ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃
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『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(ゴジラ・モスラ・キングギドラ だいかいじゅうそうこうげき)は、2001年の日本映画で、ゴジラシリーズ第25作。平成ガメラシリーズの金子修介監督がメガホンをとったことで話題になった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 概要・特色
登場する怪獣はゴジラ(呉爾羅)、バラゴン(婆羅護吽)、モスラ(最珠羅)、ギドラ(魏怒羅)、キングギドラ(千年竜王)。 主要襲撃地点は太平洋海底、孫の手島、静岡県と山梨県の富士山麓、神奈川県、新潟県、鹿児島県。
当初の案では、護国聖獣は、アンギラス、バラゴン、バランの三大マイナー怪獣だったが、営業上の理由(有名怪獣を出すことによる集客効果を狙った)で最終案ではモスラ、キングギドラ、バラゴンとなった。かなり制作準備が進行した段階での変更だった為、ムック等におけるスタッフインタビューでは、当初予定のままやりたかったという発言が散見される。
なお、登場怪獣変更に伴いモスラとキングギドラのデザイン及び設定は大きく変えられた。
- モスラ→体毛がなくなり、蜂のイメージが付加され攻撃的な印象に。鱗粉や光線を使わず、尾から発射する毒針が武器。また、小美人の類は登場しない(成虫モスラが出る作品で小美人の類が登場しないのは本作のみ)。
- キングギドラ→左右の首にスーツアクターの腕が入って首が太く短くなり、尻尾も太い。体格も全体的に小柄で、また、完全体「千年竜王」にならないと飛行も光線攻撃もできない。なお、「キングギドラ」と呼ばれるのは完全体になった時のみであり、それ以前は「ギドラ」と呼ばれて区別されている。
- それ以上に違うのは完全に「善玉」として登場する(本作のみの設定。それ故モスラと共闘するのも本作だけ)こと。そのため、クライマックスのゴジラとキングギドラの一騎打ちは従来の作品とは善悪が入れ替わっており、昭和シリーズからのゴジラファンの一部に違和感を感じさせた。
本作のゴジラはミレニアムシリーズの中でも一際特徴的な造形がなされており、昭和シリーズのゴジラを彷彿とさせるどっしりとした体型に加え、白目を剥いて、より不気味な印象を与える顔つきとなっている。『ゴジラvsデストロイア』以降赤かったゴジラの熱線は、本作で再び青色に戻されている。
また、他作品のゴジラとは設定が大きく違う。主な点は下記の通り。
- 「恐竜の生き残りが核実験によって怪獣になった」点は同じだが、更に太平洋戦争の戦没者・犠牲者の怨念が憑依した存在になっている。
- 最初の状態では通常兵器は一切効果がなく、傷つけることができるのは護国聖獣のみ。
- 熱線の射程距離が今までの作品より長く、強力。また、熱線を放つ際、口に青色の粒子を吸い込むような描写が入る。
- 「核の申し子」をイメージさせる為か、清水市襲撃シーンでは、熱線による爆発で、キノコ雲が生々しく上がる。
- 崖を登ろうとしたバラゴンに対し、バラゴン自身ではなく崖に熱線を放ってバラゴンを転落させたり、海中でのキングギドラとの戦いの際、潜航艇から発射された魚雷をキングギドラを盾にして防ぐなど、戦術的知能は高く、且つ惨忍。
これらの設定、演出によって本作は単なる怪獣映画だけでなく一種のオカルトテイストも含まれた。
