喫煙
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喫煙(きつえん)は主にタバコに火をつけて発生した煙を吸入する行為。
習慣的に煙を吸入される物質は、あへん・コカ・大麻・タバコ等の身体依存性物質である。本項では主に「乾燥したタバコの葉などに火をつけて発生する煙を吸引する行為(嗜好・嗜癖)」について記述する。製品については、別項タバコ製品を参照。
目次 |
概要
喫煙とは、依存性成分を含む植物(主にタバコの葉、他に大麻・あへん・コカなど)を乾燥などの工程を経て加工した物に火をつけて、その煙を吸引する行為である。古くから嗜好品・嗜癖品として愛好者・依存者がいるが、依存性が強いため、徐々に禁制品とされてきた歴史がある。疾病リスク・臭い・裸火の危険等から嫌悪者もいる。日本で唯一合法とされているタバコについては、社会的に分煙などの運動も見られる。タバコは神経毒を含むため煙草の誤飲で落命することもあり(→灰皿・タバコの誤食によるニコチン中毒)、煙草の扱いには注意を要する。
特に近年では、喫煙による影響が医学分野で良く研究されており、この中では喫煙の依存性や各種疾病との因果関係も解明されてきており、「タバコは疾病リスクを高める」、と一般に認識されている。
- 後述喫煙と人体を参照のこと。
- 後述禁煙に関する動きを参照のこと。
喫煙の種類
能動喫煙
自らの行為による喫煙。
受動喫煙
他人の行為によって発生する煙(タバコなら環境タバコ煙と言われる)の吸引による、望まざる喫煙。一般国民の健康にとって危険なので、厚生労働省は2010年までに非喫煙者を環境タバコ煙の曝露から保護しようと計画している。(→受動喫煙)
喫煙と人体
喫煙の人体へのに関しては、広く研究が進んでいる。なお、本項で述べる健康とは、WHOが定義する所によってそれを示すことにする。
タバコの煙は様々な発ガン性物質・発ガン促進物質・心臓血管/呼吸器毒性物質を含有するため、「喫煙は百害あって一利なし」とまで言われている。また、これらの有害物質は主流煙より副流煙に多く含まれるため受動喫煙被害が社会問題化している。
一方、タバコは身体的な健康被害を及ぼすだけでなく、ニコチン依存症を代表とする精神疾患(ICD-10 F17)をもたらす。
ニコチンは中毒性・依存性があり、これは麻薬と同等とする意見も見られる(ただし一概に麻薬といっても様々な種類があり、その効果も一様ではないため、このような表現は公正とは言いがたい)。これは摂取により過剰な交感神経興奮後のフィードバックによって、いわゆる離脱症状とよばれる神経抑制作用を引き起こす。依存形成に中脳辺縁系のドパミン報酬系が関与するところは、麻薬と同じである。
タバコ煙の成分
タバコの煙にはどのくらいの化学物質(化学の研究対象とされる物質)が含まれているのか。アメリカ化学会によれば、化学物質の総数は約4万種類。そのうちタバコの煙に含まれるものは3800種ほどで、動物にがんを作るのものはベンツピレンをはじめとする43種類。約200種は有害物質とされる。
主なタバコ煙の成分:
主な発癌物質:
- ベンゾピレン
- ジメチルニトロソアミン
- メチルエチルニトロソアミン
- ジエチルニトロソアミン
- N-ニトロソノルニコチン
- 4-(N-メチル-N-ニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン
- ニトロソピロリジン
- キノリン
- メチルキノリン類
- ヒドラジン
- 2-ナフチルアミン
- 4-アミノビフェニール
- O-トルイジン
喫煙が引き起こす疾患
多量・長期間の喫煙嗜好は喫煙者及び周辺者の健康に害を及ぼす。疫学的に喫煙が主原因と言えるものには、
- がん 肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなど
- 呼吸器系 慢性気管支炎、肺気腫(COPD)、気管支喘息など
