アジサイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アジサイ Hydrangea |
||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
宇治・三室戸寺のアジサイ庭園 |
||||||||||||
分類 | ||||||||||||
|
||||||||||||
和名 | ||||||||||||
アジサイ、紫陽花 | ||||||||||||
英名 | ||||||||||||
Hydrangea |
アジサイ(紫陽花)は、アジサイ科 アジサイ属の植物の総称。学名はHydrangea、「水の容器」という意味。学名のままヒドランジアあるいはハイドランジアということもある。原産地は日本。
いわゆる最も一般的に植えられている球状のアジサイはセイヨウアジサイであり、日本原産のガクアジサイ Hydrangea macrophyllaを改良した品種である。
花の色は、助色素というアントシアニンの発色に影響を与える物質のほか、土壌のpH濃度、アルミニウムイオン量によって様々に変化する。そのため、「七変化」とも呼ばれる。日本原産の最も古いものは、青色だという。花はつぼみのころは緑色、それが白く移ろい、咲くころには水色、または薄紅色。 咲き終わりに近づくにつれて、花色は濃くなっていく。
「あじさい」の名は「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」が訛ったものと言われる。また漢字表記に用いられる「紫陽花」は、唐の詩人白居易が別の花(ライラックか?)に名付けたもので、平安時代の学者源順がこの漢字をあてはめたことから誤って広まったと言われている。
- 樹高1~2m。
- 葉は、光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。
- 花は、6~7月に紫(赤紫から青紫)のを咲かせる。一般に花と言われている部分は装飾花で、本来の花は中心部で小さくめだたない。花びらに見えるものは萼(がく)である。セイヨウアジサイではすべてが装飾花に変化している。
- 青酸配糖体を含み、ヒトなどが体内に取り込むと中毒を起こす。
目次 |
[編集] 分類と品種
エングラーの分類体系では「ユキノシタ科アジサイ属」になっているが、クロンキスト体系ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させている。
アジサイ属の野生種としては、日本には以下のようなものがある。
まず、次の種がアジサイの原種と栽培種であるが、野性でも変異が多い種である。
- ガクアジサイ H. macrophylla Sieb. f. normalis (Wilson) Hara
- アジサイ f. macrophlla
- セイヨウアジサイ f. hortensia
- ヤマアジサイ(サワアジサイ) H. macrophylla subsp. serrata (Thumb.) Makino
- アマチャはこの変種
- エゾアジサイ subsp. yezoensis (Koidzumi) Kitamura
全くの別種になるのが以下のものである。
- ヤハズアジサイ H. sikokiana Maximowicz
- タマアジサイ H. involucrata Sieb.
以下の種はアジサイの名を持つが、装飾花を持たない。
- コアジサイ H. hirta (Thumb.) Sieb. et Zucc.
また、アジサイの名を持たないが、以下の種はアジサイ属で、よく似た花をつける。
- ガクウツギ H. scandens (L. f.) Seringe
- コガクウツギ H. luteovenosa Koidzumi
- ノリウツギ H.paniculata Sieb.
つる植物となるものもある。
- ツルアジサイ(ゴトウズル) H. petiolaris Sieb. et Zucc.
- イワガラミ Schizophragma hydrangeoides Sieb. et Zucc.(ツルアジサイに似るが、装飾花が一弁)
このほか、草本でアジサイ様の花を咲かせるものにクサアジサイ(Cardiandra alternifolia Sieb. et Zucc.)がある。
また、分類上の位置は大きく異なるが、スイカズラ科にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。ムシカリ(Viburnum furcatum Blume)やヤブデマリ(V. plicatum Thumb. f. tomentosum (Thumb.) Rehder)などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種オオデマリ(f. plicatum)があるのもよく似ている。
Hydrangea scadens(ガクウツギ:名にウツギとあるがアジサイの一種で、茎と葉がウツギに似ている事からこの名が付いた) |
[編集] シーボルトとあじさい
鎖国時代に長崎にオランダ人と偽って渡来したドイツ人医師シーボルトは日本のアジサイに惹かれ、アジサイ属14種の植物図とその解読を発表した。その中で、特に花の大きい一品種に、愛人の名前「お滝」をとって「オタクサ」と名づけている。季語は夏。
[編集] 各地のアジサイ名所
アジサイは長崎市・相模原市・習志野市・松戸市・旭市・新庄市・渋川市・下田市・神戸市・福井市・宇土市・大江町の花、勝浦市の木に指定されている。また過去において、2003年7月新発田市と合併した豊浦町、2006年3月姫路市と合併した安富町の花にもなっていた。
全国各地にアジサイを境内に多く植えたアジサイ寺と呼ばれるような観光名所がある。公共の施設では神戸市立森林植物園、舞鶴自然文化園に約5万株のアジサイが植えられている。三重県桑名市にあるなばなの里には8,000坪という日本最大級の敷地のあじさい・しょうぶ園が2006年6月より新設された。また神戸市の六甲山ドライブウェイ沿いには延々とアジサイが自生しており、箱根登山鉄道では開花時期に合わせ夜間ライトアップされたアジサイを楽しめる特別列車が運行されている。
[編集] 寺院
- 護摩堂山(新潟県田上町)
- 高幡不動(東京都日野市)
- 西林寺(兵庫県西脇市)
- 三千院(京都市大原)
- 成就院(神奈川県鎌倉市)
- 長慶寺(大阪府泉南市)
- 長法寺(岡山県津山市)
- 長谷寺(奈良県桜井市)
- 白山神社(東京都文京区)
- 本土寺(千葉県松戸市平賀)
- 三室戸寺(京都府宇治市)
- 明月院(神奈川県鎌倉市)
- 矢田寺(奈良県大和郡山市)
[編集] その他
[編集] 古典文学でのあじさい
万葉集には2首のみ。平安後期になると、しばしば詠まれるようになった。
- 万葉集時代
-
- 言問はぬ木すら味狭藍 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)にあざむかえけり
- (大伴家持 巻四 773)
-
- 紫陽花の八重咲く如くやつ代にを いませわが背子見つつ思はむ(しのはむ)
- (橘諸兄 巻20 4448)
- 平安時代以降
-
- あぢさゐの 花のよひらに もる月を 影もさながら 折る身ともがな
- (俊頼『散木奇歌集』)
- 夏もなほ 心はつきぬ あぢさゐの よひらの露に 月もすみけり
- (藤原俊成 『千五百番歌合』)
- あぢさゐの 下葉にすだく蛍をば 四ひらの数の添ふかとぞ見る
- (藤原定家)
[編集] 楽曲
- 「紫陽花」五木ひろし
- 「あじさい橋」城之内早苗
- 「あじさい通り」スピッツ
- 「紫陽花」シド
- 「紫陽花アイ愛物語」美勇伝
- 「あじさいの寺」藍美代子
- 「紫陽花」椿屋四重奏
- 「紫陽花」AJISAI
- 「あじさい」山崎まさよし
- 「紫陽花」- 歌曲集「わがうた」第五曲。曲: 團伊玖磨、詩: 北山冬一郎
[編集] 建造物
[編集] 花言葉
強い愛情、移り気なこころ、一家団欒、家族の結びつき