命名権
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命名権(めいめいけん)は、人間や事物、施設、キャラクターなどに対して名称をつけることのできる権利である。1990年代後半以降、スポーツ、文化施設等の名称に企業名を付けることがビジネスとして確立した。また、科学の世界においても、新発見の元素や天体に対して、発見者が命名する権利を得る慣習がある。生物の学名は、記載者が命名権をもつ。
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[編集] 人名の命名権
世界の多くの地域では、親または親から委託を受けた者が新生児を命名している。
日本でも親が子を命名するのが一般的であるが、その命名権の保有・行使について、命名権は親権に含まれるとする意見がある一方、本人固有の権利であるが親が代行しているとする意見など、議論は分かれており法学的な定説はない。法務行政上は、命名権の濫用と認められる場合、社会通念上不適当と認められる場合には、戸籍の届け出が受理されないことがある(例:悪魔ちゃん命名騒動)。
[編集] スポーツ、文化分野での命名権
従来から、スポーツ大会などにスポンサーの名称を冠する形での命名権ビジネスは存在していたが、1990年代後半頃から、アメリカにおいてスポーツ施設等の名称に企業名を付けるビジネスがで広がった。まず、メジャーリーグでクラシカルな新球場が多く建設されたとき、その名称に企業名が命名され始め、高い費用対効果が認められたことから、他のスポーツ種目やヨーロッパのスポーツ界へと広がっていった。日本においては、2000年代前半から赤字の公共施設の管理運営費を埋め合わせる手段のひとつとして導入され、「ネーミングライツ」(Naming rights)として注目を集めている。
施設等の管理者にとっては、命名権を販売することにより収入が得られるメリットがあり、命名権を購入する企業にとっては、スポーツ中継やニュースなどで命名した名称が露出する機会を得られ、宣伝効果が見込まれる。
なお、サッカーに関しては国際サッカー連盟(FIFA)の取り決めで、FIFA主催国際公式戦(ワールドカップ予選も含む)およびパブリックビューイングではFIFAの公認スポンサー企業・団体以外はスタジアムの看板露出や命名権によるスタジアムの改名をすることが禁じられており、その場合は正式名称、若しくは別称(例:FIFAワールドカップスタジアム○○(都市名))を付けて対応することが義務付けられる。
[編集] 事例
[編集] 世界
- マカフィー・コロシアム - 旧称アラメダ・カウンティ・コロシアム→ネットワークアソシエイツ・コロシアム。オークランド・アスレチックス(MLB)とオークランド・レイダース(w:Oakland Raiders)(NFL)の本拠地。マカフィーはIT企業。
- セーフコ・フィールド - シアトル・マリナーズ(MLB)の本拠地。「セーフコ(w:Safeco_Corporation)」は保険会社の名称。
- バンク・オブ・アメリカ・スタジアム(2003年-) - 旧称エリクソン・スタジアム(1996年–2003年)。カロライナ・パンサーズ(NFL)の本拠地。バンク・オブ・アメリカはアメリカの大手銀行。またエリクソンはスウェーデンに本社を置く世界的な通信機器会社。
- トヨタセンター - ヒューストン・ロケッツ(NBA)の本拠地。トヨタ自動車の米国法人が命名権を獲得した。
- AOLアレナ - ドイツ・ブンデスリーガ・ハンブルガーSVの本拠地。AOLは世界的な通信会社。
- アリアンツアリーナ - ブンデスリーガに属するバイエルン・ミュンヘンとTSV1860ミュンヘンの本拠地。アリアンツ(w:Allianz)は世界的な保険会社。
- リコー・アリーナ(2005年 - ) - フットボールリーグ・コヴェントリー・シティの本拠地。
- ヴェルティンス・アレナ(2005年 - ) - ドイツ・ブンデスリーガ・シャルケ04の本拠地。ヴェルティンスはドイツのビールメーカー。
- トヨタ・アレナ - チェコ・プラハにあるスタジアム。
- 京セラアリーナ - ブラジル・クリチバにあるスタジアム。
- フィリップススタディオン
- ジグナルイドゥナパルク