- 循環器系 狭心症、心筋梗塞、動脈硬化、動脈瘤、閉塞性血栓性血管炎など
- その他 脳血栓、歯周病、などがある。
喫煙依存症
ニコチンの代謝産物であるコチニンが向精神物質となるのは神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が似ているからであり、脳内のレセプターが増える。常時ニコチン摂取を求めるようになってしまう喫煙依存も、社会問題と並行して、健康面での問題を含む。
常に一定量のニコチンが血液中に存在しないと精神的安定を保てなくなる場合があり、喫煙依存すればするほどニコチン欠乏による精神的な不安感が強まり、ますます喫煙依存を深めていくことになる。 依存に陥っても、ニコチン欠乏による禁断症状は喫煙により一時的に緩和されるため、しばしば「喫煙でリラックスできる」と誤解される。しかし実際はより一層、依存と禁断症状を強めているに過ぎない。
ある調査では、50~60才で煙草を吸い始めても寿命にはそれほど影響しないが、若いうちから吸い始めた場合は深刻な影響を及ぼすという結果が存在する。
また中央社会保険医療協議会(中医協)は、喫煙依存症を正式な疾患と認知し、病院での禁煙治療に対し2006年4月より保険が適用されるようになった。
喫煙とストレス
脳へ作用(ニコチンがアセチルコリン様のため)するニコチンは、中脳辺縁系のドパミン報酬系を賦活し、依存形成に関与する。喫煙は、古くは過度のストレスを被りやすい職種を中心に、リラクゼーションになると信じられ、用いられてきた歴史もある。しかし喫煙がリラクゼーションに役立つという科学的証拠はない。逆にこれまでの研究によれば、喫煙はニコチンからの離脱症状を緩和するに過ぎず、ニコチン依存者のストレスは、喫煙時にようやく健康人のそれと同じレベルになることが確かめられている。
発癌性以外の影響
ニコチンは血管を収縮させ血流を減少させる。また一酸化炭素はヘモグロビンと酸素よりも結合しやすく体への酸素供給を妨害する。ゆえに喫煙は運動能力を低下せることになるので、特にスポーツ選手や楽器奏者、ダンサーなどにとっては喫煙は自殺行為ともいえる。
- ※陸上や水泳、サッカーなどのスポーツ選手で喫煙者は寡聞にして聞かないものの、次のような例外がある。
なお非喫煙者が喫煙者と短時間同席するだけでも、喫煙者の副流煙によって頭痛、のどの不快感、吐き気、化学物質過敏症を発症するのは、健康被害の一例である。 喫煙により動脈硬化が徐々に進むため、血管に関係する疾患の原因となる(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、バージャー病など)。
喫煙と社会
タバコは人体に有害である他、喫煙によって直接的ないし波及的に発生する問題もあり、これらは喫煙という精神依存におけるリスクの一端、または社会問題として取り沙汰されている。特に、ヘビースモーカーと呼ばれる過剰な喫煙者は問題とされ易い。 厚生労働省は、現在の日本の喫煙者の半数以上がニコチン依存症であると推計している。
喫煙の広がり
- 歴史
- 喫煙は、もとは南アメリカのネイティブアメリカンが儀式として行っていた風習で、新大陸を訪れたクリストファー・コロンブスを通じて世界に広まったとされる。(頭痛はむしろ喫煙によって惹起されやすいため、頭痛軽減の逸話の真偽はさだかではない)。同時代以降、喫煙習慣は急速にヨーロッパから世界各地に伝播して行った。
- 喫煙率
- 日本での成人の喫煙率は1966年頃(男性83.7%、女性18.0%)をピークに、2005年では全体で29.2%と減少傾向にある。特に60歳代以上の男性喫煙率は、ピーク時の5分の2程度に下がっている。それでも日本は先進国としては喫煙率が依然高いことなどが問題視されている。
- 性別では男性全体の45.8%、女性は全体の13.8%で圧倒的に男性が多い。(2004年度のJTの発表による)
