あばれはっちゃく
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あばれはっちゃくは、児童文学者、山中恒著の読売新聞社から発刊された子供向け小説シリーズ(1970年 - 1971年)。1979年 - 1985年にはテレビ朝日系列で毎週土曜日にテレビドラマとして放送された。桜間長太郎(さくらま・ちょうたろう)という少年を通して様々な家庭・学校問題を描いた。映像作品の監督は山際永三・新津左兵・川島啓志・松生秀二。脚本は山根優一朗・三宅直子・田口成光・市川靖・安藤豊弘。プロデューサーは落合兼武(テレビ朝日)・鍛冶昇(国際放映)。
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[編集] 放送作品
- 『男!あばれはっちゃく』(1980年3月22日 - 1982年3月27日、全102話)
- 『熱血あばれはっちゃく』(1982年4月10日 - 1983年3月26日、全49話)
- 『痛快あばれはっちゃく』(1983年4月2日 - 1985年2月23日、全93話)
- 『逆転あばれはっちゃく』(1985年3月2日 - 9月21日、全27話)
[編集] 放送時間
- 毎週土曜日19:30 - 20:00(ただし関西地区だけこの時間に『部長刑事』が放送されていた関係で18:00 - 18:30(後期は17:55 - 18:25)に放送された。)
- 青森放送では毎週土曜日17:00 - 17:30、山口放送では毎週日曜日10時台に放送されていた。
- さらに、フジテレビ系の石川テレビでも放送された(平日19:00-19:30に放送)。
- 現在は、CS放送のテレ朝チャンネルで再放送されている。
[編集] 作品のテーマと時代背景
あばれはっちゃくという「ガキ大将」を主人公に据えた作品だが、長太郎の持つ正義感と直面した問題に向き合い試行錯誤する姿勢が視聴者の印象に残り、視聴者のみならずその親世代にも知名度が高い作品である。そうして、長太郎が自称するまでもなく、「賢い」「いい子」と取られている。長太郎が、わがままなガキ大将ではなく、乱暴なだけのガキ大将でもなく、ガキ大将の筋を通しているのである。
番組の最初に「俺は桜間長太郎」で始まる自己紹介があり、一人で演じるショートストーリーが展開され最後にドジを踏む形でオチがつく。これに続けて、全シリーズ共通のオープニング曲「タンゴ!むりすんな」が流れる。
主人公・長太郎は「手におえない暴れん坊」というキャラクター設定だが、不良小学生ではなく「正義感が強い」「ドジであわてんぼう」という視聴者にとって憎めないキャラクターであり、このことがシリーズを長期間存続させる要素になったとされる。それゆえTBSの強力な裏番組「クイズダービー」相手に健闘する程であった。
- 本シリーズ放送中、フジテレビの同時間帯は「欽ちゃんのドンとやってみよう!」が1980年3月に終了に追い込まれ、その後はどの番組も半年以内で打ち切られる暗黒時代であった。
ほとんどの回ではサブタイトルの後ろに「マル秘作戦」が付いていた。
家族構成は長太郎を中心に、父・母・兄(もしくは姉)に犬を加えたものであった。
兄は真面目であったり大人しかったりと、長太郎とは対照的なキャラクターで、姉は長太郎に負けず劣らずの男勝りのキャラクターであることが多かった。
東野英心演じる父親がほぼ毎回「てめぇの馬鹿さ加減には、父ちゃん情けなくて涙が出てくらぁ」と言って息子を張り飛ばすのが特徴。友達親子でわが子に指1本出せない父親が多い現代、この父親は児童虐待と見られるのだろうが、父親の台詞を細かく聞いていると、江戸時代の講談に使われたような俗語が多い。つまり父親は戦前タイプのカミナリ親父ということになる。作品の主要スタッフが、昭和1桁世代であることと無関係ではないかもしれない。
