国鉄C11形蒸気機関車
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C11形蒸気機関車(C11がたじょうききかんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)の前身である鉄道省が製造した過熱式のタンク式蒸気機関車である。
Cのチョンチョンという愛称で呼ばれることもある。
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[編集] 誕生の背景
昭和初期、それまで使われていた明治時代の旧式雑型機を整理するために国産の技術を駆使して新型のタンク機が作られた。その先駈けとなったC10形機関車の欠点である、軸重が重くなって使用線区が限られるという点を改良して製造された。
可部線三段峡駅前(現在廃駅)にあった頃のC11 189(2003年8月撮影) |
C11 189(2004年3月撮影)ダイヤモンドシティ・ソレイユ |
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[編集] 製造
1932年(昭和7年)から1947年(昭和22年)までの16年間に381両が汽車製造会社、川崎車輛、日立製作所、日本車輌製造の各社により生産された。生産時期によって1~4次までのバリエーションがある。C10形に比べると溶接部分が多く、除煙板(デフレクター)が装備されているなどの特徴がある。
また、民間向けに製造されたものも少なくなく、10社へ計18両が納入されている。
- 1次形(C111~23)
- 本形式の基本型で、ボイラー側面の重見式給水加熱装置と、第1缶胴上に設けられた蒸気ドームが特徴である。重見式給水加熱装置は、期待した性能を発揮できなかったため、後に撤去された。
- 2次形(C1124~140)
- アーチ管が取付けられ、1次形では第2缶胴上にあった砂箱と蒸気ドームの位置が互いに入れ替わった。
- 3次形(C11141~246)
- 貨物列車牽引に対応して軸重増加を図るため、水槽容量を増大したため、側水槽の下端が運転室床面より低くなり、背部炭庫の上辺が水平となった。重見式給水加熱装置は、最初から取付けられていない。
- 4次形(247~381)
- 資材と工数を節約した戦時設計機で、除煙板は木製となり、砂箱と蒸気ドーム被いはかまぼこ形となった。後年の装備改造で3次形までと同様の形態に改められたものが多いが、砂箱と蒸気ドーム被いは原形のまま残ったものがある。
製造年次ごとの番号と両数は次のとおりである。
- 1932年 - C111~22(22両)
- 1933年 - C1123~43(21両)
- 1934年 - C1144~55,57~58(14両)
- 1935年 - C1156,59~84(27両)
- 1936年 - C1185~98(14両)
- 1937年 - C1199~125(27両)
- 1938年 - C11126~140(15両)
- 1940年 - C11141~200,215~226(72両)
- 1941年 - C11201~208(8両)
- 1942年 - C11209~214,227~238(18両)
- 1943年 - C11239~251,267(14両)
- 1944年 - C11252~266,268~281(29両)
- 1945年 - C11282~311(30両)
- 1946年 - C11312~370(59両)
- 1947年 - C11371~381(11両)
製造所別の番号と両数は次のとおりである。
- 汽車製造(60両)
- C111~8,30~34,55,56,66~68,76~78,84,133~170
- 川崎車輛(88両)
- C119~16,24~29,35~44,49~54,59~65,72~75,81~83,93~98,113~120,171~200
- 日立製作所(53両)
- C1117~21,45~48,79,80,85~92,99~101,105~109,121~125,201~214,247~251,*266,*267
- 日本車輛製造(180両)
- C1122,23,57,58,69~71,102~104,110~112,126~132,215~246,252~265,268~381
[編集] 民間向けの同形機
前述のとおり、10社へ18両が納入されている。
- 日本炭鉱高松鉱業所 - ここの2両は、除煙板を装備していなかった。
- C1101 - 1941年・日立製作所
- C1102 - 1943年・日立製作所
- 松尾鉱業
- C118 - 1942年・日立製作所→1952年譲渡・雄別鉄道C118(1970年廃車)
- 樺太人造石油
- C111 - 1942年・日立製作所(ソ連接収後の消息不明)
- C112 - 1944年・日立製作所(同上)
- 宇部油化工業
- 内淵人造石油(樺太)
- 4~6 - 1944年・日本車輛製造(ソ連接収後の消息不明)
- 東武鉄道
- C112 - 1945年・日本車輛製造(奥多摩電気鉄道発注。1963年廃車)
- 雄別炭礦尺別専用鉄道 - 砂箱が角形、蒸気ドームが丸形、除煙板も角張った戦時形