- 過去に比べると男性の喫煙率は落ち、逆に女性の喫煙率が緩やかに上がる傾向が見られる。
- 女性の喫煙率はここ30年来、15%前後を保持しているが、20代の女性の伸びが顕著で、2003年度調査でも23.1%となっている。
- 年代別では30代の喫煙が性別や時代に関わり無く、高い傾向にある。
- なお喫煙率低下の要因として、昨今の煙害教育や、鉄道駅などの公共空間における禁煙区域の充実(後述喫煙規制や禁煙に関する動きの節参照)と並び、たばこ税の増税に伴う値上げの影響が指摘されている。
- 諸外国では、頻繁なたばこ税アップや、法律による公共施設の禁煙化、たばこパッケージに貼付する健康警告表示に実写の肺がん患者の肺を表示するなどして、より一層の喫煙率低下を狙っている。
喫煙による経済的損失
通常、喫煙による経済的損失とは次の事項を含む:
たばこ税自体は、個人から国庫への金銭の移動なので、国全体で見れば利益でも損失でもない。
厚生労働省は「健康日本21」の中で、喫煙によって国民医療費の5%が超過医療費としてかさむことや、煙草関連疾患による労働力損失を含め、「社会全体では少なくとも4兆円以上の損失がある」としている。
喫煙と貧困
喫煙は、世界の貧困問題と不可分になっている。ニコチン依存に陥って喫煙が習慣になり、貧しい国の中には、家計の約10%が喫煙のために費やされていることを、複数の研究が明らかにした。このため、食費・健康管理費・教育費などが削られる、栄養不良・医療費増大・早死・識字率低下をもたらしている。(WHOによる)
喫煙による死亡数
タバコは、世界で2番目に多い死因であり、10人に1人がタバコが原因で死亡(毎年500万人)している。現在喫煙している者のおよそ半数(約6億5千万人)が最終的にはタバコが原因で死亡するであろう。(以上、WHOによる)
厚生労働省は、「健康日本21」の中で、「最新の疫学データに基づく推計では、たばこによる超過死亡数は、1995年には日本では9万5000人であり、全死亡数の12%を占めている」としている。
電子機器に対しての喫煙の害
- マイクロソフト社はハードウェアの問題を最小限に抑える方法のひとつとして、コンピュータの周囲で喫煙しないことを薦めている。(外部リンク参照) タバコの煙は精密機器であるハードディスク等に対し特に悪影響がありその寿命を縮めるともいわれている。これは磁気記録ディスクの表面にある磁性体の溝がタバコの煙の粒子より大きく、この溝に煙がかかることで読み書きが不安定になる等としたもので、現在の極めて密封性の高いハードディスクに関しては、この限りではないと言われている。ただ、ヤニなどでコンピュータや室内などが茶色に汚れることがあるため、喫煙しないに越したことはない。
ごみとしてのタバコ
- 東京都千代田区では2002年11月から生活環境条例が施行され、区内路上禁煙地区での喫煙及びポイ捨てが禁止された。違反すると2万円以下の過料を徴収される。同様の条例は横浜市などでも制定されている。
- 札幌市では、吸い殻の投げ捨てに対して罰金1000円を課す『ポイ捨て防止条例』を導入したところ、歩き煙草をする人が9割近く減ったことが市の追跡調査でわかり、罰金が煙草のポイ捨て防止に効果のあることが明らかになった。
- なお、路面、側溝、水路等へのポイ捨て(包装パッケージ含む)そのものはもとより軽犯罪法で禁じられている。
悪臭源としてのタバコ
- たばこの煙にはアセトアルデヒドやアンモニアをはじめとする臭いの元となる成分が200種類以上含まれており、消臭剤・芳香剤市場では主な悪臭源のひとつに「たばこの臭い」が挙げられている。
- 煙にはタールが含まれているため、頭髪や衣服、エアコンのフィルターなどに吸着した臭いは取れにくく、タール分を媒介に雑菌が繁殖し、さらなる悪臭の源となる。
- 消臭対策を行っている喫煙者も多いが、(嗅覚疲労によって)たばこの臭いに無頓着なヘビースモーカーも少なくない。
火災とタバコ
