ハイブリッドカー
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初代トヨタ・プリウス
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トヨタFCHV(名古屋市公用車仕様)
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トヨタFCHVバス(愛知万博仕様)
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実用的かつ環境負荷の低い自動車を開発するにあたって、排気がクリーンでエネルギー効率の良い電気自動車、水素自動車、燃料電池車などは燃料(エネルギー)補給のための施設が普及していないという難点を抱える。 ハイブリッドカー (Hybrid Car) は内燃機関と電気モーターの二種の動力源を持つことで燃費を改善した内燃機関車である。
ガソリンエンジンと電気モーターのハイブリッドカーでは、エネルギー供給はガソリンの給油のみで足りるため、新たにインフラ整備を行う必要がない。それでいて電気自動車の環境性能をも取り込んだものであり、次世代自動車の有力な現実解といえる。
目次 |
[編集] 機構
エンジンと電気モーターからの出力をそれぞれどのように利用するかによって方式はわかれる。
- エンジンは発電機を回すためのみに用いられ、駆動はすべて電気モーターが行う方式(直列方式)
- エンジンと電気モーターが並列に配置され、それぞれの動力が駆動に用いられる方式(並列方式)
実用化され普及しているのは後者の並列方式である。エンジンは強力だが低回転域では効率が低下するという短所があることから、発進時には電気モーターで、加速時にはエンジンを使用、等といった動的な出力配分でエネルギー消費を最適化することができる。
また、減速時に回生ブレーキを用いて運動エネルギーを電気として回収する、停止時や減速時などにはエンジンを停止してしまうことでアイドリングによる燃料消費をなくすなどといった点でも通常のガソリン車に比べて有利である。
このほか、後輪に電気モーターを備え、必要なときだけ使用するe-4WDなどの電動四輪駆動もハイブリッドシステムといえる。 このシステムは、日産自動車のマーチや、マツダのデミオ等の小型車で用いられいる。
ガソリンエンジン以外を発電用動力とする研究としては、プジョー、ルノー、ボルボの各社がガスタービンエンジンを使用する研究を進めているが2004年現在、実用化には至っていない。また、プジョーはディーゼルエンジンを発電用動力とする研究を行っていたが、こちらも実用化されていない。
[編集] 歴史
ハイブリッドカーの歴史は古く、1902年のローナー社のミクステ車にまで遡れる。 このフェルディナント・ポルシェ設計によるハイブリッド車は、車輪を駆動するのに電気モータを使い、エンジンで電気を発生させていた。また、駆動モーターはハブと一体化されていた。第二次世界大戦時、ポルシェ博士が設計した、ハイブリッド方式のティーガー(P)駆逐戦車が使用されていた。
ハイブリッド車は、電気自動車の航続距離の短さや、蒸気自動車の取扱いの難しさ、一定回転数でないと有効な出力が取り出せない内燃機関の欠点などを克服する為に作られたが、内燃機関の急速な進歩などにより、近年になるまで忘れ去られる事になった。
[編集] 日本における展開
乗用車として最初に市販されたのは1997年に発売されたトヨタ自動車のプリウスである。1999年には本田技研工業もインサイトを発売して追従。以降、世界的に見ても、日本の自動車メーカーが積極的に実用化を推進しており、日本が技術的アドバンテージを持つ分野と考えられている。
大型自動車用としては1991年に日野自動車がバスにてディーゼル・電気式ハイブリッド車HIMR(ハイエムアール)を試作し東京都交通局などで試験運行を開始した。1994年に型式承認を取得し大型路線バスブルーリボンシリーズで正式発売している。日野は改良を続け、1995年には小排気量エンジンに変更して燃費を改善。また、2001年にはワンステップ化、2005年には親会社のトヨタからプリウスの技術を流用、ノンステップ化を実現した上で価格を下げることにも成功している(このモデルチェンジ以降はHIMRの呼称をやめて普通に「ハイブリッド」と呼ぶようになった)。また、観光タイプ(日野・セレガ)の製造も行われている。