劇中でのゴジラを初めとする怪獣達の冷徹無比な破壊・殺戮行動は「怪獣=恐怖の対象」という描写に関しては非常に完成されており(ある意味、第一作の続編としての要素を一番受け継いでいる作品であるとも言える)、また、ゴジラとバラゴンの決戦シーンをはじめとした、いわゆるプロレスごっこや怪獣同士の光線の撃ち合いでない怪獣アクションは、「リアルな怪獣映画」を望むファンからは高く評価されている。内容でも平成作品ではもっとも重厚かつ緊迫感をもった世界観であり、一部では「平成のゴジラで最高傑作」との意見もある。
しかし一方では、主に「整理し切れていない脚本」に起因する描写を中心に、批判的な意見も存在する。
- 有名怪獣に頼る姿勢(モスラ・キングギドラと対等の存在として登場するにも関わらずバラゴンがタイトルから外されたことも含む)、及びそれに伴う怪獣の設定変更(特に今まで「邪悪な強敵」として登場し続けたキングギドラを完全な善玉として設定したこと)
- 『怪獣総進撃』以来、33年ぶりの復活となったバラゴンがあっさりと敗れ、ゴジラのかませ犬になってしまっている
- ゴジラがあまりに強すぎる(完全体になったキングギドラでさえ敵わない)。
- 終盤のバトルが暗くて良く見えない。
- 怪獣の死霊がご都合主義的にパワーアップに使われたり、ゴジラの無敵設定を無力化させている。
- A級戦犯だけならともかく、それ以外の戦争の犠牲者(無抵抗で殺された民間人を含む。劇中でもはっきり「原爆の犠牲者」と言っている)の霊をも脅威の対象としている。
- 善玉である護国聖獣の守護対象は「くに」であり「人間」ではないため、躊躇なく人間を殺したり巻き添えにする。特に護国聖獣が自分の意思で殺した者には暴走族や不良青年が多く、意図的に悪者扱いされている様にさえ見える(彼らの護国聖獣を封印していた神仏像を破壊したり、罪もない犬を殺害しようとしたりといった行動に対する因果応報という見方もある)。
過激な殺戮描写の多い本作は、主な観客層であるはずの子供達に大きなショックを与え、彼らの怪獣映画に対する情熱を失わせる結果となったのではないかという批判も存在する。しかし、平成ガメラ三部作と同じく金子監督は「対象は小学校高学年から中学生」と明言している(特撮の項目も参照)。
それ故、幼児も対象とした『とっとこハム太郎』を併映とした営業施策には非難の声が高く、上映中に泣く子供や途中退席する親子連れが多かった。 しかし皮肉にも本作は観客動員数240万人、興行収入27億円(第3期ゴジラシリーズ中最高また2002年度日本映画興収第3位)という大ヒットを記録し、「ゴジラ×メガギラス」までの観客の減少により検討されていた休止宣言は撤回された。
[編集] ストーリー
1954年以来、半世紀ぶりにゴジラが出現。戦わない事を誇りとしていた防衛軍がゴジラ迎撃戦に挑むものの、「太平洋戦争で死亡したすべての人間の残留思念の集合体」とされるゴジラには通常兵器が効かず、進撃を食い止められない。時を同じくして、日本各地で3匹の護国聖獣が目覚め、東京を目指すゴジラの前に立ちはだかるが……
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- 立花由里:新山千春
- 立花泰三:宇崎竜童
- 武田光秋:小林正寛
- 伊佐山嘉利:天本英世
- 門倉春樹:佐野史郎
- 丸尾淳:仁科貴
- 江森久美:南果歩
- 三雲陸将:大和田伸也
- 日野垣真人:村井国夫
- 広瀬裕:渡辺裕之
- 小早川:葛山信吾
- 崎田:中原丈雄
- 宮下:布川敏和
- 官房長官:津川雅彦
- ニュースキャスター、アナウンサー:笠井信輔(フジテレビ)、森麻緒、野中美里(以上2名、当時テレビ神奈川)、田辺稔、細野俊晴(以上2名、静岡第一テレビ)、竹内朱実(当時静岡第一テレビ)
また、多数の有名人がカメオ出演しているのも特徴(例:角田信朗、塚本高史、佐藤二朗、チューヤン、温水洋一、篠原ともえなど)。