問題に出くわすと、長太郎は倒立やブリッジや座禅など代によって異なるアクションをとりながら、「ひらめけーひらめけー」「はっちゃけーはっちゃけー」など代によって異なるフレーズを口にしつつ考え、ひらめきを得る。特に4代目、5代目では「ひらめいた!」「はっちゃけた!」と言った際に、画面の上部端に、電球が光っているアニメーションが合成された。このスタイルを始めた頃は、倒立して思案中何も言わず、最後に「ひらめいた!」と発するだけであった。
シリーズが進むと、初代長太郎役(吉田友紀)が別名で出演することがあった。大概は、「プロレスを教えてくれる近所のお兄さん」といった役回りであった。ただし、初代から通して見た人でなければ、この若者が、作品にとって如何なる存在であるのか、理解が難しかったかもしれない。
外でケンカをしていたら、そこに必ず山内賢演ずる長太郎のクラスの担任が(偶然に?)通りがかって、仲裁する。ただし、いかなるトラブルも最後には丸く解決する。
「コロコロコミック」に連載された「あまいぞ!男吾」の作者・Moo.念平は、あばれはっちゃくをモデルに作品を描いたと述べている。
以前このテレビ朝日・土曜夜7時半枠は、長らく東映制作の特撮モノ(仮面ライダー、秘密戦隊ゴレンジャー等)が定番だったが、東映サイドが夕方6時台(「バトルフィーバーJ」から)へ撤退した後に、TBS・「ケンちゃんシリーズ」で定評のあった国際放映と「俺はあばれはっちゃく」で手を携え、以降6年間も一連の山中恒シリーズが続いた。当時、スポンサーには、ジャポニカ学習帳などが、ずらりと並んだ。1980年代後半の「ドラゴンボール」と客層が同じであった。
[編集] シリーズの終焉
5代目長太郎・酒井一圭は半年で降板している。酒井一圭は当時小学4年生であった。吉田友紀が小柄で半ズボンが似合ってはいたものの、放送時に実生活では既に中学1年生であったために1年しか使えなかった教訓を踏まえて、設定よりも年下の子役を登板させたのだろう。業界には監督の要求を理解させるため、設定プラス1.5歳の原則があるにも拘らずそれに反しており、現場としては相当の決心が必要だったと思える。大事に使えば、1980年代いっぱい、酒井の長太郎を続けられたはずだろうに。
降板の理由については、テレビ朝日も「当時の現場の判断」としか答えていない。諸説を総合すると、視聴率の低下で打ち切り説が濃厚である。「あばれはっちゃく」のよさは、子どもの生活をそのまま再現していること、つまり徹底的なリアリズムにある。しかし、4代目後半になると、次第に視聴者に飽きられ始め、慌てたスタッフは、5代目で相当数のスタッフを入れ替えると共に、「父ちゃん」の呼称を「父さん」に和らげ、初代以来のオープニングソングを改め、さらにそれだけでは飽き足らず、決定的なイメージチェンジに踏み込んでしまった。作品を、ファンタジーにしてしまったのである。新幹線を追い越せる長太郎など、既に原作とは何の縁もなかった。これにより、残っていたファンも、離れてしまったという。
戦略ミスを象徴する話として実ははっちゃく(番組)を元気づける役として、2代目以降の歴代のあばれはっちゃくが総出演した話があった。しかしテコ入れのはずがたとえば先代(半年前に卒業したばかり)の坂詰貴之の演じた役ははっちゃくと関係のない「修行中の強い空手家」であり、「はっちゃく役を封印しようとしている」と解釈されかねない内容になってしまった。
この末路はかつて葬り去った裏番組の「タイムボカンシリーズ/イタダキマン」(1983年4月~9月・フジテレビ)によく似ている。同作の視聴率低迷の主要因は本作の真裏への時間帯移動であるものの、メインスタッフの入れ替え、急激な路線転換、マンネリ打破の試みの失敗という共通点がある。
