安部譲二
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安部 譲二(あべ じょうじ、本名:安部 直也(あべ なおや)、1937年5月17日 - )は、日本の小説家。
目次 |
[編集] 経歴
[編集] 生い立ち
東京都内の裕福な家庭に生まれ、麻布中学校に進学したが、中学在学中から暴力団の安藤組事務所に出入りしていた。そのため麻布高校への進学が認められず、慶應義塾高校に進学したが、暴力団との関係のため退学処分となった。実父は法曹である。
[編集] 塀の中へ
その後、本格的にヤクザとなり、刑務所で服役したこともある。府中刑務所収監中に知り合った囚人の中に赤軍派(後に日本赤軍)活動家・城崎 勉がおり、安部の著作によると、ダッカ事件が起きる直前、(既に獄外の日本赤軍と連絡を取り合っていた?)城崎にオルグされかけたことがあったという。
[編集] 多彩な職歴
暴力団員だった時期に保善高校定時制課程に入学した。高校通信制課程卒業後、会社経営、日本航空の客室乗務員(パーサー)、キックボクシング中継の解説者、ライブハウス経営など職を転々とした。
日本航空のパーサー時代は、勤務態度は真面目な反面感情的になる事も多く、同僚の彼女をぶん取って交際したり、生意気な支店長を殴ったり、乗客を投げ飛ばしたこともあったと言われている。
[編集] 作家へ
1984年、山本夏彦に文才を見出され、雑誌『室内』に『府中木工場の面々』と題した文章の連載を開始。1987年、刑務所服役中の体験を書いた この連載がまとめられ、『塀の中の懲りない面々』として文藝春秋社より出版される。『塀の中の懲りない面々』はベストセラーとなり、映画化もされ、以後人気作家としての地位を築く。刑務所のことを「塀の中」と表現するようになったのは、安部の『塀の中の懲りない面々』の影響である。
その後『追跡』(日本テレビ系)のコメンテーターなど、タレントとしても活躍。マルチな才能を持つ稀有な存在である。
[編集] 交友関係
交際のあった人間を『俺が痺れた男たち―日本快男児列伝』で紹介しているだけでも安藤 昇、石原裕次郎、和泉宗章、江夏 豊、大川幸介、大野伴睦、金平正紀、黄金井光良、越田利成、サッド・サム・イチノセ(ダド・マリノのマネージャー)、島田 丈、ジョージ川口、高本公夫、畑山隆則、花村元司、ピストン堀口(中村信一から間接的に話を聞く)、マック鈴木、宮沢邦明、村田勝志、森田 雅、山手 勝、由佐嘉邦、渡辺正人と錚々たる面々が顔を揃えている。また裏街道の人物・団体としては「海原清平」(2006年10月に死去(11月に公表された)海原治の父でもある)、「岩田幸雄」、「森脇将光」、「闘鶏協会」といった名前も著書に登場する。
また、直木賞作家で同時期に日本航空の社員であった深田祐介とも社員時代に交流があったことで知られているが、当時深田は安部が暴力団員でもあったことを知らなかった。
文筆家としての道を歩むきっかけになった山本夏彦との出会いに関しては、著書等で事あるごとに「山本先生は自分の恩師、大恩人である」と触れている。
[編集] 逸話
- 麻布中時代の同窓生・橋本龍太郎と同窓会で会った際、政界に身を置くようになっていた橋本に自身と似た匂いを嗅ぎ取り、互いに都合の悪い事だけは黙して語らないことを約束したといわれる。
- 永田雅一に大変な恩義を感じており、雅一の孫でTBSラジオのディレクター、プロデューサーを歴任した永田守の頼みは断れないらしい。そのため永田守が担当した『伊集院光 深夜の馬鹿力』の番組内では、他所ではありえない扱いをされることが何度かあった(遠藤久美子の物真似を延々させ続けられるなど)。
- 三島由紀夫とは親交があり、三島にボクシングジムを紹介するなどした。また当時の安部の半生を三島が小説にしたのが、田宮二郎主演で映画化もされた『複雑な彼』である。この話の主人公の名前「宮城譲二」は、その後安部が作家デビューするにあたりペンネームにもなった。
- 日本航空の客室乗務員を辞めるきっかけとなったのは、理不尽な要求をする乗客とトラブルになり殴ってしまい、それがきっかけで暴力団に籍を置いていることがバレてしまった為だと言われている(普段は組の代紋を付け、日本航空に出勤する時はマメに外していた)。
- ヤクザ時代、青森まで抗争に駆り出され、そこで出会った医師との友情から、上京するといって聞かない医師の娘を下宿させることになった。その娘こそ後の矢野顕子である。
- 日本社会党、日本共産党の支持を受け、庶民派の東京都知事として在任中であった美濃部亮吉が、高級ホテルとして知られるホテルオークラで朝食を摂っているのを目撃した安部は、美濃部と一悶着起こしたと自著にて記している。
- 大の岡田奈々ファンとして知られる。自身原作の映画作品に出演させている。岡田は人気アイドル歌手だった時代、自宅マンションに暴漢が押し入り監禁されるという事件に遭遇したことがあるが、その監禁犯は安部と同じ刑務所に服役していたと言われる。安部は監禁犯を房内でリンチしたらしい。
- 刑務所に服役中、さだまさしの歌『雨やどり』を聴いて更生しようと思った(本人談)。
- 阪神タイガースのファンで、子供の頃に吉田義男のボールさばきを見て大ファンになった。
- 人名について「京子」「HIDEKO」という名前が特に好きだと語っている(伊集院光のラジオに出演した際)。
[編集] 著作
- 『塀の中の懲りない面々』
- 『塀の中のプレイボール』
- 『殴り殴られ』
- 『記憶に残る拳豪たち』
- 『青山ロブロイ物語』
- 『日本怪死人列伝』
- 『ナンバーワンにならない生き方』
- 『渡世の学校』
[編集] 漫画原作
- 『アプサラス』
- 『RAINBOW-二舎六房の七人-』(作画・柿崎正澄) - 平成17年度(第51回)小学館漫画賞一般部門受賞