キックボクシング
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キックボクシングは、ムエタイを参考にして、ボクシングに蹴り技の要素を加えた打撃格闘技の一つ。通常、キックボクシングとは日本で生まれたものをさすが、場合によってはボクシングのリングを使った立ち技系のプロ格闘技全般の総称を指す場合もある。
芸能興行を業務とする野口プロモの野口修が、1960年代に興行目的でタイの国技ムエタイを日本に招致する興行プランを立案。「ムエタイ対空手」、「ムエタイ対ボクシング」の異種格闘技のアイデアを実現させるために、試合としてのルールを編成したものが源流とされる。
興行が成功した結果、キックボクシングは『アジア地区で立ち技格闘技として最強と謳うムエタイに対抗し、日本が独自で開発した格闘技の一つ』とする説が生まれ、野口自身も興行面で「ムエタイ対キックボクシング」の方が客に対しての訴える力があるとして黙認。現在ではこれが通説となっている。
キックが成立した後もタイ国内において日本のキックボクシングは「ムエタイ」そのものであると長く誤解されていた。このため、タイに設立した野口ジムの看板にムエタイをあらわす Thai boxing ではなく日本製の kickboxing の表記がされているのを見た大衆が「ムエタイをリスペクトしていない」としてジムを襲撃する野口ジム襲撃事件も起きたが、今日ではキックとムエタイの違いは世界的に知られている。
第一人者である沢村忠は「キックの鬼」と呼ばれ、漫画やアニメ作品にも取り上げられた。
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[編集] 歴史
[編集] キックボクシング成立前史
昭和34年(1959年)12月20日、東京浅草公会堂(台東区)でタイ人同士によるムエタイの試合が開催された。この頃、ムエタイに興味を示す空手家が現れた。日本拳法空手道の山田辰雄である。当時、山田は直接打撃制による空手の試合化を目指しており、その研究の一環として、ムエタイに興味を示したのである。山田は、すでに同年11月に「新スポーツの発足と其企業化計画草案大綱」なる企画書を発表し、新スポーツ「空手ボクシング(仮称)」を提唱した。この企画書の中で山田は「昭和三十五年の新春を期して、当方競技とやや同系類に属する『タイ国拳法選士団」を招聘」すると発表した。浅草公会堂で行われたムエタイ試合が、山田が招聘したものかどうかは判然としないが、山田が日本で初めてムエタイに関心を示した空手家の一人であったことは確かである。
山田はさっそく、飯田橋の道場にムエタイ・前チャンピオンのカウキー(カウイとも)を招待して、息子の山田侃にスパーリングの相手をさせ、ムエタイの研究を始めた。このカウキーを山田のもとへ連れてきたのが、野口修だったのである。昭和36年(1961年)、山田が発行した『日本拳法空手道教本』創刊号には、すでにカウキーの写真が掲載されており、この時までに、山田と野口は協力して、空手とムエタイを融合させた新スポーツの構想を膨らませていた。
昭和38年(1963年)、大山道場(後の極真会館)から出場した黒崎健時、中村忠、大沢昇が、タイ・バンコクで、空手対ムエタイとの交流戦にのぞんだ。この試合は二勝一敗だったが、唯一敗れた黒崎健時はムエタイを研究してキックボクシングのジムを作り、またオランダの極真道場から後にピーター・アーツなどを輩出するメジロジム(アーネスト・ホーストを擁するボスジムもここからの分家)を作った。
[編集] キックボクシングの誕生
昭和41年(1966年)、野口はキックボクシングの名称を考案して、キックボクシング協会を設立、当時の空手家やボクサーを集めて、同年4月11日大阪府立体育館で初めての興行を開催した。当時の日本国内で興行エリアが重なるボクシング業界に対してはライオン野口(元日本チャンピオンで嘉納健治系の国士。三迫仁志、金平正紀も野口門下生。)の次男で自らもボクサーであった野口は強引に説得しテレビ局に対しても積極的に売り込んでいく。彼の政治力、熱意なしに国内に根付くことはなかったとする評価はある種妥当であろう。一方、山田辰雄は翌年の昭和42年(1967年)死去するが、日本拳法空手道はキックボクシング成立にその後も協力し、杉並ジムの名前で、昭和44年(1969年)には、錦織利弘、江口和明らを選手として送った。錦織は日本人としては初めてタイ人現役ランカーにKO勝利、江口は初代バンタム級チャンピオンになるなど活躍した。
その後、沢村忠(剛柔流出身・真空飛び膝蹴りが必殺技)というエースの育成に成功したキックボクシングは、ブームを巻き起こし、一時はTBS(YKKアワー キックボクシング中継)、日本テレビ、東京12チャンネル(現・テレビ東京)の3局で放映されるほどの人気を誇るまでに至った。 極真会館はキックボクシング成立以前からプロ空手の立ち上げを狙っていたが、キックボクシングが成立後、極真ジムを立ち上げて山崎照朝(極真全日本優勝)などの選手を送り込んだ。
しかし沢村忠が引退し放送が打ち切られると団体が次々と分裂し人気下降に拍車がかかる。また本家の野口も他に類を見ない情熱の男ではあるが「興行師」として損得をクールに見つめる目をもっており、一方の五木ひろしの興行で莫大な利益をあげていたという声もある。
しかし1990年代になり、空手による興行を行っていた石井和義が、トーワ杯などのルールを基にキックの亜流ルール(ヨーロッパキックボクシングルール・肘打ち禁止)でボクシングや空手、ムエタイなど、多くの立ち技系格闘技の選手を招いて大会を行い、打撃系格闘技最強を決めるイベント「K-1」を立ち上げ、人気を博す。
2002年にはK-1ミドル級部門も設立。日本人のキックボクサーの活躍も増え、キックボクシングの注目度はさらに高まっている。
[編集] ルール
