ホームライナー
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ホームライナーは、国鉄時代に回送列車の有効活用策として、客扱いを開始し、現在に至るまでJRグループ各社(JR四国を除く)で運行している座席定員制快速列車である。但し、例外的に団体専用列車の扱いとしている場合もある。
なお、路線や運転時間帯によって「おはようライナー」や「ホームライナー○○」等名称が異なる。首都圏や関西圏、中京圏に多く設定されているが、近年は地方都市圏でも運転されることが多くなった。
また、本来は通勤時間帯に着席乗車のニーズに応えるための目的で設定されているが、中央本線の「セントラルライナー」のように収益確保・近距離利用客との分離を図るために日中に設定される列車も現れている。
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[編集] JR
[編集] 乗車時
この列車に乗るには、定期券・乗車券の他にライナー券・乗車整理券が必要である。これらの券の特性上、乗車する車両や座席の列などが指定される場合が多いが、共に座席分しか発売されない為、その切符を買えば、1人で2座席を確保したり(但し旅客営業規則違反)、禁煙席・喫煙席に拘らなければ必ず座れる。
必ず座れる為、到着前に着席整理券が売り切れになるほどの人気のある列車もある。また一部のホームライナーには、グリーン車が併設されている。これも列車により扱いが異なるが、グリーン車が恒常的に連結されている地域ではグリーン車としてグリーン料金を別途徴収する場合がある。また、総じて座席定員が少ない列車の場合には普通車扱いにする場合がある。
なお、この列車の扱いは普通列車であることから、特別企画乗車券で急行列車に乗車が出来ない「青春18きっぷ」等でもライナー券・乗車整理券を購入すれば乗車可能となっている。
また、「湘南ライナー」など一部の朝間時に運行されるホームライナーでは、定期乗車券と併用することが前提にされた1ヶ月ぶんのライナー券が1枚になった「ライナーセット券」が発売される場合もある。JR九州では、「エクセルパス」で乗車する場合乗車整理券を不要としている。
[編集] 使用車両
元々、車両基地まで回送される特急列車の車両を使用したことから、一般に特急列車の車両が使われる事が多い。
しかし、特に利用者の多い東海道本線東京口の湘南ライナーは、特急用車両の他に全車2階建電車の215系電車を使用して、混雑緩和を図っている。
また、JR東海の「セントラルライナー」は、日中の定期列車のため、近郊形車両である313系8000番台電車を新造し、運用に充てている。
[編集] 経緯
いわゆる「ホームライナー」として運行されたものは、1982年6月1日に東北本線上野駅~大宮駅間を回送する特急用電車を活用し、乗車整理券を徴収して旅客輸送したものが最初とされる。同列車は同年7月1日に「ホームライナー大宮」と命名された。
しかし1970年代より、短距離ながらも通勤時間帯に運行される特急列車や急行列車が設定されていることから、これがホームライナーの源流の一つともされている。これらの例として、「水郷」・「犬吠」・「あかぎ」が挙げられる。
また、「フレッシュひたち」・「おはようひたち」・「びわこエクスプレス」・「きらめき」の様に、元々ホームライナーであったものが特急列車に格上げされるケースもある。この場合は使用車両の変更によることもあるが、その他に「北近畿」や「くろしお」等のように運行区間を伸ばして特急列車に格上げするケースや、「おはようとちぎ」・「ホームタウンとちぎ」・「あやめ」の様に昼間時には利用客が伸び悩むものの、朝・夕の時間帯の利用者が期待できる場合には特急列車として運行するケースもある。
[編集] ホームライナーの設定路線・区間
※詳細な運行状況は各運行路線で記載を行っている為、本稿では運行概要のみを記載するにとどめる。
[編集] JR北海道
[編集] 札幌都市圏
