狙撃手
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狙撃手(そげきしゅ)とは、離れた場所や隠れた場所から目標を銃で狙い撃つ射撃手のこと。スナイパー (sniper)とも呼ばれる。
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[編集] 概説
軍隊や警察による狙撃は、原則として専門の訓練を受けた狙撃手によって行われる。狙撃が行われる状況は様々だが、共通していることは適切な位置まで移動して待ち伏せを行い、相手方に悟られずに狙いをつけ、少数の弾丸で目標の敵や犯罪者を確実に倒すか排除制圧することにある。
そのため、主として軍事行動での狙撃手は必然的に身を隠すことになり、高度なカモフラージュの技術を求められる。例えば、目立ちにくい色の服や迷彩服を着用し、その上からさらにギリースーツと呼ばれる枯れ草状の覆いを被ったり、植物を身に巻くなどの工夫がある。これは敵に何処からともなく撃たれるという精神的な効果を狙った処置である。警察行動での狙撃手は、不必要に目標(=犯人)を刺激しないよう目立つべきではないが、軍事行動における狙撃手ほどの偽装は必要とされない場合がほとんどである。警察行動の狙撃手の配置は場合によっては犯罪抑止の意味からも意図的に暴露状態で配置することも多く確実を期するために可能な限り近付いて行われる。
また、軍事行動での狙撃手はその移動も痕跡を残しにくい方法を用いるため、斥候(偵察兵)としての任務を兼ねる場合もある。したがって、軍隊の狙撃手には、敵情を正確に判断・把握する能力や、記憶力なども要求され、目標排除のためには必要であれば航空支援、火砲による支援砲火の要請、巡航ミサイルなどの精密誘導兵器のための標定・誘導なども任務に含められることもある。ベトナム戦争時、アメリカの特殊部隊員の狙撃手は敵司令官を追って長時間匍匐で移動し、暗殺に成功した事例がある。この際狙撃手は糞尿を全てズボンの中に垂れ流しにしていた。どんな人間であっても回避できない排泄行為であっても、それが原因で相手に存在が確認されてしまえば作戦は失敗に終わるため、やむなくそうするしかなかったわけである。このことは、狙撃手がいかに忍耐強いかを示す好例といえる。
軍事行動の場合、狙撃手は一般兵士よりも代替の難しい高級将校を主に狙った。このため、軍服も兵士と将校が同じスタイルの制服を着用するようになり、将校に対する敬礼が省略され(または階級を問わず敬礼交換)、双眼鏡や拳銃、地図など一目将校と分かる特徴を出さない様に工夫されるようになった。この対策について日本とドイツは遅れた。第二次世界大戦期の日本軍の将校は戦場で軍刀を所持していた。ベトナム戦争以降のアメリカ軍では、階級章に高級将校と兵士の違いを目立たせない工夫が図られるようになった。
一方、犯罪者による狙撃の場合は、要人の暗殺や連続殺人など、重大な事件、テロリズムに直結するため、司法治安機関がこれを防ぐ事は社会的に大変重要なことである。
警察行動での狙撃ではほとんどの場合、人質保護のために一発必中が求められる上に絶えずその発砲に違法性がないか入念に検証される場合がほとんどであるが、軍隊行動での狙撃では優先順位の高い目標から排除することが最優先の課題であり、その際の人質の有無や保護はその限りではない上、戦争では敵軍を遅滞させるために敵兵の急所を狙わない事がある(これはわざと負傷兵を出させる事でその手当てに人手を割かせるためである)。
狙撃手を狙撃に専念させる為に、周囲の状況把握や命令伝達、場合によっては接近する敵兵の排除などを受け持つ観測手とペアを組んで活動するのが一般的である。この観測手は狙撃手たる人員が担当する。これにより意思疎通がスムーズにでき、互いに役割を交代する事で負担を分散できるようになる。
なお、狙撃手は前述のように巧妙にカモフラージュによって何処に居るかを正確に特定できないため、大まかな位置を割り出した後火砲ないし迫撃砲の砲撃を用いて目標一帯を文字通り耕す勢いで行わなければ対処のしようがないと言われている。
狙撃銃は軍用あるいは民生用ライフル銃の量産品から精度の良い個体を選び出してスコープ照準器などの追加装備を施した物が使用されていたが、近年では当初から狙撃専用に開発された製品も存在する。また精度の問題から以前は一発必中のボルトアクション方式ライフルが主に用いられたが、近年では、射撃精度を犠牲にしても、第二弾を素早く発射出来るセミオートマチック方式ライフルの製品も増えている。(ミュンヘンオリンピック事件の影響もある)
[編集] 国内