- ラインエネルギースタディオン
[編集] 日本国内
- 味の素スタジアム(2003年3月~) - 旧名称は"東京スタジアム"。Jリーグ・FC東京と東京ヴェルディ1969のホームスタジアム。
- アミノバイタル・フィールド(補助グランド)
- シャネルルミエール(2004年4月~)- 東京国際フォーラムガラス棟。
- 日産スタジアム(2005年3月~) - 旧名称は"横浜国際総合競技場"。Jリーグ・横浜F・マリノスのホームスタジアム。なお、FIFA規約により会場の(スポンサー企業以外の)命名権使用が認められていない関係で、2005年8月17日に行われたFIFAワールドカップドイツ大会のアジア最終予選・日本-イラン戦ならびに同年12月11日~同18日に行われた「FIFAクラブ世界選手権トヨタ杯ジャパン2005」では一時的に元の"横浜国際総合競技場"に戻された。
- 日産フィールド小机(補助グラウンド)
- フルキャストスタジアム宮城(2005年3月~) - 旧名称は"県営宮城球場"。プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスのフランチャイズ球場。1973年~1977年はロッテオリオンズ(当時)が準本拠地として使用した。
- スカイマークスタジアム(2005年3月~) - 正式名称は"神戸総合運動公園野球場"。プロ野球・オリックス・バファローズのダブルフランチャイズ球場の一つ。旧名称は"グリーンスタジアム神戸"(~2002年)と"Yahoo!BBスタジアム"(2003年~2004年)。
- 福岡Yahoo!JAPANドーム(略称・ヤフードーム)(2005年3月~) - 旧名称は"福岡ドーム"。プロ野球・福岡ソフトバンクホークスのフランチャイズ球場。
- 2006年にフィールドシート席を新設。コカ・コーラウエストジャパン社が命名権を取得し、"コカコーラ・フィールドシート"と名付けられた。
- iichiko総合文化センター - 旧名称は大分県立総合文化センター。
- エプソン品川アクアスタジアム
- フクダ電子アリーナ(2005年10月~) - 正式名称は"千葉市蘇我球技場"。Jリーグ・ジェフユナイテッド市原・千葉のホームスタジアム。
- ユアテックスタジアム仙台(2006年3月~) - 旧名称は”仙台スタジアム”。Jリーグ・ベガルタ仙台のホームスタジアム。
- 九州石油ドーム(2006年3月~) - 旧名称は”大分スポーツ公園総合競技場”(ビッグアイ)。Jリーグ・大分トリニータのホームスタジアム。
- ストークグラウンド(サブ競技場)
- ストークフィールド(投てき練習場)
- 宝山ホール(2006年4月~)- 旧名称は”鹿児島県文化センター”。
- 東京エレクトロン韮崎文化ホール(2006年4月~) - 旧名称は”韮崎文化ホール”。
- 京セラドーム大阪(2006年7月~)- 旧名称は”大阪ドーム”。プロ野球・オリックス・バファローズのダブルフランチャイズ球場の一つ。2004年までは大阪近鉄バファローズが本拠地として使用した。
- ダイドードリンコアイスアリーナ(2006年9月~) - 旧名称は”東伏見アイスアリーナ”(~1997年)と”サントリー東伏見アイスアリーナ”(1997年~2006年)。SEIBUプリンス ラビッツのホームリンクの一つ。
- 渋谷C.C.Lemonホール(2006年10月1日~) - 旧名称は渋谷公会堂。改装費用を賄うために渋谷区が命名権を電通に売却し、電通の仲介でサントリーが購入した。
- グッドウィルドーム - 旧名称は"西武ドーム"(~2005年)と"インボイスSEIBUドーム"(2005年3月~2006年)。プロ野球・西武ライオンズのフランチャイズ球場。なお、ドーム化以前の1997年までは"西武ライオンズ球場"と名乗っていた。
※ 兵庫県神戸市兵庫区にある「神戸ウイングスタジアム」は、Jリーグのヴィッセル神戸の主催ゲーム限定で2005年3月よりメインスタンドを「楽天スタンド」、バックスタンドを「Kawasakiスタンド」と日本プロスポーツ界では例がない、観客席にネーミングライツを実施。 球場や競技場など施設全体に企業名を冠する場合とは異なり、スタジアムではなく、興行主のヴィッセル神戸(運営会社クリムゾンFC)に2社から広告料が支払われる。
