新京成電鉄8800形電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
8800形電車(8800がたでんしゃ)は、新京成電鉄の通勤形電車。日本の直流1,500V鉄道路線用としては、VVVFインバータ制御を比較的早期に本格採用した。
目次 |
[編集] 概要
8000形に代わるフルモデルチェンジ車として1986年(昭和61年)に登場した。新京成はもとより、関東地方の直流1,500V鉄道路線での新規製造車両では初めてVVVFインバータ制御を実用した。96両が製造され、新京成では最も両数が多い形式である。
近年はインバータ装置のゲート制御部の劣化のため、部品交換の際にプログラムの更新によりベクトル制御・純電気ブレーキを搭載した。しかし、一部の利用客からは耳障りになったという苦情も出ているが、償却絡みの問題からか、インバータ装置自体の交換はしないとみられている(車体寿命が先に来るため)。
[編集] スペック(主要諸元)
- 製造年次:1986年(昭和61年)~1991年(平成3年)
- 製造・保有車両数(2006年(平成18年)4月現在):8両編成12本(96両)。2006年12月時点では6両編成も存在する(後述)。
- 車体:18m級普通鋼製・両開き3ドア
- 制御方式:GTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ(三菱電機製MAP-148-15V06形制御装置)。1基のインバータ装置で4基の電動機を制御する(1C4M)。
- 電動機:かご形三相誘導電動機(出力130kW)
- ブレーキ:回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(新京成では初採用)
- 編成中の電動車(M)と付随車(T)の構成(MT比):4M4T。4両ユニットを2本つなげた配置(松戸・くぬぎ山←<Tc1-M1-M2-T2+T2-M1-M2-Tc1>→京成津田沼・千葉中央)。
- 保安装置:新京成電鉄・京成電鉄・北総鉄道・京浜急行電鉄・芝山鉄道・東京都交通局(都営地下鉄)浅草線で使用されている1号型ATSおよびC-ATS。
- 台車:空気バネ台車(ダイレクトマウント形。電動車は住友金属工業製FS514系、付随車は同FS014系。新京成では初採用)
[編集] 特色など
- 車両番号の付番方式は、京成津田沼(千葉中央)寄りから8801・8802・・・となり、第1編成は8801~8808、第2編成が8809~8816と連続して付番されている。京成電鉄の3500形や京浜急行電鉄の2100形・新1000形などと同一の付番方式である。編成は松戸寄りの先頭車の車両番号を用いて「8808編成」などと呼称される。改造で登場した6両編成については後述する。
- VVVFインバータ制御の実用黎明期に登場した車両である故に、雨天時等の空転が酷かった。その後部品の一部交換により問題は解決しており、起動加速度も若干向上した。
- ダイレクトマウント形空気バネ台車は、主流のダイアフラム形ではなく、ベローズ形である。
- 一部編成においては、東京地下鉄(東京メトロ)各系列や西武鉄道20000系に準じたドアチャイムの設置、戸開き予告装置と転落防止外幌や車いすスペースを改造設置されている。これらは今後全編成に設置される予定である。
- 8832編成では後のN800形で採用された速度センサレス制御採用試験を実施した。これも全編成が改造される予定で、8808編成→8801編成は後述する6両編成化の際に改造された。
- 車両形式称号を8800形とした理由は、「800形と8000形の長所を集めた」形式という意味が込められたという説がある。
[編集] 改造
2006年4月時点では全編成が8両固定編成であったが、空気圧縮機などの補機類を積んだ中間の2両(松戸寄りユニットのM2車とT2車)を抜き、補機類を制御車に移せば6両化できることもあり、8808・8872編成について6両編成化改造を行った。同編成は京成電鉄への乗り入れ対応となり、側面の帯もN800形に準じた塗装となった。同時に誘導無線(IR)アンテナと急行灯、運行番号表示器を設置した。8872編成に関しては過去に北総開発鉄道線乗り入れ編成だった為に無線自体は設置済みではあったものの、アンテナからの既存の配線を撤去して新たに妻面から車両床下部へ降りる形で配線し直している。車両番号は京成津田沼寄りから8801-1、8801-2…のようにハイフン付きとなり、8両編成と同様に松戸寄りの先頭車のハイフンを除いた車両番号を用いて呼称される。現在は8801編成・8803編成の2本が存在するが、今後もこの6両編成は増加する予定である。外された中間車についてはくぬぎ山車両基地に留置されており、一部車両に関しては先頭車化改造工事を行っている。また京成乗り入れ対応車の方向幕は「千葉中央」・「ちはら台」・「普通 千葉中央」・「普通 ちはら台」・「普通 くぬぎ山」・「普通 新津田沼」・「普通 松戸」を追加した上で英文の表記のある字幕に交換された。
8801編成は同年11月11日に京成千葉線・千原線内試運転初列車に充当され、現行の新京成車両としては初めて同線に入線した。2006年12月10日から営業列車での千葉線への乗り入れを開始した。千原線にも入線したのは代走対策または乗り入れ区間拡大に対応したものとされている。
この他、6両編成化改造工事とは別枠で車内案内表示装置の取り付け改造が2006年11月の8864編成を皮切りに行われており、改造された車両にはN800形に準じた案内表示装置が千鳥状に配置されている。装置がない側の鴨居部には戸開き予告装置が設置された(従来の「このドアが開きます」というものとは別物)。