純電気ブレーキ
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純電気ブレーキ(じゅんでんき-)とは、従来の電気ブレーキと空気ブレーキなどの摩擦ブレーキの併用とは異なり、制動開始から停止までを電気ブレーキのみで行うブレーキのこと。なお、「純電気ブレーキ」は三菱電機の登録商標であり、日立製作所では全電気ブレーキと呼ばれる。
この項目では、鉄道車両に用いられる純電気ブレーキ・全電気ブレーキについて述べる。
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[編集] 概要
三相誘導電動機とインバータ制御が鉄道車両に採用されたことにより、従来の直流電動機とサイリスタチョッパ制御の組み合わせに比べ、回生失効の生じる速度が低くなり、回生ブレーキの使用可能な速度域が広がった。
しかし起電力の問題から回生ブレーキのみで停車することはできない。そこで、回生失効する速度域において、主電動機に逆回転させるようなトルクを生じさせることで最終段階の制動力を生み出すようにした。これにより、制動開始から停止まで摩擦ブレーキをほとんど使用しなくても済むようになった。
ただし、停車中の車輪の拘束には摩擦ブレーキが必要なことと、列車には最低2系統のブレーキを装備することが省令上定められていることから、電車から摩擦ブレーキを排除することは不可能である。
理論上、ブレーキ演算を司るプログラム基板を交換するだけで純電気ブレーキが使用可能になるため、製造当初は純電気ブレーキが使用できなかった車両でもこの改造を実施することで利用可能になる。 例としては新京成電鉄8800形電車・東京都交通局6300形電車などがある。
[編集] 主な利点
- 摩擦ブレーキ併用と比較して回生ブレーキ使用速度域が広いため、電力回生効率が高い。
- 摩擦ブレーキ切り替え時の衝撃を軽減し、乗り心地を改善出来る。
- 摩擦ブレーキ部品の磨耗が非常に少ないため、部品交換費用が削減できる。
- 高度な再粘着制御で滑走が発生しにくい。
[編集] 代表的な搭載車種
- JR東日本E231系(基本番台以外)
- JR東日本E531系
- つくばエクスプレスTX-1000系
- つくばエクスプレスTX-2000系
- 東武30000系
- 東武50000系
- 西武20000系
- 西武10000系(第12編成のみ)
- 西武9000系(VVVF化改造車のみ)
- 京成新3000形
- 新京成8800形
- 新京成8900形
- 小田急1000形
- 小田急新3000形
- 東急5000系
- 南海1000系(1051F4連1本のみ)
- 神戸市営地下鉄1000形(一部)
[編集] 技術
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