- 平成15年版消防白書によると、建物火災の10.6%、林野火災の14.7%がタバコが原因であり、放火に次ぐ主な出火原因となっている。かつてはタバコが出火原因のトップであった。タバコ火災のうち57.8%が投げ捨て、18.7%が火源の転倒、落下(寝タバコなど)によるものである。
- また放火などの犯罪において、火種としてタバコや喫煙具は良く利用されていることから、可燃性の危険物を安易に販売することを疑問視する人も多い。
歩行喫煙による傷害
- 周囲の状況を考慮しない歩行喫煙は、周囲の者に煙を浴びせかけることで精神的苦痛を与え、また、目や喉に肉体的な苦痛を与える。とくに、喉の弱い者、乾燥した環境等にあっては、希望しない煙の吸引により傷害を負うことが少なくない。
- また、歩行喫煙のタバコの火が、他の歩行者等の人体、衣服等を焦がす等の問題も指摘されている。とくに、歩行喫煙のタバコは、小さな子供等の顔面近くの高さで前後に振られながら移動しており、これが子供に傷害を負わせることがある。
歩行喫煙による傷害行為は第三者が知覚しにくい面もあり、また歩行者同士であればそれ以降の接触もないことから、受傷した者はその被害を訴え出る手段が少ないのが現状である。JT(日本たばこ産業)では、喫煙のマナー向上の広告を、タバコ自動販売機や電車の中吊り広告等に掲示している。
嫌煙・嫌煙権
喫煙によって被る害を軽減するための禁煙活動や、喫煙者から非喫煙者が迷惑を被らないようにする嫌煙(分煙とも)活動も行なわれている。なおこれらの活動はしばしば誤解されているが、本来はステレオタイプによる喫煙者の人格攻撃などの否定的な活動は含まれない。喫煙者を憎悪したり中傷するための活動は、嫌煙権運動には元々は含まれないのだが、語感から誤解は避けられず、喫煙行為を憎悪したり、喫煙者を貶めるためなら手段を選ばない者との混同を避けるため、本来の嫌煙権活動推進者は「嫌煙」という語を使わなくなっており、主に「弱煙」ないし「分煙」と言い換えている模様である。(→嫌煙・嫌煙権)
喫煙に関する議論
喫煙は、文化の側面・日常的な側面・依存薬物の側面などを持つ。この行為に関しては、煙草を過剰に消費してしまう人や、喫煙によってマナー違反を平気で仕出かす者が、喫煙に対する社会状況の悪化を招いていると見られている。その一方で、前出の嫌煙と「喫煙を憎悪する事」を混同する向きが、感情的な喫煙行為への攻撃をするケースもある。この喫煙者と非喫煙者の双方に含まれる問題行動をする人が、対話と理解を妨害する様子は、しばしば見られる所である。
未成年者の喫煙の禁止
「未成年者喫煙禁止法」の第三条(2001年12月改正法施行)では、「未成年者に対して親権を行う者情を知りて其の喫煙を制止せざるときは科料に処す」と定められている。
喫煙推進に関する動き
喫煙推進の動きは、たばこ産業によるもの以外は多くない。
未成年の喫煙推進
タバコ会社が子供が喫煙するよう仕向けていることが、米国の複数の訴訟過程で出されたタバコ会社の内部資料によって明らかになった。例えばRJレイノルズ社は、14~18才の市場で成功するためのブランドを確立すべきで、彼らに積極的に売り込むべき、との方針を持っていた。
喫煙規制や禁煙に関する動き
日本では、先進諸国の中で最も喫煙率が高いという汚名を返上するために、21世紀初頭から禁煙に関する運動が活発化している。世界的にも公共の場所・交通機関等での禁煙化は進んでおり、また喫煙による周囲への影響や防災上の理由もあって、企業内での禁煙化・分煙化も進むなどしている。飲食店・商店では店内原則禁煙で、別に設けた喫煙所を提供したり、または空調によって喫煙場所からの煙が他に流れないようにするなどの工夫も見られる。
公共交通機関は最も早く禁煙が進んだ施設の一つである。
鉄道
- JRの場合、普通列車はほぼ全て禁煙、特急などの優等列車でも禁煙車両の割合は増加している。JRの特急、新幹線は旧国鉄時代の慢性的な赤字の一部をタバコの税収(たばこ特別税)で補填された経緯もあり、喫煙者に対する一定の配慮を行っているが、緩慢ながら禁煙化は進みつつある。