- C1101 - 1944年7月・日本車輛製造→1944年11月譲渡・三菱鉱業大夕張鉄道(1972年9月30日廃車。長島温泉SLランドに保存後解体)
- 江若鉄道
- 「ひえい」 - 1947年・日本車輛製造→改番C111→1957年譲渡・雄別鉄道(埠頭線)C111→1970年譲渡・釧路開発埠頭C111
- 三井鉱山芦別鉱業所専用鉄道→三井芦別鉄道
- C11-1~3 - 1947年・日本車輛製造→1950年8月10日移動(3)、1953年9月6日移動(1,2)・三井鉱山砂川鉱業所奈井江専用鉄道
- 同和鉱業片上鉄道
- C11-101 - 1947年5月・日本車輛製造(1968年10月29日廃車)
- C11-102,103 - 1949年・川崎車輛(1968年4月1日廃車)
[編集] 運用
最初は主に西日本の都市近郊や主要支線で活躍し始めたが、やがて活躍の場を広げほぼ全国各地に配属され、主にローカル線の列車牽引に活躍した。気動車が普及するにつれて余剰となるものも出始め、1960年頃から廃車が少しずつ出たが、使いやすさには定評があり、貨物列車用や入換用として蒸気機関車の末期まで数多くが残り、その姿を見ることができた。
[編集] 譲渡
本形式の払下げは、雄別鉄道への3両とラサ工業宮古工場専用鉄道への1両(C11247)の計4両のみである。
雄別鉄道へは、C1165が1961年(昭和36年)、C11127が1962年、C113が1964年(昭和39年)に国鉄から払下げられ、江若鉄道からのC111、松尾鉱山鉄道からのC118とともに5両体制で1970年の廃止まで貨物列車の牽引用に使用された。
[編集] 主要諸元
(1次車の諸元を示す。)
- 全長:12650mm
- 全高:3900mm
- 軸配置:2-6-4(1C2)
- 動輪直径:1520mm
- 弁装置:ワルシャート式
- シリンダー(直径×行程):450mm×610mm
- ボイラー圧力:14.0kg/cm²(のち15.0kg/cm²)
- 火格子面積:1.60m²
- 全伝熱面積:103.0m²
- 過熱伝熱面積:29.8m²
- 全蒸発伝熱面積:73.2m²
- 煙管蒸発伝熱面積:63.2m²
- 火室蒸発伝熱面積:10.0m²
- ボイラー水容量:3.8m³
- 大煙管(直径×長サ×数):127mm×3200mm×24本
- 小煙管(直径×長サ×数):45mm×3200mm×87本
- 機関車運転整備重量:66.05t
- 機関車空車重量:51.90t
- 機関車動輪上重量:36.96t(運転整備時)
- 機関車動輪軸重(最大):12.40t(第3動輪上)
- 水タンク容量:6.8m³
- 燃料積載量:3.00t
- 機関車性能
- シリンダ引張力:
- 粘着引張力:
- 動輪周馬力:
[編集] 保存
国鉄を代表する蒸気機関車の一つであるC11形は廃車後、全国各地で静態保存された。このうち1号機は青梅鉄道公園に、64号機は梅小路蒸気機関車館に保存されている。
また、ニュース番組などで「新橋のSL広場前から…」と言う事があるが、その新橋駅SL広場にあるのは本形式の292号機である。
[編集] 動態保存
小型で運転線区を選ばず扱いやすいことから、2006年現在、日本の動態保存蒸気機関車としては最多の6両が各地で保存運転を行なっている。
[編集] 参考文献
- 小沢年満「C11 190号機 復活への道程」
- 交友社『鉄道ファン』2002年8月号 No.496 p168~p170
- 白井昭・橋本英樹「大井川鐵道C11 190号機の復元工事状況」
- 交友社『鉄道ファン』2002年7月号 No.495 p126~p129
- 種村直樹「大井川でC11 190号機復活運転 提供者、社員、ファンの総意が実る」
- 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2003年10月号 No.444 p64~p69
[編集] 静態保存
- 北海道地方
- 東北地方
- 関東地方
- 中部地方
- 近畿地方
- 中国地方
- C1180 - 岡山県津山市「津山市立南小学校」前
- C11189 - 広島県安芸郡府中町「ダイヤモンドシティ・ソレイユ」
- C1175 - 鳥取県倉吉市「倉吉鉄道記念館」
- 九州地方
日本国有鉄道(鉄道院・鉄道省)の制式蒸気機関車 |
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タンク機関車 |
960・1000II・1070・1150・B10・B20/2700II・2900・3500・C10・C11・C12/4100・4110・E10 |
テンダー機関車 |
6700・6750・6760・B50 8620・8700・8800・8850・8900・C50・C51・C52・C53・C54・C55・C56・C57・C58・C59・C60・C61・C62・C63(計画のみ) 9020・9550・9580・9600・9750・9800・9850・D50・D51・D52・D60・D61・D62 |
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