駅舎
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駅舎(えきしゃ)
- 昔の宿場にある宿屋のこと。歴史的な用語である。
- 鉄道駅の本屋(ほんおく、ほんや)のこと。(本項で説明する)
駅舎(えきしゃ)とは、鉄道駅の本屋、駅本屋である。ふつうはある鉄道駅のメインの建物であり出札口、改札口、駅事務室、旅客の待合所など駅としての基本的な設備が入っており、通常そこを通らないと駅構内から外に出られない構造となっている。ただし、これは一般的な意味であり、例外も多く、駅舎か駅舎でないか微妙なものも多い(後述)。
駅舎という言葉は人と人との別れ、出会いをイメージするため、多くの映画、文学で取り上げられ、映画などに於いては駅舎がラストシーンのロケ地に良く用いられる。
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旧JR奈良駅
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JR門司港駅
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目次 |
[編集] 駅舎の種類
典型的な駅舎は、切符売り場、改札口、事務室、待合室、売店、観光案内所などを備えた施設になっている。ホームと駅舎の位置関係により、次のような区分ができる。
[編集] 一般的な駅舎(地平駅)
駅舎とホームがおおむね同じ高さにある(ホームか駅舎か、どちらか一方が築堤などの上にあり、標高差が少しある場合もある)。日本で初めて開設された新橋停車場以来、各地に作られた伝統的な形態である(複線の場合、終着駅を除く駅では反対側のホームに到達する際、線路を横切るため、駅構内の踏切か、跨線橋または地下通路が必要になる)。
[編集] 鉄道高架化の場合
鉄道が高架化された場合、ホームは高架部分になるが、駅舎も高架の部分に造られる場合と、階段を降りた地上に造られる場合がある。
[編集] 鉄道地下化の場合
鉄道が地下化された場合、ホームは地下部分になるが、駅舎も地下に造られる場合と、階段を昇った地上に造られる場合がある。みらい平駅・緑地公園駅など掘割構造も同様。
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橋上駅舎(地上ホーム)
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橋上駅舎(発寒駅)
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近年では駅舎を改築(新築)する際に、橋上駅舎とする事例が増えている。跨線橋と駅舎を一体化したような形で、ホームや線路の上空に改札など駅舎が設置され、外部やホームには階段やエレベータなどで接続する。例えば鉄道が市街地を東西方向に通過している場合、北口・南口と改札を2つ作るより、橋上の1か所に切符売り場や改札を統合する方が管理もしやすく、人件費など運用コストも削減できる。また、鉄道で分断されていた南北の市街地を結ぶ自由通路を兼ねる場合もある。橋上化により新たに設置した階段部分、エレベータ部分がかつての駅舎部分より小さく収まれば、店舗や駅前広場など有効活用できるスペースが生まれる。
しかし、駅舎への移動、駅構内での移動の際に階段の昇り降りが生じるため、バリアフリーの観点からエレベータ・エスカレータの設置が必要になり、建設費用は割高になる。乗客が駅両側から改札まで等しく到達でき、線路を越える歩道橋の役割も兼ねる一方で、ホームとホームの間、駅舎とホームの間の移動において階段・エスカレータでの上下動を伴うことにより、構内での平均移動時間が長くなる。ただし駅前広場にコンコースと連続したペデストリアンデッキを設置し駅周辺の施設に接続することで、これらの欠点は幾分改善される。利用者の多い駅では橋上駅舎への改築に合わせてペデストリアンデッキが整備されることが多い。
一方線路が地平にあるため、近隣の踏切が解消できない点で地平駅と変わらないという欠点もある。「開かずの踏切」近くの駅が橋上駅に建て替えられた場合、(開かずの踏切問題を抜本的に解消する)高架化または地下化は当分の間、実施されないものと考えられる。
[編集] 地下駅舎(地上ホーム)
橋上駅舎とは逆に駅舎のみを地下に設置した地下駅舎もある。これは主に私鉄の駅に見られる。効果としては橋上駅舎と似ている。橋上駅舎よりは上下する距離が短いが、構内が暗いなどの欠点もある。地上にはホームのほかに入口が設けられるが、地下鉄の駅入口のように小規模のものもあれば、一般の地上駅舎なみの立派な入口を設けている例も見られる。
[編集] その他
駅舎の用地が取れない場合、ホームの上に駅舎を作ることがある。この形態のものは少ないが平和駅・東秋留駅・上野原駅・服部駅・高城駅・弁天島駅などの例がある。
[編集] 駅舎の変遷
かつてはどのような小さな駅でも貨物や運転を取り扱うために駅員がおり、小さい駅でも一定以上の規模の駅舎が必要であった。