- JR北海道は、2006年3月18日のダイヤ改正から道内完結便の全列車が全面禁煙となった。本州まで乗り入れる列車のうち、スーパー白鳥、北斗星1・2号は対象外とされたが、2005年9月から北斗星、カシオペアのロビー、デッキ等の灰皿は順次撤去され禁煙化されてきている。
- 東海道・山陽新幹線は16両中12両が禁煙車、また次世代のN700系は、一部のデッキに喫煙所を設け、それ以外の客室内は全て禁煙とする予定である。
- JR東日本は2005年12月のダイヤ改正で比較的乗車時間の短い成田エクスプレス、しおさいなど房総半島方面への特急列車と、長野新幹線を全面禁煙とした。また、2007年春以降は上越新幹線・東北新幹線をはじめ在来線特急列車も他社直通・寝台特急以外は全車禁煙にする予定である。
- JR東海・JR西日本・JR四国は、在来線特急列車の禁煙化には消極的である。
- JR九州の九州新幹線は、営業開始から全車禁煙である。また2007年春以降にJR東日本と同じく車内全面禁煙化にふみきることになった。
- 私鉄や第三セクター鉄道の列車でも、普通列車を始めとする追加料金の不要な列車は地方の一部を除き全て禁煙、追加料金の必要な優等列車でも禁煙車両の割合は増加している。小田急電鉄の新型ロマンスカー50000形電車「VSE」ではロマンスカーカフェ(車内売店)の一部分にある喫煙コーナーを除き、全面禁煙である。
- 鉄道駅構内でも以前はラッシュアワーを中心としていた「禁煙タイム」を全営業時間帯に拡大し、所定の喫煙コーナー(分煙化)以外ではタバコの喫煙が禁じられるようになった他、
タクシー
- 社団法人全国個人タクシー協会の資料によると、2005年3月31日現在の個人タクシー4万4527台のうち禁煙タクシーは1852台、法人タクシーのうち禁煙タクシーは同じく2005年3月31日現在で約3500台である。以前はタクシー内を禁煙にするかは許可制だったが届出制に変わってから台数が増加している。
航空機
- 1999年4月より、全日空と日本航空が国内便・国際便をすべて禁煙化し、日本の航空会社の航空機における禁煙化は完了した。
- 一般的に日本の空港は、海外と比較して分煙が徹底していないという指摘がある。
- 豪華な設備を提供するサービスの一環として、全席での喫煙が可能な便を2007年春より成田~デュッセルドルフ間に飛ばす計画を立てているスモーカーズ国際航空がある。
市街地における規制
- 千代田区が2002年10月から主要な道路を歩行喫煙禁止にする「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」を施行した。同様の条例が各地で施行されている。
- 静岡市では、2006年10月から、歩きたばこや公共の場所などでの喫煙を禁止する「静岡市路上喫煙による被害等の防止に関する条例」が施行された。
官庁・役所の禁煙化
- 中央官庁庁舎は官庁・役所の中で最も禁煙化が遅れているが、厚生労働省は06年4月より庁舎を全面禁煙化した。また、それ以外でも完全分煙化は各自治体レベルで少しずつだが進んでいる。
学校の禁煙化
- 文部科学省の調べによると、2005年4月1日現在の全国の国公私立の幼稚園・小中高特殊学校における禁煙状況は、敷地内全面禁煙が45.4%・校舎などの建物内禁煙が23.6%、分煙が26.3%となっている。学校での禁煙化の前は、休み時間や始業前・放課後に職員室の自席や控え室などでタバコを吸う教職員が多く、職員室に出向くと室内は紫煙が充満していたが、2003年5月の健康増進法施行(第25条:受動喫煙の防止)以降対策が一気に進んだ。
- しかし、大学など学生が喫煙する確率が高い場においては全くといっていいほど禁煙対策がなされていない場合も多く、完全に喫煙室が完備されていない学校などでは、教室内は禁煙とされていても、キャンパス内では喫煙可能という状態が多いために、未成年学生が先輩などに進められて喫煙するようになる確率は非常に高いといわれる。