[編集] JR東日本
[編集] 首都圏
- 「湘南ライナー」(使用車両は185系、215系、E257系)
- 「おはようライナー新宿」・「ホームライナー小田原」(使用車両は215系、E257系、E351系、251系)
- 東海道線・山手線
- 「おはようライナー逗子・ホームライナー逗子」(使用車両はE257系)
- 東京~逗子間
- 「中央ライナー」(使用車両はE257系、183系・189系)
- 「青梅ライナー」(使用車両はE257系)
- 東京駅~青梅間
- 「ホームライナー鴻巣」(使用車両は185系、489系)
- 「ホームライナー古河」(使用車両は185系、489系)
- 上野・新宿→古河
- 「ホームライナー千葉」(使用車両は183系、2005年12月10日より255系ただし255系検査時は183系)
- 東京・新宿→千葉間(平日のみ)
- 「ホームライナー千葉」(使用車両は183系、2005年12月10日より255系。)
- 総武線
- 新宿→津田沼(土曜・休日のみ)
[編集] 長野都市圏
[編集] 新潟都市圏
[編集] 仙台都市圏
[編集] JR東海
[編集] 名古屋地区
-
- 停車駅はJR東海名古屋地区普通・快速列車停車駅も参照のこと。
- 「ホームライナー豊橋」
- 使用車両:373系
- 運行概況:平成18年10月現在
- 2号(土曜休日32号)…名古屋→豊橋間
- 4号(土曜休日運休)…大垣→豊橋間
- ※朝運転となっている。
- 運行概況:平成18年10月現在
- 使用車両:373系
- 「ホームライナー大垣」
- 東海道線
- 使用車両:683系2000番台、キハ85系、373系
- 名古屋駅~大垣駅間
-
- 運行概況:平成18年10月現在
- 1号(土曜休日31号)…豊橋→大垣
- 2号(土曜休日運休)…大垣→名古屋
- 3号(土曜休日運休)…名古屋→大垣
- 4号(土曜休日32号)…大垣→名古屋
- 33号(土曜休日運転)…名古屋→大垣
- 34号(土曜休日運転)…大垣→名古屋
- ※2号・4号・34号が朝運転で、その他は夜間運転となっている。
- ※683系はJR西日本所属であるが、しらさぎの運用間合を利用して運転されている。以前は485系電車を利用していたが、その際、ヘッドマークはしらさぎのままなので、誤乗が相次いだといわれている。
- 運行概況:平成18年10月現在
- 「ホームライナー関ヶ原」
- 東海道線
- 名古屋駅→関ヶ原駅間(平日のみ)
- 使用車両:683系2000番台・キハ85系
- 運行概況:平成18年10月現在
- 1号…名古屋→関ヶ原
- 3号…名古屋→関ヶ原
- 5号…名古屋→関ヶ原
- ※すべて夜間運転となっている。
- 運行概況:平成18年10月現在
- 「ホームライナー多治見」
- 中央西線
- 多治見駅→名古屋駅間(平日のみ)
- 使用車両:383系
- 「ホームライナー瑞浪」
- 中央西線
- 名古屋駅~瑞浪駅
- 使用車両:383系
- 「ホームライナー太多」
- 中央西線・太多線
- 名古屋駅~美濃太田駅間
- 使用車両:キハ85系
- 運行概況
- 1号 名古屋駅→美濃太田駅 土休日運休
- 2号 美濃太田駅→名古屋駅 土曜は32号、休日運休
- ※1号は夜間運転、2号・32号は朝運転
- 運行概況
[編集] 静岡地区
- 「ホームライナー沼津」
- 東海道本線
- 使用車両:371系・373系
- 「ホームライナー浜松」
- 東海道本線
- 使用車両:371系・373系
- 「ホームライナー静岡」
- 東海道本線
- 三島駅→静岡駅←浜松駅(下り三島駅発は平日のみ)
- 使用車両:(三島方)371系・(浜松方)373系
[編集] JR西日本
[編集] 大阪圏(アーバンネットワーク)
- 「はんわライナー」
- 「やまとじライナー」
[編集] JR九州
- 「さわやかライナー」
- 「ホームライナー」
- 鹿児島本線
- 鹿児島中央駅→川内駅
- 日豊本線・日南線・宮崎空港線