団体分裂の影響もあり、ムエタイに近い物から危険な技を取り除き安全性を高めたものまでさまざまなルールが存在する。 特に肘や膝を用いた攻撃は流血を伴いやすいく禁止されていることもある。 最も極端なスタイルでは肘打ちや膝蹴りはもちろん、団体によってはスネをつかった蹴りも禁止され、腰から上のみの攻撃が許されているというものがある。 日本のキックボクシング誕生初期にはムエタイに対抗するため頭突きや柔道式の投げ技を認められていたこともあった。
キックボクシングの試合は2-5Rで行われることが多く、ボクシング同様3分1ラウンドで1分の休憩を挟む形式が主流でムエタイのよう休憩を2分取ることは稀である。団体によってはボクシング同様、12ラウンド試合を行う場合もある。
[編集] 服装
[編集] アマチュア
団体やルールにもよるが、通常はボクシングやムエタイ同様選手はキックボクシング用の長ズボン又はトランクス、ヘッドギア、グローブを着用する。足には靴を履かず裸足で試合を行う場合が殆どだが、ルールによっては脛あてと足を保護する靴型のプロテクターを着用することもある。また、負傷防止のためマウスピースとファウルカップを着用する。アマチュアのムエタイでは胴体部分に防具を身につける。
[編集] プロ
団体やルールにもよるが、通常はボクシングやムエタイ同様選手はキックボクシング用の長ズボン又はトランクス、グローブを着用し、足には靴を履かず裸足で試合を行う。ルールによっては、プロでありながら脛あてと足を保護する靴型のプロテクターを着用することもある。腕にパープラチアットをつける選手もいる。(スパーリングの場合にはヘッドギアを着用することがある)
[編集] 勝敗
[編集] アマチュア
- KO(KnockOut):相手がダウンしたのち、10カウント以内に立ち上がれない場合やファイティングポーズをとれない場合、もしくはレフェリーがダメージ甚大と判断してカウントアウトした場合。
- 判定(英:on Point):ラウンド毎に採点をし、より多くの点をとった選手を勝者とする。
[編集] プロ
- KO:プロの場合、相手がダウン後10カウント以内に立ち上がれなかった場合。
- TKO(technical knockout):どちらかの選手が明らかに不利な場合や、試合続行不可能な状態になって試合を止めた場合。
- 判定:ラウンド毎に採点をし、より多くの点をとった選手を勝者とする。
[編集] 採点方法
採点方法は10点満点の減点方式。ダウン1回で2点減点、ダウン2回で3点の減点。ダウンがなかった場合、より的確にパンチを当てていた選手に10点が、そうでない選手に9点が与えられる。採点は3人のジャッジで行い、2人以上のジャッジが支持した選手を勝者とする。ジャッジが3人とも一方の選手を支持した場合をユナニマス・デシジョン、2人が支持し、もう1人が引き分けであった場合をマジョリティ・デシジョン、1人のジャッジがもう一方の選手を支持した場合をスプリット・デシジョンと呼ぶ。またどちらの選手も2名以上のジャッジの支持を得られなかった場合、ドローとなる。3名が引き分けとした場合をユナニマス・ドロー、2名が引き分けとし、もう一人がいずれかの選手を支持した場合をマジョリティ・ドロー、ジャッジ2名がそれぞれ異なる選手を支持し、もう一人が引き分けであった場合をスプリット・ドローと呼ぶ。
[編集] 反則
試合中に以下の行為を行った場合、反則となり、レフェリーに注意を受ける。注意が重なった場合、減点対象となり、悪質な場合は失格負けとなる。
- バッティング:頭、肘などで攻撃する。
- ローブロー:相手のベルトラインより下を攻撃する。
- ラビットパンチ:相手の後頭部を攻撃する。
- 相手の背中側を攻撃する。
- レフリーがブレイクを命じた後に攻撃する。
- ラウンド終了のゴングが鳴った後に攻撃する。
- サミング:グローブの親指で相手の目を突く攻撃。
- オープンブロー:グローブの内側で打つ攻撃。
- 投げ技で相手を地面に投げる。(散打、シュートボクシングを除く)
- ラウンド中に規定の回数以上の蹴りださない。(団体やルールによる)
- 肘打ち(団体やルールによる)
[編集] タイトル
キックボクシングにおける主要な日本のタイトル認定団体を以下に挙げる。
- 国内タイトル
- 日本キックボクシング連盟
- 全日本キックボクシング連盟 (All Japan Kickboxing Federation、A.J.K.F.)
- ニュージャパンキックボクシング連盟 (New Japan Kickboxing Federation、N.J.K.F.)
- 新日本キックボクシング協会 (Shin Nihon Kickboxing Federation、S.N.K.F.)
- マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟
- 世界タイトル
- 世界キックボクシング協会(The World Kickboxing and Karate Association ) W.K.A.
- 国際キックボクシング連盟(International Kickboxing Federation ) I.K.F.
- 国際競技空手協会(International Sport Karate Association)I.S.K.A.
- 世界キックボクシング連盟(World Kickboxing Federation) W.K.F.
- 世界キックボクシング団体協会(World Association of Kickboxing Organizations) W.A.K.O.
- 世界プロキックボクシング協会(World Professional Kickboxing Association)W.P.K.A
- K-1
- S-1
[編集] アマチュア
- 国内団体
- 全日本新空手道連盟(All Japan Shin Karatedo Federation / AJSKF)
- 全日本学生キックボクシング連盟(University kickboxing Federation / UKF)
- 国際団体
[編集] 関連項目
- 日本のキックボクシング世界王者一覧
- 日本のキックボクシング地域王者一覧
- 日本のキックボクシング国内王者一覧
- 日本のキックボクシング地区王者一覧