自動車の灰皿
- 自動車業界では、灰皿は機能部品であり喫煙可能は自動車の機能の1つであるともされ、「灰皿の標準装備は喫煙する事ができる機能が標準装備されていると同義」であると考えられている。このため全車の灰皿をオプション扱いとする事は困難とし、高級車、大型車などには依然標準装備されているが、全般的に灰皿の存在感を消すインテリアが主流になっている。
- 女性向け軽自動車や小型車、ユニバーサルデザイン車を中心に、灰皿を標準装備しない(例えば小物入れなどにしてある)自動車が増加している。こうした自動車には灰皿がオプションとして設定されている。また、据付ではなく標準装備のドリンクホルダー部分に灰皿を設置するタイプの車種も存在する。
広告の規制
タバコの広告は西欧では規制を受けるようになっている。F1などのモータースポーツにおいては大手タバコ会社がスポンサーになっている場合があるが、広告の規制を受けている国で開催される場合、ロゴの表示ができない。
日本においてはタバコの広告や包装には、規定の紙幅を割いて
- 「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。」
など8種類から2種類を、たばこ製品の包装の主要な2面へそれぞれ30%以上の面積を使って表示することになっているが、これはたばこ事業法第39条に基づき財務省令で詳細が定められているもので、注意表示を義務づけられているものである。
諸外国にはこれ以上に厳しい警告表示を義務づけている国もあり、EC加盟国内に至っては、
- “SMOKING CAUSES CANCER(喫煙ははがんの原因である)”
- “SMOKING KILLS YOU(喫煙はあなたを殺す)”
- “Tobacco smoke can harm your children(たばこの煙はあなたの子供を傷つける)”
などと表示しており、日本においてもそれらに倣ってさらに表示や広告を強く規制するべきとの意見もある。
メディアでのコマーシャルに関して
日本では、以前タバコのコマーシャル(広告)が放送、新聞、雑誌などのメディアで頻繁に行われていたが、青少年の喫煙を促すとともに健康への悪影響を懸念する意見が多くなったことから、段階を追ってコマーシャルを規制する動きが出ている。 まず業界の自主規制として、
- 1985年4月から特に未成年者が多く視聴すると想定される18時~21時の時間帯のテレビコマーシャル放送、並びに女性・少年向け(読者層の50%以上が未成年のもの)の広告掲載禁止。また未成年者に人気のあるタレント等をCMに起用してはならない
- 1987年女性が喫煙するシーンの使用禁止
- 1989年テレビコマーシャルの放送禁止時間を早朝5時からに拡大
- 1995年10月より週末(土曜、日曜)の放送媒体を使ってのコマーシャルを終日禁止。平日についても放送禁止時間帯を23時まで拡大。また学校の正門から100m以内の地域に屋外看板広告を掲出することを禁止
- 1998年4月、放送媒体でのタバコのCMを全面禁止
- 2002年6月少年向け雑誌の広告規制を読者層の25%以上が未成年のものに強化
- これまで自主規制だったテレビ・ラジオ・インターネットや映画上映前広告などでの広告の法的禁止
- 駅構内・電車やバス・タクシーなどの公共交通機関や、屋外看板における広告の禁止(ただし、たばこ販売店での広告・自動販売機に貼付する広告は残存)
- 新聞での広告の制限(1年間で1社当たり12回以内)
- 味のテスト用見本たばこ(街頭でのサンプリング)の配布は、成人のみが利用できるところに限る(かつては秋葉原駅前などで良く行われていた)
などが順次実施されている。
- 2006年に入ると、日本では日本医師会が「たばこをやめましょう」のキャッチフレーズで、禁煙を呼びかけるテレビコマーシャルの放映を開始した。(ただし、「医師の中に多数の喫煙者 - ともすれば愛煙家が存在するため、非常に説得力に欠ける」との批判が少なくない)