自衛隊の特殊作戦群や警察の特殊急襲部隊、海上保安庁の特殊警備隊に狙撃手が配備されている。主にテロ事件などの相手が武装して銃器を携帯していることが明白な事件で投入される。旧日本軍にも狙撃手が存在したが、軍の狙撃手と警察の狙撃手との違いは、警察のほうは事態の鎮圧だけでなく犯人確保も念頭に置いている点で、相手がテロリストであっても「生け捕り」にするのが信条なので、基本的に射殺を目的に投入されるわけではない。「あさま山荘事件」のように状況によっては射殺するしか手が無いこともあり、その場合は射殺を目的に狙撃手の投入が行われる場合もあるが、最初から射殺を考えて配置されることはまず無い。 これは、警察は治安維持が存在目的てあり、軍隊とは全く目的が違う事に由来する。 したがって、狙撃に関しても狙撃後にすぐに移動を行い、事故の存在を悟られる 事のないようにしなければならない軍の狙撃手に対して、警察の狙撃手は、 狙撃後にその存在が暴露されても、全く問題がないうえに、見つかっても命の 危険性に即さらされるような事もない、このことは、警察と軍隊との大きな違い である。
[編集] 語源
狙撃(スナイピング、sniping)とは元々、タシギ猟が語源と言われている。タシギ(チドリ目シギ科、学名:Gallinago gallinago、英:snipe)は、人などが近づくとその場にじっと身を伏せ、さらに近づくとジグザグに飛翔して逃げる習性があり、仕留めることが大変難しい鳥である。そこから、この鳥を上手く仕留められるほど優れたハンターのことをスナイパーと呼ぶようになったとされる。
[編集] 主な狙撃事件
- 1566年(永禄五年)2月5日 - 戦国大名三村家親が美作国興善寺の陣中にて、宇喜多直家の命を受けた遠藤秀清・俊通兄弟により暗殺される。使用されたのは火縄式短銃であり、日本で最初の要人狙撃と言われている。
- 1570年(元亀元年)5月19日 - 戦国大名織田信長が京都から岐阜城への帰途、伊勢との国境に近い近江の千草越で狙撃される。狙撃手は六角義賢の依頼を受けたと言われる杉谷善住坊。20数メートルの距離から2連発火縄銃で撃った弾は信長の体をかすめるに留まった。
- 1718年11月30日 - スウェーデン王カール12世、ノルウェーで狙撃される(大北方戦争)。味方から狙撃されたと言う説が根強い。掘り起こし調査した結果では、前方20m程からの銃撃と推測されたが、断定はされていない。しかし暗殺された可能性も否定されてはいない。
- 1805年10月21日 - ナポレオン戦争でのトラファルガー海戦で、英艦隊提督ホレーショ・ネルソン、海戦に勝利しながらフランス艦隊に配置された狙撃兵より銃撃され、戦死。
- 1868年1月12日 - 新撰組局長近藤勇が京都で御陵衛士の残党に狙撃され、負傷。
- 1963年11月22日 - 第35代アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディが遊説先のテキサス州ダラスにて狙撃され、死亡。
- 1966年7月31日 - テキサスタワー乱射事件。アメリカ、テキサス大学時計台で、元海兵隊員チャールズ・ホイットマンが96分間に14名を射殺。負傷者30名。(SWATが作られるきっかけとなった。また『パニック・イン・テキサスタワー』というタイトルで映画化されている)
- 1972年2月19日 - あさま山荘事件。連合赤軍が長野県の山荘に10日間立てこもる。犯人の銃撃により多数の負傷者が発生し、警察官2名と民間人1名が死亡。
- 1972年9月5日 - ミュンヘンオリンピック事件。ミュンヘンオリンピックのイスラエル選手村にテロリスト(PLOの「黒い九月」)が侵入して選手を殺害。西ドイツ当局が狙撃に失敗し、人質全員が殺害される。この事件をきっかけに国境警備隊第9グループ(GSG-9)が作られた。2005年、後日譚をテーマにした映画「ミュンヘン」(アメリカ)が製作された。
- 1977年10月15日 - 長崎バスジャック事件。長崎県平戸市から長崎市に向かっていた西肥バスが手製銃と爆発物で武装した阿蘇連合赤軍を名乗る二人組に乗っ取られた事件。犯人グループは政治家との面会などを要求。18時間経過した翌朝午前4時過ぎ、長崎県警は強行突入を決定。拳銃7発を発射し、首犯を射殺解決した。
- 1978年1月24日 - 大阪市住吉区の三菱銀行北畠支店に二連式散弾銃を所持した武装強盗が押し入り、銀行員二人を射殺。直後、行内に突入した大阪府警警察官二人も銃撃戦の末射殺。そのまま銀行内に立てこもる。42時間後、大阪府警機動隊特別編成隊第一第二機動隊より射撃上級者六人選抜が、犯人の周囲から人質が離れた隙にニューナンブ38口径にて8発発射。うち二発が命中し逮捕されたが、被疑者は当日夕刻死亡した。
- 1995年3月30日 - 警察庁の國松孝次長官が自宅マンション前で何者かに狙撃され負傷(警察庁長官狙撃事件)。用いられたのは拳銃である。20メートルの距離を経て全弾命中させている。オウム真理教信者の疑いが持たれているが、断定はされていない。
- 2002年10月2日 - アメリカ、ワシントン州で元アメリカ陸軍軍人と養子による連続狙撃事件。10月22日までに13件の狙撃を行い、死傷者は10名以上。
[編集] 狙撃手をテーマにした作品
- 劇画 『ゴルゴ13』シリーズ
- 映画 『山猫は眠らない』シリーズ
- 映画 『スナイパー/狙撃』
- 映画 『スターリングラード』(2000年 アメリカ映画)
- 映画 『パニック・イン・スタジアム』
- 映画 『レッドスナイパー 独ソ最終決戦前編、後編』
- 映画・ドラマ 『恋人はスナイパー』
- 小説 『ジャッカルの日』
- 小説 『攻殻機動隊』(魔弾の射手)