かご形三相誘導電動機
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かご形三相誘導電動機は、かご形回転子を利用した三相誘導電動機である。
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[編集] 特徴
- 運転特性が良い。
- 始動に工夫が必要。
- 構造が単純で安価である。
- 保守が簡単。
[編集] 始動法
[編集] 直入始動法
定格電圧をそのまま、投入する。
特徴
適用
- 小型の電動機には広く用いられている。
- 中大型の電動機でも、他の負荷への影響や、固定子巻線の始動電流や始動中の電動機の温度上昇が許容できるならこの方法がよい。
- 中大型のかご形三相誘導電動機で直入始動法を用いる場合、始動電流抑制や始動トルク向上などのため、特殊かご形回転子が用いられる場合がある。これは、回転子を横切る磁界の周波数が始動時は高く、回転数が上がると低くなることを利用し、始動時に回転子回路(二次回路)の抵抗が高くなるような回転子構造とすることにより、始動電流の抑制や始動トルクの増大を図るものである。特殊かご形回転子は、構造により深みぞかご形と二重かご形に分類される。
直入始動法を用いることができない場合は、以下に示す減電圧始動法が用いられる。
[編集] スターデルタ始動法
始動時に電動機の一次巻線をスター結線として投入し、一定時間経過後にデルタ結線とする。
特徴
- 外付けの始動装置が不要であり、減電圧始動法の中では一番安価である。
- 始動電流が全電圧始動法の3分の1となる。
- 始動トルクが小さい。
- 切換時にショックがある。
適用
- 5.5kW以上の電動機で軽負荷または無負荷始動のもの。
[編集] リアクトル始動法/クザ始動法
始動時に電動機の一次巻線と直列にリアクトルを挿入し、起動後に短絡する。 なお、一次巻線のうち1相または2相のみにリアクトルまたは抵抗器を挿入するものはクザ始動と呼ばれ、リアクトル始動法の簡易版と言えるものである。
特徴
- 始動電流のわりに始動トルクが小さい。
- 始動装置は抵抗やリアクトルであり、変圧器を用いるコンドルファ法などに比べれば低コスト。
適用
- ポンプ・ファンなどの2乗低減トルク負荷のクッションスタート用。
[編集] コンドルファ法
V結線の単巻変圧器を使用して電圧を下げて始動し、起動後に全電圧を投入する。
特徴
- 始動装置が変圧器であり、リアクトル始動やクザ始動よりも高価である。
- 始動電流のわりに始動トルクが小さい。
- 始動から運転への切換え時のショックが少ない。
適用
- 始動電流を特に抑えたいもの。
[編集] 始動と速度制御とを兼ねる方法
- 可変電圧可変周波数制御インバータ法: 交流入力をサイリスタ等を用いたコンバータ/インバータにより任意周波数・電圧の交流に変換し、速度を調整するもの。
- 滑らかな速度制御が可能で、運転中に連続的な速度制御が必要な場合に有用。
- 通常の電動機を使用可である場合が多く、既設改造に適する。
- 高調波対策が必要。
- トルク脈動による部分共振が発生する場合がある。
- 極数切換法: 固定子コイルの接続を切換えることにより磁界の回転数を変化させ、始動特性の調節や回転子の速度制御を行うもの。
- 段階的な速度制御となる。(極数が倍になると、速度は約半分となる)
- 高頻度の速度切替には不適。
〔参考:火力原子力発電必携 (社)火力原子力発電技術協会〕