一方、日野自動車以外の国産バスメーカー3社は、電気式より構造が単純であることなどから、ディーゼル・蓄圧式ハイブリッド車を開発した。 嚆矢は三菱自動車のMBECS(エムベックス)で、1993年から試験運行を開始し、1995年に同社の大型路線バスエアロスターをベースとしたMBECSIIを正式発売した。また、いすゞ自動車はCHASSÉ(シャッセ)、日産ディーゼルがERIP(エリップ)を開発している。しかし、このタイプは思ったほどの改善が見られなかったことから販売は少数に留まり、まもなく各社とも撤退してしまった。
その後三菱ふそうはディーゼル・電気式ハイブリッドバスHEVを試作し、2002年に遠州鉄道で試験運行を行い、2004年からは正式発売した。HEVはHIMRと異なり、ディーゼルエンジンを発電専用とし、駆動にはもっぱら電気モーターを使用している。
2003年8月22日より、アメリカ・キャプストン製マイクロガスタービンを使ったニュージーランド・デザインライン製ガスタービン発電直列型ハイブリッド方式電気駆動バスが、日の丸自動車興業によって東京駅周辺で無料巡回バスとして運行されている。
[編集] 海外におけるハイブリッドカーの評価
日本ではハイブリッドカーは環境に優しい車として評判が高く、日本の道路事情においては実際その通りなのだが、海外においては必ずしも日本と同じ評価とは言えない。
その理由として以下のようなものが挙げられる。
[編集] 日本と海外の道路事情の違い
住宅が密集していて信号機や渋滞の多い日本の道路事情と、都市と都市の間が比較的近い日本の地理的条件から、必然的に車は加速・減速が多くなる。
ハイブリッドカーは加速時にはモーターを使い、減速時には回生ブレーキを使用して運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電池に蓄える。ガソリンエンジンはある程度高速になってからモーターから切り替わるか、大きなパワーが必要な時にモーターと併用される以外は、完全に停止かアイドリング状態にある。
そのために日本では、非常にハイブリッドカーは都合が良く出来ている。
しかしアメリカやヨーロッパにおいては、都市と都市の間が離れており、その間をハイウェイやアウトバーンなどの高速道路が結んでいる。渋滞は大都市の中だけであり、一度郊外に出ると高速で走り続ける。そのために加速・減速は少なくなり、逆に同じ速度を保って巡航することが多くなる。
そのため、ハイブリッドカーの最大の特徴であるモーターと回生ブレーキが使われる時間が少なくなり、ガソリンエンジンで走行している時間が増える。ガソリンエンジンで走行している間は、モーターと電池は単なる「おもり」となる。
結果として、ガソリンエンジンの車と比較して、燃費が極端に違うわけではなくなってしまう。
[編集] 日本との認識の違い
これは主にヨーロッパとの比較で言えることであるが、日本では「環境に悪い車」としてガソリン自動車より厳しい規制がかけられ、今ではほとんどトラックやバス程度しかなくなってしまったディーゼル自動車であるが、ヨーロッパではその低い燃費から「環境に優しい車」として、一般的な乗用車にまで広まっている(2001年のデータで、ヨーロッパ全体でディーゼル自動車の普及率は約40%である)。
元々ディーゼル自動車は低燃費な代わりに硫黄酸化物がガソリンエンジンより多い。それに対し日本ではディーゼル自動車の出す硫黄酸化物(SOx)に対して国や自治体が規制をかけることでガソリン自動車の普及率を伸ばし、さらにハイブリッドカーまで発展した。しかしヨーロッパでは、自動車メーカーなどが自主的に技術革新を進めることにより硫黄酸化物の排出量を少なくしていった。
またヨーロッパでは、北海の油田から取れる硫黄分の少ない軽油・重油が使えるのに対し、日本では中東地域から取れる硫黄分の高い軽油・重油に頼らざるを得ないため、脱硫させるコストがかさむなどの理由もあった。
そのために、ヨーロッパと日本での認識の違いが大きく、高いハイブリッドカーを買うより「燃費が良く環境に優しい」ディーゼル自動車を買うといった状態である。
ただしアメリカではハイブリッドカーや天然ガス車両などの代替燃料車に対して高速道路での優先レーン(カープールレーン:通常ならば二人以上の乗車でなければ走行が認められないなどの条件がつく)を無条件で走行できるなどの優遇策を採っている州もあり、こうした地域では通勤時間の短縮といったメリットを求めてハイブリッドカーを購入する人もいる。
[編集] ハイブリッドカー車種
トヨタ自動車
本田技研工業
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