[編集] 日本プロ野球での状況
日本のプロ野球でもチーム名の命名権が取り入れられた例がある。
- その最初の例が1937~40年の「ライオン野球軍」である。前身の大東京軍の運営から國民新聞社が撤退。その後田村駒治郎が運営する大阪の繊維メーカー・田村駒商店が球団の主体となったが、資金面強化のため東京のライオン歯磨きが冠スポンサーとなりこのチーム名となる。しかし、1940年の太平洋戦争の戦局悪化に伴って英語名が使用禁止になってしまうが、ライオンだけはスポンサーであることから抵抗し、結果的にその年のシーズン終了後にスポンサーから撤退(朝日軍に変更)した。
- 続いて1955年に高橋ユニオンズがトンボ鉛筆のスポンサー提携を結んだ。高橋は高橋龍太郎の個人経営による野球チームとして1954年に設立されたが、資金面に乏しく選手の質もあまりよくなかった。そこで大手企業から球団名を買い取ってチームの運営資金にしようとトンボが冠スポンサーとなったが、結果的に改善の見込みが立たずこの年1年で撤退した。チームは1957年に大映スターズと合併し大映ユニオンズとなる。
- 1969年にはその大映ユニオンズと毎日オリオンズが1958年に合併して出来た毎日大映球団・東京オリオンズに韓国の財閥系菓子メーカー・ロッテが冠スポンサーとして付いて「ロッテ・オリオンズ」とチーム名を改めた。この後経営の主軸だった大映が経営悪化から経営撤退、1971年1月に球団経営権を正式に譲渡され、新会社「株式会社ロッテ・オリオンズ球団」が設立される。
- 1973年には福岡野球株式会社(旧・西鉄ライオンズ)が設立されたが、これは前年までロッテ・オリオンズのオーナーだった中村長芳の個人出資で設立された球団だった。中村個人では当然経営が安定しないと見越し、ゴルフ場経営の太平洋クラブに資金援助を実施してもらって「太平洋クラブ・ライオンズ」となった。更に1977年にはクラウンガスライターと提携し「クラウンライター・ライオンズ」と改めるが、この際ユニホームにはクラウンライター、太平洋クラブ両社のロゴマークが併用されていた。1978年シーズン終了後、西武鉄道、国土計画の企業グループを母体とした「西武ライオンズ」が誕生。本拠地を福岡県から埼玉県に移した。
- 2004年のシーズン開幕前には大阪近鉄バファローズが、球団名をネーミングライツで切り売りする構想が計画された。近鉄が本業の鉄道事業の経営改善強化策の一環として実施する予定だったが、他球団からの反発からこれは結果的に認められず実施とは至らなかった。この年6月にオリックス・ブルーウェーブと合併する構想が発覚。9月のオーナー会議で両チームの合併(オリックス・バファローズの移行)が認められ、近鉄は55年の歴史にピリオドを打つことになった。
- 2軍チームについては、オリックスの2軍が2000年から穴吹工務店(香川県の建設・不動産会社)と提携して「サーパス神戸」とした。当初は2002年の契約切れを持ってサーパスの使用も打ち切る予定だったが、2003年度からスポンサーとなったIT関連企業・サイバーファーム社(沖縄県)が穴吹工務店の了承を得てチーム名を継続使用している。
- 2004年オフ、パシフィック・リーグのチームの多くが本拠地球場の命名権スポンサーを募集。その結果、県営宮城球場が「フルキャストスタジアム宮城」に、西武ドームが「インボイスSEIBUドーム」に、福岡ドームが「福岡Yahoo!JAPANドーム」に、神戸総合運動公園野球場が「スカイマークスタジアム」という名称にそれぞれ変更される事になった。
- また、西武ライオンズは2軍チームについても命名権を採用し、西武ドームと同じインボイス社が2年契約でスポンサー(インボイス (プロ野球球団))となったが、契約更新を行わずに2006年シーズン終了を以ってスポンサーから撤退。翌2007年からはグッドウィル社が5年契約で新たにスポンサーとなることが決まり、チーム名を"グッドウィル"に改称することになった。
[編集] 命名権募集中・検討中
- 真駒内屋内競技場
- 仙台市体育館
- 山形県野球場
- 山形県総合運動公園陸上競技場
- 千葉マリンスタジアム
- 新潟スタジアム
- 大阪市長居陸上競技場(世界陸上後に予定)
- 鳥栖スタジアム
- 佐賀県総合運動場
- 佐賀県総合体育館