- 宮崎空港駅→延岡駅(使用車両:2号…485系5両、4号…485系3両)
- 宮崎駅→都城駅(使用車両:485系3両)
[編集] 私鉄
私鉄において、有料特急・有料急行を運転する鉄道会社では定期券利用客に対して利用しやすい特急列車・急行列車を設定している場合がある。これを、JR各社のホームライナーになぞらえる場合もある。運行形態として以下のように類型する。
- 有料列車の通勤列車化
- ホームライナーとしての運用
- 専用車両の回送を兼ねて運行されるが、通勤客を誘導する場合に料金体系等を別に定めた別種別を設ける。国鉄・JRのホームライナーの形態とほぼ同じ。
- 通勤列車の有料化
- 「着席サービスの徹底」を主眼とした列車設定であり、且つその為の種別を設け、着席整理券等別料金を設定している場合。
[編集] 有料列車の通勤列車化
[編集] 小田急電鉄
小田急電鉄の特急ロマンスカーの場合には、1999年に小田急線新宿駅を18時以降に発車する下りの特急列車をすべて「ホームウェイ」に名称統一した。
また、朝の上り列車にも通常の名称で運行されているが短距離特急列車の「さがみ」・「えのしま」がある。
歴史を見ると、1967年に朝夕に新宿駅~新原町田駅(現在の町田駅)間で運行を開始した「あしがら」がこの形態の列車の先駆といえる。同時に、定期券に特急券を追加するだけで乗車を認めることとした。これが、この類型の最初の事例とされている。
[編集] 東武鉄道
東武鉄道では1993年より、日光線・宇都宮線で運転している急行「しもつけ」・「きりふり」を定期券利用客が利用できるように定期券と急行券で乗車可能な列車として「ビジネスライナー」に設定していた。1995年には伊勢崎線で運転している急行「りょうもう」の上り早朝浅草駅着・下り19時以降浅草駅発車列車にまで「ビジネスライナー」の扱いを拡大した。しかし、1997年より、これらを含めたすべての特急・急行列車に定期券でも利用できることになった事から「ビジネスライナー」を名乗った列車による特例措置は廃止された。
しかし、2003年から、特急「けごん」の下り最終列車を浅草駅~春日部駅間の運行とし、JRのホームライナーと同等の運用として運行を開始。2006年3月18日より同社が白紙ダイヤ改正を行った際に同月20日より平日に限り浅草駅→南栗橋駅間で運行を開始した特急「きりふり283号」では、春日部駅→南栗橋駅間については料金の徴収をせず、停車駅も東武動物公園駅→南栗橋駅間は各駅停車とするなど、通勤列車の有料化とホームライナー運用を掛け合わせた列車が運行されている。詳しくはスペーシアも参照されたい。
[編集] ホームライナー運用
[編集] 京成電鉄
京成電鉄では「スカイライナー」の一部を、朝の上り列車を「モーニングライナー」として、夜間下り列車を「イブニングライナー」として設定している。
この列車は、スカイライナー専用車両を使用しながらライナー料金をスカイライナーに比べ割安に設定しているが、列車・車両指定であり乗車整理券扱いと同じであるなど、JRのホームライナーに近い運用となっている。スカイライナーの項目も参照。
[編集] しなの鉄道
しなの鉄道では、1997年の転換以前より運行されていた「ホームライナー」を使用車両を自社のものに変更して運行時刻等はそのままの形で運行されている。この列車は小諸駅~長野駅間で運行されており、名称は朝の長野駅行きは「しなのサンライズ号」、夜の上田駅行きは「しなのサンセット号」と名が付けられ、上田駅~長野駅間は無停車で運行されている。 停車駅などについてはしなの鉄道線を参照されたい。
[編集] 通勤列車の有料化
[編集] 京浜急行電鉄
京浜急行電鉄では、定期列車として元々有料特急を設定していなかったが、湘南ライナーに対抗して「京急ウィング号」を運行している。運転形態については列車項目を参考されたい。
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