また、現在は規制を定めていなかったり、あるいは自主規制をしている各種イベントのスポンサー活動へのタバコの銘柄露出などの規制を強化する動きも検討されている。
だが、たばこ会社が喫煙マナーを訴える間接広告は規制されておらず、ニュース番組などでたばこに関する報道がほとんど行われない・たばこ産業に有利になるような報道がされるのは、これらの番組にたばこ会社がスポンサーとしてついているからだという有識者の意見がある。
備考
煙草・喫煙に関する様々な社会現象を取り上げる。
- 1996年頃から、たばこ自動販売機を23時~翌朝5時まで停止させる自主規制が行われている。だが、自販機における深夜帯の売り上げは10%程度しかなく、たばこ業界が批判をかわすためのカムフラージュであるという指摘がある。また、たばこ業界は、2008年中に全てのたばこ自動販売機をICカード「タスポ」による年齢認証を行った上で販売する方式に切り替えると発表した。現在、この方式は鹿児島県種子島で「たばこカード」として2004年5月10日から先行的に試験導入されている。
- 天皇、皇后が各地を訪問した際の関係者(警備の警察官など)や、皇居の清掃関係者などに対し、皇室が感謝品(一種のノベルティ)として配布されてきた「恩賜のたばこ」(菊のご紋章の入った特別仕様品)について、タバコを吸わない人(非喫煙者)への配慮などから、2006年末をもって菓子(金平糖の詰まったボンボニエール)への切り替えが行なわれることとなった。
- 世界禁煙デーの5月31日から1週間は日本では「禁煙週間」とされている。
日本以外の煙草事情
- アジア - 次項のシンガポールを除き、受動喫煙対策が遅れている国が多い。
- アメリカ合衆国・カナダ - シンガポール同様、やはり屋内のほとんど、交通機関が禁煙。タバコメーカーに対する喫煙被害に関する訴訟は広く知られている。
- ヨーロッパ - 国によって異なる。基本的には公共空間の喫煙が禁止されている国が多い。イギリスやアイルランドあたりは禁煙が進んでいる。特にイギリスではタバコに対する税金が高額といわれる。他の国ではやや受動喫煙対策が遅れていると言われる。
関連項目
参考文献
- Doll R, Peto R, Boreham J, Sutherland I. Mortality in relation to smoking: 50 years' observations on male British doctors. BMJ 2004;328: 1519-28. 40代までに禁煙すると寿命が10年延びる。英国の医師を被検者とした大規模追跡調査結果
- Thun MJ, More misleading science from the tobacco industry. (Editorial)BMJ 2003;327:E237-E238 たばこ産業の発する誤った“科学”
外部リンク
- 厚生労働省 ~たばこと健康に関する情報ページ~
- 「子どもに無煙環境を」推進協議会
- 健康増進法第25条(受動喫煙対策義務)違反
- 職場喫煙問題連絡会
- 世界保健機構(WHO)煙草規制セクション
- ニューヨーク市煙草規制局
- イギリス医学雑誌社(BMJ)発行雑誌 Tobacco Control
- ASH - Action on Smoking and Health
- 禁煙医師連盟
- 「禁煙タクシー訴訟」を支援する会
- 財政制度等審議会 たばこ事業等事業部会(第20回)議事録
- <受動喫煙にさらされる人の20人に1人は受動喫煙によって死亡する>
- タバコは有害物質の缶詰 喫煙のスポーツへの影響 禁煙の効果
- 受動喫煙に関する基礎的研究
- 禁煙公報センター
- 「タバコ病辞典」アクセスガイド完全版
- 大人たばこ養成講座
- 日本たばこ提供によるマナー教育サイト