランチが切られていないため、現在のナイトリービルドはMinefieldのままである。[6][7]
[編集] 関連項目
- フォクすけ - Firefoxマスコットキャラクター
- Mozilla Foundation - 開発元団体
- Mozilla Japan - 日本国内でMozilla製品のサポートを行う団体。
- Mozilla Add-ons - Mozilla製品用の拡張機能をエンドユーザー向けに公開している公式サイト。
- Spread Firefox 2006 Summer - Firefoxを広めるキャンペーン。
- Mozilla - Firefoxの元となったソフトウェア。
- SeaMonkey - Mozillaの後継ソフトウェア。
- Mozilla Thunderbird - Firefoxと同じく独立したタイプのメーラー。
- Camino - 旧 Chimera。Mac OS X ネイティブのGeckoブラウザ。
- Mozilla Sunbird - Mozillaのカレンダーのみの単体ソフト。
- Nvu - MozillaのHTML編集単体ソフト。
- もじら組 - 日本におけるMozillaコミュニティ
- 拡張機能 - Geckoのクライアントに機能を付加するプログラム。
- ブラウザ戦争
- 推奨ブラウザ
[編集] 参考文献
- ↑ http://www.mozilla.org/support/firefox/faq#spell-abbreviate
- ↑ http://www.mozilla-japan.org/support/firefox/faq#spell-abbreviate
- ↑ "Bug 308973 - Rebrand Firefox trunk and 1.8 branch builds to avoid confusion" mozilla.org Bugzilla.
- ↑ "Firefox2" Mozilla Wiki.
- ↑ "Firefox2/StatusMeetings" Mozilla Wiki.
- ↑ "Firefox3" Mozilla Wiki.
- ↑ "Gecko 1.9 Alpha Planning" Mozilla Wiki.
[編集] 外部リンク
[編集] 日本語
- Mozilla Firefox - Mozilla Japan
- Mozilla Firefox まとめサイト
- Firefox Bookmarks
- Firefox拡張機能集Wiki
- Mozilla Links 日本語版 - Mozilla 関係のニュースブログ
- Firefox更新情報 Wiki - 拡張機能、テーマ、独自ビルド等の更新情報
- えむもじら(主にFirefoxの記事を扱うブログ)
[編集] 英語
- Mozilla Coporation
- mozilla.org
- Spread Firefox - Igniting the web
- Mozilla Firefox の脆弱性報告 - Secunia
- Bezilla Project - BeOS 系オペレーティングシステムへの移植プロジェクト