ファンの間では、6代目はっちゃくを望む声も強い。しかし、6代目はっちゃくについては、可能論と不可能論が交錯している。産業構造の転換を経て、日本社会の在り方、日本の子どもの在り方が全く別のものになってしまったからである。ハーフパンツを穿き、テレビゲームに夢中になり、「子どもを守れ」の枠の中で守られている長太郎は、既にあばれはっちゃくではないであろう。しかし、半ズボンを穿き、凶悪事件にも立ち向かい、人情派のガキ大将として君臨する長太郎では、現代っ子から浮いてしまうことは間違いない。NHK教育テレビでリメークした「ズッコケ三人組」では、山田克二演じる阪急ドラマシリーズのハチベエのイメージを突き崩し、ハチベエにアメリカンカジュアルを着せてしまった。リアルタイムの時代にも、人情派のガキ大将は、既に過去の存在であり、子どもたちは「自分たちはあんなこと出来ないなぁ・・・」と憧れを持って見たものである。ハーフパンツを穿いた長太郎では、テーマを棄てることになり、半ズボンを穿いた長太郎では、21世紀を生きる子どもたちに、理解の出来ない作品になってしまう恐れがある。
[編集] 出演者
[編集] 歴代の桜間長太郎
[編集] 桜間長太郎の親族
- 父親・長治(父ちゃん):東野英心
- 母親・和子(母ちゃん):久里千春
- 姉・てるほ:島田歌穂(第1シリーズのみ)
- 兄・信一郎:須田庄司(第2シリーズのみ)
- 兄・修一郎:中嶋洋行(第3シリーズのみ)
- 兄・賢一郎:竹花誠(第4シリーズのみ)
- 姉・カオル:今井りえ(第5シリーズのみ)
[編集] 歴代ヒロイン
- ひとみちゃん:早瀬優香子(第1シリーズのみ)
- みゆきちゃん:鈴木輝江(第2シリーズのみ)
- あけみちゃん:浜村砂里(第3シリーズのみ)
- まゆみちゃん:水沢真子(第4シリーズのみ)
- あかねちゃん:浅見奈生(第5シリーズのみ)
[編集] 桜間長太郎の友人
[編集] 桜間長太郎のライバル
- 江藤克彦:織田真早彦(第2シリーズのみ)
- 井上輝彦:小池満敏(第3シリーズのみ)
- 飯田信彦:草間忠彦(第4シリーズのみ)
- 高田秀彦:阪田智彦(第5シリーズのみ)
[編集] 桜間長太郎の担任
- 佐々木:山内賢(第1シリーズ)
- 寺山健一郎:山内賢(第2シリーズ)
- 堀内圭介:山内賢(第3シリーズ)
- 広田:山内賢(第4シリーズ)
- 山西:山内賢(第5シリーズ)
[編集] 桜間長太郎が飼っている犬
- 初代ドン平:ラブラドール・レトリーバー(第1・第2・第3シリーズ)
- 2代目ドン平:ラブラドール・レトリーバー(第4シリーズ)
- ドン次郎:(犬種不明)(第5シリーズ)
[編集] テーマソング
- 「タンゴ!むりすんな」(堀江美都子)
- 1代目~4代目に共通のオープニング曲として使われた。
- 「そうだよおいらは」(山野さと子)
- 5代目オープニング曲。
- 「はっちゃく音頭」(堀江美都子)
- 1代目ではエンディングに使用されたが、2代目以降は冒頭のBGMでのみ使用されるようになった。なお、エンディング曲はシリーズごとに異なる。
- 「あばれはっちゃくひとりうた」(堀江美都子)
- 1代目の挿入歌で哀愁漂う曲だった。
- 「そいつぁだれだ」(堀江美都子)
- 2代目のエンディング曲。(テレビでは「そいつぁ!」と表記されている)
- 「バンバンビンビンはっちゃめちゃ」(堀江美都子)
- 3代目のエンディング曲。
- 「あばれはっちゃくまっしぐら」
- 1代目の後半から、2代目にかけて、長太郎の天衣無縫な振る舞いの場面に掛けられた。
[編集] 外部参照リンク
[編集] 前後番組の変遷
テレビ朝日系 土曜19時台後半(1979年2月~1985年9月) | ||
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