しかし最近は人件費の節約による無人化や、維持に費用のかからないもの(メンテナンスフリー)を優先するような経営姿勢により、乗降客が非常に少ない場合は無人化される例が見られる。かつての駅舎が撤去され、待合室だけとか、出札小屋だけとか、建物が何もない駅も出てきた。一方、都心部では駅に人が集まることを利用した駅ビルや、自由通路を兼ねる橋上駅舎などが増えてきている。
国土交通省では2010年までに、乗降客5000人以上の駅で段差が5m以上ある場合、エレベータ・エスカレータにより段差を解消することなど、移動円滑化を図ることを目標にしている。
[編集] 駅舎ではないもの
無人駅になった場合、簡単な設備のみ設けられることがある。
- 無人駅等
- これらが単独で存在するだけでは一般に駅舎とはいえない。駅員の勤務場所など、一定程度の機能を備えたものを駅舎という。
- 簡易委託駅で出札が駅前商店などに委託されておりその商店の窓口で乗車券などの販売を行っている場合、その商店の建物は駅舎ではない。
- 軌道の施設
- プラットホーム
- 付属施設
- 倉庫になっている駅本屋は廃棄された駅舎と同じ扱いで本来駅舎と呼ばないはずだが、その後待合室や新駅舎などが設置されない場合は写真集などで駅舎扱いとしている。
[編集] 駅舎と駅ビル
駅前は1等地でもあり、土地の有効活用のため、駅の施設と商業施設が複合した大きなビル(駅ビル)が建設されることも多い。話題を呼んだ京都駅ビル(1997年)の例を見ると、次のような構造だと説明されている。
- 鉄道駅施設
- 拠点である駅舎
- 中央コンコース、南北自由通路
- 商業施設
- ホテル、百貨店、専門店街、美術館
[編集] 地下鉄と駅舎
[編集] 路面電車と駅舎
運賃の支払い等は車内で行われ、駅舎が設けられない場合が多い。(起点などには時々見られる)
[編集] 海外の駅舎
欧米では信用乗車方式が一般的で、改札口がないなど駅舎の構成が日本とは異なっている。
[編集] 特徴的な駅舎
[編集] 歴史的な駅舎
- 新橋停車場*(東京都)
- 1882年3月10日開業当時の駅舎が現存している。日本最古の鉄道駅舎として鉄道記念物に指定されており、「旧長浜駅舎鉄道資料館」として公開されている。
- 1887年3月1日開業当時の駅舎が現存しているだけでなく現在も使用が続けられている。現役駅舎の中で最古である。
- 二条駅*(明治40年、京都鉄道→JR西日本、梅小路蒸気機関車館資料展示館として移築保存)
- 浜寺公園駅(明治40年、南海電気鉄道)
- 軽井沢駅*(明治45年、JR東日本、(旧)軽井沢駅舎記念館として移築保存)
- 室蘭駅*(明治45年、JR北海道、観光案内所、多目的ホールとして保存)
- 上熊本駅(大正2年、JR九州)
- 新八日市駅(大正2年、近江鉄道)
- 東京駅丸ノ内側(大正3年、JR東日本ほか)
- 赤レンガの駅舎は建築家辰野金吾の代表作の一つ。2010年頃までに、建造当時の姿に復元される予定である。
- 門司港駅(大正3年、重要文化財、JR九州)
- 折尾駅(大正5年、JR九州)
- 諏訪ノ森駅・高師浜駅(大正8年、南海電気鉄道)
- 美濃駅*(大正12年、名鉄、廃線廃駅後も保存)
- 蛸地蔵駅(大正14年、南海)
- 栃木駅*(昭和3年、JR東日本・東武、栃木市総合運動公園付近のスーパーカーミュージアムに移築)
- 神戸駅(昭和5年、JR西日本)
- 出雲大社前駅(昭和5年、一畑電車)
- 宇治山田駅(昭和6年、近畿日本鉄道)
- 琴平駅(昭和11年、JR四国)
- 熱塩駅*(昭和13年、国鉄、廃線廃駅により現・日中線記念館)
- 旧同和鉱業片上鉄道の駅舎群*(廃線廃駅、一部は現存)
- 西岩国駅(1929年(昭和4年)、現在も使用、岩徳線)
など(*は旧駅舎)
[編集] 映画中の駅舎
- 鉄道員(ぽっぽや)- JR北海道の幾寅駅が「幌舞駅」として使われた。
- 浮草(うきぐさ・小津安二郎監督)- JR東海の田丸駅がラストシーン。
- 恋におちて - ニューヨークのグランドセントラルターミナルが重要なシーンに使われる。グランドセントラルターミナルは数々の映画に使われ、アルマゲドンやインデペンデンス・デイでは駅舎が破壊されるシーンがある。
- 旅情 - ヴェネツィアのサンタルチア駅が最初と最後のシーンに使われ、世界的に有名になる。
[編集] その他
- 新しい橋上駅舎であるが、これは東京駅を模したものである。当地は実業家渋沢栄一の出身地で、渋沢が建設したレンガ工場があり、多くのレンガを生産していた。東京駅舎でも使われたため、それを記念したデザインになったという。
- 駅舎の大半は駅ビルにて構成されているごく一般的な物。比較的新しい物に見えるが大半の建物は築40年をもうじき迎える大変古い物。本来は改築すべきであったが当時は国鉄の末期であり資金が無く困難。そこで駅舎の一部分を川崎市に提供し東西自由通路を設置してもらう。駅ビル部分は大規模な耐震工事に加えて増築するなどの大規模な工事を短期間に行ったため業界では有名である。
[編集] 関連項目
- プラットホーム
- 鉄道駅の構造による分類 - 地上駅、橋上駅、高架駅、地下駅など
- 建築
- 建物
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